もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら   作:にしむー

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(長らくお待たせしました。筆者より)

謎のランエボⅣは、秋名の偵察の帰りにダウンヒルに入る。そこで、『ツートンのS13』に、苦手の中低速直角コーナーで「撃墜」されてしまう。下りを攻めるのをやめたエボⅣの乗り手・清次は、長い全開区間を前に『ツートンのS13』の姿を見失う。ギャラリー達はその姿を見ており、S13のあまりの突っ込みに驚愕したあと、見慣れないランエボが通過し、不穏な空気が漂う。そしてその予感は、見事に的中してしまうのだった……!!


Act.47 戦闘機編隊への対抗策

 

 

 

 

 

〜とある土曜日の朝〜

 

 

 

健二は工場の夜勤上がり、速攻太田市から渋川市の池谷達のGSへ向かう。

 

 

健二「おい、池谷!!速報だ!!マズいことになりそうだぞ……」

 

池谷「おう健二、久しぶりじゃないか……慌ててどうしたんだ……?」

 

健二「栃木にある日光いろは坂からやってきたランエボ軍団が、群馬エリアを一ヶ月で総ナメにするって噂だ……この前赤城山の「サンダーファイヤー(※)」もやられたそうだ……」

 

「サンダーファイヤー」とは、赤城山をホームコースとするモブチームだ。実力としては、以前の秋名スピードスターズと同じくらいである。(※アニメ 頭文字D second stage に登場した紫の180SXのこと)

 

池谷「ほう……それで……?」

 

健二「どうやら今夜、妙義に乗り込むそうだ……中里と「ヒルクライム」で勝負するそうだ……」

 

池谷「なるほどな……ヒルクライム……」

 

健二「池谷、お前どうなると思う?」

 

池谷「あの妙義最速の中里か……拓海の横に乗ってバトルを見学したけど、後半に急にペースが落ちた……だがそれはダウンヒルでの話だ……勝つ確率は……5分5分ってとこだろう」

 

健二「お前……やけに冷静だな……」

 

池谷「実は一度、そのランエボ軍団らしき1台と、秋名で遭遇してるんだ。エボⅣだったな……豪快な走りだったけど、2連ヘアピン前の直角コーナーで、抜いちまったよ」

 

健二「そいつらは、本気で走ってたのか……?」

 

池谷「さあな……だが、俺が抜いたらすぐにペースダウンして付いてこなくなった……まだ実力は読み切れていない」

 

 

 

 

接客を終え、健二達が話してるのを小耳に挟んだ樹がやってきた。

 

 

 

 

樹「あっ!健二先輩!お久しぶりっす!!新しい仕事は順調っすかァ?」

 

健二「結構な体力仕事で大変だけど、なんとかやってるよ……俺の180のためだ、これくらいどうってことないよ」

 

健二は以前話した通り、愛車の180を大化けさせるため、太田市の自動車工場で期間従業員として働き始めた。秋名スピードスターズには、ヒルクライム担当がいないのだ。池谷に負けじと、健二も奮闘を始めたのだった。

 

 

 

 

樹「そうっすかァ……楽しみっすねェ〜、健二先輩の180か、どこまで化けるのか……くぅ〜!!」

 

 

 

 

健二の180、外装は既にフルエアロに進化している。エンジンはノーマルだとかなりマージンが取られているので200馬力程度だが、2リッターターボエンジンであるSR20なら、ランエボと同じクラスだ。吸排気系にブーストアップ、それに合わせたECU書き換えだけで、優に300馬力は超えるはずだ。あとは足回りとブレーキで、峠仕様としてはフルチューン、といったところだ。

 

 

 

 

樹「ところで、この前仕事上がりに拓海と秋名湖までドライブに行ったんっすよ、ハチゴーで」

 

健二「それが、どうかしたのか……?」

 

樹「今話してた奴かどうかわかんないんっすけど、秋名湖で見たんっすよ……白いランエボ……エボⅣでしたよ」

 

池谷「同じだな……ひょっとしたら俺が抜いたの、そいつかもしれない」

 

樹「ほんとっすかァ!?くぅ〜!!さすが池谷先輩!!あのランエボ野郎、こっちに向かって歩いてきて、さんざん拓海のハチロクのことけなしてきたんっすよォ!長い髪をチョンマゲみたいに括って、『ハチロクなんか乗ってる奴はアウトオブ眼中!』なんて言って……許せなかったんっすよォ!!見たこともないくせに、ホントムカつきますよォ!!」

 

池谷「確かにそう聞いたらあのランエボ野郎、ムカつくな……俺も何かしら準備しとかないと……念のため、S13のタイヤ、食い付く方に付け替えとくか」

 

樹「今の池谷先輩なら、あんなランエボ野郎、ぶっちぎりっすよォ!!」

 

池谷「普通なら、あのランエボ野郎に、俺が出るのが真っ当なところだ……だが、拓海のハチロクをそこまでけなされちゃあな……」

 

 

 

 

池谷には、一つ考えがあった。エンジンのパワーアップだ。池谷のS13は前期型で、CA18エンジンはSR20に劣る1.8リッターの排気量しかない。だが、ラリースペシャルのブルーバードSSS-R用CA18DET-Rが載る今、ハイカムにイギリスの名門コスワース製の鍛造ピストンが奢られている。

 

そしてSR20との最大の違いは、エンジンブロックが鋳鉄製であることだ。十分なブーストアップに耐えられるエンジン、むしろそれを見越したエンジンといえるのだ。池谷はまず300馬力程度を考えている。1ヶ月前ならともあれ、今の池谷なら、操れる。

 

池谷は、ランエボ軍団を前に、その計画を遂行するのだろうか……?

 

 

 

樹「そうだ!ハチロクのターボ化なんてどうですか……?そしたらあのランエボ野郎に」

 

池谷「いや、その必要はない」

 

樹「それじゃあ、拓海が負けちゃいますよォ!!流石に今度の相手は、ランエボですよォ!!」

 

池谷「拓海は、今の状態のハチロクで勝ち続けてきたんだ……どんな相手にもな……そして横に乗ってたからわかる……拓海なら……ランエボにも勝てる……!!勝負は終盤だ……ランエボは絶対にペースが落ちる……あの走りだと、確実にな……あのバランスだからこそ、秋名のハチロクは真価を発揮するんだ……俺はそう体感した」

 

樹「池谷先輩……」

 

 

 

池谷らしいといえばらしいが、理論的で冷静な状況判断と分析。拓海はそのままでいい、むしろそのままでこそ真価を発揮するという。

 

 

 

黙々と仕事をこなす拓海だったが、話は聞こえていた。

 

 

 

池谷「それでいいよな、拓海」

 

拓海「何が何だか、わからないっすけど……俺、やりますよ」

 

池谷「よし、わかった!」

 

 

 




池谷は、ランエボ軍団が秋名に「進駐」してきた時は、真っ先に拓海の乗る秋名のハチロクを「出撃」させることを選んだ。それは、ハチロクと中里とのバトルで、一度横に乗ってバトルを見学していたからこその決断だった。池谷は全てを見切っていた。この後、池谷はただのチームリーダーではなくなっていく。その兆候が、このランエボ軍団進駐を境に、開花していくのだった……!!
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