もしも秋名スピードスターズが北関東最速クラスのチームだったら 作:にしむー
池谷「樹!大変だ!拓海がランエボ野郎の挑発に乗って、桐生の梅田まで行ったって話だ!!」
樹「マジっすか!?拓海ィ……今度ばかりは……」
横で聞いていた店長。
店長(祐一)「(何……?拓海が梅田に……?嫌な予感するなァ……一応文太にも連絡つけておくか)」
その頃、梅田では……
\ファアアアアアアン ファアアアアアアン/
初めてのコースを、全開で走る拓海。
しかし、かなりの距離を開けてスタートしたエボIIIは、すぐにハチロクに追いついてしまう……
京一「ダウンヒルなら戦闘力のあったハチロクだが、平坦となると話は変わる……ハイパワーマシンへのタイヤやブレーキの負荷も少ない……」
あえて抜かしはせず、ハチロクを煽る京一。
拓海「……………」
キレた走りを続ける拓海。それはまるで、ある時の碓氷峠の池谷のようだった。だがそんなハチロクも、エボIIIを前に無力に等しかった。それでも京一は、わざと後ろに付き拓海の走りをじっくりと観察する。
京一「奴はここを初めて走る……それにこのマシンでこのペース……パワーが発揮できるからいいものの、コーナリングはまるで曲芸だ……神業のような峠センスだ」
京一はわかっていた。マシンで勝っているからハチロクに追いつけること……だが、勝ちは勝ち、負けは負け。それが京一の信念だ。
〜その頃、渋川市〜
文太「(ほう……拓海が梅田にねぇ……しっかし何だ……妙な胸騒ぎがするな……)」
そして両者、前半区間で唯一のダウンヒル、ヘアピン前のストレートに入る。
京一「さて……ここで奴が得意のダウンヒルセクション……下りながら一気にブレーキングしてヘアピンだ……」
しかし……!!
京一「アイツ!!ヤバい!!次はヘアピンだぞ!?流石に判らなかったか!?」
だが……!!
\ギャアアアアアアアア/
\ファン ファン/
ストレート後のヘアピンは、複合コーナーになっている。
入り口は緩く、中速コーナーに見えるのだが……突如としてインに切れ込み、ヘアピンであることをようやく気付かせる。
しかし拓海は、マシンをスライドさせながら、中速コーナーにみせかけた箇所で見事にヘアピンに対応できるスピードまでコントロールしてみせたのだ。さすがの京一とエボIIIでも、この走りには到底付いて行けなかった。
京一「アイツ……あの突っ込みでここをクリアしやがった……普通ならハイスピードアンダーでクラッシュだ……信じられないようだが……神業のようなマシンコントロールだ」
その後、連続ヘアピンの後、集落セクションへと差し掛かる。
京一「見ていて惚れ惚れする……こんな走りをする奴に、今まで会ったことがない……!!」
集落セクションは、道路の両端に白線が引かれていない。夜間の道路は、外側の白線がないと、一気に車幅感覚が解らなくなる。しかし拓海は、それをモノともせずとてつもないペースで駆け抜ける。さすがに京一も焦りだす……かに見えた。
京一「アイツ……とてつもない……!!清次が負けるのもわかる……どうする……!?このまま先行で行かせて最後のストレートでチギるか、それとも……」
だが、すぐに我に返る京一。
「……フッ、俺らしくもねぇ……答えは一つだ……ここでカッとなってチャージするのは、愚の骨頂だ……」
そして……!!
\フォオオオオオオ/\パン/\フォオオオオオオ/
拓海「……………!!」
林道手前の、一時的に幅が広くなる、上り始めの連続S字セクションで、エボIIIは一気にアクセル全開、京一はハチロクを苦もなく抜き去った。
このセクション、コーナー自体はうねうねしているが、直線的なラインを描けば結構なスピードが乗る。もっとも、そのパワーがあればの話だが……
拓海「くっ………!!」
連続S字セクションを、全開で駆け抜ける拓海。しかし、エボIIIの圧倒的なパワーを前に、手も足も出ない。ずっと全開で行けるのも、ハチロク程度のエンジンパワーだからだ。
そして両者、林道セクションへ突入する。しばらく緩やかななヒルクライムが続く。
京一「アイツ……!!バックミラーからでもわかる……こんな狭いセクション……ハチロクとはいえ、普通は初めてでこんなペースでは走れない……!!」
しかし、京一は残酷な現実を拓海に見せつける。
\フォオオオオオオ/\パン/\フォオオオオオオ/
僅かだがヒルクライムのこの区間。2台がギリギリ並べるスペースしかないこのセクションで、京一は驚異的なスピードで、WRCさながらの走りを見せつける。
いくら拓海とて、付いて行けない……
同じく驚異的な走りを見せる拓海。この林道をアクセル全開で駆け抜けていく。
そして、この講習会(セミナー)の終わりは、意外な形で、だがとある者にとっては予想通りの形で、幕を閉じた。一基のエンジンとともに……
\バァン!!!!/
拓海「はっ………………」
さっきまでキレていたのが嘘のように、頭が真っ白になる拓海。
\ギャアアアアアアアアア/
エンジンが壊れてロックし、クラッチを切らないとそれに伴い駆動系もロックする。
だがクラッチを切るどころか、微動だにしない、できない拓海。自分の身に降り掛かった現実に、完全に固まってしまっていた。
リアタイヤがロックしたハチロクはコントロールを失う。
\ギャアアアアアアア/\キュキュ/
何とかどこにもクラッシュせず、道路脇の川にも落ちず、停止したハチロク。
\シューーーーーーーーーー/
\ポトンポトン/
ボンネットからは煙が立ち込め、エンジン下からはオイルが滴る。
ハチロクのエンジンは、終わった。
180000kmオーバーの、大往生だった。
拓海「はっ………はぁぁぁぁぁぁ………」
何が起きたのか、全く状況が分からない拓海。
そして、何かを察知したのか、京一が引き返してハチロクの元までやってきた。そして拓海に話しかける。
京一「レースの世界では、エンジンブローは負けなんだがな……俺は初めに言った通り、お前とバトルしたつもりはない」
諭すように続ける。
京一「完全に、エンジン終わってるだろう……いい機会だから、ハチロクはもうツブしたらどうだ」
拓海「……………!?」
信じられないような顔をする拓海。ハチロクとお別れになるんじゃないか……しかもそれが自分のせいだなんて……そんな思いが頭をよぎっていた。
京一「お前が新しい車に乗り換えるまで、勝負は預けとくぜ」
\フォオオオオオオ/
京一は走り去っていった。
拓海「大好きな……大好きな……俺の……ハチロク……」
京一を惚れ惚れとさせるほどの走りを見せたが、ハチロクのパワーではそれもつかの間、京一のエボIIIにあっさりとチギられてしまった。そして、林道のヒルクライム区間で、とうとうハチロクのエンジンはブローしてしまった。頭が真っ白になった後、悲しみに暮れる拓海。しかしこの後、意外な人物が拓海の前に現れるのだった……!!
(一旦連載途切れます 筆者より)