もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら   作:にしむー

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拓海はとうふの配達前の紙コップに、高橋涼介からの花束の水を、文太からたっぷり注がれた。いつも通り池谷と共に配達に行き、いつもより多い量にも関わらず水をこぼさずに秋名山を上りきった。とうふの配達後にいつも通りかっ飛ばして秋名山を下る拓海だったが、いつもとは違っていた……それは、いつもより水の多い紙コップがもたらした恩恵だった。


Act.33 紙コップの真髄

 

 

 

 

 

 

拓海「じゃあ、帰りますよ、池谷先輩」

 

池谷「あぁ、わかった」

 

 

 

 

いつも通り側道から秋名の峠へと続く長い直線道路へ合流し、かっ飛ばす。ここで速度は160km/hほどに達するが、峠のスタート地点手前に緩い左コーナーがあるので、少し減速する。そして、スタート地点をそのままスルーし、恐ろしい速度で1コーナーに突入する。しかし、池谷はもうこの感覚には慣れきり、怖くはなくなっていた。しかし、今日の拓海はいつもと違うドライビングを見せた……!!

 

 

 

コーナー手前。

 

\ギャアアアアアア/

 

 

 

ドリフトのきっかけの作り方が、いつもよりシャープかつ短時間だ。

 

 

 

\ファン ファン ファアアアアアア/

 

 

 

 

そして、ステアリング操作をほとんどせず、ほぼアクセルワークのみで1コーナーをクリアしていった。

 

その他のコーナーや、その先のヘアピン、そしてその先もずっとそんな感じのコーナリングを繰り返す。

 

 

 

 

池谷「拓海、なんかいつもと様子が違うな」

 

拓海「気付いたんですよ、俺……ハンドルは曲がるキッカケのためだけに使って、あとはアクセルで曲がったほうが速いって」

 

池谷「確かにそうだな……いつもより勢いのあるドライビングだ……俺も参考になるよ」

 

 

 

 

池谷にとって、初めは何がどうなってるのか分からなかった拓海の走りも、ここまで慣れれば自動車の理論に詳しい池谷により分析が可能だ。

 

 

 

 

池谷「今の拓海……リアタイヤで曲がってるよ……リアのタイヤをアクセルでコントロールして、コーナリングしてるんだ」

 

拓海「通じましたね……池谷先輩にも、この感覚」

 

池谷「思いっきり踏み込めばテールスライドしてオーバーステア、つまりスライド量が大きくなってイン側に切れ込む。そして、小刻みに踏んだりパーシャル、つまり少し踏んだりすればリアに荷重が掛かってアンダーステア、つまりスライド量が減ってアウト側に寄る。逆に、アクセルを離せば、それはそれでリアの荷重が抜けてスライド量が増えてイン側に切れ込む。拓海は、それをうまく操って、アクセルだけでコーナリングしているんだ」

 

拓海「言われてみれば……たしかにそんな感じです。池谷先輩、説明が上手ですね」

 

池谷「なーに……こんだけ拓海のドライビングに付き合わせてもらってるんだ……俺ができることなんて、これくらいしかないよ」

 

拓海「この同乗走行、役に立ってるんなら良かったです。なんか親父も、池谷先輩のこと、気に掛けてるみたいでしたよ」

 

池谷「そうなのか……?」

 

 

 

 

 

そう、文太は池谷のような誠実で熱意のある人間に弱い。ついつい面倒を見たくなるのだ。だから、池谷がどこまで速くなるのか、文太も気にしている。そのため、ハチロクのチューンの主である旧友の政志に、S13のスペシャルチューンを提案したりしているわけだ。

 

 

 

 

 

そして池谷は、拓海のダウンヒルをもってしても会話できるほど、その感覚に慣れきっていた。あとは自分がそれを実践できようになるだけだ。

 

 

 

 

 

配達を終え、帰ってきたハチロクと二人。

 

拓海「親父、ただいま〜」

 

文太「おう」

 

池谷「親父さん、今日もお世話になりました!また明日もよろしくお願いします!」

 

文太「おう、拓海をよろしく頼むぜ」

 

池谷「わかりました!」

 

 

 

 

 

拓海「親父……わかったよ……紙コップの水を多く入れた意味が」

 

文太「そうか………(フッ、良い傾向だ……池谷の青年にも届いてりゃいいがな……)」

 

 

 

 

 

今後池谷は、拓海の走りを参考に、舵角の小さなコーナリング、アクセルワークのみでのコーナリング、リアタイヤの使い方に主眼をおいて、ドライビングの練習に励むことになる。

 

 

 

 

 

 

〜高橋涼介と拓海の決戦の日〜

 

 

 

夜9:50。いつも主役はギリギリにやってくる。

 

涼介「啓介、俺がいつか負けるかもしれないと思わせられたドライバーは、これまでに2人いる」

 

啓介「兄貴が負けるなんて……一体誰に……」

 

涼介「その一人は、啓介、お前だ」

 

啓介「俺……!?本当なのかそれは」

 

涼介「あぁ、お前からは天性のドライビングセンスを感じる。」

 

啓介「………」

 

涼介「そしてもう一人は……」

 

 

 

 

 

 

\ファアアアアアン ファアアアアアン/

 

タイミング良く現れる、その張本人。

 

 

 

 

 

 

言わずもがな、秋名のダウンヒルヒーロー────

 

 

 

 

 

 

藤原拓海────

 

 

 

 

 

 

涼介「だが実は、最近意外な人物が引っかかっている。その人物は、メカや理論にもよく精通している。そいつに負けるかは五分五分だ」

 

啓介「それは……どういう意味でだ……?」

 

涼介「ドライビングが先か、チームリーダーとしてが先か……そういうところだ」

 

啓介「噂には聞いてたが、まさか……!?」

 

 

 

 

 

 

\フォオオオオオ/\プシュー/\フォオオオオオ/

 

その男も、タイミングよく秋名のハチロクの後ろから現れた。

 

 

 

 

 

自動車によく精通し、メカやドラテクの理論も把握している。

 

拓海の類稀なるダウンヒルの恐怖を完全に克服し、分析してみせた男。

 

 

 

 

 

池谷浩一郎────!

 

 

 

 

 

池谷もなんと、高橋涼介の目に留まるほどに成長していたのだった……!!

 

 

 

 

 

\キュキューッ/

\バン/

 

 

 

 

拓海「あなたが……高橋涼介さん……ですか……?」

 

涼介「あぁ、よく来てくれた。歓迎するぜ」

 

拓海「俺が人より運転が上手いのは、薄々わかってきたんです……でも、本当にそんなに速いのかなって」

 

涼介「ふふっ……相変わらず面白い奴だ、お前は、自分で自分のことを、よく解っていないようだな」

 

拓海「そうなん……ですか……?」

 

涼介「あぁ、それに、ある一人の男のドライビングも豹変させて見せた……噂になってるんだ……秋名山のチームのリーダーを横に乗せて、毎日走っているそうじゃないか」

 

拓海「池谷先輩のことですか……?」

 

涼介「その男……池谷っていうのか……?俺の勘が間違ってなければ……その男……いや、その彼の率いるチームすら、今後とてつもなくビッグになっていく、そんな素質を感じるんだ」

 

拓海「そんな風に感じてたなんて、俺、知りませんでした」

 

涼介「まぁ無理もないさ……初めてここを訪れたときには、それは感じなかったからな……藤原拓海……お前が奴をそこまで引っ張り上げたんだ」

 

拓海「そんな……!!(毎日横に乗せて配達してたのが、そんなに効果があったなんて……!!)」

 

 

 

 

 

涼介「ふふっ、今夜のバトル、楽しくなりそうだ……それじゃあ、始めるか」

 

 

拓海「……わかりました」

 

 




遂に、拓海による秋名のハチロクと、高橋涼介とのバトルが開始される……しかし、スタート直後、そのバトルはまさかの局面を迎えるのであった……果たしてその出来事とは……!?
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