もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら 作:にしむー
\フォアアアアアア/\プシュー/\フォアアアアアア/
沙雪「(今の真子……最高に乗れてるよ……走り屋ってのは、対向車が来ても避けられるように、多少のマージンを取って走るもの……今の真子には、そのマージンが全くない!すごいよ、真子!!)真子!絶好調!!この調子!!」
真子「覚悟してね、沙雪!(今まで沢山バトルしてきたけど、こんな気分にさせられることは初めて……とってもハードなはずなのに、すごく楽しい……後ろのハチロクの子、不思議な子ね……)」
これまでにないくらい碓氷峠を攻める真子。だか、拓海はそれに喰らい付いていた!!
拓海「(相手も同じ、車に乗ってるんだ……相手にできて、自分にできないってことないだろ……!!)」
そして2台は碓氷峠名物、C-121コーナーへと差し掛かる……!!
沙雪「さぁ、いよいよC-121よ……覚悟はいい?」
真子「もちろんよ……!!」
沙雪「対向車なし!!GO!!」
このC-121コーナーは、入り口はセンターラインが広く取られて道幅が広くなっているが、出口で元の道幅に戻り、レコードラインが1本しか取れず、なおかつ高速で突っ込めばラインの修正の効かないという、難しいコーナーだ。また、外側に待避所があり、有名なギャラリーコーナーでもある。
ギャラリー1「おぉ、この音は、インパクトブルーのシルエイティ!?」
ギャラリー2「誰かとバトルしてるのかァ!?」
\シャアアアアアアア/
ギャラリー一同「うわぁああああ!!!!!」
ギャラリー1「見たかよ今の!!ヤベェ突っ込みだったぜ!?ここまで気い合入った突っ込み初めて見たぜ!!」
ギャラリー2「しかもあのインパクトブルーの突っ込みに、ハチロクが付いて行ったぞ……アイツまさか……最近有名な秋名のハチロク……!?」
ギャラリー1「あの二人の突っ込みに付いて行った奴なんて、初めて見たぜ!何モンだ!?あのハチロク!?」
沙雪「突っ込み、ライン、カンペキ!!このまま立ち上がるよ!!」
真子「………!!」
拓海「…………!!」
\シャアアアアアアア/
沙雪「…………!!あの子……ウソでしょ……!?」
C-121コーナーを、2台はクリアした。
そして拓海のハチロクは、この難しいコーナーで、真子と沙雪のシルエイティに付いて行ってみせた……!!
真子「ねぇ沙雪、私本当に乗れてる?今までにないほど突っ込んだのに、どうして離れないの……!?」
沙雪「何弱気になってんの真子!そんなのいつもの真子じゃないよ!!」
真子「そっちこそただ文句言ってるだけじゃないの……そんなんじゃただパワーウェイトレシオを悪くするだけの錘(おもり)だよ!!49kgのハンデね」
沙雪「47kg!!」
沙雪「ふふっ……でもその意気よ、真子……死ぬ気で攻めなさい……!!」
真子「わかったわ……!!どうなっても知らないからね、沙雪……!!」
C-121の後のヘアピンも、左に少し曲がった直後の急右ヘアピンなので、非常に難易度が高い。そこもとてつもない速度で突っ込んでいく。しかし……
\ファアアアアアアア/
ハチロクは、全く離れる様子がない。
沙雪「あの子すごいよ!もう勝ち負けなんてどうだっていい!楽しもうよ!このバトル!!」
真子「OK沙雪!こんな気分で走れるなんて、最高よ!!」
ずっと今までで最高の走りを続ける真子と沙雪のシルエイティ。そしてピッタリと張り付く拓海のハチロク。
ギャラリーから見ていてもわかる。名実ともに最高のバトルだ。
沙雪「!?」
何かを感じ取った沙雪。
沙雪「真子!気をつけて!2つ先のコーナー、対向車来るよ!!」
真子「わかった!」
沙雪のナビは、非常に的確だ。路面状況、後ろのマシンの動向から、対向車が来るコーナーのタイミングまで、外したことがない。最高のコンビネーションだからこそ織り成せる、奇跡の技だ。
対向車運転席「おっ!誰かバトルしてるなぁ!?一体誰がやってるんだァ?」
対向車助手席「音からして多分やっぱりインパクトブルーのシルエイティかもよ?今回もぶっちぎり……?ん??」
彼らは違和感を感じた。そこには別のエキゾーストノートが混じっていた。直列4気筒、自然吸気エンジンの音だ。
そしてその瞬間は来た……!!
\フォン!/
\ファン!/
対向車2人「うわぁああああ!!」
対向車助手席「見たかよ今の!!とんでもない速さで抜けてったぜ!!」
対向車運転席「ヒェエエエエ!!肝が冷えたぜ……インパクトブルーのシルエイティに、一台喰い付いていってたぞ!?何なんだ今のは!?」
沙雪「対向車パス!最高だよ!真子!!」
真子「沙雪のナビも完璧よ!このバトル、すごく楽しい!!」
しかし、とうとうそのテンションの糸が、切れるときが訪れた……
沙雪「ちょっ、ヤバい真子!突っ込みすぎ!!」
真子「…………!!ダメっ!!立て直せない……!!」
真子はテンションのあまり突っ込みすぎてしまい、アウト側の壁との接触を避けようとスピンモードに入る。
真子・沙雪「(お願いっ………避けてっ………!!)」
拓海「くっ…………!!」
\ギャアアアアアアア/\ファン ファン ファン/
すべてを察し、見事なマシンコントロールをする拓海。
\シュンン/
\ファンンンンン ファンンンンン/
\ギャアアアアアアア/
見事にスピンするシルエイティをパスし、スピンターンで止まった拓海。
シルエイティの近くに駆け寄る。
拓海「大丈夫……ですか……?」
沙雪「ホントあんた、只者じゃないわね……今のを避けるなんて……普通なら接触事故モンよ……アンタの勝ち」
拓海「でっ、でも……」
沙雪「いいからアンタの勝ち!!私達を後追いで抜いたのには変わりないんだから!ホント、不思議な子よね……」
真子「ごめんなさい……わたしのミスで、危険な目に遭わせてしまって……」
拓海「い……いえ……」
スピンしたシルエイティを立て直し、スタート地点に戻る2台。
そして、スタート地点で待つ3人。
樹「あっ!戻ってきたっすよォ!!」
健二「でも、ペース落としてるな……決着がついたのか……さすがにあの走りにゃ拓海も付いてけなかったか……」
しかし、帰ってきた沙雪から発せられた言葉は、意外なものだった……!!
沙雪「あたしらの負けよ」
健二「シルエイティが負けて………って、エェェェェェ!?!?」
樹「拓海が……勝った……!?」
沙雪「その通りよ。あたしらが攻めすぎて、スピンしちゃったの。もっとも、それまでずっとこの子がピッタリ付いてきてたけどね。地元のあたしらが、初めての子にここまでやられちゃあ……その時点で負けみたいなもんよ」
健二・樹「うそ……だろ……!?」
顔を見合わせる二人。
沙雪「拓海くん……だったっけ……?不思議で仕方ないんだけど、どうしてあたしらにあそこまで付いて来れたの?」
拓海「どうもこうも、相手にできることなら、自分にもできないことはない……そう思って付いていった……ただ、それだけです」
沙雪「やっぱり不思議な子ね……(しかも……何かかわいーーー!!)」
一方……
池谷「(真子ちゃん……)」
真子「…………」
池谷「あっあっ……あの……」
真子「…………っ」
沙雪「そーだ!!いいこと思いついた!!今度みんなで、どっか遊びに行きましょ!!」
真子「ちょ、ちょっと沙雪!!」
沙雪「いいからいいから!どうする?夏なんだし、プールなんてどう?」
健二「おい、俺たちが本当にいいのか?」
樹「いいっすねぇ!!行きたいですよォ!!」
沙雪「じゃあ決まり!!みんな日程の合う日、分かり次第教えてよね!真子、あの人の番号知ってるんでしょ?」
真子「えっ、ええ……」
沙雪「じゃあそっちはそのお兄さんを通じて真子に連絡ちょうだい!あたしらは土日ならいつでもOKだから!!」
池谷「…………」
真子「…………」
複雑な心境の二人。しかし、池谷が真子に会うのがこれで最後にはならなかった。
真子「ちょっと沙雪!いくら何でも強引すぎない!?」
沙雪「これぐらいが丁度いいのよ!じゃあんたたち、そういうことでよろしく!いいバトルだったよ!じゃあね!!」
これは実は、真子に対して何かを察していた沙雪の、粋な計らいだった。
だから、半ば強引に会う機会を作ったのだ。こういう勘は、やはり女性だからこそ気付けるものだった。
\バン/
\フォオオオオオ/
走り去っていくシルエイティの後ろ姿────
池谷「真子ちゃん……」
もはや言葉にならない声を発し続けるしかない池谷だった。
バトルは、シルエイティのスピンにより、まさかの拓海の勝利で幕を閉じた。そして、まさかの沙雪の計らいにより、池谷は再び真子に会うチャンスを得た。すれ違ったままの2人。果たして次回プールで会う時、それを挽回することができるのだろうか……?