最強伝   作:全智一皆

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ここらで俺が登場だ。名前は…次回だな。
まぁ、大体は予想つくんじゃね?


第二箱「やる時はやる」

君の隣に立っていたい

 

 私、伽髮千紘は物心ついた時から九十神斑雲と一緒に過ごしていた。

 2歳か3歳くらいだったか。多分、その辺りから一緒に過ごしていた。

 その時から、私と斑雲は互いに親友だと認め合い、そして暮らしている。

 両親公認で、私と斑雲は同じ家に住んでいる。

 私としても、斑雲としてもそれは喜ばしい事だった。

 それくらいに、私達は仲が良い。それこそ、喧嘩なんて一度もした事がないし、お互いに泣いた事も泣かした事も泣かされた事もない。

「ねぇ、伽髮千紘さん。貴方はどうして、此処に居るのか分かってる?」

「さぁ? 一切分からないわ。私、何か怒らせるような事でもしたかしら」

「そう…分からないのね。じゃあ言うけど―――貴方は、普段の授業態度があまりにもだらけきっている!」

 私を指差して、彼女…もとい、学級委員長の桜島一途さんは、声を張って私にそんな言葉を放つ。

 うん、まぁ…反論の余地もないわ。だって私、殆ど寝てるんだもの。

 私は特に反論する事なく「まぁ、そうね。その通りだわ」とあっけらかんと、もしくは呆気なく返した。

 ワナワナと、彼女が震える。あら、怒らせてしまったかしら。

 まぁでも、どっちにせよ事実だから仕方ないのよね。

「それを分かっているなら、何故改善しようとしないの!?」

「改善出来るならやってるわ。でも、無理なものは無理なのよ」

「だとしてもよ! 少しは抗いなさい! 他の人達の迷惑は考えないの!?」

「一応、端には置いてるわ。寝てるからすぐに忘れるけど。というか、それなら不知火にも言うべきじゃない? 彼女、早弁の常習犯よ?」

「もう何度も言ったわ。でも聞かないし、呼び出しても来ないし、連れてきてもすぐ逃げられるもの」

 呆れたように、大きなため息を吐いて肩を落とす桜島さん。

 流石は不知火、私に出来ない事を平然とやってのける、そこに痺れる憧れるぅ。

 しかしまぁ、それでも諦めないのは貴方の偉い部分よね。誇りなさい。上から目線で申し訳ないけれど。

 そんなやり取りをしていると―――

 

 

 私は咄嗟に桜島さんの腕を引っ張り、そのまま後ろへと投げ飛ばした。

 しかし、私の頭上には既に瓦礫の山。

 うーん…これは、万事休すかしら?

 私、ただの女子だから、こんな瓦礫の山をどうにかする力なんて持ってないのだけど。

 …まぁ、仕方ないわね。

「伽髮さん!」

 桜島さんが叫ぶ。

 出来るなら、名前で呼んでほしかったんだけど…まぁ、今更言っても意味ないか。

 …うん、やっぱり死にたくないわ。

 まだやれてない事、沢山あるし。

「――助けて、斑雲」

 だから、私は貴方の名前を呼ぶ。

 早いかもしれないけど、でも私は死にたくないから。

 まだ貴方と過ごし足りないし、遊び足りない。何なら学校生活も、もっと楽しみたい。

 だから、助けて。

「おう。了解だ」

 翻る制服。大きな背中が、私の目に写った。

 

 振り翳した拳が―――瓦礫の全てを、破壊した。

「ったく、他人の事を考えねぇで動く辺り、流石は風紀員だな。千紘、大丈夫か? 怪我とかしてねぇか?」

「大事無いわ。それより、黒神さん達は大丈夫かしら?」

「多分、大丈夫だろ。黒神だしな。それに、人吉とか阿久根センパイも、無事だろうさ」

 しかし、校舎をまぁこうもボロボロにするなんて、馬鹿げた風紀委員ね。

 いや、馬鹿げたからこそ、狂っているからこそ、風紀委員なんだろうね。

 まぁ、それはそれとして。

 私は立ち上がり、パタパタと手でスカートの砂埃を払って、校舎の窓から黒神さん達を見る。

 赤い長髪―――確か、『乱神モード』だったっけ。

 リミッターを外して、ありのままの暴力を振るう力の塊だ。

 恐ろしいったらありはしないわ。

「ふぅ…よし。斑雲、行くわよ」

「行くのか? 黒神達の戦いだろ?」

「彼女達の“都合”と私達の日常を守る為よ」

「そっか。なら行くか」

 そういって、斑雲は私の隣に立ってくれて。

 でも―――油断してたのかな。

 

 私は、喉笛を切り裂かれた。

 

「全く…面倒な仕事を任せられるよ、俺は」

 私は、ばたりと、後ろから床に倒れ伏す。

 床に、鮮血が流れていくのが、ぼんやりとした瞳の中に写っている。

 はっきりとしたものではないけれど、男の声が耳に入る。

 でも、そんな事より…斑雲の顔が、口を開いて驚いている、真実を受け入れられていない斑雲の表情が、気になってしまう。

「まさか、《最強》の唯一無二である幼馴染を殺せ、なんて言われるなんて。そんなの自殺しろって言ってるのと大して変わらないんだが…まぁ、それであの人の役に立てるなら、良い犠牲にはなれるかな」

 どうやら、男は風紀委員のようだ。

 しかもその言い方だと、命令したのは雲仙冥利風紀委員長じゃん。

 私、何か恨まれるような事したのかな…全く心当たりないんだけどなぁ…

 おっと、昔の話し方が出てしまった。

 いけないいけない、私は素直クールなんだから。

 …って、そんな事を考えてる暇なんて無いんだけど。

 話したい。でも、言葉が出てこない。

 喉を切り裂かれたからかな…

 

「千紘…?」

「     。      」

 口パクだけど、きっと伝わる筈。

 『落ち着いて。大丈夫だから』

「大丈夫な、訳あるか。血が…彼奴のせいで、血が」

「…   。    、  」

 『…ダメよ。怒っちゃ、ダメ』

 でも、やっぱり無理だった。

 髪が、逆立つ。

 気迫が、ついに学園を粉々にしてしまった。

 その場に、否、その世界に居る誰もが、動けなくなってしまった。

 空気が壊れる。空間が壊れる。世界が揺れる。

「テメェは―――潰す。絶対に、潰す」

「っ…い、い、さ。それが、俺の、目的なんだ、から」

 冷や汗をかいている青年。

 黒神さんが、乱神ならば。

 乱暴に何もかもを破壊する神の姿をしたのが乱神モードならば。

 最強の神。あらゆる全てに勝利し、あらゆる全てに負ける事がない最強無敵、生涯無敗の姿―――九十神斑雲、その憤怒の姿、『強神モード』。

「―――」

 …あれ? 衝撃が来ない。

 目を開く。そうすれば―――私は教室に居た。

 でも、さっき居た教室じゃない。どこか見覚えがある教室だ…けど、正確には思い出せない。

 何か、フィルターが掛かっているような…そんな、感覚。

 

「全く、凡人らしくやられるもんじゃないぜ、伽髮ちゃん。アイツの隣に居るんだから、そう簡単に殺られるんじゃ、こっから先の物語じゃ通用しないぜ?」

「おっと、喋るんじゃねぇぞ? 本来なら、俺とお前は此処で関わるべきじゃないんだから。そうだな…球磨、あぁいや、『過負荷』と関わる時に、俺とお前は関わる筈だった。なんで狂ったんだろうな? まぁ、俺がお前の記憶を消せばそれで済むんだが」

「ん? 俺が誰かって? しかも見覚えがある? ふーん、一応見覚えがあるくらいの認識は残ってるのか。流石はアイツの幼馴染だ。本来なら頭の端から端まである俺の記憶全部無くなってる筈なのに。まぁ、そこを含めて『女主人公』だな。良いじゃないか、そういうのも悪くない。めだか以外の女主人公、善吉みたいな女主人公。良い組み合わせだよ」

「まぁ、それはそれとして、だ。どうする? このまま復活するか、もしくは―――一足先に、『スキル』でも取るか? 俺はそれでも構わないぜ? そっちの方が面白そうではあるしな。あ、でも『■游憲』はダメだぜ? あれは俺と安心院さんが合流して、んで尚且、お前がアイツに勝ちたいと思ってから入手出来るスキルだからな」

「んー…でもなぁ。そうなると、『得倒■』もダメ判定なんだよなぁ…『欲視力(パラサイトシーイング)』みたいなのも、あれだし…あ、でも不知火と仲良いなら『攻来眼』でも良いな。よし、じゃあ今から与えてやるよ。原作崩壊ってのもオリジナルらしくて良い。快楽主義の俺からすりゃ、実に“都合”が良いぜ。」

「今からお前に早めにスキルを与えてやるよ。なに、無双出来るようなもんじゃねぇから安心しろよ」

「安心院みたいに説明無しでは与えねえよ。説明してやる。まぁ、読者はつまらなくなるかもだがな。…今からお前に与えるスキルは、“迫り来る危機を視るスキル『攻来眼』アタックアイズ”だ。俺が作り出した『予備』のスキルの内、その一つだ。相手の攻撃を限定とした未来予知みたいなもんだと思ってくれ。」

「よし、解説終わり。簡単なものじゃないと長くなるからな。」

「あ、校舎については心配すんな。“こっち”のアイツはスキル無効の力が薄いからな。若いからかね? 他の奴らのは無効化されちまうが、俺やなじみのは無効化されないみたいだし。ご都合主義って本当素敵☆ 俺が直しとくからよ」

「じゃ、帰ってくれ。んでアイツを止めてくれ。

 

 じゃあな、伽髮。『生徒会選挙』でまた会おうぜ」

 

「校舎なんて、もう有って無いろうなものじゃない…はぁ。本当、嬉しい事してくれるわ」

 さて―――“視る”限り、3個くらいかしら。

 ガシャッ!!! と天井が崩れ、瓦礫の山が再び落ちてくる危機を、私の眼は捉えた。

 便利なものね、スキルというのは。

 私は穴が空いている床に向かって走り、壊れかけている床を握り、体を前に動かして下の教室へと移動する。

 受け身を取って衝撃を無くし、そのまま教室の扉を開いて壊れかけた廊下を駆け抜ける。

 恐らく一階で戦ってる…戦ってる?

 あぁいや、戦ってるんじゃなくて蹂躙してるっていうのが正しいかしら。

 階段を一気に飛び越え、再び受け身を取って転がり、次々と階を降りていく。

 そして―――風紀委員、相楽斗真を踏み付ける斑雲を、見つけた。

「斑雲」

 私は彼の名前を呼んだ。

 ゆっくりと、斑雲はこちらに首を向け、冷めた目線を私に向ける。

 いや、冷めた目線ではなかった。どちらかと言えば、絶望した、というのが近い目だった。

「なぁ、千紘」

「なに?」

「俺は…壊しちまった。皆の日常を」

「…まぁ、そうね。それは否定出来ないわ」

「…俺は、お前を守れなかった」

「私は生きてるわ」

「でも、守れなかった事に変わりはない」

「確かにそうだろうけど、私が生きていることにも変わりはないわ」

「…でも」

「でもじゃないわよ。全く、細かい事を気にする所は貴方の良い所ではあるけど、こういった所も気にするのは悪い所ね」

 人間らしく、忘れたって良いのに。

 まぁ、そういった事も忘れずに頑張ろうとする姿も格好いい所ではあるけれど。

 私は斑雲の前にまで歩いて、優しく斑雲を抱き締めた。

「私は生きてる。校舎は戻せる。彼に関しては自業自得だし、貴方も悪くはないわ」

「…」

「それに、日常を壊してしまったなら新しい日常を与えれば良いだけよ。貴方、理性が効いたのか彼の事、殺してないないじゃない」

「え…」

 彼は瀕死の状態ではあるが、しかし呼吸はしているし心臓も動いている。

 斑雲の理性はしっかりと効いていた。理性は、働いていたのだ。

 だからこそ、殺していない。セーフティのお陰で、殺人にまで至っていない。

 怒りに呑まれながらも、人を殺さないようになっている辺りは、やっぱり人間ね。

「貴方が自分が悪いと思っているなら、後から謝って貴方がリハビリやらに付き合えば良いわ。それでチャラになるんだから」

「…そうか」

「そうよ。さぁ、彼は運ぶわよ」

 反省は後から。

 今はとにかく、運ぶ事。

 さて…どうしようかしらね。




じゃ、今日はスキルについてだ。
俺が与えたスキルの名前は攻来眼。読みはアタックアイズ。言葉遊びは…アタックが攻撃って意味なんだが、目であるアイズを漢字にして合図。そのまま読んで攻撃の合図。合図があればその攻撃を避けられるだろ? 実力者にも依るんだがな。
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