最強伝   作:全智一皆

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         【登場人物紹介】
九十神斑雲(つくがみ・むらくも)――――――最強。
伽髮千紘(ときがみ・ちひろ)――――――凡人。

黒神めだか(くろかみ・めだか)――――――生徒会長。
人吉善吉(ひとよし・ぜんきち)――――――庶務。
阿久根高貴(あくね・こうき)――――――書紀。
喜界島もがな(きかいじま・もがな)――――――会計。

不知火半袖(しらぬい・はんそで)――――――学友。
悪石凶悪(あきいし・まがあき)――――――学友。
黒針夜酔(くろばり・やよい)――――――学友。
澱継正真(おりつぎ・しょうま)――――――学友。

雲仙冥利(うんぜん・みょうり)――――――風紀委員長。
桜島一途(おうじま・いちず)――――――学級委員長。
相楽斗真(さがら・とうま)――――――風紀員。
赤平甘夏(あかびら・かんな)――――――学級員。


第一箱「付属品は付属品」

変わり続けて

代わり続ける

 

 太陽の陽射しというのは、とても暖かいものであり、そしてそれを浴びながら眠る事が出来る窓側の席というのは、とても素晴らしい所だと、私は思う。

 高校において授業中の睡眠というのは、とても危ないものである事は私も理解している。

 点数が下げられ、そして最悪の場合には単位が落ちて留年が決まってしまう。

 だが、そうであったとしても私は構わないと思っているのだ。

 あぁ、これは点数が下げられるのが良い、というだけであって留年するのが良いという訳ではない。

 私も、留年して親に迷惑を掛けるのは嫌だ。

 点数が下げられたとしても、それらは成績やその他の行動でどうにか巻き返す事が出来るのだし。

 それに、眠ると言っても最初だけだ。

 言われればその後はしっかりと起きて、授業を受ける。

 私は、真面目な子なのだ。

 まぁ、そんなこんなで話していれば授業は終わり、教科書を閉じて皆が立ち上がり、先生に礼をする。

 そしてそのまま休み時間へ突入し、教室が騒がしくなる。

 まぁ、そんな時も私は眠るのだけど。

「また寝てるよ。お前、そんなんじゃ夜眠れなくなるぞ?」

 眠れなかったよ、パトラッシュ。

 まぁ、別に構わないけれど。

「休み時間の睡眠と夜の睡眠は別よ。だから良いの」

「そんなもんか?」

「そういうものよ」

 そう、私は私に話し掛けてきた青年―――もとい、私のクラスメイトである悪石凶悪に言葉を返した。

 こんな名前だけれど、このクラスで私に話し掛けてくれた最初の人物であり、この“箱庭学園”で出来た初めての男友達である。

 悪石凶悪―――箱庭学園壱年1組、出席番号一番。

 まぁ、さっきも言ったけど、こんな名前だけど優しい奴である。

「おぉい、こら。聞こえてんぞ、誰がこんな名前だ、あぁ?」

「事実じゃなぁぁぁ…痛い、痛いわ。頭を抑えて机に押し付けないで」

「明らか感情が籠もってねぇけど?」

 仕方ないじゃない。だって、貴方の力がとても優しいんだもの。

 押し付けてはいるけれど、しかしその力はあまり強くはない。

 手加減してくれているのが丸分かりな程。

「キャハハハ☆ 相変わらずの仲良しだね、お二人さん♪」

「カッ、全くだぜ…これでも、ただの友達ってんだからな」

「お前らには言われたかねぇよ、人吉、不知火」

「それには同意だわ」

 人吉善吉、不知火半袖。

 この二人も、クラスメイトで私の友達。

 特に不知火とは仲良くしていると、自分でも思う。それこそ互いにご飯を食べ合うくらいには。

 人吉とも…まぁ、仲は良いと思う。会長さん程ではないだろうけど。

 でも、私と最も仲が良い人はこのクラスには居ない。

 だって、私と最も仲が良い人は別のクラスに居るのだし。

「おーい、千紘。一緒に食堂行こうぜ」

 ほら、現れた。

 ツンツンした黒い髪、真紅とも言い表せる綺麗な赤い瞳、そこに居るだけで凄いと思わせる程の雰囲気を纏っている青年。

 私の親友―――もしくは、幼馴染と言える唯一無二の存在。

 彼の名前を、九十神斑雲。

 この世界で最も強い、最強の人間である。

 

 私こと伽髮千紘は、親友である斑雲と比べてしまえば途轍もないと言っていい程に才能が無い。

 まぁ、それは勿論人並みの才能はあるんだろうけれど、それも彼と比べてしまえばあまりにも低く、もはや無いにも等しい程の才能だ。

 この箱庭学園では、『普通』、『特別』、『異常』の三つで、其々クラスが別けられている。

 1〜4組が普通科。

 6・8組が芸術科。

 5・7・9組が体育科。

 10組が特別普通科。

 11組が特別体育科。

 12組が特別芸術科。

 そして、13組が特別特別科。

 私や悪石達は普通科に当たり、斑雲や人吉の幼馴染でありこの学園の生徒会長である黒神さんは特別特別科、即ち13組に当たる。

「しっかし、此処は相変わらず広いな。見学しに来た時から思ってはいたが、広すぎて困るぜ」

「まぁ、ディズニーランドくらいの面積があるからね。そう思うのも仕方ないわ」

「だよなー。そういや、人吉が居ねぇけど、アイツどうした?」

「黒神さんに連れて行かれたわ。」

「あー…なるほど。となりゃ、人吉が生徒会に入るのは確定だな」

 人吉と黒神さんは、私と斑雲と同じように幼馴染である。

 不知火からすれば、ただの腐れ縁らしいけれども、まぁ私達からすれば立派な幼馴染だと思う。

 何でも、小学六年生までは一緒にお風呂に入っていたんだとか。

 幼馴染というよりは、姉と弟と呼んだ方が正しいような気もするけれど。

 …ちなみに、私と斑雲は一緒にお風呂に入った事はない。

 だって、親が許してくれないんだもの。

「今頃、剣道場で問題解決してんだろな」

「剣道場? なんで剣道場なの?」

「不良共の溜まり場だからな。まぁ、必然っちゃ必然だろうよ」

 カツカレーのカツをライスと一緒に口の中に運んで、ゆっくりと噛みながら私はそれを聞く。

 うむうむ、不良の溜まり場、ね。

 箱庭学園にはありとあらゆるスポーツ施設が完備されていて、中でも剣道場は伝統ある建造物として大切にされていた。

 でも、それは数年前までの話し。by人吉善吉。

 だから、それをどうにかするべく二人は動いているという訳か。

 大変なものだね、生徒会というのは。

「お、仲良しお二人さんじゃないか」

「仲睦まじいね、本当に」

「おぉ、黒針に澱継。お前らも昼食か?」

 またもやクラスメイトと邂逅を果たした。

 なんか、今回は色んな人と出会っているような気がする…ここから色んな人と出会うんだよという伏線か何かなのだろうか。

 伏線の使い方違うかな…まぁ良いか。

 倒置法で喋ったのはクラスメイトで女友達の黒針夜酔。

 私達を仲良しだと言ったクラスメイトで男友達の澱継正真。

 まぁ、私からすればこの二人も大概だとは思うけれど。

 大概だぞ夜酔くん。おっと失礼、ユニ先輩が出てしまいました。

「まぁ、そんな所だよ。本当なら悪石も来る筈だったんだが…」

「連れて行かれた、甘夏に。」

「またかよ…これで3回目だぞ?」

「悪石は好かれてるわね。全く、羨ましいわ」

「嬉しくねぇだろなぁ…」

 どうやら悪石は赤平甘夏学級員に連れて行かれてしまったようだわ。

 私はごちそうさまと言って合掌し、斑雲と一緒にお皿を片付け、時計を確認して―――剣道場に行く事にした。

 何でって?

 斑雲が行こうって言うんだから、行かない訳にはいかないじゃない。

 今更ながら、私は口調が定まっていないのではないだろうか?

 …まぁ、気にする必要もないか。だって、こんなの聞いている人なんてそう居ないだろうし。

「む? 斑雲と伽髮同級生ではないか。」

「オメェ等、なんでここに」

「よぉ、黒神、人吉。いやなに、俺も剣道場について思う所があったからな。来てみたって感じだ」

「私はその付添人よ。あと、私の事は千紘で良いわよ。伽髮って呼ばれる事あまりないから慣れないわ」

 まぁ、取り敢えず最初に行っておこうかな。

 この剣道場を占拠していた先輩方に。んでもってこの依頼をした日向くんに。

 

 “ご愁傷様でした”。

 

「剣道なんてした事ねぇから、正直俺にはよく分からねぇんだがな」

 一歩、一歩。

 静かに先輩方の前にまで、斑雲は歩む。

 ぎし、ぎし、と床が軋む音が、剣道場に鳴り響く。

 ただ、それだけである筈なのに。

 ただ、歩んでいるだけに過ぎないというのに。

 そうであるにも関わらず、どうしてか―――先輩方の体は、まるで錘が降ってきたかのような感覚に襲われた。

「な、なんだよ、てめぇ…!」

「黒神みたいに説教するつもりはねぇがな。でもまぁ、此処が使えないと日常生活に支障が出る奴も居るんだ。それに、そうでないとしてもアンタ等の行いは、正さなきゃならねぇしな」

 にやり、と斑雲が笑みを浮かべて先輩方の間合いに入り込む。

 先輩方は木刀を構えて、斑雲を警戒する。まぁ、それも仕方ないわね。

 そりゃ警戒したくもなるわ。ただ近寄ってきただけなのに、錘が降ってきたみたいな感覚に襲われる程の“雰囲気”を醸し出してる訳だし。

「なぁ、千紘。九十神って、めだかちゃんと同じ13組だったよな? どんな理由で13組になったんだ?」

「そうね…まぁ、理由は黒神さんと大して変わらないわ。黒神さんが『完璧』故に13組に入ったならば」

 

「だから、ちっとばかり後輩の小言を聞いてほしいんだよ」

 そう言った次の瞬間―――先輩方が構えていた木刀全てが、一瞬の内にして奪い取られた。

 それに気付く事が出来たのは、私と黒神さんだけで、黒神さんと長年一緒に居た人吉でも斑雲の“動き”に気付く事は出来なかったようだ。

 小さな風圧が起こり、それが私達の体を通り抜け、そして髪を仰ぐ。

 時間にして、一分くらいかな。

 一分経って、ようやく先輩方は自分達の握っていた木刀が取られていた事に気が付いた。

「なっ…、お、お前、何をしやがった!?」

「何をしたって聞かれても、ただ“取った”だよ」

 斑雲は、ただ“木刀を取る”という行為をしただけに過ぎない。

 黒神さんは“無刀取り”を披露して見せたんだろうけど、でも斑雲はそんな事はしていない。

 ただ、物を取るという動作しか、していないんだから。

 私は、言葉を紡いで、人吉に語る。

「斑雲は、『最強』故に13組に入ったのよ」

 九十神斑雲が、箱庭学園特別特別科、もとい13組になったその理由。

 それは、九十神斑雲が生まれたその時より持っている―――『最強性』。

 斑雲を知っている人間ならば、誰もが口を揃えてこう言うのよ。

 それこそ、世界共通で。斑雲を知っている人間全員が、世界共通の人間達が、完全にシンクロしてこう言う。

 『九十神斑雲は最強だ』―――ってね。

「まぁ、これもアンタ等が本来歩むべき“日常”と、これから歩む事が出来る正しい“日常”の為だ。少しばかり付き合ってくれよ」

 九十神斑雲の真骨頂、その一つ―――『平和平凡な日常主義』!

 斑雲は相手の『平和な日常』を第一として行動している。

 朝に起き、親に挨拶。朝食を食べて歯磨き。学校へ向かう。友達と出会う。共に学校に行く。勉強する。昼食を摂る。遊ぶ。休む。家に帰る。ただいまと言い、おかえりと言ってもらえる。勉強、もしくはゲームをする。夕飯を食べる。風呂に入る。歯磨きをする。寝る。

 こんな平凡普通で平和な日常を送る人々の為、日常を送れていない人々の為に動くのが、九十神斑雲という人間だ。

「私はそれを長い間、側で見続けた。だから、まぁ…人吉と同じよ。まぁ、唯一違う所と言えば、私は斑雲に振り回されていないという所くらいかしらね」

「おーい、千紘。お前も付き合ってくれねぇか?」

「…はいはい、分かったわ。取り敢えず剣道用の服をちょうだい。制服じゃ動き難いもの」

「分かった。じゃ―――

 

一緒に頑張ろうぜ、先輩」

 人吉、頑張りなさい。

 私は同情してやれないもの。一人で、並び立てるように、ついて行けるようになりなさい。

 私は斑雲と出会った時から、斑雲に付属する付属品だもの。

 嫌でも一緒について行くわ。まぁ、嫌だと思う時なんて無いけどね。




どもー、■■■■だ。え、名前が隠されてるって? 気にすんな、簡単に分かる。
ここは後書きなんだが、活用方法が思いつかなかったんでキャラについて話すコーナーにすることにした。
じゃ、今回は悪石凶悪についてだ。
主人公の伽髮千紘の友人の一人であり、男友達だ。
名前で誤解されがちなんだが、別に不良とか悪人って訳じゃないぜ? 寧ろその真逆、善人ってやつに当てはまるぜ。
ま、そのうちスキルも得るだろうから楽しみにしとけ。
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