とある海軍の未元物質   作:プックプク

8 / 11

二月になったので久しぶりの投稿です。

ここまで遅くなったのは、話が行き詰まったのとモチベーションの 低下、それと遊戯王にハマっていたからです。

使いたいカードだと今一ランクで勝てないから迷いどころです。それも腕がないからだけなんですけどね。


それでは本編です。早く林檎を出したい。



第八話

 

コビーを連れてドーン島へと戻ると、垣根が約束を守ったからとマキノから礼を言われたり、ガープから逃げていたルフィがコビーと仲良くなったりなどもあったが、それも僅かな合間の話。

 

すぐに島を出発することを垣根が伝えると、まだ帰りたくないと、孫と一緒にいると、ガープの実年齢とは思えないような駄々を捏ね醜態を晒していた。

 

それんなガープをルフィから無理やり引き剥がし、その場をニコニコと眺めていたマキノへと頭を下げていたガープの部下によって船へと乗せられていた。

 

軍艦がドーン島を出てしばらくは、ガープも垣根を捕まえて文句を言ってたが、それも少しの間だけ。

 

垣根が行き先を海軍本部から変えることを告げて何処かへと移動すると、やる気が無さそうであることには変わりないが、だからといって反対することもない。

 

今も垣根がいないことを良いことに、垣根が持参してきたサマーチェアへと無断で寝転んでいた。

勝手に自分のモノを使われたことを許すような優しさの無い垣根なたて、見た時に蹴り飛ばしてでもどかされることになるのだが、それを気にするガープではない。

 

 

「ほーん、別に構わんぞ」

 

「ええー!?いいんですかぁ!?」

 

 

先程までのブーブーと子供のように文句を言っていたのとはうって変わったガープの姿に、コビーは軍艦の上で唯一驚きの声を挙げているが、付き合いのある人間からしてみれば何らおかしなことではない。

 

元から正義感のある人間であり、海賊相手に容赦しないのも、民間人を守るために戦うような優しさがあるのも、これまでガープと少しでも行動を共にしたことがある者ならば分かっていた。

 

仮に今回の魚人海賊団の話が本当に唯の噂話であるならば、杞憂であったと笑い話にでもするだろう。

 

だがもしも本当という可能性があるならば、垣根のように別の理由をもって動く以外にも、海兵として真っ当な正義感を持っているならば動くには十分過ぎる。そしてガープはその枠の中にいる海兵であった。

 

全盛期を過ぎ、若手を指導する道を進みながらも、今だ現役バリバリの海兵であることに変わりはない。

 

 

「儂らは海軍じゃぞ。海賊がいるなら何とかするのが仕事じゃからの。それよりお前誰じゃ」

 

「あっ、申し遅れました。僕はコビーと言います。よろしくお願いします」

 

 

コビーの自己紹介と海軍の英雄を目の前にして驚きの連続という一幕があったものの、そんなことに興味の無い垣根は足早にその場から去ると海軍本部にいる自分の部下へと電伝虫を使い指示を出していた。

 

やらなくてはいけないことは幾つかあるものの、それでも今の状況と、今からとる行動によって未来に起こりうる変化を予測しながら、優先して行うべきことのみを通話先の相手に指示をすると、電伝虫の通話先にいる相手は嫌々ながらに了承していた。

 

それも終わり甲板へと戻ってくる頃にはコビーも落ち着きを取り戻しており、ガープと話しやすい環境となっていた。

 

 

「ちなみにじゃが場所は分かっとるのか」

 

「いや分かってない。だからまずは知ってるであろう奴のいるところに行く」

 

「ほーう、もう当たりがついとるのか。相変わらず作業が早いわい」

 

「現状からの予測に過ぎないけどな」

 

 

他の誰から見ても分かる垣根の明らかな苛立ちに、コビーや他の海兵はビビっているが、そのような姿は割りと日常的にあることなので、付き合いの長い海美やガープは流していた。

 

しかし発言に関しては垣根らしくない曖昧な答えであるが、今回に関しては確信を持った答えを持っていないので仕方がない。

 

そもそもの話、東の海に魚人がいるというのがつい先程、コビーを拾った時に知ったということもあり、今こうして起こしている行動もかなり突発的である。

 

垣根が知り得ていなかったという時点で、海軍本部にはアーロンの現在地の情報はない。そのため情報を集めるにも時間が少なすぎたため、東の海の何処に魚人海賊団がいるのかは手持ちの情報というピースでもって組み立てていくしかない。

 

確かに垣根の能力、マタマタの実で作られる未元物質は万能性に優れており様々な応用が効く能力であるが、残念ながら探索力という点においてはそこまで高くはないということが、今の状況ではネックとなってしまっている。

 

普段の戦闘ならば、未元物質をばら蒔くことで周囲の観測などを行っており、その程度の規模で事足りていたが、今回のような周辺の島を探索するような広範囲の探索には未元物質はあまり向いていない。

 

そのための妥協案として今からするのは、断片的な情報から頭脳で導き出すということ。

 

垣根は先程の電伝虫で通話していた部屋から持ってきていた地図を広げながら、いくつかの場所をペンを使い差していく。

 

 

「魚人に対しての情報を集めてる俺の元に回ってこねぇてのは、明らかに塞き止めてる奴がいるからだ。

幾ら魚人海賊団の規模がデカかったとしても、自分達で人の口を止めるのには限度はある。例え出入りを封鎖していたとしてもだ。

情報を統制する上で尤も楽な方法は、集まる場所を限定することだ。当然ながら海賊についての情報だ。それが出来るのは海賊の情報の集まるポイント、つまりは海賊の対抗手段足る海軍が止めてるってことになる」

 

 

自分の知り得ている現在の情報を発言しながら、垣根は自分の考えを整理させていく。

 

今の発言から分かるように、垣根の推測はアーロン海賊団が根城にしている島は、どこかの海軍支部の近くにあるという前提のもと進めていくことになるが、かなり高い確率で当たっていると思っていた。

 

あまりにも情報が少なすぎるからこそ、自分の考えを纏めるのは慎重にしながら、それでも大胆に迷う素振りすら見せずに現在地から近い支部には×印をつける。

 

 

「それに加えてコビーが噂でしか知らないってことは、この辺の海軍支部は関わっちゃいねぇだろう。もし仮にこの辺りの島で起こってるなら、島同士の交流の変化ぐらいは耳にしてるだろうからな。

それに本部に情報が回ってこねぇように根回ししてるビビりの三下野郎が、近場で噂になっているのを見過ごすとは思えねぇ」

 

 

次にコビーが持っていた情報というピースを使い、さらに選択肢を減らす。

 

先程まで垣根達が滞在していたフーシャ村のあるドーン島は、世界政府加盟国の島でもある点から、近くの海軍支部には定期的な調査が行われる。

 

当然ながらドーン島にも行われており、本部の海兵だけでなく、世界政府からも人員が派遣されて海軍支部への調査は厳正に行われるため、ドーン島含め、世界政府加盟国の島が巡回区域に入っている海軍支部は除外。

 

海賊相手に取引するような臆病者は、それこそ派手な動きこそしないが、自分の行動エリアにおいては徹底的に慎重を期すタイプが多いため、現状の噂が回っていることすらも危険視し、噂すら出回らないように徹底するだろう。

 

だがそれが行われていないということは、今いるドーン島周辺は行動エリアの外だということの裏返しでもある。

 

これまでの経験上から予想する人物像と、海軍本部で見た調査書の結果を記憶の中きら引っ張り出しながら、地図の中にある海軍支部に×印を付け加えていく。

 

だがこれでも東の海にある海軍支部の数は、まだ半分も絞り込めてはいない。

 

 

「偉大なる航路から来たとしてもローグタウンの辺りは人が集まる分情報の統制ができねぇし、何よりヤンキーぶってる善人のスモーカーがいる。アイツが海賊に手を貸すってのは考えられねぇしな。

その辺りを除いて候補とするなら……この辺りだな」

 

 

そして偉大なる航路に近いという理由と似通って、他の海に面しているような、赤い大陸の近くに位置している海軍支部も候補から外れていく。

 

そのような地域に派遣される海兵は、その海の中でもトップクラスの実力者であることと、海賊相手に対しての姿勢など、様々な要素を考慮されて選ばれるからだ。

 

地図上につけられていく×印はどんどんと増えていき、最終的に残ったのは十ヶ所以下の支部。

 

あくまでも垣根の予測を元に絞られた候補であるため、必ずしもあっているとは限らないという前提が外れることはない。

 

だがそれをガープも、他の周りにいるガープの部下である海兵達も承知の上で納得していた。

少なくとも自分達では、噂だけ知っているという段階でここまで絞り込むことなど出来るはずがないと分かっているからだ。

 

そして最終的に垣根が指したのは、その候補の中の一つ。

 

 

「まずは一番近いところ、この16支部だ」

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「ナミッ!?どこ行くの!!」

 

「ノジコはここでゲンさんと一緒にいて!私はその海軍を見てくるから!」

 

「待つんじゃナミ!!一人でいくんじゃない!」

 

 

後ろから聞こえる制止の声を振り切りながら、普段から愛用している折り畳み式の三節棍を素早く展開して、オレンジ色の髪をした少女、ナミは走る。

 

少し前に別の海賊団からお宝を奪い、自身の故郷でもあるココヤシ村へと帰ってきたのが数日前の話。

帰りの航海の最中に書いていた海図をアーロンへと渡すことで、暫しの休みを与えら、自分の家へと帰ってきた頃には疲れもピークに達していた。

 

アーロンの海賊団の象徴の刺青を肩にいれているが、だからといって仲間意識などあるはずもないナミからしてみれば、少しでも離れることができるのは有り難いこと。

 

前日からしっかりと休みをとって、今日は朝から良い日になると思っていたのに、すぐに真逆な状況になったことに怒りすら沸いてくると、額に青筋を浮かべながらも全速力を出す。

 

 

「あーもう!アーロンの話と違うじゃない!」

 

 

叫びように声を挙げながら走るナミの怒りの矛先は、やって来たという海軍にも向けられているが、それと同時にアーロンにも向けられていた。

 

縄張りとしている島へと海軍が紛れ込んでくるような、そんな杜撰な警戒体制をしていたことを。

 

島へと来る前に返り討ちにあっていればよかったが、やって来た海軍がアーロンを下手に刺激してしまえば、例え海兵を殺したとしてもその腹いせにとココヤシ村の人間に危害を加えるかもしれない。

 

駐在という立ち位置のお陰で、島の情報に詳しいゲンゾウもつい先ほどまで知らなかったということは、ココヤシ村の住人が今回の海軍の来訪には関係していないのは明らかだが、果たしてそのような事情をアーロンが汲み取ってくれるだろうか。

 

近くの海軍がアーロンと結託して情報を制限していることを考えれば、誰かがリークしたという結論になるのはそう難しくない。

 

これまでの経験からして、アーロンが人間に温情を向けるなどあり得ないと、ナミは簡単に結論付けることができる。少し話をすれば済むことかもしれないが、アーロンがそんな労力を人間相手に割く筈がない。

 

そうなればこれまでの自分の努力は一体なんだったのかと、全てが無駄になってしまうかもしれない。

 

 

「アーロン達に見つかるよりも前に、何とかしないと!」

 

 

ナミの頭の中にあるのは、兎に角どんな手段を使ってもいいから、やって来た海軍を追い返すか、如何にアーロン達、魚人海賊団に引き合わせないかの二択であった。

 

幼き頃から航海図を描き、数多の海賊に泥棒として潜り込む、それでも無事生きて帰ってきたナミの思考は、先程までの休みの弛さとはうって代わり、今や最高の速度で回り続けている。

 

だがそんな状況で海軍がアーロンを倒してくれるという選択肢が入っていないのは、大切な母親であったベルメールを目の前で殺されたトラウマのせいか。それとも幼き頃から魚人達の強さを間近で見せられてきた経験のせいか。

 

もはやナミの頭の中では無意識の内に、魚人達の強さが相当高いものであると格付けされている。それはあまりにも魚人海賊団との距離が近すぎたことと、精神的な成長の過程に多く関わっている故のことだが、それを責められる者などいるのだろうか。

 

幼き少女であったナミが、目の前で大切な人を殺されながらも、大切な村の人達を守るために、憎き魚人海賊団へと入って独りで戦うことを決心した日から、少なくともそのナミの意思を知っているココヤシ村の人達には誰もいない。

 

 

「はぁ、はぁ、何とか間に合ったみたいね」

 

 

辿り着いたのは、先ほどゲンさんから教えられた海軍の軍艦が見えたという海岸である。

 

ここまでの道程をナミは全力疾走に加えてノンストップで駆け抜けてきたため、泥棒稼業で自然と体力はついていたが、傍目から分かる程度に汗を流して息を切らしている。

 

だが海岸上にも、海軍の軍艦の周りに魚人達がいる様子もないため、ナミはギリギリ間に合ったと安心していた。

 

だがまだ気を抜くことはできない。むしろ、ここからが本番なのだから。

 

そこは正規の漁港ではなく、むしろ船を止めるには適していないような岩肌の多い海岸であり、揺れながらも停泊している海軍の軍艦を、ナミは近くの岩影に身を潜めながらソッと顔だけを出して覗き込む。

 

 

「……やっぱりいつもの軍艦じゃない。一隻だけってのも変だし、前見たときの軍艦よりも一回り以上は大きいし、一体誰が乗ってるのよ」

 

 

広い海を見渡しても止まっているのは一隻だけ。多数の軍艦ではないことに幸いだとも思いながらも緊張感を緩めるようなことはしない。

 

アーロンとの取引によって以前から定期的にやってくる海軍は、魚人海賊団への牽制も兼ねて常に三隻以上の軍艦を引き連れてやって来ていたため、少なくともナミの知っている海軍ではないのは確か。

 

目を凝らしながら、軍艦の上に誰がいるのかを確認しようとより集中して視線を送る。ナミの視力では詳細までは分からないが、それでも甲板に人がいることだけは確認できる。

 

 

「島としては悪くなさそうだな」

 

「この香りはオレンジかしら。あんまり聞かないけど、一応の特産品とかもありそうね」

 

 

するとフワリと、軍艦の上から岩だらけの海岸へと下りてくる一人の少年。年はそう変わらなそうだと思っていると、次にも同い年そうな金髪の少女が続き、最後に白髪の初老の男が片手にナニかを掴みながら飛び降りる。

 

 

「本当にここであっとるんじゃろうな」

 

「ふぁい、この島であってまふ」

 

「嘘はついてなさそうだな。個人的にはここに着く前に海中からの攻撃があると思ってたんだがな。拍子抜けだぜ」

 

「もしくは他の海軍が来るとも思ってなかったんじゃないかしら」

 

 

見たこともない三人の海兵も、顔中を腫らしている男の声も、距離的にナミには聞こえないが、その顔にはどこか見覚えがあった。

 

思い出すのも難しくない。

 

それは普段からアーロンパークへとやって来て、金を受け取ってアーロン達の海賊行為、およびコノミ諸島の支配を黙認している海兵、海軍第16支部大佐のネズミであった。

 

アーロン達がいない時にナミも少しだけネズミと話したこともあったが、すぐに腐れ切っている人間だと理解してしまったため、話す価値もないと切り捨てた相手である。

 

そんなナミが海軍を嫌いになった理由の最も大きな部分を占める海兵が、何故か顔面が面影ないほどに変形するほどボロボロになりながら捕まれていることに、内心でざまぁみろとガッツポーズをしながらも、すぐに疑問も沸いてくる。

 

軍艦が一隻と分かっときには、てっきりネズミが新しく派遣されてきた海兵がアーロンへと挨拶をしに来たのかとも思っていたからだ。

 

だがそれも、アーロンと直接取引しているネズミのボロボロの姿を見たことで、違うということだけは分かった

 

今や普段のネズミの虎の威ならぬ、アーロンの威を借りて人の神経を逆撫でするような性格は鳴りを潜め、ガープに首根っこを掴まれて大人しくしていた。

 

 

「それで、あなたはどうするつもりなのかしら。島中回って探し回るなんて面倒なことは勘弁してほしいわよ」

 

「なんならこいつをもう何発かでも殴っておくとするか?聞き出すならそれで十分だと思うがのう」

 

「それなら私の能力を使った方が早いと思うけど。でもこんなのに使うのはあんまり気乗りしないわね」

 

 

自分の代名詞でもある拳骨を作るガープと、嫌々であることを全面に表情に出している海美に、何故かガーンとショックを受けているネズミのことなど放っておきながら、垣根としてもどうするかを考える。

 

島のサイズを遠目から見た限りでは、垣根の見聞色の覇気では島全体を聞き取ることはできないが、それもガープならば行えるだろうし、一つの島なら未元物質を使っての探索も可能である。

 

 

「とりあえずそうだな。そこに隠れてる奴に話を聞くとするか」

 

「同感じゃな。手っ取り早く済むならそれがいいわい」

 

「ッッ!?」

 

 

選ばれたのは、岩陰に隠れていたナミ。急に自分へと向けられたと思える言葉にその場で心臓が飛び出しそうになるが、必死に息を殺す。

 

決して見られてはいないと確信があったのに、急な言葉にパニックへと陥る。

 

だが既に見聞色の覇気を発動させていた垣根とガープからしてみれば、隠れてないのと変わらない。

 

当然ながら覇気のことなど知らないナミからしてみれば衝撃であるが。

 

だがいかにパニックになろうとも、ナミは瞬時に頭を働かせる。間違いなく意識を向けられているのは自分であるという確信を、これまでの幾らかの修羅場を越えてきたナミの全神経が告げていた。

 

これが海賊船に忍び込んでいる時ならば、その場で立ち上がって逃げるために走り出しただろう両足を、今回は抑え込みその場で立ち止まる。

 

もしここで逃げ出すという行動をとれば、認識されたから逃亡したと海兵達に思われるのは容易に想像できる。そうなれば間違いなくナミは、海軍から敵として認識されてしまうことになる。

 

そうなれば自分の話を聞いてもらえるような、そんな立場を作ることは出来なくなってしまう。

 

この島へとやって来た海兵をアーロン達に見つかるよりも早く追い返すという、ナミの中での最優先のプランが破綻する可能性がかなり高まってしまう。

 

自分の感情に蓋をしながら一呼吸して意識を落ち着かせる。

 

気乗りはしないがやるしかないと決意すると、ナミは自分の顔に自然な形の笑みを浮かばせ、隠れている岩陰から身を出す。

 

 

「こんにちはー。私はナミ、この辺に住んでるの」

 

 

片手には三節根を持っているが、敵意はないとアピールのために両手を挙げながら、できるだけ普段と変わらぬ調子の声を意識しながら挨拶をするが、決めたはずの覚悟がすぐに揺らいでしまいそうになる。

 

 

「そうかよ。見て分かんねぇかもしれねぇがこれでも海兵だ」

 

「知ってるわよ。そこの軍艦から降りてきたところも見てたしね」

 

 

目の前にいるのは垣根一人であり、他の二人はナミのことをそこまで気にしていない。というか、垣根に任せるといった具合である。

 

素っ気ない態度であるが、相手が一人ならナミにも勝算があるかと思うかもしれないがとんでもない。

 

対峙しているのは自分とそう変わらない年齢の青年だと、ナミは自身へと言い聞かせる。

 

魚人や巨人族のような、特異性が分かりやすい容姿はしておらず、かといってそこまで自分と変わらない身長などを見てみれば、一見すれば垣根を普通の人間のように感じさせるだろう。

 

だが目の前に立てば、否が応でも自分との差を感じさせられる。自分を何とも思っていない無表情と、自分との圧倒的な存在感の違いとも言うべき、そんなナニカを。

 

それはアーロンも含め、これまで出会った海賊や海兵の様々な場面を見てきた筈の過去の経験の、そのどれにも当て嵌まらない異質なプレッシャー。

 

だがナミも引くことはできない。

 

 

「そこの顔中腫らしてるの、同じ海軍でしょ。見覚えあるもの」

 

「ならここで合ってたみたいだな。魚人の海賊がいるって場所は」

 

 

東の海にある海軍支部の海兵は、アーロンとの取引の結果として、魚人海賊団が何をしようとも見て見ぬふりを続けていることは、その現場を目撃し、尚且つ立ち会ったこともあるナミは知っていた。

 

アーロンとの取引により、この島には海軍は決まった日にしかやってこないのは全員が知っていた。

それが金銭を受け取る代わりに、魚人海賊団の如何なる行為も黙認するといった内容のことが行われている現場に立ち会ったからこそ、そこにいた海兵の顔は全員覚えていた。

 

だがナミの目に映っている海兵達の顔は記憶にはない。

 

それならば一億ベリーでココヤシ村を買うというアーロンとナミの間にある取引を知らない可能性もある。なりより垣根がそんなナミの事情を考慮してくれる相手とは、とてもではないがナミには思えなかった。

 

 

「因みにだけど、そこにいる男から話を聞いてるなら大人しく帰ってもらうことってできるかしら」

 

「そいつは無理な相談だな。ここにいる魚人は捕らえるって決めてるんだよ」

 

「それはどうしても?」

 

「一度決めたことを変えるつもりはねぇな」

 

「へぇ。なら怪我するかもしれないけど、覚悟して頂戴ね」

 

 

目の前にいる垣根へと三節根の先端を向け、武力行使も厭わないと警告をしながら構える。 

 

泥棒だとしても海賊船へと潜り込むため、一応戦闘の心得こそがあるがナミは戦いがそこまで得意ではない。

 

ましてや目の前にいる垣根には勝てる確証は全く持てていないが、だがアーロン達を見逃すつもりはないと言われた以上、逃げることもできない。

 

 

「そうか。邪魔をするってんなら俺も容赦するつもりはねぇからな」

 

 

首をゴキゴキと鳴らしながら、垣根は初めてナミという存在を明確に意識する。

 

だがナミとは対象的に、垣根には緊張などはまるでない。三節根という明確な武器を突き付けられているがまるで気にも止めておらず、さらに後ろにいる海美とガープにも動く素振りすら見せない。

 

仕込みなどがあるならまだしも、材質などを瞬時に見極めた結果として、武装色の覇気を纏わせでもしない限り、垣根を傷つけることは不可能であると分かりきっているからだ。

 

だがそんなことを知らないナミは、余りにも自分が舐められていると感じてしまったため、内心にある恐怖や覚悟に加え、垣根に対しての怒りの炎が灯される。

 

 

「やあっ!!」

 

 

相手が格上だと思っているため、絶対に先手を取らせるわけにはいかないと、ナミから仕掛けた。

 

独学としては中々に素早いみのこなしで飛び上がると、三節根を大きく後ろに振りかぶりながら全力で振り抜かれる。

 

それに対してまるで動く様子もない垣根。

 

てっきり避けるなる反撃するなりの動きをする思っていたナミは内心で動揺しながらも、既に振るわれた三節根の腹の部分は垣根の目の前にまで迫っていた。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

ゴバッ!と突如として垣根から生じた何かがナミの体が吹き飛ばされる。

 

そこまで強い衝撃ではないが、それでも不意をつかれたナミを吹き飛ばすには十分な威力の不可視の衝撃波。

 

堪えることも出来ずに、尻餅をつきながら武器も手から転げ落ちる。それでもすぐに顔を上げると、目の前には純白の刃があった。

 

「ヒッ」と小さな声を出しながら、その顔には先程までの覚悟の中に紛れて、恐怖の感情が再び沸き上がっていた。

 

それを見た者には天使の羽と言われることが多いが、今のナミにとってはいつの間にか展開されていた垣根の未元物質の翼は、その鋭利さも含めて死神の鎌のようにも感じれていた。

 

だが今の垣根は目の前にいる、翼を動かすだけで首を跳ね飛ばすこともできるがナミを殺すつもりはない。

 

 

「対話で解決しようとした最初の優しさに免じて一度は見逃してやる。けどまだ敵対するってんなら次はねぇ」

 

 

先程垣根はナミに対して容赦はしないと言ったが、命を取るつもりはない。

 

このコノミ諸島へと来る前に捕まえてきたネズミのことを知っていた以上、魚人達の情報を知っているのは間違いないと判断していた。

 

早いところ解決したい垣根としては、利用できるなら何でも使うつもりでいるからだ。

 

その手を取るかどうかでナミの、ひいてはココヤシ村の運命が決まる運命の選択肢に立たされた。

 

 





この東の海を終わらせたら次は偉大なる航路の話に入っていこうと思います。

ちなみにですけど、定期的に投稿するのと、一気に投稿するのってどっちがいいんですかね。誰か教えてください。

ちなみにナミはヒロインにするべきかどうか迷っている最中。多分ならないと思うけれど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。