【完結】流れ星の転校生~とある武術家ウマ娘がトレセン学園に転入する話~ 作:カンヌシ
トレセン学園に夏がやってきた。それが意味するところはそう、『夏の強化合宿』の時期が到来したのだ。
マリンアウトサイダが転入してきたのは昨年の秋の初め頃だったので、彼女にとってはチームメイトとの初めての合宿となる。
合宿先に向かう『シリウス』のトレーナーが運転する大型バンの中、マリンはいつもながら澄ました顔をしているが内心は非常にワクワクしていたのだった。
例によってメジロマックイーンが助手席に座り、他のメンバーは後部座席で談笑したりゲームをしたりする。そんな旅行のような雰囲気を一緒に楽しんでいた。
正午を過ぎた頃、一行を乗せたバンは宿泊先の駐車場に到着した。皆で協力してトレーニング用具と各々の荷物を大部屋に運び、それが一段落したところで、トレーナーは皆を呼び集めた。
………
……
…
「みんな、車での長旅お疲れ様。トレーニングは明日の午前から始まるから、今日はそれに備えてゆっくり休んでくれ。遊んでも良いけど、あまりハメを外しすぎないようにね。僕とマックイーンはこれからチーム代表ミーティングに参加するから、みんなは日が暮れる前には戻ってくるように!」
そう言うと、トレーナーはマックイーンを連れ立って部屋を後にする。毎年の合宿で宿泊施設やビーチは他のチームも利用するので、その利用時間帯や注意事項などの確認の為に、各チームのトレーナーと代表のウマ娘1人が集まってミーティングを行うのだ。チーム『シリウス』では当然のようにマックイーンが代表である。
2人が去った後、皆は各々のカバンを開け、荷物を整理する。これからしばらくは共同生活をするようなものだ。トレーニングは厳しいものとなるだろうが、合宿独特の高揚感が部屋を包んでいた。
そして、待ちかねていたと言わんばかりに芦毛で長身なウマ娘がはしゃぎ出した。
「おっしゃー!!! 今年もついにワクワクドキドキウキウキガクガクのSUMMER(めっちゃ良い発音)がやってきたぜい!!! ふっふっふっ……皆のもの慌てるでない慌てるでない、分かっておる分かっておる。ゴルシちゃんのエキゾチックかつエキセントリックな一夏の計画を遂に実行に移す時がやってきたのだああああ!!!」
「そうだ、ゴールドシップ。お前に渡すものがある。両手を出せ」
と、ナリタブライアンがテンションが有頂天に達したゴルシに唐突に呼びかけた。
「お、なんだなんだブライアンちゃん。告白の手紙は手渡しじゃなくて下駄箱に入れるもんだぞ〜」
と、ゴールドシップが素直に両手を出すと
ガチャン!!!
「……………………へ?」
ゴールドシップの両手首にメチャクチャにゴツい手錠がかけられた。鎖に繋がった紐がナリタブライアンの手元まで伸びている。
「生徒会権限で、合宿中はトレーニングの時以外は私がお前を拘束することになった。理事長にも通達済みだ。大人しくお縄についていろ」
ゴルシはポカーン(o . o)とした顔で手元を見つめている。マリンは驚いた顔をして、他のメンバーは「ああ、ついに……」と納得している様子だった。
「え、ちょ、ブライアン。これガチのヤツじゃねーかッ!!!」
ガチャガチャとゴルシが力を込めて外そうとするが、壊れそうな様子は一切ない。
「機動部隊がウマ娘の拘束に使う専用品らしい。会長がシンボリ家のツテで特別に借りてきたそうだ。普通の手錠だとお前なら破壊しかねないからな。諦めろ」
ガーン!!と効果音が聞こえてきそうなくらいあんぐりと口を開けたゴルシを見て、マリンが隣に立っているサイレンススズカに尋ねる。
「ゴルシさんって、前に何かしたんですか?」
「うーーん……何もしていない時の方が無いと言うか……去年の合宿でも、今年の春の学園祭でもちょっとね……」
と、彼女は困ったような笑顔で答えた。そうしたらゴルシが慌てた様子で言う。
「ま、待ってくれ、ブライアン! 今回は違う! みんなには迷惑をかけるつもりはないんだ!」
「信じられるか、今までの自分の行いを鑑みてみろ」
「ほ、本当だって!! むしろ、チーム『シリウス』みんなの助けになる計画なんだ!! アタシを信じてくれ!! 頼む、みんなアタシの話を聞いてくれよぉーー!!」
ゴルシが周囲の気を引く。しかし、ブライアンの表情は冷徹だった。生徒会メンバーとして毎回振り回されている経験上、仕方のないことだが。
「ま、まあまあ、ブライアン。話だけでも聞いてあげていいんじゃないかな? 流石にちょっと可哀想な気がしてきたし……」
ウイニングチケットも困ったような笑みを浮かべて提案する。それを聞いてブライアンはため息をつく。
「はぁ……しょうがないな。一度だけ弁明の機会をやろう。下らない事を言ったら……分かるな?」
ドスの効いた声でブライアンは言った。背後にゴゴゴゴゴと黒いオーラが見えそうだ。
「恩にきるぜ、チケゾっちゃん!!! なあ、みんな聞いてくれ……」
ゴルシが部屋に居るシリウスメンバー全員に語りかける。いつになく真剣な声色に何かを感じて、皆が彼女を見つめる。大部屋の中が奇妙な静寂に包まれた。
「マックイーンとトレーナー……あの2人、焦れったいと思わねえか?」
「「「「「…………は?」」」」」
………
……
…
「えっと、つまり……ゴルシはマックイーンの恋を応援したい……ってことなのかな?」
ウイニングチケットがその沈黙を破って言った。
「そう、そーなんだよ! みんなも分かるだろ!? マックイーンの奴、あれでトレーナーへの恋心を隠し通せてると思ってるんだぜ? トレーナーと話してる時なんか、あんな蜂蜜を蒸発させたみたいな空気を撒き散らしてるのクセによ!」
チームメンバーは皆心当たりが有り過ぎた。恋に疎いマリンさえも、マックイーンがトレーナーに特別な感情を抱いているのは察していた。
「えええええ!!! マックイーンさんって、トレーナーさんの事が好きなんですか!?」
スペシャルウィークを除いて。
「スペちゃん……」
スズカが何とも言えない表情で呟いた。
「うん……ライスも気付いてたよ? だってマックイーンさん、ライスがお兄さま話してたら、時々すっごく睨んでくるし……」
話すだけならまだしも、それはよく抱きついているからである。
「あはは、そーだねー。分かりやすいよね、今日みたいにトレーナーの隣には絶対にマックイーンが居るしねー」
チケットがそう言うと、うんうん!と前髪ぱっつんウマ娘たちも頷いて言った。
「マックイーンさん、絶対トレーナーさんの事、好きですよ!」
「恋する乙女って雰囲気バリバリですもん!」
「というか、トレーナーもアレで何で気付いてないの……?」
重賞挑戦組も、三者三様に思うところがあったようだ。
「そうだろう、そうだろう! だからよ、今年の合宿でマックちゃんの背中を押してやろうと思ってたんだ、アタシは。早えーこと決着つけて貰わねえとよ、焦れった過ぎて謎の勢力にトレーナー室を『〇〇しないと出られない部屋』に改造されかねないぜッ!!!」
ゴルシが皆の反応に満足そうに頷く。しかし、ブライアンはまだ疑心暗鬼といった様子だった。
「まだ信じられんな。マックイーンの事については本当だとしても、お前ならそれにかこつけて他に何かやらかしかねないだろう」
「なっ、ブライアン! マックイーンの恋を応援する以外の事はしねーよ、絶対に! ゴルゴル星の創造主に誓って! だから手錠を外してくれよお!」
「なぜそう言える?」
ゴルシはスゥーと息を吸い込む。
「マックイーンがあたふたしてる姿を眺めること以上に面白いことなんて……ある訳ねえだろうがあぁぁぁぁぁ!!!(迫真の顔)」
その迫力に周りのメンバーもたじろいだ。
「な、なんか凄い説得力だね……」
「ゴ、ゴールドシップさんが言うと特にですね……」
チケットとスペが目を丸くしていた。さしものブライアンも、その力強い言葉に判断を迷っている様子だった。すると、鈴のような声が部屋に響く……
「……いいんじゃないかしら、ブライアン。ゴールドシップを離してあげても」
そう言ったのはサイレンススズカだった。ブライアンも意外や意外といった表情で驚いている。ゴルシは涙を浮かべて笑顔になる。
「ス、スズカ〜〜〜!!!(泣)」
「私も、マックイーンとトレーナーさんのことはずっと前から気になっていたの。あの2人、トレーナー室で何回も何回も飽きずに同じような会話をして、甘〜い空気を漂わせてきて…………糖尿病になっちゃいそう……」
なんだか遠い目でスズカは語る。それについてはブライアンも思い当たることがあった。
「……むぅ……確かに、あれさえなければトレーナー室を昼寝スポットにしてもいいとは思っていたが……」
ピコーン!とゴルシがこれぞチャンスだとブライアンに詰め寄った。
「そうだろそうだろ、ブライアン! あの2人がくっつけばチーム全員が助かるんだぜ! だぜだぜだぜだぜ! なあ、お前らもそう思うだろ!?」
まあ……そうだね、といった顔で皆が頷く。周囲を見渡したブライアンは目を瞑ってしばし考える。そして……
「…………………………はぁ……仕方ないな、手錠は外してやる。ただし、監視はさせて貰うぞ。後、その計画とやらを包み隠さずに教えろ。少しでも違う事をしたら、今後の自由は無いと思え」
ブライアンはポケットから鍵を取り出すと、ゴルシの手錠をカチャリと外した。自由になった彼女は床に膝立ちになって天を仰ぐようなポーズをした。さながら「〇〇の空に」って映画のポスターのようだ。
「はぁ〜〜〜〜〜、シャバの空気は美味いぜ〜〜〜〜〜!」
「おつとめご苦労様です、ゴルシさん」
数分間の刑期を終えたゴルシにマリンが労いの声をかけた。
「で、その計画とやらは何だ?」
ブライアンが腕を組んでゴルシに詰め寄った。獲物は逃さないという猛禽類のような眼だ。マリンは一体あの芦毛のウマ娘は過去に何をやらかしたのかが気になった。今度クラスメイトにでも聞いてみるか、と考えていた。
「よーくーぞー、聞いてくれたあー! 564兆パターンのプランを考えたが、ここは単純明快スィンポーイズベストな手で行くべきだとお告げが来た! たった今!」
「へぇー、どんな計画なの? アタシ、ちょっとワクワクしてきた!」
チケットが目を輝かせ始める。人の色恋沙汰を眺めるのは楽しいもので、年頃のウマ娘たちもそういうものに興味を持つのは当たり前である。スズカも実は内心ちょっぴりワクワクしていた。
「その要となるのは…………お前だああああ!!! お前が、トレーナーを落とすんだああああ!!!」
ビシィィィッ!!!っとゴルシが謎のポーズと共に指をさす。皆の視線が一斉にその方向を向くと…………
「………………………え?」
ゴルシの指と皆の視線の両方にさされた、腰に緑のパーカーを巻いたジャージ姿のウマ娘はポカンとして呟いた。
………
……
…
「〜〜〜〜♪」
そこは旅館から少し離れたビーチにある小さな海の家。メジロマックイーンは上機嫌に鼻歌を歌いながらパラソル付きの円テーブルに着席する。頭には軽い変装のためなのか、どこかのプロ野球チームのキャップを被っている。
目の前にあるのは焼きそばとメロンソーダフロート。お嬢様が食すもののイメージとはかけ離れた組み合わせである。しかし、マックイーンはウキウキとした様子でそれらを眺めている。
「ふっふっふ……私も成長したのですわ。以前の私ならば、甘いものをこれでもかと注文していたでしょう。しかし、焼きそばのような塩っぱい食べ物をお供とする事で、真に甘味を楽しめるのだと学びましたわ! さながらスイカに塩をかけて食べるが如く!」
合宿でこのようにこっそりとスイーツを楽しむのは、彼女の毎年の楽しみなのであった。トレーナーは他のチーム担当と話をするために、ミーティングの後に別行動を取っていた。そしてマックイーンは帰りの足で海の家までやってきたのだった。
「まずは焼きそばを一口……」
パキンと割り箸を割り、お嬢様は焼きそばを啜る。その仕草には育ちの良さが表れており、隠しきれない気品が漂っていた。食べてるのは屋台の焼きそばなのだが。
焦がしソースの濃厚で香ばしい風味が口一杯に広がる。野菜と肉の旨味が麺と絡み合って、噛むごとに幸福感が増していく。ジャンクな油っこさが更に食欲を刺激する。
「ん〜〜っ、イケますわ〜!」
メジロ家の令嬢ならば、庶民とは比べ物にならない良質な食事を摂っているはずだが、トレセン学園に通ううちに庶民の味にも親しみを覚えるものだ。それは他のメジロ家のウマ娘も同じだった。
彼女は続けて焼きそばを啜って味わう。それを飲み込んでから、一息ついてメロンソーダフロートに手を伸ばす。
ちぅ〜〜とストローでソーダを吸うと、炭酸が口の中の油っぽさを洗い流してくれる。そして、スキッとした果実の風味が立ちのぼる。
焼きそばとメロンソーダは食い合わせが悪そうな印象もあるが、海風と波の音、白い砂浜に青い海を眺めながら食べると、そのようなことなど瑣末なことだった。絶好のロケーションはどんな食べ物にも調和をもたらしてくれる。
最後に先がスプーンのように開いてるストローでバニラアイスを掬ってパクリ。食事中にデザートを食べたような、ちょっとした背徳感がマックイーンの気分を更に高揚させる。口の中でクリームがとろけて、身体中に幸せが広がっていく。
「〜〜〜〜〜ッ♡」
パタパタと耳と尻尾が動いて、お嬢様は本当に美味しそうに甘味を楽しんでいる。その愛くるしさは『白まんじゅう』と形容すれば伝わるだろうか?
そんな幸せ空間な円テーブルに1人のウマ娘が近付いてきた。あまりに幸せそうに食べているその様子に、そのウマ娘はマックイーンに話しかけるのを躊躇したが、意を決してに声をかける。
「あの……マックイーンさん!」
ピクン!と耳が立って、マックイーンが横を向く。そこには、チーム『シリウス』で1番後輩のメンバーが立っていた。
「マ、ママママ、マリンさん!? どうしてここに!?」
マックイーンは後輩にこの密かな楽しみを見られてしまったことに動揺していた。
「マックイーンさん……お食事の邪魔をしてしまって申し訳ありません。ですが、どうしても相談したいことがあるのです。お話……よろしいでしょうか?」
マリンの真剣な表情に、マックイーンは少し落ち着きを取り戻した。ここは先輩として彼女の助けになることの方が優先だろう。
「……ええ、勿論ですわ。何やら真剣なお話のようですわね。どうぞおかけ下さい、マリンさん」
はい……失礼します、とマリンはマックイーンの正面の席に腰掛ける。潮風が2人の髪を優しく揺らす。
「それで……ご相談とは一体どのような? 私でよろしければ、お力になりますわ。可愛い後輩の為ですもの」
優雅な雰囲気を崩さぬまま、マックイーンはメロンソーダフロートを一口飲む。彼女はこの勢いで自然体の雰囲気で貫き通すと決めた。先輩の余裕を見せる時である。
そしてマリンは、躊躇いがちに口を開く。
「……マックイーンさん、実は私……トレーナーさんの事が……好きなのです」
「ブッフォッッ!!! カホッ、ケホッ!!!」
マリンの言葉を聞いた瞬間、マックイーンは激しく吹き出して咳き込んだ。先輩の威厳はその辺に飛んでいった。
「だ、大丈夫ですか、マックイーンさん!?」
「ケホッ! す、すみません……ちょっと炭酸が喉にかかってしまいましたわ、オホホホホホホ!」
マックイーンは設置された紙ナプキンで口を拭った。
「そ、そうなのですか。え、ええ、私もトレーナーさんの事は、す、すす、すすす、好き……ですわよっ! もちろん、頼れる指導者としてっ! 昔とは見違えるくらい頼もしくなりましたしっ! 既にベテランと称しても差し支えないですわよね! マリンさんも、そのような感じでおっしゃってるのでしょう? 全く、先輩をからかうものではありませんわよ」
マックイーンの尻尾が動揺でブルブルと揺れている。マリンはそんな彼女に追い討ちを仕掛ける。
「いえ……違うんです、マックイーンさん。私、トレーナーさんのことが……い、異性として……その……好きって……ことなのです……」
言っていて恥ずかしくなったのか、マリンは顔を赤らめていた。その様子はマックイーンからはしっかりと『恋する乙女』に見えていたのだった。
マックイーンの手はガクガクと震えていて、そのまま落ち着きを得ようとメロンソーダを飲もうとする。
「そ、そそっ! そ、そうだったのですかっ!? ま、全く気付きませんでしたことよ! お、おほほほ! あ、あれ? 吸えませんわね?」
「……マックイーンさん。ストローでは焼きそばは食べられないと思いますが……」
マックイーンは気付かずに揺れた手で焼きそばにストローを刺して吸っていた。それを見たマリンは罪悪感に襲われる。
(う……マックイーンさんが凄く動揺してる……でも、これも彼女の為だ。恥ずかしいけど、役目はこなさなくては。これも日頃の恩を返す為……!)
そんな2人の様子をチームメンバーが少し離れた木陰から覗いていた。ピョコンピョコンと1人ずつ段差のように顔を出している。
「……マックイーン、凄く動揺してるわね」
「あんなマックイーンさん、ライス見たこと無いかも……」
サイレンススズカとライスシャワーが小声で呟いた。残りのメンバーも興味深そうに成り行きを見守っている。ただ、ゴールドシップだけは腹を抱えて声を押し殺して爆笑して転がっていた。
「ヒィーー、ヒィーー!(笑) 焼きそばに……ストロー……ッ!!!(笑) 流石、マックちゃんだぜぇ………ッ!!!(笑)」
ゴルシはバスバス!と涙目で砂場を叩いていた。非常に楽しそうである。
「はぁ……全く……」
ナリタブライアンはそんなゴルシに呆れながらも、マックイーンとマリンの方を気にしていた。彼女は数十分前のことを思い出す……
…
……
………
「私が……トレーナーさんを落とす……?」
「そうだ、マリン! お前が恋敵となることで、マックイーンの恋心を刺激するのだ! 1番後から入ってきた後輩が愛しのトレーナーを奪おうもんなら、いくらマックちゃんでも黙っていられないはずだぜ!」
ゴルシの作戦に大部屋の中に居るウマ娘たちはなるほど、と頷く。聞く分には、ゴールドシップにしては意外とまともな案のように思える。
「それだけじゃないぞ! この作戦の肝はな……マックイーンにもマリンの恋の応援をさせるって事だ!」
スペシャルウィークがポカンとして、ゴルシに質問する。
「えっと……どういう事ですか? 恋敵なのに応援させるって……?」
「ふっふっふ……マックイーンはアタシたちには自分の気持ちを気付かれていないと思い込んでいる。それを利用するのさ」
ゴルシはニヤリと笑う。
「つまり、筋書きはこうだ。マリンがアタシたちチームメンバーに恋愛相談をしたって事にする。アタシたちはマリンの恋を応援する為に色々と手を尽くすんだ。そこにマックイーンも後輩を助ける為だと言って協力させる。マリンがトレーナーにトレーニング中にスキンシップを図ったり、休憩時間に2人きりにさせたりするんだ」
ふむふむ、とスペが頷く。そして、ブライアンがゴルシに向かって言う。
「……なるほどな。マックイーンは自分で自分を追い込むことになり、相当なプレッシャーがかかる、ということか。だが、それだけか? お前にしては大人しすぎる作戦だが、本当の目的は何だ?」
キリッとした顔でゴルシが振り向く。
「ゼロ距離でマックちゃんが慌てふためく姿を観察できる!!!!!」
そして、スパッと言い放った。ブライアンは呆れたように頭に手を当てた。
「全く……趣味が悪いな。お前、そのうち地獄に落ちるぞ、ゴールドシップ」
「ケッケッケ! なーに言ってんだ。それが最高に楽しいんじゃねーか!!! あっはっはっはっは!!!」
ゴルシが腰に両手を当てて大笑いする。それを見たサイレンススズカがクスッと笑う。
「でも、ゴールドシップ……あなた、本当はマックイーンに幸せになって欲しいだけでしょう? あなたはいつも彼女の事を、誰よりも気にかけているし」
ピタリとゴルシが止まる。そして、慌てたように目が宙を向く。
「べ、別にそんなことはねーぜよ!? ただマックイーンが色んな顔をするのを見てて飽きないだけと言うか、アタシが勝手に楽しんでるだけダゼ!?」
「フフッ、そう言うことにしておくわ。私もちょっぴりだけ、楽しくなってきたもの」
スズカは楽しそうに微笑んだ。
「で、でも……マリンさんはいいの? そんな恋敵の役割なんて、大変そうだよ……?」
ライスシャワーがマリンを気遣う。やっぱり優しい子だな、とマリンは思った。実際は彼女の方が年上なのだが。そして、マリンは再び皆の視線を浴びる。
「……マックイーンさんには、どれほどお世話になったのか、言葉で言い尽くせません。もちろん、ゴルシさんや皆さんについても同じです。少しでも恩返しを出来るのなら……このマリンアウトサイダ、不肖ながら『恋敵』の役割を引き受けさせて頂きます!」
マリンがそう言うと、チームメンバーは皆良い笑顔で頷いた。マックイーンの恋の成就の為、皆が一丸となった瞬間だった……
………
……
…
場面戻って、マックイーンとマリンがパラソルの下で向かい合って座っている。
マックイーンがストローをキュポッと焼きそばから外した。
「こ、これは、私とした事が……夏の暑さに少しのぼせてしまってましたわねっ! おほほほほほほほ」
「……それとこの事なのですが、他のチームメイトの皆さんには伝えてあります。マックイーンさんが最後なんです」
「えっ……?」
と、呟いたマックイーンの背後から長身の芦毛ウマ娘が飛び出して、突然ガバッと肩を組んだのだった。
「ハッハッハッハッ! そうだぞ、マックイーン、聞いたか〜〜〜? マリンの奴、トレーナーにゾッコン(死語)なんだとよ! こりゃー、先輩として一肌でも五百肌でも脱いであげなきゃ駄目だよな〜〜〜? ブライアンやスズカたちも、みーんな協力するってよ! 後輩の淡〜い恋心、アタシたちで応援してあげようZE☆」
「えっ……えええええええええええええ!?」
マックイーンの驚嘆の声が遠くで見ていたブライアンたちにも聞こえてきた。
チーム『シリウス』の夏は、始まったばかりだった。
アプリの次のメインストーリーでも、『シリウス』出てきてくれたら良いなぁ…………
ちなみに拙者、ラブコメはメインヒロインよりサブキャラの恋愛の方が大好物侍に候
あと、投稿話の順番をちょっといじりました。内容に変更はございませんので、引き続きよろしくお願いします。