もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら   作:にしむー

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池谷を危険な目に遭わせたのは、中里と同じ妙義ナイトキッズの庄司慎吾という男だった。どうやらナイトキッズ最速の座を狙っているようだが、あまりの狂気に満ちた雰囲気に、池谷も硬直する……そんな時、また一台、とある車が姿を見せた。それがまさか……!?


Act.29 ニューマシン、登場……!?

 

 

 

 

 

 

拓海「おはようございまーす」

 

 

 

池谷「おはよう、拓海、今日は樹は一緒じゃなかったのか……?」

 

 

 

拓海「今日はなんか緊急の用事が入って、少し遅れてくるって言ってましたよ」

 

 

 

池谷「そうか……ところで拓海」

 

 

 

拓海「何ですか……?」

 

 

 

池谷「お前の所にまた、挑戦状が来たぞ……!!」

 

 

 

拓海「えっ……またですかぁ……(やれやれ……最近急に忙しくなったなぁ……)」

 

 

 

池谷「ナイトキッズの、庄司慎吾って男からだ」

 

 

 

拓海「ナイトキッズ……この前の中里って人のチームですよね?」

 

 

 

池谷「そうだ、だがその男、普通じゃないぞ、今回ばかりはやめておいた方がいい」

 

 

 

拓海「どうしたんですか?」

 

 

 

池谷「そのバトル、とあるルールでやるって言ってたんだが、それがとんでもない……右手をガムテープでステアリングに縛ってバトルするっていうんだ……車は同じ排気量のテンロクだけど、向こうはFF、ハチロクはFRだ……車の動きが全く違うんだ、このルール、FRには危険すぎる……」

 

 

 

拓海「よくわかんないっすけど……逃げる気ないっすよ、オレ」

 

 

 

 

 

池谷「!?」

 

 

 

 

 

その返事に、池谷は凍り付いた。だが拓海は続ける。

 

 

 

 

 

 

拓海「いくら動きが違うからって、タイヤが4個付いててボディがあって、エンジンが乗ってるなら、同じ車じゃないですか、どんな条件であろうと、それは同じですよ」

 

 

 

 

 

池谷「拓海……」

 

 

 

 

 

池谷は拓海のことが心底心配になってきた。そこへ、一台の車が突然現れる……!!

 

 

 

 

 

 

\ブゥウウウウウウン/

 

 

 

池谷・拓海「いらっしゃいませ〜!!」

 

 

 

池谷「って!!」

 

 

 

 

 

 

 

\プップッ/

 

 

 

樹「ちわーっす!」

 

 

 

 

 

 

池谷「お前、それって……ハチロク〜〜!?!?」

 

 

 

 

 

 

樹は突然、カローラレビンに乗って出社してきた。

 

拓海の乗るトレノとは姉妹車だ。

 

 

 

 

 

 

池谷「樹〜、お前、隠してやがったなぁ〜!?このっこの〜っ!!」

 

 

 

樹「そうっすよ!サプライズでハチロクで登場ってわけですよォ!!」

 

 

 

池谷「お前いつの間に……」

 

 

 

樹「コイツに乗ってどんどん練習して、拓海とダブルダウンヒルエースってわけっすよ……!!くぅ〜〜!!」

 

 

 

池谷「お前がそこまで速くなれるのか〜!?」

 

 

 

樹「なってみせますよォ!!なんたって、俺には相棒の拓海がいるんっすよォ!!な、拓海!」

 

 

 

拓海「あっ……あぁ………」

 

 

 

樹「てことで池谷先輩、俺も秋名スピードスターズのメンバーとして、入れてくださいよォ!!」

 

 

 

池谷「よし、わかった!考えてやる!(まさか樹がハチロクを入手するとはなぁ……秋名スピードスターズにも正式にダウンヒラーが登場するか……でも樹が本当になれるのかぁ……?)」

 

 

 

 

 

 

そこに、話を聞きつけた店長が顔を出す。

 

 

 

店長「樹、お前いつの間に車買ったんだぁ?」

 

樹「この前買って、今日納車だったんっすよォ!バイト代貯めて、がんばりましたよォ!!」

 

店長「なるほど……バイト代でか……う〜ん、なんか嫌な予感するなぁ……」

 

樹「どうしたんっすかぁ、店長」

 

店長「樹、お前ちょっとボンネット開けてみろ」

 

樹「あ、はい、いいっすよぉ」

 

 

 

 

 

ボンネットを解錠する樹。

 

そして店長はボンネットを開け、じっくりとエンジン周りを見た。その後軽くため息を付き、ボンネットを閉じる。

 

  

 

 

 

 

店長「やっぱりだ………樹、お前間違えてるぞ」

 

樹「へ……?」

 

 

不思議そうな顔をする樹。

 

 

 

 

 

店長「これはハチロクじゃない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店長「ハチゴーだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束の間の沈黙の後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

池谷「ハーーーーッハッハッハッハッ!!ホント笑わせるぜ樹ィ!!ハチロクかと思ったら、ハチゴーだってよ!!ハチロクはDOHC、ハチゴーはSOHC、全く別物だぜ!!そんなのも確かめなかったのかよォ!!傑作だぜこりゃあ!!ハッハッハッ!!」

 

 

 

 

 

樹「ううっ…………(涙)」

 

 

 

 

 

拓海「ちょっと、言い過ぎじゃないですか池谷先輩」

 

店長「そうだぞ池谷、折角自分でお金貯めて自分の車買ったんだ……少しは褒めてやれよ」

 

池谷「そ、そうですね……ごめんよ樹、言い過ぎたよ」

 

樹「……いいんっすよ池谷先輩、誰の相談もなしに、みんなをビックリさせようと思って一人で車探したのが間違いだったんっすよぉ……(涙)」

 

 

 

 

 

一同「…………」

 

 

 

 

 

いくら陽気な樹でも、さすがにこれはショックだったようだ。

 

 

 

高校生にして初めて愛車を手にしたのだ。しかも、自らの力だけで……これは、その車がどんな車であろうと、称賛に値する努力だ。そこに……

 

 

 

 

 

拓海「すごいよ、樹は」

 

 

 

樹「へ……?」

 

 

 

 

 

さっきとは逆の意味できょとんとする樹。

 

 

 

 

 

拓海「俺にはできねぇよ、そんなこと……まだ高校生なのに、自分でお金貯めて車買うなんて……俺なんか、ただ親父の車に乗せられてるだけだから……」

 

 

 

 

 

樹「た……拓海ィイイイイイイイ!!!」

 

 

 

思わず拓海に抱きつく樹。

 

拓海「こら、やめろやめろ」

 

 

立ち直りが早く、いつもポジティブなのが、樹の最大の魅力だ。

 

 

 

 

 




頑張って自らの愛車を購入した樹。だが、ハチロクとハチゴーを間違えてしまったことは消えない事実だ。ところが、この間違いが後々、秋名スピードスターズを思わぬ展開へと導くきっかけになる……!!
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