最強伝   作:全智一皆

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嘘も突き通せば真実だって言うよな。
思い込みってのは恐ろしいもんだって事でもある。真実を嘘と思い込めば真実は虚構、虚構を真実と思い込めば真実だ。
真実も虚構も本人次第ってのが、また面白い。
真実が真実とは限らないし、虚構が虚構とも限らねぇのにな。


第五箱「生徒会選挙」

僕は悪くない

だって、僕は悪くないんだから

 

 −十三組。

 それが球磨川くん達『過負荷』のクラスらしい。

 何でも、『新生徒会は』『僕らだよ』とか何とか…しかもその中には不知火が居るという。

「で? 何故に私達も参加する事になってるのかしら」

「関係者だからじゃねぇか?」

「…そう。正直、あまり納得はしてないけど…斑雲が戦うというなら、戦うわ」

「頼むぜ。じゃ、俺は行ってくるから」

「行ってらっしゃい」

 

 

「何故かは分からねぇが、こうして戦う事になっちまったな」

「らしいな。んで…アンタは誰なんだ? あ、俺は九十神斑雲だ。」

「供犠橘。−13組の担当だ。ま、スキルは『異常』なんだがな」

「へぇ。でも、生憎だが俺にスキルは効ねぇぞ?」

「あぁ。普通のスキルならな。だが―――

 

 

俺のスキルは、あの人から貰った特別製だよ

 

 

 バギッ―――と、橘の拳が、斑雲の顔面に打ち込まれた。

 それに、誰もが驚いた。

 驚愕した。絶句した。唖然とした。呆然とした。

 今まで、誰一人として傷を負えられなかった《最強》が。

 今まで、誰一人として勝てなかった《最強》が。

 殴られた。傷を付けられた。フィジカルで、スキルで、敗けた。

 訳が分からない。ただそれだけが、頭の中に浮かんでいた。

 何故、殴られた? 何故、傷を負った?

 あらゆる全てにおいて最強である筈の自分が、何故、吹き飛ばされた?

「訳が分からないって顔だな。まぁ、無理もないっちゃないが…でも、残念ながら現実だよ。俺のスキルは、ありとあらゆるものとありとあらゆる事象を操る。即ち、万物万象を操る事が出来るスキル。名を―――『必終架繆(エンドコントロール)』。」

 万物万象を操るスキル『必終架繆』エンドコントロール。

 なんて出鱈目なスキルだ。それこそ、めだかの『完成』よりも恐ろしいものではないか。

 万物万象―――それには、スキルすらも含まれる。『スキル発動の停止』、『スキルの無効化』という事象を操れば、もうそれだけで彼の勝利になる。

 この世の全てを操る事が出来るそのスキルこそ、あらゆるスキルの天敵…!

 

「万物万象を、操る、だと…?」

「あぁ。『お前に攻撃を与えられる』という事象を発生させただけの事だ。確かに今のお前も向こうと同じで『最強』だが、しかし無敗でもなければ無敵でもない。これは所謂“修行”だ。あの人の為の、お前の為のな」

 斑雲には分からない。

 相手が何を言っているのか。向こうのお前とはなんだ。

 九十神斑雲という存在は、まだ居るのか。

 だが、そんな事はどうでも良い。

 これは戦いだ。

「――」

 髪が伸びる。気迫が増す。圧力が強くなる。

 怒気をはらんだその姿こそ―――『強人モード』。

 相手より強く在らねばならない。相手が強いならば、それよりも強くなれば良い。

 それすら操るのが相手であろうと、それすら操られぬ程に強くなる。

 そうすれば、勝てる。

 簡単なことではないだろう。だが、可能性はある。十分に、可能性がある。

「じゃ、よろしく頼むぜ、供儀師匠―――!」

「あぁ。よろしくしてやるよ、脳筋弟子」

 轟ッッ!!!

 凄まじい勢いで踏み込み、橘へと猪突猛進の如く斑雲は突っ込んだ。

 ビキビキッッッ!!! と地面に亀裂が走り、斑雲が踏み込んだその地が抉れる。

 腕を振り上げる。ただそれだけの動作で、ソニックムーブに匹敵する衝撃が発生し、その空間に亀裂を作り出す。

 

 

 もはや、拳は眼前にまで迫っていた。

 だが、橘は動じない。冷や汗一つかく事なく、そこに立っている。

「確かに、お前の力は文字通り『強力』だが―――まだ、完了には至っていない」

 拳は、橘に当たらなかった。

 当たるその寸前に、橘は体を右に動かして、直撃してしまえば即死するであろう最強の一撃を躱し、彼の腹部に膝蹴りを食らわせる。

 だが、斑雲は吹き飛ばされなかった。痛みこそ伝わってきたけれど、しかし先程のように吹き飛ばされはしなかった。

(なるほど…もう耐性がついてきたか。速いな)

 橘は内心、『進化』に時間は掛からなさそうだ、と確信する。

 斑雲は動じない。痛みが伝わってこようと、それを無視して次の攻撃へと行動する。

 ギリギリと、まるで弓弦を引いているかのような音と共に握り締められた左拳が、既に攻撃の準備を済ませていた。

 だが―――攻撃の準備を済ませているのは、斑雲だけではなかった。

 膝蹴りを食らった斑雲の腹部には、黒い鉄の塊が突き付けられていた。

 ソードオフショットガン―――零距離からの、散弾銃。

 バァンッッッ!!!!! と、大きな火花と共に、威力の高い弾丸が、散る事なく収束して最強の腹部に放たれる。

 弾丸は、貫通しなかったけれど、しかしその肉体に大きな傷を作り上げた。

 が―――最強は、気にも留めない。

「―――」

「零距離射撃にも耐えるか《最強》…!」

 ゴッッッ!!!!!!! と、爆風とも言える衝撃と最強の一撃が、橘の全身を迸る。

 右脳に放たれたその一撃によって、頭蓋骨は破壊され、その脳味噌もまた粉々にされた。

 だが、その事象は『必終架繆』により『無かった事』にされ、斑雲の攻撃は無効化される。

 だが、その程度でどうにかなるものでは、なくなっていた。

 右脚から繰り出された足刀が、橘を切り裂く―――

 

 

 

 ならば、どれほど良かった事だろうか。

 

 

―――

      \―――

 切り裂かれたのは、千紘の方だった。

 

 

「よぉ、伽髮。二度目だな。こうやって合うのは。どうだ? 《最強》の足刀を食らった気分は」

「痛みすら感じなかった? まぁ、だろうな。一応、お前の体は凡人な訳だから、アイツの攻撃力に耐えられる訳がねぇんだよな。わかってたし知ってたし理解してた。予想も予測も予知も、あまりにも簡単だったよ。」

「原作で言う所の、アイツが日之影で、供犠が蛾々丸、お前がめだかって訳だな。『不慮の事故(エンカウンター)』よりも面倒なスキルだがな、『必終架繆(エンドコントロール)』は。ん? あまりにも無理ゲー過ぎるって? なーに馬鹿げた事言ってんだお前は。」

「アイツを相手にしてる供犠が一番言いたい事だろうよ。今のアイツがどうなってるか分かるか? ま、分からねぇだろうから教えてやるよ。」

「今のアイツはな、新たな進化を迎えた状態だ。お前の二度目の死を切掛に、自分の弱さを自覚して、歩み始めた訳だ。どういう事か分からないか?」

「『発信(アクティブ)』を『完成(ジ・エンド)』によって習得し、憤怒の制御を完了させて、乱神モードを自我があるまま発動する『改神モード』のように、アイツは自分を制御して、先に進んでいる。」

「“今の自分の強さを『弱さ』と認識して改善し、今の強さを消して新たな強さを手に入れ、更に先へと進む”という、アイツの前向きな性格が力として顕となった常時進化系、強化進行系の形態――――――言うなれば、『正神(こうしん)モード』。」

「どうせ忘れるだろうから言うが、お前が『攻来眼』を手に入れたように、人吉も“相手の視界を覗くスキル『欲視力』パラサイトシーイング”というスキルを手に入れる。そして、それが最終的には『自分の限界を覗くスキル』へと喰い改められる。」

「“スキルを喰い改めるスキル『正喰者』リアルイーター”。全く、つくづく善袖はてぇてぇぜ。イラスト少ねぇんだがな。百合も悪くねぇよ? お前と不知火の絡みは見てて面白いからな。うーん…ちーそで? 語呂悪いな、うん。って、それは置いといてだな」

「重要なのは、お前にはどうしようも出来ないって事なんだわ。なんでって、だって俺お前にもうスキル渡してるし。人吉をリスペクトしてるんだから、スキル三つにするのはな? え、二つじゃないのかって? いや、三つだよ。お前はスキルを三つ手にする事になる。『攻来眼』、『得■■』、『■■憲』。それに、今回のは事故にも等しく死んだからな。ほら、さっさと甦れ。」

 

「まぁ、帰る頃にはお前のスキルは喰い改められてるんだがな」

 

 

 自分に迫り来る危機を視るスキル『攻来眼』―――スキルを喰い改めるスキル『正喰者』リアルイーター。

 

 喰い改められたスキルの名を、“自分の強さの先を視るスキル『凌眼』ペリスコープ”。

 副産物―――正神モード千紘モデル。




じゃ、今回は供犠橘と必終架繆についてだ。
供犠橘。俺の《■平等》に所属する人間で、なじみ風に言うならば俺の『部品』の一つだ。
そんな供儀に与えたスキルは、万物万象を操るスキル『必終架繆』エンドコントロールだ。
まぁ、能力は説明通り、あらゆる物体とあらゆる事象を操る事が出来るってもんだよ。チートにも程があるだろうが、《最強》を相手にするならこんくらいじゃねぇと。な?
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