もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら 作:にしむー
〜数週間前〜
文太「よう、祐一」
祐一(店長)「なんだァ文太、こんな時間に」
(便宜上、今話のみ店長は『祐一』で統一)
閉店後のGSに顔を出した文太。
文太「ちょっとお前に見せたいもんがあってなぁ」
祐一「意味ありげだなァ文太」
文太のハチロクにつられて祐一が連れてこられた場所……それは……
政志「よーう文太、祐一も連れて来たなァ」
祐一「よう政志、一体何なんだァ?」
いきなり政志の工場に連れてこられて、戸惑う祐一。
政志「もう文太のハチロクのエンジン、だいぶ使い込んでるよなァ」
文太「あぁ……」
政志「そろそろ逝っちまうだろうな……このエンジン」
文太「そうだな……」
祐一「おい、まさか、それって……」
そして、祐一がそこで見せられたものは、驚愕のものだった……!!
政志「いいか?見とけよ……?」
\バサッ/
エンジンカバーをめくる政志。そこには、こんなところに存在していいはずのないものが、鎮座していた……!!
文太「どうだ……驚いただろ……」
祐一「驚いたなんてもんじゃない……ブッ飛んだよ……!!」
政志「コイツがハチロクの心臓にブチ込まれると考えたら、ゾクゾクしちまうよなァ」
文太「あぁ、ゾクゾクするねぇ」
祐一「じゃあ文太、近いうちにこのエンジンを……」
文太「いや、まだだねぇ……」
祐一「何でだよ!拓海くらいの腕があれば、こんなのすぐ乗りこなせるだろう!?」
文太「……………」
少しの沈黙の後、文太は続ける。
文太「あのヘタクソにはまだ早い……」
祐一「おいおいヘタクソって……お前には敵わないかもしれないが、ヘタクソってことは……」
文太「アイツには、今のハチロクでやり残したことが、まだ一つだけあるんだ……」
意味ありげに語る文太。
祐一「そのやり残したことってのは……?」
文太「………………負けることだ」
あまりの残酷な回答に驚く祐一。
祐一「おい!!それはあんまりじゃねえかァ!?拓海は今まで、どんな相手にも勝ち続けてきたんだぜ?」
それでも文太は続ける。
文太「そこが気に食わないんだよなぁ……負けることからしか得られないことがある……パワーの有難みだ……相手に戦闘力の劣るマシンで、腕だけで立ち向かう……その心意気はいいんだがな……車の持つポテンシャルを、最大限、最後の一滴まで絞り尽くして、それでも勝てない悔しさを、アイツはまだ知らない」
祐一「…………」
返す言葉がない祐一。
政志「いずれにせよ、このハチロクのエンジン、終わりが近いぜ?負けるのが先か、エンジンが先か」
文太「そうだなぁ……そろそろアイツにも、負けというものを味わわせてやりたいもんだがなぁ……」
祐一「そんな……」
政志「だが、その時がこの化け物エンジンが乗る時だぜ?」
祐一「まぁな……(拓海が負けるところは見たくない……だがこのエンジンが載ったハチロクも早く見てみたい……あぁ~俺はどうすりゃいいんだァ!?)」
2つの意志が交錯し、葛藤する祐一。
拓海が梅田に乗り込む前、実は秘密裏にこんなやりとりがあったのだ。負けるのが先が、エンジンが先が……それは梅田で、明らかになってしまうのであろうか……!?