とある海軍の未元物質   作:プックプク

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大分遅くなってしまってすみません。

言い訳になりますが、元々一つとして書いていましたがあまりにも長くなりすぎてしまったため二つに分けたら、今度は文自体が少なくなってどうしようかと悩み続けてしました。

そのため少し内容は浅いかもしれませんがご容赦ください。

その代わり今週中にもう一本出しますので勘弁してください。

異能等級線が勝てない、心が折れそうだ。




第四話

 

雲一つなく、見渡す限りが青空の下。遮るもののない太陽があり、波も穏やかで航海するのに最低限の風が吹いている。偉大なる航路の中では滅多に無いような天候の今日という絶好の航海日和の日に、垣根は自分の所持している軍艦ではなく、別の海兵の軍艦の上にいた。

 

 

「だるいな。やっぱり来るんじゃなかったぜ」

 

「あなたは誘われたからいいじゃない。何で私も着いてこなくちゃいけないのよ」

 

「そういうな。お前ら二人ともどうせ暇しとるだろう」

 

「別に俺は暇じゃねぇ。他のヤツと違ってやることなんざ次から次にくるんだよ。てか実家に帰るぐらいだ。アンタの方こそ暇ってことには変わらねぇだろ。ほら王手だ」

 

「ナニッ!?先程までは儂が優勢じゃったはずだが」

 

 

天気がいいから気分が上がるかと聞かれれば、間違いなくNOと答える垣根からしてみれば、こんな日は嬉しい気分になるはずもなく。

 

かといって別の天気であったとしても、垣根の心情に変化を与えることはない。その日の天気で一喜一憂できるほどの純真さなど、偉大なる航路だろうとどこだろうとも、初めから持ち合わせてはいない。

 

圧倒的存在感の眩しすぎる太陽に不機嫌さを露にしながら、無造作に放出される未元物質の量を少し増やし形を傘のように変えることで紫外線を遮断しながら、自分の軍艦に載せているサマーチェアを持ってきていたこと、現在進行形でその上に座りながら過去の自分に感謝をしてもいいだろう。

 

ついでにと、自分の船でもないためやることなど何もないだろうと考え、暇潰しに持ってきていたチェス盤を広げて一人でチェスをすることで時間を消費していた。

 

自分で自分の相手をするため片方へと感情移入することなく、その手を指す時には常に最善の手を指し続けるため、ノータイムでやっているのにも関わらず、対局に掛かる時間は相当に長い。

 

そこに自分もやらせろと、軍艦の持ち主であるガープが割り込んできた為に、余計に話すのも面倒だと思った垣根は大人しくガープと対局していた。

 

垣根も海美も、普段通りのホストのようなスーツと真っ赤なドレスであったが、垣根は今日は休みであるためカモメマークのコートを羽織ってはいなかった。

 

それは垣根と対面のガープも同じであり、ラフなTシャツと半ズボンという格好であり、さらに言うならば普段の任務中にはいつも着けている犬のような被り物も、今は休みということもあって部屋の中に置いていた。

 

自分の盤面と垣根の盤面を何度も見返しては、難しそうな顔で自分の駒に触っては離すを繰り返し、どうすれば現状を打破できるかと頭を働かせるガープであったが、対局を始めてからそう時間が経っていないにもかかわらず、戦績は五戦全敗であった。

 

今回こそは勝利をと毎回意気込んで対局に挑んでいるものの、孫と同じ年齢の垣根に手も足も出ず追い込まれている。

 

ちなみにだが、この後ガープがどんな手を指した所で垣根の頭の中には幾つもの勝利への道筋を立て終えているため、この対局も垣根に勝つことは叶わないのだが、それを直接伝えるような無粋な真似をすることはしない。

 

 

「別に着いていくのはもう了承したからいいけど、約束は覚えてるんでしょうね」

 

「分かってるさ、買い物に付き合えってやつだろ」

 

「ならいいわ。どの新作のバッグを買ってもらおうかしら」

 

「おい、少しは遠慮しとけよ」

 

「イヤに決まってるでしょう。私の休日を奪ったんだから、そのぐらいの覚悟はしてたはずよ」

 

 

穴が開くほど自分の盤面を見続けて唸るガープを余所に、垣根の横で同じ種類のサマーチェアに寝転びながら、横で絶賛繰り広げられている対局には興味を持っていない海美は、ブランド物が特集された雑誌を読みながら垣根へと釘を刺す。

 

ガープに直接誘われていた垣根はともなく、その場におらず誘われてもいなかった海美は、本来ならばガープの帰省に来る予定も無かったはずなのに同じ軍艦に乗っていた。

 

垣根が休みであったように、垣根の直属の部下である海美も今日からは同じように休みであったため、本来ならばマリンフォードの街の一角のショッピング街で買い物をしている予定であった。

 

だがそれが急遽、垣根がガープと共に東の海に行く日が近づいてきた頃に、ガープに他に誰か連れてこいと言われたことが原因であった。その時に垣根の頭の中に思い浮かんだのが海美であったため、無理矢理連れてこられたのだ。

 

当然ながら海美としても、休日を潰してまで垣根と共に行く理由は何もないため断っていた。それが東の海ならば尚更であった。

 

その代わりとして今度の休みの日に、垣根が荷物運びとブランド物を買うという交換条件の下、今回の休日に同行するという取り引きは決着が着いていた。

 

何故自分が時間を奪われるのかとも思ったが、東の海に行ってる間中ずっとガープに文句を言われるのと、荷物持ち兼財布とはいえ一日だけ潰れるのならばと考えたとき、後者を選んだ結果であるため、ある意味仕方ないことである。

 

休日がプラスで一日潰れるということになってしまうが、そこは必要経費だと割りきれば、気持ち的にもまだ楽であった。

 

ガープに頼まれたからとは言え、自分の都合を押し付けた結果であることは理解しているし、他の海兵と比べても金は腐るほど貯まっているので、その点に関しては垣根は既に気にしていない。

 

そんな理由があり、海美が巻き込まれたことは垣根のせいであるが、ガープが他に連れてくるように頼んだのは、一人よりも二人いた方が孫も興味をより強く持つかもしれないという、ガープの爺心が発揮されたからこそ。

 

連れてくる相手を指定しなかったのも、きっと垣根ならば同年代の海兵を連れてくると思っていたため。端から見れば、垣根と共に行動していることが殆どであるため、ガープも共に連れてくるのは海美だと予測していたようだが。

 

そんな少しの計算も全て、孫を思うガープの優しさは評価されるべきことかもしれないが、それが他人の事情にも少しばかり配慮してから実行していれば、なおのこと文句は無かったことだろう。

 

だがそれを自由人の塊のようなガープの家系に求めることは酷であるかもしれないが。

 

 

「そういやアンタの息子は革命家のドラゴンだったよな」

 

「ん?そうじゃがそれがどうかしたのか」

 

「だったら何で東の海に帰るんだ。確か革命軍の本拠地は偉大なる航路のどっかだって聞いたはずだから、戻ったところで誰もいないだろ」

 

 

始まる前から勝利はほぼ確実であったが、数手指しただけで結果は磐石なものとなったため、既に垣根の意識はチェスから別のものへと向いていた。

 

例えばそれは、ここまできても聞かされていない、今回のガープに連れてこられた理由など。

 

実家への帰省だとしても、革命家のドラゴンが東の海の島にいる可能性は限りなくゼロに近いが、いたらいたでそれは大きな問題となるだろう。

 

海軍の中でも一部の者しか知らない事実であるが、ガープの息子の名はモンキー・D・ドラゴン。世界政府転覆を目論む巨大組織、革命軍のトップを勤める、世界政府的に見れば立派過ぎる犯罪者である。

 

当然ながら情報を重視する垣根は既に知っていたことであるが、何も知らないような民間人や海兵が知れば驚きに包まれることだろう。

 

それほどに、ドラゴンという犯罪者と英雄ガープは結び付かない存在である。

 

海軍の英雄の息子が世界最悪の犯罪者など、それこそ世間を騒がせるビッグニュースだ。世間に知られるようなことがあれば、その結果としてガープが即刻海軍を辞めさせられる可能性だって十分にある。

 

わざわざ休暇を潰してまで来ている垣根からしてみれば、そんな普段の任務よりも面倒だと思うようなことが、わざわざ休暇にやって来た東の海で起こるなど堪ったものではない。

 

もしもガープが家にドラゴンが居ると言ったなら、海美を連れて軍艦を飛び出し、即刻海軍本部へと飛んで帰宅し、センゴクへとドラゴンの情報を渡して後のことは丸投げしていたところだ。

 

その後にはセンゴクの心労はさらに貯まるであろうが、垣根はきっと気にしないだろう。

 

 

「言っとらんかったか、家族なら孫がいるぞ。今日はその孫に会いに来たんじゃからの」

 

「ほーん、英雄ガープに孫ねぇ。そいつはまた荒れそうなニュースだことで」

 

「確かに驚きね。世界的な犯罪者に奥さんがいたなんて」

 

 

垣根の質問でガープはようやく、今回の実家帰りの目的を話していた。ガープもわざと隠していたような深い理由などなく、シンプルに忘れていたからここまで話題にすら挙げていなかった。

 

だが聞いていなかった二人からしてみれば初耳の情報に驚いていた。言葉だけ切り抜けば冷静に見れるかもしれないが、珍しく二人とも驚きの顔を浮かべているのがその証拠。

 

ドラゴンは世界的有名人であるため、その素性を調べる仮定でガープの息子だと知ったのだが、幾ら垣根であったとしても、人となりを知りたかっただけであり、興味もなく調べていない情報を知ることなど出来やしない。

 

もしドラゴンに妻や子供がいるといった事情を知っていれば、それがどこの誰かまで特定していたことだろう。

ガープに止められることは確実であるが、家族を人質としてドラゴンとの交渉のカードに使うなど、活用法は様々である。

 

正義の味方である海軍ならばそこまでやらないと思われるようなことも、垣根は平気で行えてしまう。

普段は民間人に無闇矢鱈と傷付けるようなことはしないが、相手によっては別の話。それほどの相手だと認識しているからこそ、やれることは全てやるし、事前の準備は入念に行い、何なら戦いが始まる前に勝利を掴んでいるという状況がベストである。

 

そのためガープの孫の存在など初耳であった。

 

 

「そうじゃカキネよ。物のついでということでルフィに能力の使い方を教えてやってはくれんか」

 

「はぁ?何で俺が誰かも知らねぇ奴のために、態々時間と能力を使わなくちゃいけねぇんだよ。てかアンタの孫は能力者なのかよ」

 

「そう言わず頼むぞ。ルフィが食った悪魔の実は超人系の実なんじゃが、参考にできるような人間は周りにいなくての。自己流で鍛えとるが、ワシから見ればまだまだ弱いんじゃ」

 

「ならアンタが覇気でも教えりゃいいじゃねぇか。気に食わねぇけど覇気の強さは海軍トップだろうが」

 

「そうしたいんじゃがワシもそこまで暇じゃないんでな。それにルフィが鍛えたいのは能力じゃ。そこはルフィの意思を尊重してやりたい」

 

 

ボンヤリと空を見ているガープは孫のことを思い出しているのだろう。そんなガープに対して何故か垣根は、苦虫を噛み潰したよう顔をしていた。

 

誰かの思いやりに心動かされるような優しさを垣根が持っていることもないが、ここで適当にガープの頼みを無下にすることもできない。

 

数こそそこまで多くはないが、海軍の中でも垣根以上の覇気使いはいる。その内の何人かは全盛期を遠く過ぎたハズの老人達でもあり、その内の一人がガープである。

プライドの高い垣根からすれば、その事実は許されることではないため、毎日のごとく覇気においてもさらなる向上をと模索している。

 

三大将と同様に、優先して能力を重視して鍛え上げてきた垣根であるが、だからといって覇気を鍛えることを疎かにしたことはなかった。

 

実体を持たない自然系の悪魔の実の能力者には、覇気を纏うことで実体を捉えられるようになるため、少将以上の階級の海兵は必ずと言っていいほどに覇気を習得することで、自然系の能力者への対抗策としている。

 

覇気を使うことができない場合、相性が良かったり弱点を突かなければ、まともに戦うことができないのが自然系の能力の特徴であり、自然現象と同一視されるほどの出力も超人系の悪魔の実の比ではないため、一海賊団を潰すことなど容易いほど。

 

だが垣根の未元物質はその枠に囚われることはない例外であるため、覇気を使うことなく、未元物質でもって大抵の自然系や超人系の能力者であろうと捉えられることができる。

 

そのため垣根の中では鍛える優先順位の上位が能力となっていたため、覇気は疎かにはしていなかったが後回しになることが多かった。

 

武装色の覇気を覚える初歩的な理由こそ垣根には無かったが、それでも覇気を覚えた際のメリットは大きいし、何より能力以外の戦闘手段の確立は一つのテーマでもあった。

 

持てる手札は多ければ多いほど、使えるものは何でも使い、想定されるありとあらゆる状況に対応できるようにするために、能力に絶対的な自信持っていたとしても、何でもやることを至上としている垣根からすれば、覇気を習得することは必然であった。

 

 

「一応聞いとくがお前の孫、名前はルフィとか言ったか。そいつの食った悪魔の実はなんだ」

 

「ルフィの実か。確か…ゴムゴムの実のゴム人間だったはずじゃ」

 

「ゴムゴムか。つまりはゴムの伸縮自在人間って所だな。ソイツはまた使い勝手が悪そうだが応用が効きそうな代物だな」

 

「そうか!やっぱり流石はワシの孫じゃなぁ」

 

「別に誉めたつもりはねぇけどな」

 

 

自分の孫を誉められたと思って機嫌を良くしているガープであるが、別に垣根は言葉の通りルフィなる少年を誉めたわけではない。ルフィの食べたゴムゴムの実に興味を持っただけである。

 

少なくともルフィという人には一切の興味を持っていない垣根であるが、孫の師事をしてもらおうとしているガープの選択は間違っていない。

 

垣根は海軍の中でもっとも悪魔の実の能力を使いこなしており、その力は今もなお成長を続けていることを加味してもである。

 

それこそ三大将や元帥であるセンゴクと比べても、こと悪魔の実の能力の応用性という一分野だけでいえば、垣根は海軍では最優であると断言できる。

 

だがそれは才能などという一言で片付くだけのものではない。類いまれなる努力の成果であった。

 

確かに未元物質という物質は応用力が高く、戦闘面や日常においても役に立つような幅の広い能力であるが、それは垣根の頭脳が合わさってこそ初めて成り立つ結果である。

 

過去の資料によれば、垣根よりも以前においてマタマタの実の使用者はおらず、いたとしても使いこなせるものは先ず居なかっただろうと、悪魔の実の研究者達の間では結論付けられている。

 

それだけマタマタの実によって発生する、未元物質という代物は厄介すぎた。

 

前提としてであるが、垣根の食べたマタマタの実は、未元物質というこの世界に存在しない物質を造り出すという超人系の能力である。

 

だがそれを初見で理解できる者はいるはずもない。それは垣根も例外ではなく、能力を発現したばかりの頃は、背中に生えてきた翼で攻撃するや、未元物質で剣や槍などを作って飛ばすなど、お世辞にも未元物質を使いこなせているとは言えなかった。

 

それでも十分戦えていたが、垣根自身も未元物質という物体の形状を変化させているだけで、生み出した物質そのものを操れていないことを理解していたため、その状況に納得などしていなかった。

 

垣根が未元物質を使いこなせる切っ掛けとなったのは、稀代の天才Dr,ベガパンクとの共同研究が切っ掛けであった。

 

自分でも独自に研究していたものの、当時の垣根はまだ階級も低く、大規模な研究施設も所持していなかった。自分で用意した研究施設では、とてもではないが未元物質という未知の物質を研究するにも、ましてやマタマタの実の新たな能力の使い道を開拓するにも、設備や資金も含めて不十分であった。

 

そのため垣根は自分と同等、もしくはそれ以上の頭脳を持つ天才であるDr,ベガパンクと取り引きを行い、未元物質の研究に対しての協力を得ることにした。

 

その代わりに未元物質の定期的な提供や、他にも誘拐や暗殺などの裏仕事をする必要があったが、その程度のことで済むならばと垣根も了承したため、二人の天才による共同研究が始まった。

 

垣根の所持していた小規模な実験室とは異なり、Dr,ベガパンクとの共同研究のために用意された研究施設は海軍本部によって準備されたものであり、二人の要望も合わさって最新鋭の設備が集められた。

 

垣根もその当時は緊急の任務でもない限り研究施設に籠りっぱなしであったし、Dr,ベガパンクも急を要されるようなことでもない限り、未元物質の研究に掛かりっきりとなった。

 

お互いの頭の良さもあり足の引っ張り合いになるようなこともなく、苦痛なく研究は進んでいったからこそであり、二人の性質が合っていたことも、長時間の研究が可能となった要因であった。

 

つまり二人の波長はベストマッチであったということ。

 

そのため結果が出るのもそう長くは掛からなかった。

 

分かったことは、未元物質という物質が一切の未知であるということ。これまでの科学の歴史において発見されてきた、既存の物質には一切当てはまらない新物質ということだけは解明された。

 

だが全く収穫が無かった訳でもない。

 

未元物質が分子や原子よりも小さな、世界を構築する最小単位の物質である素粒子であると知ってからは、より精密で細やかな能力の運用方法を考えたことで、より精密な構築をできるようになり、強度そのものの引き上げなどにも繋がった。

 

さらには、未元物質がこの世界に存在しない素粒子であるという情報を元に、垣根は未元物質にのみ適用する既存のモノとは異なる法則性を導き出した。

それは太陽光の屈折に干渉し、本来ならば無害であったものを有害に変えるなり、放射能に汚染された物質に浸透させることで無害化するなど、未元物質の可能性は異常とも言えるほど多岐にわたる。

 

つまり悪魔の実の能力が強くなるのは日々の鍛練や戦闘の中だけでなく、何気ない出来事や考え方を変えるだけで起こり得ることである。

 

垣根の場合は、それが研究施設の中であったというだけのこと。

 

 

「あー、やっぱり面倒だな。そもそも他人に教えるなんざ俺の性に合わねぇだろ」

 

「そうとも限らんぞ。他人に教えることで新たな発見があるかもしれん」

 

「それは能力自体が似通ってたらの話だろ。俺の未元物質とゴムじゃあ性質も全く違うだろ。

それに俺にメリットがねぇよ。教えるだけ時間の無駄だ」

 

「そう言わずに頼む。そうじゃ、今度ワシがお前の頼み事を聞くっちゅうのはどうじゃ!」

 

 

必死に頼み込むガープであるが、あくまでも垣根はやる気の無さそうな表情をキープしており、教える気などは微塵も持ち合わせていない。

 

ガープが垣根よりも覇気においては上の力を持っているため無下な対応はできないが、かといってそれで垣根の気分が変わるかと聞かれればノーである。

 

自分が教えたところで、ルフィという少年が自分の言葉を聞くような相手になるとは思えない。海兵や海兵見習いなら噂程度で聞いたことはあっただろうし、それならばガープが海軍本部なり支部なりへ連れていっているはずである。

 

それをしないのはそれ相応の理由があるのか、もしくはルフィが海軍には入りたくないと、ガープと共に海軍へと来ることを拒んでいるかの二択であろうと、自分の中で勝手に結論付けていた。

 

だがなによりもガープの孫なのだから、そんな自由人相手にすれば疲れそうだというのが一番の理由であった。

 

当然ガープに言った言葉も嘘ではないが、能力の方向性が違った程度で垣根が何もアドバイスの一つも出来なくなる訳がない。

 

一から研究する必要があった垣根の未元物質と、ルフィの食べたゴムゴムの実の能力は訳が違う。

 

ゴムという性質は伸縮性を持っているということに尽きるため、出来ることやその能力の応用性の範囲もある程度は予想がついてしまう。

 

大して面白くもなさそうなことであり、ルフィの能力を見たところで垣根の得られるメリットはガープに恩を売れることのみ。

 

貸しを得ることと掛かる労力を天秤にかけながら、垣根は頭の中で何度も考えるが、見つかるデメリットが面倒だという気持ちのみであるため諦めることにした。

 

 

「なら貸し一つだ。今は特に浮かばねぇけど、今度俺が頼んだ時に協力してくれるなら、アンタの孫の能力を見てやるよ」

 

「そうか!いやーお前ならばやってくれると信じておったぞ」

 

「触るな暑苦しい。ただでさえいい年したオッサンなんだぞ」

 

 

先程までのチェスをしていた時の難しそうな顔とは打って変わり、満面の笑みを浮かべながら垣根の肩へと手を回すと、背中をバンバンと叩きながら大笑いをしていた。

 

普段振り回す立場であるハズの垣根からしてみれば、何度目かの諦めかと思いつつ内心溜め息をつきながら、絶賛後悔の真っ最中であった。

 

休日であるはずなのにやけに疲れてしまうが、この先もこんな絡みや面倒事が続くのかと思うと、垣根としても先が思いやられてしまう。

 

 

「大変そうね。ま、私は関係ないことだけど」

 

「あー、大変だよ。ったく」

 

 

垣根の疲れたような表情を見て、先程までずっと黙っていた海美は機嫌を良さそうにしていたが、それに言い返すほどの気力も沸かない。

 

今は海王類の巣である凪の帯へと侵入し始めたため、この時だけでも平和であることを祈るのであった。

 

 

 





少しだけ未元物質の能力の説明をしました。もうちょっと詳しく書くのは戦闘の際にしたいと思います。

本来ならばこの話で出す予定でしたが、次の話でルフィをようやく登場させられます。
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