セルフィアにもう一人オリキャラをぶち込みたくなった話 作:からすま
橋を渡った先は、雪が降り積もる白銀の大地だった。足首まで降り積もった雪に足を取られて少し歩きにくいが、しっかり3人分残ったゼークスの足跡を追跡する。
どうやら足跡は奥に見える山へと続いているのだが、5m程の扉が何重にも重なっていて進めない。向こう側から閉じた事が分かるので、悔しいけど迂回するか外から開ける方法を探すしか無さそうだ。
周りを少し探索すると洞窟にある大きな扉と同じ様な物がそこかしこに点在している事がわかった。それと同じくスイッチがいたる所にあり、外側から開けられる様にできているみたいだ。
スイッチを探して歩いていると雪原にポツンと岩ではない黒い何かがあるのに気付き近づいてみる。
「…モンスター…?だいぶ弱ってるけど…」
「ウルフ種ですが、金、銀以外のウルフなんて見た事ないです。…突然変異でしょうか?」
「群れから追い出されちゃったのかな…」
元々はキレイな黒い毛並みだったのだろう体はボロボロになっていた。よく見れば焦げた跡や鋭利なものでつけられた傷があり、左目には特に大きな傷跡がある。
私達の気配に気付いたのか黒い狼は薄っすらと目を開け低く唸る。
「…どうしたんだろう。…さっきの残りだけど、食べるかな」
サンドイッチを顔の前に差し出すとスンスンと鼻を鳴らし、鋭い牙で私の手を傷つけないようにゆっくりと食べ始める。
人に慣れているのかあまり警戒心が無いみたい。なんだかこの子を見ていると彼の姿が頭をよぎる。
……黒い狼は残りを食べ終わると立ち上がって体を震わせた。多少なりとも元気になったみたいで良かった。
かなり大きいとは思っていたが頭は私の首まで届き、体長は私の背よりも大きいので少しびっくりする。
じゃあねと別れを告げようとするが、吸い込まれるような真っ黒い瞳にじっと見つめられ一瞬たじろぐ。
「……えっと、一緒に来る?」
少し考えた末にそう言うとわふっと返事をする黒い狼。名前をつけてあげようと思い狼を見る。
「…ブラック…うーん…。いや、呼びやすいしクロって名前はどうかな」
「良いと思います!さぁクロ、ご主人のペット1号はこのワタシ、ミドリです!しっかり敬いなさい!」
ミドリはそう言ってクロの背中に乗りふんぞり返る。さり気無く回復魔法を使ってあげてるあたりミドリも気に入ってるのだろう。
…でも、いいな。私もちょっと乗ってみたい。
そんな私の視線を察したクロは乗れとでも言うように一瞬頭を背中に向け体を伏せた。モンスターには始めて乗るけど、大丈夫かなと心配になりながらその背中に触れて跨がる。
「うわっすご、ふかふかで温かいね…」
重さを感じさせない様な動きでスッと立ち上がるクロの首元へしがみつくと、この凍てつく寒さの中で生きていたからなのか、とてもふかふかで毛皮を通してその温もりが伝わってくる。
ゆっくりと歩き始めたので、落ちないように更に強くしがみつく。少しビクッと跳ねたが、どこか痛むのだろうか。遠目にちらっとスイッチが見えたので指を指してあそこへと伝えると、落ちないように段々と速度を上げて近づく。
スイッチを押してクロにこれと同じ物はと聞くと低く唸り声をあげ、私を乗せて走り出す。
クロに乗ったまま次々に扉を開いていき、奥への扉が開く。兵士たちの足跡は奥へと続いていたので跡を追うと意外にすぐ追いつくことになった。
3人のゼークス兵は続く道を塞ぐように立ちはだかる。
「ついにここまで来たか。流石にこれ以上進ませる訳にはいかない」
「エゼルバード様にすげー怒られたからなぁ…」
「キサマの命運もココで尽きるのだ!」
「まぁ、今度やられちゃうとオレ達の命運が尽きちゃうからなぁ…」
「フフフ……今回はちゃんと秘策がある。見よ!エゼルバード様からお借りしたルーンスフィアだ!これがあれば、アースマイトにしか使えない古代魔法を使うことができる!!」
「お、おい!それは軍事機密なんじゃ!?」
「だ、大丈夫だ!ここで勝てば機密は守られる!召喚ッ!"ゲートリジェクト"!そしてッ!融合する!古代魔法"エーテルリンク"ッ!!」
赤く染まった人程の大きさのドラゴン、鋭く尖った爪と強い脚力のパァムキャット。子供程度の大きさでカバの様な顔をしたリトルメイジ。
「おい、なんでおれだけこんなモンスターなんだ?」
「メンツ的に遠距離型が居ないんだ仕方あるまい」
「オレはまったく文句ないぞー♪」
「……まあ、仕方ないか。」
「行くぞ!」
クロはリトルメイジへと向かっていき飛んでくる魔法をすいすいと避けてその喉元へと喰らいつく。
ミドリは得意の風魔法でパァムキャットをお手玉し、その身体能力を使わせないようにしていた。
ドラゴンは人の体と全く違うせいなのかぎこちない動きをしていたので槍で一突きする。
それぞれが光を放ち人の状態へと戻る
「お前とのおいかけっこ…キライじゃなかったぜ……ぐふっ……」
「やられたー」
「まあ、兵士は廃業だな」
なんとも呆気ない終わり方をしたが、取り敢えずルーンスフィアを回収しようと近づくと、クロに襟を噛まれて引き戻される。
そして私が居た所には小規模な爆発が起きて、クロに助けられたことを理解した。
「ありがとう。でも、一体何が…」
ルーンスフィアの転がっていた所にはいつの間にかエゼルバードが立っていた。
「まったく……使えんヤツらだ。しかし、報告にあった黒狼を手懐けているとは、流石我が見込んだアースマイトよ。追いかけて来れば面白いモノを見せてやろう。汝に是非見てもらいたいものだ。まあ、言われずとも来るかな?」
「クゥハーハハハッ……!」
何か魔力の塊を放ってきたと思うと地面で爆発して周囲が煙で覆われる。ミドリが風で煙を飛ばすと既にエゼルバードは居なくなっていた。
さらに奥へ進みエゼルバードを追う。坂道を進むと、段々と遺跡の跡のようなものが増えてきた。
行き止まりにはエゼルバードが待っていた。崖の先に立っていたが私達に気付いたのか、こちらへ振り向く。
「ルーンスフィアを返して!」
「クゥクゥクゥ……まあ、そう急くな。まずは約束通り、面白いモノを見せてやろう。光栄に思うがいい。人の理を超える事象を垣間見ることができるのだぞ?」
「……"ゲートリジェクト"。面白みのない、ただのドラゴンだが、これにネイティブドラゴンの一部と…"エーテルリンク"!」
「見よ!これがネイティブドラゴンが一柱、アクナビートだ!今の余は神竜ネイティブドラゴンを創りだすことすら自在!アースマイトにもできまいっ!では、余は高みの見物とさせてもらおうか!!!」
まさに海の色とでも言わんばかりの鱗とヒレを持つ10m程の大きな竜はこちらを見据えて甲高い咆哮をあげる。
何やら水晶のようなものが浮かび上がりそこから水のレーザーを私達へと撃ってくるが、ミドリは直ぐ様水晶を割って動かせなくする。
クロはアクナビートの首やヒレに噛みつきヘイトを買いながらも軽やかな動きで反撃を避けていく。
私も2匹が作ってくれた隙を見逃さず体、首などを攻撃するけれど、硬くてまともにダメージが入らない。それは2匹も同じだった。
唯一攻撃が通りそうな頭も10m先まで届かせなければならず、こちらのジリ貧となっていた。
やはりブリューナクの一撃を使わなければと思い、残った魔力を槍へと注ぐ。先程の様に無理に吸われる事は無く溢れ出る雷は少ないが、バチバチと音を立てるそれを体へと突き立てる。
雷の落ちた時の様な音が辺りに響き、アクナビートの鱗を貫き体を焦がす。
怒り狂ったアクナビートは尾ビレのような尻尾を私へと振り抜くが、クロはそれを見越して私を背に乗せ飛び上がる。空中で更に上へとクロによって飛ばされる。顔まで飛び上がった私は残った体力をギリギリまで槍に注ぎ込み、アクナビートの脳天へと突き刺す。
悲鳴のような高い声をあげて灰へとその身を変えるアクナビートと、落ちていく私を背中で受け止めるクロ。
エゼルバードはその光景を見て喜色の笑みを浮かべていた。
「余の創ったネイティブドラゴンをも倒すか……!!いや、そうでなくてはつまらん!!」
「――――来い!」
エゼルバードがそう叫ぶと崖の下から飛行船が現れて梯子を崖へと繋げる。
「フレイ、汝にはとっておきの舞台を用意してある。さあ。上で待っておるぞ!」
「クゥハーハハハッ……!!」
「させねエ!」
体は限界を迎えて追い掛ける力も出ない中で、私達の横を走る赤い髪の青年。
「ダグ!?」
エゼルバードへとその手に持った剣で斬りかかるがエゼルバードは身を翻し難なく攻撃を避け、更には魔力の塊を飛ばしてダグを弾き飛ばす。
「たかだかドワーフ風情が、余に触れることすら許されぬわ!」
「く……ソ……!」
「さて、ジャマが入ったが……我が浮遊帝国城で待っておるぞ。アースマイトよ。もっとも……」
「汝が来なくともこちらから行かせてもらうがな……」
「ど、どういう意味ダ!?」
「なに、すぐにわかる。……アースマイトは苦しめに苦しめて皆殺しにする」
「大丈夫!? ダグ!」
「だ、大丈夫ダ……それより、こレ……」
「えっ!? ルーンスフィア!?」
「へへ、…さっき1個かすめとってやったんダ。ざまあ……みやがレ……」
怪我も治っていないのに無理して来てしまったのか、ダグはその場に倒れる。
カイン君フレイを背中に乗せられてご満悦。