もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら   作:にしむー

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拓海の運転でS13の走りを体感した池谷。池谷、拓海、両者ともに貴重な経験となった。そして池谷は、談笑で同乗走行の話をしている間に、とある提案が思い浮かんだ。それを拓海に提案する……!!


Act.14 池谷の提案

 

 

 

 

池谷「なぁ、拓海」

 

拓海「何ですか?池谷先輩」

 

 

 

 

池谷は提案を切り出す。

 

 

 

 

池谷「拓海は毎日、ハチロクで豆腐の配達やってるのか?」

 

拓海「はい、そうですよ」

 

池谷「今回、S13で拓海の運転の横に乗って思ったんだ……ずっとこの走りを横で経験していけば、拓海の感覚が少しでも身についていくんじゃないかって」

 

 

 

 

 

池谷「頼む拓海!豆腐の配達に、俺を付き合わせてくれないか……!?」

 

拓海「俺は全然構わないっすけど……オヤジが許してくれるかどうか……それに、すげー朝早いですよ」

 

池谷「何時くらいなんだ?」

 

拓海「朝4時くらいっすかねぇ」

 

池谷「(早っ……でもそんなこと気にしてる場合じゃない……もっと速くなりたい……!!)大丈夫だ拓海!親父さんの許可さえ取れれば拓海はOKなんだろ?それなら、俺から直々に親父さんに話つけてみるよ」

 

拓海「わかりました……どうせ俺が言ったって素直にうんっていう人じゃないし……池谷先輩に任せます。それで許可が取れれば、朝4時にうちに来てください。横、乗せていくんで」

 

池谷「わかった!親父さんに、頼み込んでみるよ!」

 

拓海「(あのクソオヤジ、池谷先輩のお願い、素直に聞いてくれるかなぁ?)」

 

 

 

 

 

池谷「それじゃあ、また上まで登るとするか!拓海の運転のフィーリング、忘れないうちに俺も走り込みしないと」

 

 

 

 

 

池谷「なぁ拓海、拓海は上りも全開で走ったことあるのか?」

 

拓海「いえ、上りは豆腐積んでるから飛ばさないですよ……でも、豆腐傷めないように、紙コップに水入れて、それをこぼさないように走ってます」

 

池谷「本当か!?それ!?(すごい荷重移動テクニックだ……常人にはできない……そりゃあんなに凄いわけだよ)」

 

 

 

 

 

池谷「それは、もちろんゆっくり走るんだよな?」

 

拓海「そうですね、軽いドリフトくらいに抑えてます」

 

池谷・健二・樹「………!?」

 

健二「軽い……ドリフトだとォ……!?」

 

 

 

 

 

池谷「拓海、もう一度聞くぞ?紙コップの水をこぼさずに、軽くドリフトする走りをしてるんだよな?」

 

拓海「はい、そうですよ」

 

 

 

 

池谷「………!!」

 

あまりの拓海のテクニックの凄さに、場は凍りついた。

 

 

 

 

 

池谷「拓海、いつも通りでいいから、上りの走りも俺に見せてくれないか?」

 

拓海「いいですけど……そんなもの見てどうするんですか?」

 

池谷「拓海、お前は気付いてないかもしれないけど、紙コップの水をこぼさずに走るなんて、普通の人なら峠はおろか一般道でも至難の業なんだ……だからその繊細な走りを見て、参考にしたいんだ、頼む!」

 

拓海「わかりました……」

 

 

 

 

 

再び下りと同じ組み合わせの、拓海・池谷のS13、健二・樹の180で、秋名の峠を登っていく……!!

 

池谷「(さぁ見せてくれ拓海……この峠でコップの水を溢さずにドリフトまでする繊細な走りを……!!)」

 

しかし、それは池谷の想像を遥かに超えていた……!!

 

 

 

 

 

\フォオオオーーーーー/

 

登り始めるS13。

 

 

 

 

 

拓海「池谷先輩」

 

池谷「何だ、拓海」

 

 

 

 

 

拓海「パワーありますね、この車」

 

池谷「そりゃそうさ、俺のS13は、ターボエンジンだぜ?ハチロクはテンロク、つまりエンジンが1600cc、俺のS13は1800ccで、そんなに差はない。だけど、ターボがついてると、これだけパワーが上がるんだ」

 

拓海「そうなんですね……(そうか……これがターボってやつなのか……)」

 

 

 

 

序盤の中低速コーナーの区間を抜け、最初のストレートに突入する……!!

 

 

 

 

池谷「豆腐乗ってないから、一回全開で踏んでみてくれ!」

 

拓海「わかりました」

 

 

 

 

 

\フォアアアアアアア/\プシュー/\フォアアアアアアア/

 

 

 

 

 

全開で登っていく拓海とS13。

 

拓海「(すげえ……感じたことないや……上りでこんなスピード……)」

 

ハチロクとは比べ物にならない上りでの加速に、少し驚く拓海。しかしそこは拓海。心配には及ばない。

 

 

 

 

 

池谷「おい拓海!この先ヘアピンだぞ!?ハチロクよりスピード乗ってるんだぞ!?大丈夫なのか!?」

 

拓海「大丈夫ですよ、今度こそ流してるんで」

 

 

 

 

 

今度はショックのない繊細なブレーキング、その後に穏やかなステアリング操作。適切な荷重移動で、体に負荷を感じない。だが車体は軽くスライドしている。池谷にとっては初めての不思議な感覚だった。

 

 

 

 

池谷「(凄い……全く怖くないドリフト……なんてスムーズな操作だ……とてつもない熟練技だ……これは紙コップの水がこぼれないのもうなずけるよ)」

 

 

 

 

この後も同じように順調にコーナーを抜けていき、5連ヘアピン近くに差し掛かった。

 

 

 

 

 

池谷「なぁ拓海、上りでは一回も飛ばしたことないのか……?」

 

拓海「…………ないですね、言われてみれば」

 

 

 

 

 

いつも上りは豆腐を積んでいて、それ以外では秋名を走る機会などなかったので、当然のことだった。

 

 

 

 

 

池谷「一回見せてほしいんだ……上りでも下りみたいに速く走れるのか」

 

拓海「上りで飛ばすのは確かに初めてですけど、コースは覚えてるんで、多分大丈夫ですよ。やってみます」

 

 

 

 

5連ヘアピン手前のヘアピンから、飛ばし始める拓海。

 

 

 

 

 

池谷「うわぁああああ!!!」

 

\シャアアアアア/

 

 

 

 

初めての上りの走りでも、全く問題なく乗りこなす拓海。

 

ハチロクよりパワーがあるので、むしろ上りではこちらのほうが乗りやすいようだ。

 

 

 

 

拓海「池谷先輩」

 

池谷「……なんだ、拓海」

 

 

 

 

拓海「乗りやすいですよ、この車」

 

池谷「本当か?拓海!」

 

拓海「はい……上りでもパワーあるんで、下りと同じような感覚で走れます。ブレーキの感じとかは少し変わりますけど」 

 

池谷「(凄いよ拓海……これが秋名山トップダウンヒラーのヒルクライムか)」

 

 

 

 

 

貴重な体験をする池谷だった。

 

5連ヘアピンも過ぎ、そのまま順調に走っていき頂上まで到着した。

 

気付けば池谷も全く怖がることはなくなっていた。特に後半は、拓海の走りに順応できていた。

 

 

 

 

 

約3分遅れで到着する180の健二と樹。

 

健二「ダメだ……全然追いつけないよ……凄えな拓海は……上りでもめちゃくちゃ速えよ……」

 

樹「もう何やってるんすか健二先輩!!向こうは紙コップの水をこぼさないくらい流して走ってたんっすよ!!」

 

健二「そうなんだよなぁ……格の違いを思い知らされたよ……全く凄いよ、拓海は」

 

 

 

 

上りでの拓海の走りも体感した池谷。感覚を忘れないうちに、この後池谷は自らのS13で走り込みに挑戦する……!!

 

 

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