もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら   作:にしむー

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愛車のブレーキが冷め、再び走り込みに突入した池谷と健二。店長に成長したダウンヒルでの走りを見せつけた池谷、そしていつも通りの健二。そのまま順調に秋名の峠を下りきり、ヒルクライムに移る。そこに、まさかの刺客が現れるのだった……!!


Act.18 突然の刺客

 

 

 

 

秋名山のふもと。池谷がゴールした後、健二が2分半遅れで到着。

 

 

 

 

池谷「ふふっ、相変わらずだなぁ健二は」

 

健二「なんだとぉ池谷!?俺だって……!!」

 

樹「そうっすよ池谷先輩!!健二先輩だって、拓海の横に一回乗れば、池谷先輩なんか、すぐ追いつきますよォ!!ね、健二先輩」

 

健二「……そ、そうだぞ〜!?俺だって、拓海のドラテクを吸収して……!!(本当に俺もあれに乗らなくちゃダメ……?)」

 

拓海「(そんなに凄いのか……?俺……まるで遊園地のアトラクション扱いだ……)」

 

 

 

 

少しふもとの駐車場で談笑したあと、またブレーキが適度に冷める。そして、今度はヒルクライムの走り込みに入る。

 

 

 

 

池谷「さぁ行くぜ!俺のS13はヒルクライムでも行けるってことを証明してやる!!」

 

健二「くそっ!こっちだってSR20なんだぜ!?いつまでも負けててたまっか!!」

 

 

 

 

\フォン フォン フォーーーーー/

 

 

 

 

クラッチを繋ぎ、発進……!!

 

 

 

 

\フォアアアアアアア/\プシュー/\フォアアアアアアア/

 

池谷「来た来たぁ!!この感覚だ!!俺のニューエンジン!!」

 

 

 

 

 

池谷のS13に換装したブルーバードSSS-RのCA18DET-Rエンジンは、お世辞にも新型のエンジンとは呼べない。まだ80年代のターボエンジン黎明期の余韻が残る、多少のドッカンターボ特性を併せ持っている。

 

それを、職人のラリーメカニックが細部までチューニングし、速さと扱いやすさを両立した仕様に仕立て上げられているわけだ。

 

適度な中低速トルク、滑らかな回転、そして一気に爆発するような高回転でのパワー……!!

 

 

 

 

池谷「おっ、今度は健二も付いてきてるじゃないか……いよいよあいつも意地をを見せ始めたか!?絶対負けねぇぜ!!」

 

 

 

 

しかし、ストレート区間に入った瞬間、何故か差が一気に縮まる。

 

 

 

 

池谷「追いついてきてる……!?健二お前そんなに速かっ……いや……違う………このエンジン音、SR20の音じゃない……!!」

 

 

 

 

漆黒に光るマシンが、池谷の背後に張り付いた。

 

 

 

 

その音は、数々の日本のレースで勝利を収めてきた、日産が誇る最高傑作のエンジンの音だった……

 

 

RB26DETTエンジン……そう、そのマシンは、BNR32型スカイラインGT-Rだった……!!

 

健二などとっくに追い抜いて、池谷のすぐ後ろまで迫っていたのだ。

 

 

 

 

 

???「チョロチョロと走りやがって……FRでカニ走りをする時代は、もう終わりなんだよ……!!」

 

妙義ナイトキッズのリーダー、中里毅だ。

 

中里「モータースポーツで最強のマシンの実力を見せつけてやる……!!」

 

 

\フォオオオオオオオン/\プシャア/\フォオオオオオオオン/

 

 

 

 

漆黒に輝くマシンは、見事なRB26の美しい直6サウンドを轟かせながら、あっという間に池谷をパスしていった。

 

 

 

 

池谷「なんだ!?あの速さは!?黒の32GT-R……まさか、妙義ナイトキッズの……!!遂に秋名にも攻め込んで来やがったか……!!」

 

 

 

 

池谷は一応秋名山最速を名乗るチームのリーダーだけあって、その筋の情報は詳しい。

 

 

 

 

池谷「頑張ってくれ、俺のS13!!」

 

しかし、どうあがいても、GT-Rには届かない……

 

直線も、コーナーも……

 

 

 

 

 

スカイラインは、1970年代前半、KPGC110型、いわゆるケンメリスカイラインで、GT-Rの生産を一旦終了した。ケンメリGT-Rは、わずか197台ラインオフしたのみで、その生涯を閉じた。オイルショックによる排ガス規制によるものだった。その台数は、あの伝説のトヨタ2000GTをも下回るものだった。

 

 

 

 

 

日本のモータースポーツ史において、GT-Rは切っても切り離せない関係だ。

 

ケンメリの前モデル、KPGC10型スカイライン2000GT-R、いわゆるハコスカのスカGだ。日本グランプリレースにおいて、マツダサバンナRX-3に敗れるまで49連勝、そして最終的に通算50勝を記録したのだ。

 

その「GT-R」の名は、ケンメリの次、スカイラインジャパンから、R30、R31スカイラインと、封印されてきた。しかし、R32型になって遂に、「GT-R」のバッジは、全く新しい姿となって、復活したのだ。

 

 

 

 

 

新型GT-Rは、駆動システムが非常にハイテクなものになっている。このニューGT-R、基本的にはFRがベースだ。しかし、リア駆動だけではなく、フロントの駆動システムも併せ持っている。つまりFRと4WDのいいとこ取りをしているわけだ。

 

 

 

 

FRは基本的に、駆動輪であるリアが滑りやすく、トラクション(車を前に押し出す力)がかかりにくい。

 

だがこのシステムは、そのような時にのみ、フロントタイヤに駆動を分配させ、トラクションを4輪に分散、増強させる。

 

それにより、FRの適度な回頭性と、4WDの抜群なる安定性、そして強大なる立ち上がり加速を併せ持つ、公道には反則級のスーパーウェポンとなるのだ。

 

 

 

 

 

このシステムは、アテーサE-TSと呼ばれ、日産がポルシェのものを参考に開発したものだ。

 

FFベースのものも存在し、池谷のエンジンの元宿主だったブルーバードSSS-Rや、その後継にあたるパルサーGTi-Rにも搭載され、こちらは逆にFFの弱点を補うものとして使われている。

 

 

 

 

 

80年代後半〜93年まで日本で行われていた、市販車ベース最高峰のレース、グループA。路面に車体を押さえつけ安定させるエアロ類の追加装着が、一切禁止にもかかわらず、600馬力近くまで出力規定が許されていたそのレースで、アテーサE-TSシステムは無類の強さを誇り、他のFR勢を蹴散らし、GT-R伝説復活と謳われた。

 

そのマシンを、中里は公道に持ち込んだというわけなのだ。

 

それが、速くないわけがないのだ……!!

 

 

 

 

 

中里「RB26の底力、見せつけてやるぜ!!」

 

 




あまりのGT-Rの速さに、速くなった池谷があっさりと抜かれてしまった……さっきまで歓喜していた池谷は、再び絶望を味わうことになる……しかし、その絶望は、その後更に池谷を強くしていくのだった……!!
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