もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら 作:にしむー
\フォアアアアアアア/\プシュー/\フォアアアアアアア/
健二「や、やめろぉ拓海、わかった、わかったからァ〜!!」
拓海「(どうしたんだろ健二先輩……そんなに飛ばしてるつもりないのに……やっぱ俺、おかしいのか……?)」
拓海はスタート前、シートポジションの調整などで多少時間を食った。なので、眼前に中里の姿はもうない。
そして遂に、中高速の1コーナー。健二は遂に拓海のダウンヒルを初めて体感する……!!
\拓海!!ブレーキ!ブレーキ〜〜!!/
池谷と全く同じ反応をする健二。
池谷の時と同じように、ギリギリのレイトブレーキングで車体を横に向けながら1コーナーに侵入する。
健二「うわぁああああ!!!本当にこれが俺の180の動きかぁあああ!?!?」
拓海「(………)」
\キューーーキコキコキコキコ/
澄ました顔で、とんでもない走りを見せる拓海。
拓海「(あれ……健二先輩の車、ハチロクや池谷先輩の車と、ちょっと違う感じだ……)」
その拓海の感想も無理はない。池谷のS13は、政志が隠しチューンで秋名スペシャルにしたセッティングだった。一方180の足廻りはノーマルだ。
拓海「健二先輩、このワンエイティって車、池谷先輩の車と全然違う動きしますね」
健二「そっ、そうなのか!?それどころじゃねえ!!次のコーナー来てるぞ!!早く!ブレーキ〜!!」
\シャアアアアアアア/
慣性ドリフトを使い、ノーブレーキで次の高速コーナーを抜ける。
健二「ぐぁあああああ!!次!!ヘアピン!!ヘアピンはぁ〜!?!?」
いよいよ第一ヘアピンに突入する180。
拓海「ハチロクや池谷先輩の車と違う動き……だから……こうするか……」
拓海は雪道でよく使うテクニックを、いきなり初めて乗る180で実践する……!!
ノーマルの足廻りの180は、多少リアが滑りにくいようだ。
日産の足廻りは優秀で、FRにも関わらずリアが滑りにくく、かといってアンダーステアも出ない扱いやすい乗り味になるよう、絶妙にセッティングされている。だが拓海はダウンヒルで、それを打ち消す走りを、ヘアピンを前にして実践する。
まず180をインに付かせる。そして曲がる方向と反対にマシンをスライドさせる。
健二「拓海ィ〜!!逆だ逆〜!!ダメだぁ……俺の180、廃車だ〜!!」
しかし、違った。拓海は意図的にその操作を行っている。
そしてヘアピンの直前……!!
\ギャアアアアアアア/
拓海は一気に反対方向にステアを切り、見事なフェイントモーションを掛ける。180の向きは、一気にヘアピンの方向へ向き、その動きにより、クイックにヘアピンを曲がるのだ。
健二「ぐぁああああああ!!」
\キューーーキコキコキコキコ/
\フォン フォン フォオオオオオオオ/
トラクションを掛け、立ち上がり姿勢に入る拓海。
健二「やめろ~~!!ぶつかる〜〜〜!!」
道幅を目一杯使ってヘアピンを立ち上がる拓海、そして助手席側の健二スレスレまで迫ったガードレール……そして……
健二「ふんが」
………やってしまった。それも、池谷と同じ場所で……
しかし今回は、池谷の時とは事情が違う……ヘアピンを抜けると、前には中里の32の姿が見えた……!!
拓海「あれがさっきの車……そんなに速いのか?あの車」
しかし、ここからはまた全開区間、中里の背中が遠のく……
拓海「すっげえ速え……健二先輩の車、ハチロクより直線速いのに、離されてく……」
だがこの後に待ち受けるのは、複合コーナー……緩い左、中程度の右、そこから一気に左ヘアピンと、難易度の高いコーナーセクションだ。
中里はバックミラーをまだ見ていない。
中里「フッ……ここは秋名のダウンヒルの中でも難しいセクションの一つだ……だがこのGT-Rなら……!!」
横滑りしにくいGT-Rは、このような連続コーナーで無類の強さを誇る。右に左に反対方向の動きをかけてもビクともしない安定性を持っている。そのため、ドライバーの思うようにコーナリングが可能なのだ。
中里「まずゆるい左を目一杯インに寄せてブレーキング、そして反対方向にステアを切ってヘアピン手前の中速コーナーを抜ける……そして一気にブレーキング……グイグイとヘアピンを曲がっていく……!!」
GT-R以外には到底無理な動き。流石は幾多のモータースポーツで無類の強さを誇ったまでのことはある。
ところがこの後、中里に待ち受けていたのは……!?
中里「……!?……お前……何故そこにいる……!?」
テクニカル区間を抜け、中里の真後には、なんと拓海のドライブする健二の180が、ピタリと張り付いていたのだった……!!
中里「ふざけんなよ……さっきの上りは手ェ抜いてたってのか……!!」
全身の血が沸騰する中里。
拓海「前のドライバー……ラインはいい……車も高性能なのかな?変な動きをして曲がっていく……だけど……」
拓海は早くも核心を突く。
拓海「なんでこの人、後ろのタイヤまで使わないんだろう……?」
そう、中里の安定した走りは、それが故に、フロントタイヤにのみ負荷を掛けることになる。特にフロントタイヤの負荷が大きいダウンヒルでは、それが顕著に現れる。
サーキットでは速い走りが、秋名のダウンヒルのように、サーキットではあり得ない勾配区間がずっと続く場所では、かえって足かせとなるのだ。
一方拓海は、健二の180を、リアタイヤまで目一杯使い切っている。
ダウンヒルでタイヤやブレーキをうまく使う秘訣は、リアタイヤにいかに仕事をさせるかにあったのだ……!!
この後、気絶した健二を乗せたまま下っていく拓海と180。そしてその前を行く中里の32GT-R。拓海は前を行く中里の走りに興味津々で、健二が気絶していることに気付いていない。一体どこまで、この気絶した健二を連れて下っていくのだろうか……?