海賊王(のヒモ)に俺はなる!   作:彩辻シュガ

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昨日のうちにお気に入り100件どころか300件突破しました・・・・!!多くの人に読んでいただき大変ありがたいです。


ねぇコビー、コンタクトにしなよ(表)

 

 

 

 

 どうして海賊になったんですか、と聞かれて、イザヨイはひとつ欠伸をしてからこう言った。

 

「コビーは海軍になるんだろ……海賊の事情なんて知っても仕方ないよ?」

「仕方ありますよ!! だって、海賊も同じ人間なんですから!!」

 

 それに、コビーは気になったのだ。自分を助けてくれた、この変わった海賊2人に惹かれていた。快晴の空みたいにサッパリしたルフィはともかく、常にダルそうなイザヨイが、海賊というハイリスクな自由を求める理由を知りたくなったのだ。

 

 イザヨイはしばらく考えて、隣でグースカ眠るルフィを一瞥したあとに答える。

 

「強いて言うなら……俺は、何がなんでも、最後までルフィの味方じゃなきゃいけないんだよね」

 

 イザヨイの金色の瞳が、ずっと遠く、水平線よりさらに向こうを映す。

 

「俺が……イザヨイとして幸せに生きるには、そうするしかない。そうした方がいいって考えた」

 

 海は静かだった。彼の穏やかな語り口を、妨げないようにしているかのようだった。

 

「つまり……イザヨイさんはルフィさんのこと、信じてるんですね。絶対に海賊王になる人だって……」

「んー……うん、なんかもうそれでいいやぁ」

 

 投げやりな口調だったけれど、コビーには分かった。イザヨイは、“海賊になりたい”のではなく、“ルフィの仲間”でありたいのだ。それくらい、彼のことを信頼している。

 

「俺もう寝るね……おやすみ〜……」

「え、ええっ!? 駄目ですよ、もうすぐ着くんですから!?」

 

 いくらコビーが軟弱な少年だからといって、海のど真ん中で、初対面の人間の前で寝るなんて呑気すぎやしないだろうか。全く変わった人たちだ。

 

 それとも、脅威として見られていない……舐められている? 

 

 コビーは、水平線からせり上がってくる陸地の街並みを眺めた。あそこに、恐ろしいロロノア・ゾロがいると考えると、少し震える。

 

 海軍になるとは決めたが、本当に自分なんかが正義のために戦えるのか、不安でしかない。

 

 ……このときは、まさか、賞金首狩りより横暴で理不尽な存在がいるとは、コビーは知る由もなかったのだ。

 

 

 

 >>>>>>

 

 

 

「ええ!? ルフィさんが基地の中へ!? またムチャクチャなことを……」

「本当だぜ、何者なんだアイツは」

「……大丈夫。ルフィはここで死ぬような奴じゃない」

 

 そう言って、イザヨイは寝ぼけ眼を擦りながら、ゾロの腕を縛る縄をほどき始めた。

 

 しかし、太陽に当たっているわりに日焼けしていない細い指では、なかなか苦労するようで、コビーも一緒に手伝うことにした。

 

「おい、いいのか! おれに手を貸せばてめェが殺されるぞ」

「あなたに捕まる理由はないはずです!! ぼくはこんな海兵見てられない!!」

 

 悪人を裁くための力を私利私欲を満たすために使い、人々を恐怖で支配するような奴が海軍にいていいわけがない。そんなものは正義ではない。ただの悪だ。

 

 コビーは、ルフィやイザヨイのように、自分の信念に嘘をつかず生きると決めたのだ。

 

「ぼくはきっと正しい海兵になるんです……!! ルフィさんが海賊王になるように!!」

「何? か……海賊王だと……!? 意味わかって言ってんのか!?」

「君も近い未来こうなるんだよ……」

「そんでてめェは何なんだ!!」

「海賊王のヒモになる男です」

 

 船の上では、眠いだの死にたくないだの眠いだのと言っていたのに、今はこうして、命を危険に晒した状況で軽口を叩き、ゾロを助けようとしている。

 

 やっぱり、イザヨイさんもルフィさんと同じくらい凄い人だ────

 

 そのとき。

 

 パァン、と物々しい音が聞こえて。見上げる間も、背筋が凍る間もなく、鉄砲玉がコビーの肩を────

 

「………………邪魔!! ペース崩されるの面倒!!」

 

 貫こうとしたところを、イザヨイが()()()()()

 

「えっ!? た、弾を、素手で……!?」

「2日分消費した……最悪……」

 

 ありえない。いや、ルフィは打撃が効かないゴム人間なのだから、銃弾を素手で止められる者がいてもおかしくはない……のだろうか? 

 

 ともかく、コビーは腰が抜けて動けなかった。ゾロは一瞬目を丸くしていたが、すぐに眼光が鋭くなる。

 

「……お前、何者だ」

「悪魔の実の能力者です。“武装色の覇気”とかじゃないんでよろしく……」

「“覇気”?」

 

 おもむろに、コビーの目の前に手が差し出される。イザヨイだった。

 

「怪我、してない……な。ゾロも平気か?」

「お前ら……いい加減とっとと逃げろ! また撃たれてェのか!?」

「問題ない。そろそろルフィも来る」

 

 そうだ、銃だのなんだのくらいで腰を抜かしている場合じゃない。ゾロを助けて、ルフィたち3人にはここから逃げてもらう。それが、コビーに出来る“正しいこと”だ。

 

 だがしかし、海兵たちの動きの方が早かった。

 

「そこまでだ!! モーガン大佐への反逆につき、お前達3()()を今この場で処刑する!!」

「なっ……!?」

 

 銃口が向けられる。コビーの顔に、とめどなく汗と涙が湧き出る。

 

 アルビダの船にいたときから、死にかけるようなことは度々あった。でも、今回の相手は、理不尽な海賊じゃない。市民の味方であるはずの海兵だ。

 

 どうして。どうして、ぼくは海軍になりたいのに、海軍に殺されようとしているんだ? 

 

 散々殴られたことはあっても、撃たれたことなんて一度もない。恐怖で足が震える。このまま、何も成せずに死ぬのか────いや死んで堪るか、せめてゾロだけでも守って……

 

 そのとき、イザヨイが優しく肩を叩いた。

 

「落ち着けコビー。君は死なない……多分」

「多分!?」

「少なくとも、君とゾロはここじゃ死なない」

 

 ────()()()()()、だって? 

 

「いっ、イザヨイさん!?」

 

 イザヨイがゆっくりと歩き出す。その、あまりにも鷹揚とした足取りと、乾いた視線に、銃を構えた海兵たちがたじろいだ。

 

「く……来るな!! 近付けば撃つ!!」

「………………」

 

 何をしでかすのかと思いきや、唐突にイザヨイは銃の先端を握った。

 

「いいよ、()()()? 俺はさ、早く終わりにして寝たいんだよね〜……」

「ひっ……」

「馬鹿野郎!!! 死ぬ気かてめェ!?」

 

 海兵たちが怯み、ゾロが叫ぶ。死を恐れていない────否、ここで死ぬことはないという自信と、幾ばくかの諦めが、彼の声音から感じ取れた。

 

 イザヨイは「ふぁあ……」と大きな欠伸を一つしてから、こう言い放った。

 

「こうすればさ、ほら────()()()()()()()()

 

 

 は、と疑問が溢れる前に。

 

 

「基地を取り囲め!! あの麦わら小僧は絶対に────」と胴間声が響く前に。

 

 

「ゴムゴムの……ロケットォォォォ!!」

 

 救世主は、太陽を背負って現れた。

 

 

「ほら、言っただろ。そろそろ来るって」

 

 イザヨイがその瞬間、微笑んだ気がした……が、陽光が眩しくて、涙で視界が滲んでいて、コビーにはよく見えなかった。

 

 




・コビー
ここから一年も経たずに、ミジュマルからダイケンキに進化するレベルの成長を遂げる。なんやかんや言って、初期の眼鏡コビーも純朴で良いビジュアルではある。


・ゾロ
君も近い未来こうなるんだよ・・・・あとコックにやたらめったら喧嘩売り買いするようになるんだよ・・・・楽しみだね・・・・

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