ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 一年で再度お引越しさせられるの草枯れる。

 この作品もさっさと終わらせないとまた更新が……




決戦の凄惨姫

 

 造天使(フォージエンジェル)の第一波を殲滅しセントラルプレート上陸戦を制したティア軍。酷使した空戦部隊を休ませがてら開いた軍議で、次なる戦略の方針確認を行う。

 勿論事前に検討は行っていたが、この戦闘での自軍の消耗具合や敵戦力の脅威度、現地の観測を実際に行った上で新たな情報を精査して流動的に戦略を変更するというのは当然のこと。

 

 高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処するのが重要なのだ。―――確固たる戦略目標を定めた上で、の話だが。

 

「やることはおおまかに二通りなんですけどね。各地の設備を破壊してリソースを消費させてメルトセゲル様を弱らせるか、戦力を一点集中して一気にメルトセゲル様を叩くか」

「当然、親玉を一気に―――って言いたいところだが」

「罠よね。さっきは本当に焦ったわ」

「……今のボクがティアに守られるとはね。アハハ、皮肉かな?」

 

 元々起伏の無い金属の大地である以上、敵中枢ルーラーズスパイアは沿岸からでも観測可能。試しにテュポーンがエキドナ改による闇黒砲を50%の出力で狙撃したところ―――それでも街一つ消し飛ばす程度の威力はある―――着弾寸前に防壁として現れた空間歪曲に絡め取られ、そのまま減衰することなく射手のテュポーン目掛けて跳ね返された。備えていたティアが魔盾により上方へと逸らしたからいいものの、ただの観測射撃で危うく武将クラスの戦力を失うところだった。

 

 始祖龍の次元砲ならその防壁を破れるか、試す気にはあまりなれない。

 ガシェルの目論見通り始祖龍が復活した演算世界は多数ある。その全てを消去してきたメルトセゲルだが、現実に存在し得ると判断した最強兵器(ディメンションカノン)を凌げるだけの質を、自らの護りを構築する時に求めた可能性は大いにあるからだ。

 仮に次元砲すら跳ね返された場合、いかに暗黒物質(ダークマタ)で強化されたティアの始祖竜装の盾(シルティス)でも一溜まりもあるまい。移動手段にして文字通りの巨大戦力である始祖龍を失う危険を考えれば、攻城兵器を封じられた状態での拠点攻めになる。積極的に選ぶものではなかった。

 

「空間歪曲防壁は消費エネルギーが馬鹿にならない筈です。ただでさえデルピュネの実体化だけでかなりの備蓄を食われたでしょうし、ヴェリトールのこれまでのラグーン潰しと併せて再補充の目途も立たない以上、ここからもっと消耗させれば使用自体が不可能になると思われますよ」

「とはいえ敵のリソースを削る方針にも問題が無い訳ではありません。

 ありていに言って、敵以上にこちらが消耗する可能性があるからです」

 

 アスタによって破壊した敵の兵器群が分解・再利用されるのを防げてはいるものの、極端な話無数に漂うラグーンキューブの一つでもバラして使えばそれだけで浮遊大陸一つ分の資源になるのだ。理想世界の演算を至上目的にするメルトセゲルがそんなある意味本末転倒な手段を選ぶ可能性は低いだろうが、ティア軍をプライマルラグーン全体の運行に支障を来す程の脅威と認識してしまえば絶対にしないと断言はできない。

 そうなれば無尽蔵に増産される造天使の圧倒的な物量に押し潰される未来しか待っていない。

 

「進むは地獄、一旦退くは一発即死アリのギャンブルってところか」

「………では、折衷案で行くしかないと思いますが」

 

 一言でまとめた姉に続ける形でかつて賢者と呼ばれた氷竜が静かに告げる。

 

 折衷案―――即ち、メルトセゲルが形振り構わぬ排除を決断する寸前まで破壊工作を行った後、利用可能なエネルギーを制限された機械神を速攻で討つ。

 どっちつかずの中途半端に思える方策だが、これまで魔神解放戦線を勝利に導いてきた天才軍師もこれを推した。

 

「どのみち万全な機械神に正面から当たるのも危険な賭けです。

 その勝率を上げる前段階にしかならない、ハイリスク・ローリターンの理不尽なチキンレースですが……制してみせます、絶対に」

 

「信じるわ、シルヴィア」

 

 彼女が絶対と言うのなら、否定する者は居ない。打ち立ててきた実績と何より献身を受け続けた大将ティアの信頼がある。ある意味で組織として危うい体制であるのを認識していながら、その重圧を細い両肩に背負った上で紅血髪の少女はいつも通り笑う。

 

 

 この重さすらもティア姫の信頼だというのなら、全肯定するのが己に課した役割だろう。

 たとえかけがえのない何かを失うとしても貫き通すのだと、そう決めている。

 

 

 

………そして軍を三つに分けた魔神解放戦線は、セントラルプレートの重要拠点をそれぞれ制圧した後中央の塔に集う。

 

 テュポーンの闇黒砲とエデンの次元砲が長大な演算世界(ラグーン)観測鏡と広大なラグーンキューブ生成槽を消し飛ばし、ティアの黒牙槍とザハークの六翼が膨大なソーマ備蓄プラントを全て暗黒物質(ダークマタ)で汚染して利用不可能にする。

 それを阻止すべくどこに隠れていたのかと思うくらいの、第一波のそれに匹敵する総数の造天使(フォージエンジェル)の大群が各部隊を包囲するが、ヴェリトールとY-MANが黒と白の煉獄で焼き払いレヴィアが対極の氷獄で沈黙させる。武将達の強烈な突破力で目標達成後それぞれほぼ同時に敵中枢に到着した魔神解放戦線は、眷属達と始祖龍を機械天使達への対応に残して最精鋭のみで突入した。

 

 エルの事前の助言通り主要施設を破壊したことでルーラーズスパイア周辺の空間の歪みは消えていたが、始祖龍の力で塔を消滅させることは一旦保留にしていた。

 

「第一に問答無用で演算中枢ごと機械神を瞬殺した場合、彼女が管理するこのプライマルラグーンの運行がどうなるか読めないこと。メルトセゲルを倒したら今度はこの世界も崩壊するなんてオチは嫌ですよねえ」

「数千の世界を演算・観測・制御する超特級の精密機械を電源ブチ抜いて強制終了するようなものって考えたら、そうね」

 

 語源通りの杞憂とはあながち言えない懸念をアスタの同意を得た上で、シルヴィアは己の義父にも問う意思があった。

 

「第二に。始祖龍の次元砲でさくっと元凶を消し飛ばす。

――――そんな終着じゃ納得できない方、居るんじゃないですか?」

 

「小娘が。余計な気を回すな、今更手段を選んで優先順位を違える愚を犯すつもりはない」

「それはつまり優先順位を違えない範囲なら、手段は選びたいのではないですか?」

「……………」

 

 愛した女が惨めな姿で暴走し続けるのを止める―――その為だけに万の時を刻んで来た原初の魔神は、振られた問いに押し黙るだけだった。

 それは義娘の指摘が図星を突いたのを肯定するものであり、そして意外にも最新の魔神からその願望を受容する言葉が出る。

 

 

「てめーの女くらいてめーの手で奪い取るモンだろうが。奪い返すってんなら猶更だ。

 それとも俺のコピー元のくせに、そんな当たり前の流儀すら忘れたのかボケジジイ」

 

「誰が……っ。くくくく、はははははッッ!!いいだろう、後悔するなよ。

 俺の手でケリを付けに行く―――魔神(オレ)創造神(ティア)を、戦わせろォッッ!!!」

 

 

 焚きつけられたヴェリトールが気炎を上げ、選択の余地が生まれる空気ではなくなった。

 くすくすと微笑しながら暖かくそれを見守るシルヴィアに、『ティアとザハーク』の異なる在り方を見せられた災厄姫が複雑そうな表情で確認した。

 

「いいの?始祖龍の力を使わなくて本当に大丈夫?」

「大丈夫です♪策ならあります」

「……その策って、訊いてもいいのかしら?」

 

 

 得意げなウインクと共に、軍師姫が曰く―――、

 

 

「 チ カ ラ ず く 、です♡」

 

 

…………。

 

 最後の最後、もはや戦術が通じる次元ではない宿敵メルトセゲルの前に、魔神解放戦線の幹部達が対峙する。

 

 一片の歪みなく整えられたドーム上の広間の中心に、歯車と集積回路で組み合わされた鎧甲に覆われた神竜族の女が居る。白い角と翼、蒼い長髪、巨大アームで保持する十字槍(キシャル)擬聖盾(アンシェラ)の竜装―――それは憎悪の暗黒物質(ダークマタ)に染まらず、しかし別の形で歪み堕ち切ったティア=エリーシスに他ならなかった。最悪の可能性と呼ぶには彼女自身がオリジナルであるという皮肉。

 

「まずはお手並み拝見と、逝きましょうかァ!!?」

 

 ふっと霞のように消えて現れたようにすら思える瞬速の風雷将がその脳天目掛けて双剣を振り下ろす。

 言葉に反して、あるいは言葉通りに致命の一閃。だが生身では知覚すら出来ない斬撃に対し、機械仕掛けの自動腕は竜盾によるガードを間に合わせた。

 

「んふっ、よくできましたー。でも知ってるのよ。こういうの、貴女弱いんでしょ♡」

『ッ、―――イジェクト』

 

 タクティカ『狂奔の獄雷鬼竜(ファナティック・フレイズマル)』。ピアサに与えられた小剣の禁忌兵装の真価は、かつてのティアが使っていたものとは名前が同じだけの別物と言っていい創造神の盾すら容易くすり抜けて侵す毒のような雷撃にある。

 当然精密機器の極致である機械神からすればそんなもので中身を灼かれれば溜まったものではない。

 すぐさま機械の巨腕で双剣ごとピアサを弾き飛ばし、天地逆さまにドーム天井に足を突いた嵐竜姫と己の周囲の空間を操作する。

 

『ファルスレーザー、ファイア』

 

 次元の裂け目から撃ち放たれるは紅紫の光線。翠髪の娼装竜姫に合金板を容易く両断する死の光条が殺到する。

 それに対してピアサは目にも映らぬ羽搏きで鋭角的な軌道で空中を跳ね回り、そして華奢な身を捻ってやり過ごす。

 

 疾風迅雷の神速で飛翔しながら軌道の自在さすら両立する大空の支配者は、全方位から降り注ぐ死の雨の隙間をするりするりと縫いつつ幼顔を嘲笑に歪めた。

 

 

「あーあ、親友相手に容赦ないですねぇ。まあそれも仕方ないか。

―――貴女の世界のピアサは、全て失って唯一頼れる存在として縋って来た親友をよりによってガシェルに突き出したんですから。

 

 この顔憎たらしくて仕方ないでしょお?ごめんなさいねー?多分悪気はなかったんですよォ!!きひひひひゃははははははっっっ!!!?」

 

 

「うっわ……」

 

 蛮竜姫メルジーニが絶句する程に悪辣な挑発。エルがザハークに見せた『最初の世界』の記憶にあった『ティア』のトラウマの一つ。

 実際にそのティアは己を裏切ったピアサを何の躊躇もなく竜杯で灰に変えた訳だが、永年暴走し発狂した彼女ですらその恨みを反芻して行動に反映する程に覿面だったのだろう。

 

 あるいはかつて善意で『ガシェルに頭を下げろ』とティアに言い放ち、報いとして竜槍で刺され大衆の面前で辱められながら処女を散らした過去―――そしてそれを大して不幸と思っていない現在を韜晦(とうかい)してのことか。

 

 更に密度を増した破滅の光線に捉えられることがないまま、ピアサ=アルトンは敵の攻撃の多くを惹き付けた。

 

 その隙に他の面々が攻撃を仕掛ける―――のは、次元の歪みより堕とされた異形達に阻まれる。

 

「黒い造天使(フォージエンジェル)!?エルちゃん聞いてないですよ!?」

「アストライアの結晶生物まで……こっちもなんか黒いし!」

 

 色彩を黒に染めた機械天使達。塗装云々ではなく、存在そのものから不吉な闇黒のオーラを漂わせたヒトガタ達。そしてそれに加え、ニンゲンの顔を封じた結晶を草花や蟲に取って付けたような悍ましい黒の奇形生物達。

 

「かったいわね……ッ!これ、暗黒物質(ダークマタ)!?」

「ラグーンを作るということはそこに居る魔神ザハークも再現されるということ。

 暗黒物質(ダークマタ)の生成技術も当然、ということですね……」

 

 闇の炎で強化された殲滅兵器。

 この最終決戦の舞台で、皮肉にも魔神解放戦線を襲うのは魔神の力で凶悪化した敵達だった―――。

 

 





『かけがえのない何かを失うとしても』
→次回ネタバレ。凄惨姫が敗北してとても大切なものを失います。

「大丈夫です♪策ならあります」
「 チ カ ラ ず く 、です♡」
→最後の最後までネタに走る凄惨姫。そしてこんなこと言いつつ、こいつのことだから当然―――。

「縋って来た親友をよりによってガシェルに突き出した」
→ 善 意 である。どの世界でもほんと似たようなことやってんなこの自称親友ちゃん。

「ごめんなさいねー?多分悪気はなかったんですよォ!!」
→性格超わるわる悪堕ちピアサちゃん。これカオス称号は高数値の必殺耐性と挑発行為だな……。
 5%のクリティカル以外イベパリで全部避けるが一部敵の暴走攻撃で乙るやつ。

『闇の炎で強化された殲滅兵器』
→みんな大嫌い黒造天使に黒結晶。まともにダメージ与えられるアタッカーが全キャラ中で十も居ないのは正直どうかと思う。クラゲは砲撃痛いし花はデバフ酷いし。
 黒い理由が暗黒物質(ダークマタ)のせいなのかは原作のシナリオ描写がないので不明です。
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