ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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『病名:脳破壊
 症状:おめめぐるぐる、意思疎通不良』

「アインは…アインは治らないのですか!?部屋に引きこもって、やっと出て来たと思ったらこんな風になってて!」
「オレハダイジョウブダッテイッテルジャナイカ、ムムルネエ」

「いえ、あの……ごめんなさい、私にはどうしようも」
「そんな!?シルヴィアさんにもどうにもできないなんて、弟はそんな酷い病気に罹ったのです!?」
「(むしろ私では悪化させることしかできないんですが…)……普段通りの生活を続けさせながら、少しだけ注意深く見ていてあげてください。精神の病気は時間をかけて症状が出なくなるように落ち着かせるしかないです」




反逆の清楚姫

 

 デルピュネの王、機竜テュポーンへの反乱。

 そこに踏み切った最初の一歩は、悪く言ってしまうとただの行き当たりばったりだった。

 

 世界に一台しかない魔導列車―――その運搬能力に目を付けたテュポーンは、魔族領土内の物資の輸送をアスタ達に課している。

 各地に点在する資源採掘地を巡りながら工業地帯に運んでいく、という“作業”。

 折角のどこまでも遠くに旅ができる列車、なのに骸獣の徘徊という危険があるにも関わらず荒野を何十何百とただ往復するだけ、そんな繰り返しの毎日に車両スタッフ全員が多かれ少なかれ鬱憤を溜めていた。

 

―――これでもデルピュネの国民としては、まだまともな境遇であったとしても。

 

 そんな中、巡回ルートにあった辺境の街で、警備兵達が住人に横暴を働くのを見て一部のスタッフが激発してしまう。

 前線から外され左遷させられる程度に規律の低い兵達はそれ相応に実力も低いが、それでも国の正規兵に変わりはない。ザハークや眷属達が味方すれば成敗すること自体は簡単だったが、それをした時点でテュポーンに逆らった反逆者というレッテルはベヒモスの乗員全員に被せられてしまった。

 

 ある意味ティア達にとっては好都合―――故に、それが亡国の姫と反逆の魔神の戦いの始まりだった。

 

 

 

 

…………。

 

「―――読んでいたさ。キミ達の反乱なんてね」

 

 ティア達に敗けた時点で同じように未来がなくなった―――効率を求める機械人形であるテュポーンに“無能”を生かしておくような慈悲はない―――辺境警備兵達を抱き込んで偽りの報告を上げ、懐に潜り込んで王の寝首を掻く作戦。

 ティアが立案した計画はテュポーンの下に近づくところまでは成功したが、それ自体が不穏分子を炙り出す為の誘いであったと機竜は告げる。

 

「出来の悪い報告電文は読ませてもらった。新しい鉱脈の発見の経緯も不明瞭なら、その後発生したという骸獣との戦闘内容もあの辺境兵(ザコ)どもにこなせる作戦か疑わしい」

 

 故に直接現地に向かって確かめたと。

 献上されたサンプルの山に潜んでいたティアとザハークの奇襲を容易く振り払った彼女は、背に漆黒のウイングを展開しながら明るすぎる翠瞳で三人を睥睨する。

 

 その翼は少女を模した身一つで国を横断し、僅か数日で列車よりも早くこの首都にある謁見の間に舞い戻ることを可能にする。

 幾つも周囲を飛ぶ不気味な機械仕掛けの梟アルゴスは、死角からの移動砲台になると共に主の金髪から突き出した頭部拡張ユニットとリンクして、観測能力を補助し動作の精密性を跳ね上げる。

 それにより容赦のない正確さで狙い定める、腕に接続した巨大な重砲エキドナは―――未熟なティアの盾の竜装アンシェラの護りを容易くぶち破り、アスタの重力結界ごとまとめて三人を光の砲撃で薙ぎ払った。

 

「ぁぐ……これがテュポーンの実力……!!」

「分かってたけど、きついわねもうっ!」

「チビガキが――舐めんじゃねえッ」

 

 戦意が折れる程の痛打ではないが、分が悪いのはやはり再確認せざるを得ない。

 三対一で掛かっているとはいえ、相手はティアの母と同格の大将軍や四天将とタメを張りながら対神竜軍の前線を支える、魔竜族の王の一人なのだ。

 

 歯を食いしばりながら立ち上がるティア達を口元を歪めながら見下すテュポーンは、嘲る声音でその姿勢を浅はかと断じる。

 

「警備隊の奴ら、あっさりキミ達との繋がりを吐いたぞ?その程度の無能しか味方にできないのがキミ達の悲しいところだったのだろうが」

「ほざけやッ!!」

 

 闇色の炎――暗黒物質(ダークマタ)を爪の形にして拳に纏い躍りかかるザハーク。持前の俊敏さとタフネスでテュポーンに肉薄しようと迫るが、アルゴスからの火線を集中させて的確に接近を妨害してくる。

 ティアが盾役としてそれを防ぐ―――ことが出来ればいいのだが、重砲エキドナの射角が向けられるだけで上手く動けなくなる。下手に護りを固めても貫かれるだけなのは先ほど身を持って知ったばかりなのだから、許されるのは背の竜翼まで全稼働して飛び回ることだけ。

 アスタに至っては戦闘が本職ではない研究者。二人の援護どころか牽制射の処理だけで手一杯になっている。

 

 一方的に撃ち込まれるだけのジリ貧……否、それ以下だ。機竜の演算速度は三人を相手にしながら、より効率的に致命打を与えられるよう戦術的な組み立てすら並行しているのだから。

 

「機械の思考能力は生物のそれを遥かに凌駕する。舐めているのはどちらだ!!」

 

「ティア!?ちぃっ」

「ザハークっ!!」

 

「大地を揺るがすは鋼の(かいな)。破滅の炎をその身にまとい、愚かな敵を銃火と共に塵と化せ―――吠えよエキドナ、牙を剥けアルゴス。さあ、捕食の時間だ!!」

 

 射撃主体のテュポーンに少しでも有利をと選んだ屋内戦。事実出力を抑えられていた火力だがそれでいてなお翻弄され、動き回るティアとザハークが誘導された結果接触してもつれ合ってしまう。更に直線上にアスタも居る。まとめて宣言の通り塵と化すべく、先の一撃と違い竜唱(ロア)により必殺の威力を込めた集束砲撃が今解き放たれる―――、

 

 

 

「―――ええ、正確無比。だから読みやすい」

 

 

 

 謁見の間の床、反動に備えて機竜の深く構えた足元に浮かび上がる白光の紋章。その上でテュポーンが攻撃の為に高めていたエーテルが霧散していく。やがて重砲エキドナの銃口から発していた殺意の気配すら無力化されていた。

 

 次いでアスタの頭上の空間が裂ける。異次元の闇から飛び出してきたのは、魔導列車の白衣の姫。

 

「何―――お前、シルヴィア=ハマルティア!?」

「シルヴィっ!!助かった~、これ終わったらボーナス弾んじゃう!」

 

「ふふ、楽しみにしておきますねアスタさん。

 さて、種明かしをするのであれば………ドヤ顔してたところ大変申し訳ないのですけど、あの報告書はあなたにとって半信半疑くらいになるよう元々書きぶりを調節してたものなんです。

 不穏分子の存在が疑われるが絶対に嘘だとも断定できない、その場合確実な情報を得る為にあなたはどうするか」

 

「………っ!」

「自分で確かめるしかないですよね。だって機械のあなたが信用するのはデータだけ。頼って任せられる部下なんていないでしょう?

 というより、以前も似たような状況があったの記憶していますし」

 

 頼れず任せられないテュポーンの配下達は、この戦闘に横槍を入れられないよう眷属達やベヒモスのスタッフで抑えている。その戦況を完全に膠着させた上で本命に駆け付けたシルヴィアは清楚な笑みを浮かべたまま機械仕掛けの王を煽った。動きを誘導されていたのは貴女の方だ、と。

 

「他にも手は打っていましたが、ありがたいことに読み通り貴女は居城を留守にした。その間に仕込みはさせてもらいましたよ、色々と」

 

 今発動しているもの以外の罠の存在すら匂わせながら、戦闘マシンの思考を惑わせようとする。当然、テュポーンの反論も見越した上で。

 

「馬鹿な……。ボクはベヒモスの到着よりも早くこのエトナに戻っていた!それにボクの本拠でそうやすやすと工作なんて、出来る訳がない!」

「―――狂天使カスピエル」

『&#$&%、**+=!!』

 

 シルヴィアの呼び掛けに応えて空間の裂け目が再度開く。美しい天使と朽ちたアンデッドが融合したような見た目の異形が、凶相を浮かべてその中からテュポーンを睨んでいた。

 

「ピーちゃんです。移動も潜伏も大いに助けてくれる私の娘です。恥ずかしがり屋さんなのが玉に瑕ですけど、可愛いでしょう?」

 

「恥ずかしがり屋?」

「いや、可愛いかしらそれ……」

「ピーちゃんって、おい……」

 

「さあ、逆転劇と行きましょうか」

 

 思わず疑問を口にしたティア達に構わず、シルヴィアは神秘的な光を放つ宝玉付きの短杖を振りかざし厳かに祝詞を唱え始める。神竜族でも魔竜族でも、一部の実力者にしか許されていない竜装解放の儀式。

 

「冥戒十三騎士が十の指し手、『白の賢姫』が未知を(ひら)く。風は空に、星は天に、逆巻く因果を貫いて」

 

「え、まさか……」

「シルヴィアが竜唱(ロア)だと!?」

 

 

抜錨(パンツァーフォー)暁の水平線に勝利を刻め(アクセスフラッシュ)――――『月天の雫(セレスティア)』!!っぽい☆!!」

 

 

「……ぽい?」

「ぽい、って」

「ぽいんだ…」

「ぽいとは?」

 

 

 かざす宝玉から幾重にも溢れる光の環が拡がって、仲間達の傷を癒しながらその能力を増幅し強化させる。祝福と呼ぶのがふさわしいだろうその驚異的なチカラに―――しかし敵のテュポーンまで気にしていたのはそこではなかった。

 

「最後のは気にしないでください……」

 

 そして、当のシルヴィアは微妙に赤くなって俯いたままぷるぷる震えていた。

 

 

 





『厳かに祝詞を唱え始める。神竜族でも魔竜族でも、一部の実力者しか許されていない竜装解放の儀式』
→だから、詠唱に意味はないってば(シルヴィアに限る)

『冥戒十三騎士が十の指し手、『白の賢姫』が未知を(ひら)く』
→とある深淵ゆうえんちで、往年紅白の小林○子ばりのド派手衣装で登場した自分のそっくりさんを見て悲鳴を上げた妹姫が居たとか、お目々きらっきらさせて見てた姉姫が居なかったとか。

『っぽい☆』
→一部のORS達が一番こだわっていた部分。でもいくら安価で出たワードの組み合わせとはいえ、『抜錨』にパンツァーフォーとかのルビは無理があり過ぎる。


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