転生したらルフィの幼馴染だった件。
名前はノースウィンド・イザヨイ。生まれも育ちもフーシャ村の一般市民。
5歳になったばかりのある日。その辺に成っていたヘンテコな果実を、好奇心に従って齧った瞬間、ゲボの味と共に前世の記憶が噴出した。
前世の俺がどんな奴だったかは、特に今の俺と関係ないので割愛。
記憶によれば、俺が今いるこの世界は、超絶大ヒット少年漫画『ONE PIECE』。主人公のモンキー・D・ルフィが、仲間たちと壮大な冒険を繰り広げる物語だ。
で、ここからが問題。この『ONE PIECE』、全世界の知的生命体に愛されている、ニチアサでアニメやるほどの人気漫画なのだが────はっきり言って、ストーリー展開が重い。
メインキャラが第3話で頭を食われるなんてことはないのだが、強者の暴力や悪意に晒されて追い詰められた経験のある人間が多すぎる。というか世界の構造が理不尽。そして重いのはストーリーだけでなく、『仲間』の2文字に込められたクソデカ感情もである。
正直、生きる気力を無くした。ワンピ世界はモブに厳しい。このままボーッと生きてたら、絶対無惨に死ぬ。
俺は何の夢や目標もない。根性もない。努力なんて絶対したくない。働きたくない。朝起きたら勝手にご飯が出てきて、洗濯物畳まれてて、お風呂が沸いてる生活がしたい。でも結婚は面倒なのでしたくない。むしろ俺なんかと結婚する方が可哀想だ。
フーシャ村に引きこもってりゃ大丈夫だろ、とも考えたが、いつ何が起こるか予測できない。例えば町に横暴な海兵が来たり、村が海賊に乗っ取られたり、国が海賊に乗っ取られたり、国が海賊に乗っ取られたり、国が海賊に乗っ取られたり………………そんなんばっかだなこの世界。そりゃウタも新時代作るわ。
しかし、苦悩の末、俺は一縷の希望を見出した。
そうだ。この世界は、『ONE PIECE』なのだ。呪術廻戦でも、ヒーローアカデミアでも、ましてやチェンソーマンでもない。
ワンピ世界最大の特徴として、意外とネームドのヴィランが死なないことが挙げられる。ルフィに倒された後は海軍に連行されたり、上手いこと逃げおおせたり。
つまり、この世界は、どんな外道かまそうが生き残ったモン勝ちなのである。
そして、この世界において生存率を最大まで上げられる最適解────『
何を置いても優先すべきは、
俺なら出来る。手段は選ばない。とりあえず毎日肉でも貢ぐとしよう。
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「じゃあ大人になったら、イザヨイのこと養ってあげる!」
俺は口が引き攣るのを自覚した。
ウタのヒモ? 問題がありすぎる。ナイナイナイナイ。なさすぎて最初から想定もしていなかった。
流石に、ウタに惚れられるなんて驕り高ぶった考えは持っていないが、彼女に変に依存されると今後の人生が確実に詰む。
しかしながら、「君はこの後シャンクスに置いて行かれて病んで救世主として祀り上げられた末になんやかんやあって毒キノコ食って死ぬから他人より自分のこと心配した方がいいよ」なんて寝ぼけてても言えない。
仕方なく、俺は嘘を吐かず、簡潔にキッパリと断る。
「いや、俺はルフィに養ってもらう予定だから。俺は、歌姫のヒモじゃなくて、海賊王のヒモになりたいんだ」
一寸の隙もない、完璧な回答だ。我ながら素晴らしい。
「おーい、ウター! イザヨイー! なーにやってんだー?」
遠くから、モンキー・D・ルフィが手を振りながら駆け寄ってくる。こうして見ると、ご機嫌で元気なところは昔から全く変わらない。流石は未来のジョイボーイだ。見てるこっちが笑顔になる。
だが、ウタは顔を真っ赤にして、頬を膨らませて、拳を握って叫んだ。
「な、なんなの“ヒモ”って……!! ルフィとイザヨイなんてもう知らない!」
ふんっ! とそっぽを向いて、ウタはずかずかと野原の向こうに去っていってしまう。何か彼女の機嫌を損ねるようなことをしただろうか。
もしや、あの質問はただのジョークだったのか? 年下をからかっただけなのか? 「マジレスすんなカス。お前みたいな紙屑が誰かに養ってもらうなんて夢見てんじゃねえ」という天の啓示なのか?
……駄目だ。考えるのめんどくさい。寝よう。
「なぁイザヨイ、お前ウタになんかしたのか?」
「わかんなーい……」
俺は寝転がって太陽を浴びる。単なる日光浴ではない。
5歳のときの俺が食べた悪魔の実は、
これを食べた者は、太陽光エネルギーを体内に溜めて使用することができるらしい。要するに
恐らく訓練すればビームとかも出るのだろうが、今のところノーリスク徹夜か、ちょっと面倒な力仕事か、わんぱくで無軌道な幼馴染の足についていく以外の用途がない。
必殺技? んなもん技名考えるのさえダルい。戦闘は他の奴らに丸投げする予定だ。というか、こんな世界で自死を選ばず生きているだけ偉くないだろうか。
「あっ、寝るなイザヨイー!! 泳ぎの練習しに行くから一緒に来いよー!!」
俺の頬をつねるルフィ。ちなみに彼は、俺が悪魔の実の能力者であることは知っている。どうやら、俺に練習の様子を見ていてほしいようだ。子供か。子供だったわ。
ああ、哀れなルフィ。君は近い将来強制的にカナヅチになるというのに、頑張って泳ぎの練習だなんて。
水泳。俺がこの世で3番目くらいに嫌いなものだ。同率3位はマラソン。水泳とマラソンの授業は、何故か休むと後々補習をさせられるので大嫌いだった。だったら他の競技のときもそうしろってんだ。本当にこの世は理不尽だ。
とはいえ、俺はルフィに養ってもらわなきゃいけないので、今のうちから彼の好感度を上げねばならない。重い身体をどうにか起こす。
俺はこの1年間よく頑張ってきた。ルフィのフォローをしたり、説教されたりして時間取られるのが嫌だから真面目に家事手伝いをしたり、たまに筋トレしたり、ルフィにお弁当を分けてやったり、とにかくいろいろだ。
なんかもうここまで頑張ると、別に今サクッと死んだ方が楽なんじゃないかとさえ考えるが、ギリギリのところで踏みとどまっている。
あと10年。あと10年経ったら海賊として村を出て、2年後に新世界、それから……あ、駄目だ。なんかもう100巻分の旅路が途方もなさすぎて想像だけで疲れる。
「ルフィ〜……ここは俺に任せて早く行け〜」
「えー、しょうがねェな背負ってやる」
まだまだ先は長い。考えるのやめて寝よう。うん、そうしよう。
ノースウィンド・イザヨイ
◆役職・・・ヒモ(ルフィの世話係)
◆年齢・・・6歳(現在)→16歳(原作開始時)
◆誕生日・・・8月16日
◆好きな食べ物・・・野菜、甘いもの全般
◆嫌いな食べ物・・・脂っこいもの、酒
◆悪魔の実・・・ソラソラの実
転生者。超面倒くさがりで、あんまり頭が良くない、その上人間性も微妙。好きな言葉は二度寝と外出自粛、嫌いな言葉は友情・努力・勝利。なんでコイツはジャンプ読んでたんだ。
ハードなワンピ世界に転生してしまって暫く絶望していたが、
ソラソラの実の能力者であり、太陽光のエネルギーを体内に溜め、放出・変換することが可能。また、肉体が耐熱・耐毒仕様と化している。しかし「使うの面倒」という理由でほとんど使用しておらず、日向ぼっこ等で定期的にチャージしているので、現在かなりのエネルギー量を溜め込んでいる。
今後はルフィの世話係を他の仲間(特にナミ)に押し付けようと考えているが、それが叶うことはないだろう。
容姿は銀髪金眼の儚い系美人。本人は「モブ顔だったら高確率で死んでたー!!イケメンで良かったー!!」とか思っている。ウザい。