もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら 作:にしむー
〜エンペラー進駐前の水曜日〜
政志「ほい、完成したよ、キミのS13」
池谷「あっ……ありがとうございます!!エンジン掛けてみてもいいですか!?」
政志「おうよ」
S13にキーを刺す池谷。そして……!!
\キューッキュッキュッキュッキュッ/
\ボワァアアアアンンンンン/
明らかに変わったエキゾーストノートに、高揚感を隠せない池谷。
池谷「これが本当に……俺のS13ですか……!?」
政志「そうだぜ?キミなら乗りこなせるはずさ」
池谷「それは一体……?」
政志「キミは自分のテクニックに自覚あるかい?この前会った時より、格段に進歩してるぜ?ほら、このタイヤの減り方」
政志と一緒に様子を見る池谷。
政志「下手なドライバーだと、フロントタイヤを強引にこじった跡があったり、ヘタにドリフトさせてリアタイヤが丸坊主になってたりするんだ……君にはその兆候が全く見えない……あのハチロクの減り方と、ほとんど互角なんだよ」
池谷「!?」
衝撃の事実を聞く池谷。
政志「そしてキミ、空気圧のセッティングを綿密に行っただろ?」
池谷「……!?何でわかったんですか!?」
政志「シルビアとか以上のクラスの車だと、秋名のダウンヒルじゃあ普通、最後の方タイヤがタレるんだよ……でも君のタイヤには、タレながら強引に攻め込んだ形跡が一切ない……下り、最後まで走りきれるだろ……このS13」
池谷「はい、勤め先の店長の祐一さんに教わったもので……」
政志「なるほど……アイツが吹き込んだわけか……いい線いってるよ、キミの車の走らせ方とセッティング」
池谷「ありがとうごさいます!!」
政志「てことで、このS13は大体300馬力は出るようになった。それに合わせて足回りもセッティングし直してある……今週末、何かあるみてぇだな……自信持って行ってきな!」
池谷「わかりました!!」
早速、エンペラーが進駐してくる3日前ではあるが、池谷は秋名山へ向かった。
そして、最初はヒルクライムだ。
池谷「くっ……これはっ……!!」
前とは比較にならないパワーに、悶絶する池谷。
だが、コーナー区間に入り、政志の言っていた真髄を知る。
池谷「なんだ……これ……この前までのダウンヒルと同じ感覚で曲がれる……すげぇ!すげぇぞ!S13!!」
それでいて、ストレートでは以前とは比較にならないほどのスピードが乗る。
池谷「これだ……この感覚だ……これなら……イケる……!!」
このあと池谷は何本も練習し、それをエンペラーが進駐してくる日まで繰り返した。
〜エンペラー進駐日当日〜
京一「それじゃあ、この秋名で一番速いドライバーを出してもらおう」
池谷「何言ってるんだ、そこにいるじゃないか」
池谷は秋名のハチロクを指した。
清次「あァ!?ふざけてんじゃねぇぞ!ハチロク相手にバトルしに来たつもりはねェぞ!!(って……ん……?このハチロクのドライバー……いつかの湖のほとりで見たアイツ……)」
京一「……!!」
何かに勘づいた京一。
だが清次は続ける。
清次「それよりもこの前のS13だ……俺たちがコースに慣れてなかったとはいえ、抜かれたのは事実だ……おい、S13のお前!なぜお前が出てこない!?とっとと車出しやがれ!!」
池谷「生憎だな……ハチロクがポンコツって言うんなら、そのお前たちが言うポンコツに勝ってから、S13と勝負するんだな……」
ガラの悪い相手を前にしても、全くひるまない池谷。本当にあれから、池谷は何かが変わってしまったようだった。
京一「あのS13の野郎の言う通りだ……気を抜くな清次……このハチロク、見た瞬間、電気みたいなもんが走った……あのS13とは比較にならないかもしれない……普通じゃないぞ、このハチロク……シミュレーション……3で行け……!!」
清次「あァ?S13はともかく、ハチロク相手にシミュレーション3!?」
エンペラーが遠征用に考えた作戦パターンは3つある。
シミュレーション1は先行ブッちぎり、シミュレーション2は前半様子を見て中盤からスパートをかける作戦、そして今回のシミュレーション3は……前半わざと後ろに付き相手の弱点を見切り、終盤に一気にスパートをかけてその弱点を付くというものだ。相手が最も強いときに使う作戦が、このシミュレーション3というわけだ。
池谷「じゃあカウントは俺が」
京一「いや、カウントは要らない……戦闘力の劣るマシンが、好きなタイミングでスタートする。間を取って、俺たちがスタートする。これを俺達は、ハンディキャップ方式と呼んでるがな」
池谷「それでいいか、拓海」
拓海「コクリ」
池谷「思いっきり行って来い、拓海!!」
\コクン/
ギヤを入れる拓海。そして……!!
\キューキュキュキュキュ/
ギャラリー「ハチロクが飛び出したぞ」
樹「いっけぇ〜!拓海ィ〜!!」
清次「フッ………!!」
\キューキュキュキュキュ/
時間を置いて、清次のエボⅣも飛び出した!!
そしてエボⅣは、秋名のハチロクにすぐ追いついてしまう。
それでもシミュレーション3を遵守する清次。
次第にイラついてくる。
清次「くっそォ……それにしても俺ァ、何でこんなにイラついてんだァ!?」
そして、スケートリンク前の全開区間で、とうとう我慢できなくなってしまった……
清次「かァアアアアアア!!いっちまえェェェ!!」
とうとう京一の指示を無視し、前に出た、出てしまった清次。
清次「へっ……スカッとしたぜ……シミュレーション3じゃなくたってよォ京一、勝ちゃア文句ねぇんだろうが勝ちゃア!!」
一方、最終セクションには……
賢太「啓介さん……今度ばかりは、ハチロクに勝ち目ないんじゃないっすかねぇ……」
啓介「峠はそうシンプルじゃない……アニキが見物するならここにしろって言うんだ……なにか意味があってのことだろう……(俺はなぜか知らないが……あのハチロクが負けるところを……見たくないんだ……こんなところで、俺とのリベンジマッチを前に、負けんじゃねえぞ……!!)」
赤城レッドサンズの、高橋啓介と、その舎弟的存在の賢太が、ふもと近くのギャラリーのいない場所でハチロクを待っていた。
とうとう始まってしまった、ハチロクとランエボの無謀とも言えるバトル。だが無謀なのは、前半に限っての話だった。そしてこのバトルは衝撃の結末を迎える……更にその後、誰も予想していなかった展開に、エンペラーは巻き込まれる……今週末の秋名は、とある一人の青年により、更に大荒れになることになる……!!