もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら 作:にしむー
京一「スタート5秒前、4、3、2、1、GO!」
\キューキュキュキュキュ/
両者一斉にスタートした。無論、初期発進は4WDのエボⅣが断然有利だ。佐竹も、エボⅣに乗るドライバーだ。マシンの戦闘力は、清次と殆ど変わらない。
そして佐竹は、京一の指示通り、シミュレーション2、つまり最初後ろに付く作戦を取った。京一としては、おおむね妙義山での中里とのバトルと同じような結末になると踏んでいた。
後ろに付いて様子見、相手が遅ければ煽ってプレッシャーをかける作戦だ。プレッシャーをかければ相手は簡単にミスを冒し、軽々と前に出られるのだ。
池谷が先行でスタートしたバトル。序盤は急勾配の中低速ヘアピンが連続した後、一気に全開ストレートへ差し掛かり、フルブレーキングからの低速ヘアピンへと差し掛かる。
\シャアアアアアア/
佐竹「へっ、カニ走りのFRでヒルクライムなんて、舐めてかかってやがるぜ……煽りちらしてクラッシュさせてやる……そして清次さんの敵を取ってやるぜ!!」
ヒルクライムは、ダウンヒルと違ってタイヤやブレーキへの負荷は少ない。パワーのある車は、思いっきりブッ飛ばせる好条件のコンディションだ。
しかし……それは池谷も同じだった……!!
\シャアアアアアア/
池谷「へっ、大したことないぜ、このエボⅣ……所詮車に乗せられてるだけの連中だ」
日産のFR車全般に言えることだが、リアのサスペンション形式はマルチリンクだ。最高級と言われるダブルウィッシュボーンの、更に変異型である。ゆえに、FRながらもしっかりトラクションのかかる秀逸な特性を持っている。池谷が、S13のパワーアップ後ヒルクライムを初めて走って、しっくり来た感覚とは、これなのだ。ノーマルの、つまりメーカーのノウハウ、設計者の意図を外さない、そんな絶妙なセッティングが、政志の手によりなされていたのだ……!!
\フォン フォン フォアアアアアアアアア/
池谷「…………………」
\ギャアアアアアアア/\フォオオオオオオ/
佐竹「見てろよFR小僧め……4WDの真髄を見せてやる……!!」
中低速区間を抜け、全開ストレートに入るS13とランエボ。
ストレートスピードは拮抗している。駆け引きの一切ない膠着状態だ。
しかし、ここでS13がFRの真髄を見せる……!!
\フォンンンンンンン フォンンンンンン/
\ギャアアアアアア/
コーナーのかなり手前からスライド体制に入る。そして……!!
\ギャアアアアアアア/\フォアアアアアアア/
ランエボには到底不可能な突っ込みで、恐ろしい速さでコーナーに進入、そしてスピードを維持したまま、マルチリンクサス特有の安定感のあるトラクションで、立ち上がっていった。
\ギャアアアアアアア/
\フォオオオオオオ/
佐竹のエボⅣの立ち上がり加速はかなりのものだった。
だがそれ以前に、進入スピードがS13の比にはならなかった。
ヘアピン区間が続くセクション。立ち上がり加速に勝るも、突っ込みのスピードでそれを凌駕される佐竹。シミュレーション2どころか、どんどん離されていく……
無線から、京一の元へ連絡が入る。それは、京一の予想を遥かに上回っていた。今頃、佐竹がS13を上りで煽っていると考えていたからだ。
佐竹「何なんだこりゃア!?上りの立ち上がりをもってしてもあのS13に追いつけないってのかァ!?このオレのエボⅣが!!」
池谷「…………………」
相変わらず淡々と攻め続ける池谷。澄ました顔をして、とんでもない走りをしていく。
ギャラリーA「うおおおおお!!池谷のS13が、あのランエボ軍団を突き放してるぜ!?」
ギャラリーB「秋名スピードスターズ、最近マジで本気だからなぁ……このまま上りでもあいつらを打ち負かしてやってくれよ!!」
そして5連ヘアピンを抜けた後、S13の姿は、佐竹のはるか彼方にまで遠のいていた……
佐竹「これじゃあシミュレーション2どころじゃねぇ……やばい……この後京一さんにどんな仕打ちをされるか……意地でも追いついてやる……!!」
しかし、戦況は一向に変わることはなかった。
スケートリンク前、2連ヘアピン、直角コーナー、ヘアピンからのS字、わずかな全開区間を超え、いよいよ最終ヘアピンまで来た。そして、ギャラリーの歓声は、最高潮に達した……!!
\ワァアアアアアアアア!!!!/
\フォン フォン フォアアアアアアアア/
そして高速セクションを抜け、最終コーナーを立ち上がる……!!
\フォアアアアアアア/\プシュー/\フォアアアアアアア/
最終ストレートへと姿を現した池谷のS13。
樹「池谷せんぱぁいっ!!!!やったぁ〜!!」
遅れて来る佐竹のエボⅣ。ブーイングの嵐。
ギャラリー1「とっとと消えやがれ!このクソランエボ軍団!!」
ギャラリー2「群馬エリアを散々舐めやがったお返しだぜ!!」
中には唾を吐く者までいた。
佐竹「くくっ……クソォ……」
マシンを降りる両者。
池谷「どうだ、気分は……スッキリしただろう」
佐竹「きっ……貴様……!!」
殴りかかろうとした佐竹。しかし……ギャラリーがそれを許さなかった……!!
A「ふざけんな!!さんざん群馬エリアをバカにしたくせに!!」
B「お前は実力で負けたんだ!ランエボなんてWRCマシンみたいなのに乗りながらな!!」
羽交い締めにされる佐竹。
佐竹「くっ……覚えとけよ……いつか必ずリベンジしてやるからな……!!」
\フォオオオオオオ/
そそくさと走り去っていった。
ふもとで待つ京一。結果は既に知っていた。
佐竹「京一さん……すみませんでした……」
京一「フッ……初めから期待なんかしていない……清次が負けた時点で、俺たちの敗北は確定だったんだ……かといって、ヒルクライムを挑まれて逃げたと言われるのもシャクだからな……それでお前を選んだまでの話だ。最初からヒルクライムで清次を走らせておけばよかった……これは俺のミスだ」
佐竹「くっ……」
清次「ううっ……」
群馬エリアを総ナメにすると宣言していたランエボ軍団、エンペラーは、この秋名の峠で、ダウンヒル・ヒルクライム共に総ナメにされるという皮肉な結果に終わった。もはやプライドはボロボロに引き裂かれた。群馬エリア総ナメ作戦は失敗に終わり、いよいよ京一は涼介とのリターンマッチのみに焦点を絞ることになった。だが、赤城レッドサンズは、地元ではバトルしない。一体、どこでバトルすることになるのだろうか……!?