セルフィアにもう一人オリキャラをぶち込みたくなった話 作:からすま
気付けば薄暗い映画館にいた。椅子に座って女の子が本のページを捲っている。
ここは…。
輪郭がぼやけた女の子は捲くっていた本を閉じ、大事そうに胸に抱えながら此方を見る。
「また会えたね。お疲れ様」
「守り人は解放されて、ルーンスフィアもある。セルザは救われた」
「これでハッピーエンド」
でも、結局帰れなかった。…セルザに、直接ありがとうって、言いたかったなぁ…。
「………ねぇ、記憶、取り戻したいよね」
目を瞑り、何かを考えたような仕草をした後、私に問いかけてきた。
え、うん。取り戻せるならそれに越したことは無いかな。
「……。きっと後悔するし、絶望に心が折れるかもしれないとしても?」
……だとしても、私は背負わずに生きてくなんてしたくないな。いや、生きるって言ってもはじまりの森に取り残されちゃったんだけどね、あはは…
「そっか。じゃあ、もうここは必要なくなった。ワタシは私に全て返すよ」
彼女はそう言って抱えた本を手渡してきた。瞬間、部屋は端から砂のように崩れていく。ぼやけた輪郭の少女はその姿を鮮明に現し、私と瓜二つの姿となる。
持っててくれて、ありがとう。
「どういたしまして」
「あーあ…。こんな想い、私にはさせたくなかった…」
「さよならなんて、言わないで欲しかったのに…っ!!」
彼女は悲痛な面持ちで涙を零し、私の手にある本を優しく撫でる。記憶を取り戻したら、彼女や私はどうなるんだろうか。
意識が覚醒しつつあるのか、部屋はほぼ崩れて音が遠くなっていく。
「……目が覚めたらここで話したことは覚えてない。ただ記憶が戻ったワタシが居るだけ…」
それは……、少し、悲しいな。
彼女は、いったいどんな気持ちで外を、彼を見ていたんだろう。
水に沈んでいるような感覚の中、ふと思う。
「 」
もう、声は聞こえない。
そうだ、ワガママに付き合わせた、待ってくれてる彼とどんな話をしようか。
・・・
戻った意識の中で最初に感じたのは身体を優しく包む何か。目を開けると青を基調とした極彩色の羽。
セルザが眠った私を翼で抱きしめていた様だ。目覚めたばかりの頭でセルザに向かって話しかける。
「…セルザ」
「…おはよう、フレイ」
私を慈しむかの様に優しい声音で返事をするセルザ。
「セルザ、思い出したよ、全部。私ね、あなたに会うためにここまで来たんだ」
「!そうか…、記憶が…」
辺りを見回すと守り人から解放した男性、レオンさんが難しい顔をしながら此方を見ていた。
「取り敢えずアンタに礼を、アースマイト。名前を教えてくれるか?」
「えっと、フレイです」
「そうか、すまなかったな。色々と迷惑を掛けて」
「それと…、ありがとう。約束を守ってくれて」
「いえ…、それは私じゃなくて、他の守り人達に…?」
あれ、何故、私はここにいるのだろう。まだ、夢?
「セルザも、レオンさんも、何で?私は、はじまりの森で……」
「……っ!」
2人は眉をしかめて悔しげな顔で口を閉ざす。…そうだ、カインは、どこだ。私に付き合わせて残ってくれた、大切な人。
「カインは……?どこか、出掛けてる…?」
「っ!…ヤツは………カインは…っ!」
セルザはぎゅっと私を抱きしめて、何か言葉に詰まらせながら最後まで言えずにいる。するとレオンさんが喋りだす。…いやだ、聞きたくない。
「……アンタの言うカインってやつは、はじま「やめて…」……」
「…ねぇ、セルザ。……うそ、だよね?どこか、怪我して病院とか……あは、迎えに、行ってあげないと」
抜け出そうとする私を更に強く抱きしめるセルザ。
「セルザ、離して…?カインを、迎えに行ってあげないと」
「すまない…フレイ…!…すまん……!」
セルザのその言葉に返してしまうのは、助ける術が無いって、彼が帰らないのを認めてしまうようで何も言えなかった。
「…っクソ…!!」
レオンさんは行き場のない感情を吐き出すように拳を握りしめ言葉を吐き出す。
そこで思い出す。バレットさんが教えてくれたはじまりの森から人や物を呼び出す魔法。
「そうだ、ゲートリジェクト!まだ、なんとかなる!」
「フレイ?何をするつもりじゃ…?」
「少し前に帰還の指輪をくれた人からゲートリジェクトって言うはじまりの森からモンスターや物、人を呼び出す魔法を教えてもらったの。それなら…!」
セルザの翼から強引に抜け出した私は2人から少し離れて魔法を使う。カイン、王国の騎士で私の大切な人。
「"ゲートリジェクト"!!」
幾何学模様の青い魔法陣が浮かび上がり、次第に立体的な球体となる。……しかし、それは突如何も無かったかのように霧散した。
「なんで!はじまりの森にいる人は召喚できるって…!」
何度も、何度も何度も何度も呪文を唱える。叫ぶように、お願いだから返事をしてよと、声が枯れ始めても。
そんな想いは無駄だと、カインなど居ないと言わんばかりに虚しく魔法は消えていく。
視界は霞み、力無くその場に座り込んでしまう。城の赤いカーペットは私の涙で黒くその色を深くさせていく。
泣いたら、だめ。わたしが認めたら、彼は帰ってこなくなってしまう。そう思っても、堪えきれずに流した涙を止める事などできなかった。
顔を上げて見る2人の顔は己の無力さを嘆くかのように歪んでいた。
セルザとレオンさんが何か言ってるけど、声が遠くて、聞こえづらい。
「…なんで、……ウソだよ。……おねがいだから、へんじを、して。……カイン……」
ずっと一緒、私を守るって、言ってくれたのに。
どうして、ここに彼はいないんだろう。