セルフィアにもう一人オリキャラをぶち込みたくなった話 作:からすま
朝五時頃、まだ日が昇り始めの薄暗い中で湖に向かう。腕と片方の視力が無くなってからまともな戦闘をしてなかったせいか、蝶のヒト型モンスターには不覚を取ってしまった。
自分が使っている剣では敵の攻撃を受け止められないし、片腕では程度が知れている。盾を使えない分防御力に不安が残るが、そこは完全に捨てて受け流すか回避に徹するしか無いだろう。
愛刀を振って調子を確かめていると視線を感じたので振り向く。以前約束した女騎士が少し離れた位置で此方を見ていた。
「流石です。片腕だけでこんなにも鋭い振りが出せるとは…。申し遅れました、神竜の騎士を名乗らせて頂いてるフォルテと申します」
"カイン、宜しく"
「此方こそ宜しくお願いいたします。前に指摘して貰った時に回転が足りないと仰ってましたが…」
"自分の腕力で剣を振ってる"
"余計な力を使うだけで人の筋力じゃ限界がある"
「…なるほど、そこで他の力を取り入れると」
"遠心力、重力、反発力。剣を上半身で振るのではなく足からの力を剣先まで伝えるように意識"
見本を見せるように思い切り地面に踏み込み身体全体を回転させ剣を振り抜く。
ズバァンッ!!!!
剣圧で湖に切れ込みが走り、直ぐに何事も無かったかのように静けさが戻った。
もういないが、師匠は山の標高を半分近くにしていたな…。
「…驚き過ぎて、なんと言えば良いのか…。」
"立ち合う前に力の使い方。基礎はある。物にできるかはフォルテ次第"
「はい!ご指導宜しくお願いいたします!」
踏込みが甘い、途中で気を抜くな等ダメ出しをしながら、二時間程共に剣を振るっていた。やはり誰かに教わっていた様だが、どこか中途半端に仕上がっていた。足りないところを独学で補ったのだろう。どこか焦っている節も見られる。
"終了。明日もこの時間 "
「はぁ、っはぁ…はい、お願い、します…」
・・・
宿に戻り荷物を持ってきてから、情報をもらった遺跡の方へ向かう。途中は倒れた木で塞がっていたが、燃やしたり飛ばして事故が起こるのも嫌なので迂回して来た。
遺跡に着いた時、足跡がいくつか残っているのに気付いた。
ニ、いや、三人…?。途中で足跡が別れてる…、遺跡荒らしにしてはもう何も残っていないだろう。ゼークス帝国が嗅ぎ付けてきたか…。
続いてる足跡、一人の方を狙い跡を追っていくと直ぐに見つけることが出来た。紺色の鎧を着た兵士、ゼークス兵だ。一人で探索するということは腕に多少なりとも自信があるのだろう。
青い宝石、アクアマリンを拾っては確かめているところを見るにルーンスフィアを狙っているのは間違い無いようだ。
また違う石を拾って止まっているところを地面へ引き倒す。
「ぐぇっ!…くっ、誰だ!名を名乗れ!」
"目的は"
剣を喉元に当てて薄皮を切る。赤い雫が剣を伝って床にポトリと落ちる。抵抗はピタリと止まり鎧の隙間から汗が垂れている。
「わ、わかった、答えるから、刃を退けてくれないか…」
"態度次第"
質問をしてもブルブルと震えるだけで答えようとしない。刃をガチャリと音を立てる。
「…ヒッ!!ル、ルーンスフィアだ!青く光る石を探せと上からの命令だ!!」
"何に使う?"
「お、俺らは何も…『ガチャ…』本当だ!!俺らは探して持ってこいと言われただけで何も知らない!」
聞くことは聞いたので魔法で意識を無くす。後遺症があろうが知ったことではない。
かといってこのままモンスターに殺されそうなのを放っておく程人を捨てられない。
他の二人を見つけて捕縛してから比較的安全な所に捨て置き、残りの二人を探すことにした。
「はぁー、上ももっとまともな指示出してくれよなー。青い石を探せ!ってどんだけあると思ってんだよ…ルーンスフィアなんて言われても分からんわ!」
「まぁ、ワイらしたっぱの運命。でも前に任務失敗した部隊は処刑されたって聞いたから、次は俺達やんな」
コイツらには悪いがその任務に失敗してもらわないと…。死ぬって分かってるなら逃げるか何なりしてくれ。
「帝国なんかより他の国に、ガッ…zzz」
「え?、ぐぇ…zzz」
安全地帯で駄弁ってる二人を後ろから気絶させる。
三人を纏めて森の湖の方へ転移させておく。ここら辺はモンスターが出ない…はずだから置いておく。
遺跡に戻ろうとしたら道を塞いであった切り株が飛んできた。慌てて避けて難を逃れたが、デカイモンスターでも現れたかと思い様子を見に行くことにした。
「スマートとは言い難いですが木を退かせたのでよしとしましょう!では、くれぐれもお気をつけて」
…あの執事…滅茶苦茶だな…。またフレイは依頼でも受けたのだろうか。
デタラメな執事は考えないことにした。フレイは水の遺跡に調査をしに行くらしい。おそらく守り人の解放をさせるためにセルザウィード様が指示したんだろう。…少し様子を見るか…。
どうにも前のダグとかいう青年の動きが気になる。町の住人ということもあって迂闊に手が出せないが…何か引っ掛かる。どこか、殺意のような感情が見える気がしたのだ。おそらくまたフレイを追っているはずだ。
本当に気のせいかも知れないが、見ておくに越したことはない。
遺跡に着いたフレイは石板に夢中になっていた。…後ろにいるモンスターにも気付かない程に。
天井付近で見ていた俺はウォーターレーザーでモンスターに攻撃をしようとした。瞬間、ダグ青年が走ってモンスターを攻撃しフレイを助けた。うまく聞き取れないが、二、三回言葉を交わして青年は帰っていった。その後を追って話しかけることにした。
「うわァ!!…ま、またあんたカ…。毎回驚かせてくるナ…」
"何故遺跡に"
「!!それは、たまたまダ…」
"遺跡で三人組の男を始末した"
「エ!?こ、殺したのカ、?」
反応が…?揺さぶってみるか…。
"ルーンスフィア?がどうのと、黙らせた"
「!そ、そんな、そこまでしなくても良いだロ!?アイツらにだって家族はいるんダ!」
…ルーンスフィアに反応して、兵士をアイツ呼ばわりか…。
"殺してない。湖ニ放置。随分と親しいな『ゼークス兵士』と"
「!、くソッ…!」
町に逃げ込むが、別に捕まえるつもりは最初から無い。ゼークス帝国の企みを潰す為だ、しばらく泳がせておこう。
・・・
遺跡に戻ると、とてつもなく大きな馬の鳴き声と戦闘音が聞こえた。フレイが守り人のモンスターと戦闘を始めたのだろう。それに釣られてか他の大きなモンスターが姿を表す。
獅子の頭と蛇の尻尾?奇妙なモンスターだな…
こちらを睨み付けていたモンスターは蛇をこちら向けて狙いを定めてきた。すぐさま横に回避行動を取ると先ほどいたところには岩の床をぶち抜く程のウォーターレーザーが飛んできていた。
こんなの当たったら身体に穴が空くぞ…。
距離を取っていては不利だと縮地で瞬時に距離を詰めて切り裂く。恐ろしく鋭い爪で反撃をしてくるが、魔法主体でのモンスターらしく動きは大したことはなかった。
モンスターは大きく跳んで俺との距離を離した途端に魔法をこれでもかと撃ってきた。泡に炎、風など多彩な攻撃で近づけないようにしてくる。
攻撃を避けて近づき一撃を食らわすと逃げ出してしまった。そんなに魔法を撃てるような種族には見えなかったが…自分の勘が鈍ったのだろうか。
とにかくフレイの戦闘に加勢しようと遺跡の奥へと走る。しかし戦闘はすでに終わっていて守り人が解放される瞬間だった。
「あ、カインさん、遺跡にも来てたんですね」
"余計な心配だった"
「ありがとうございます。外でも何かあったみたいですけど…」
"ネコがいた"
「?…あ、ふふ、そう言うことにしておきます。いつも助けてもらってありがとうございます。」
"その男を町に運ぶ"
"またモンスターから?"
「そうなんです!一緒にお願いしてもいいですか?」
構わないと頷き青年を背に乗せて町へ戻る。
・・・
「じゃあ私はセルザ…ウィード様のとこに少し報告に行ってきます」
ジョーンズさんの所へ男を運び、俺は宿へ戻って風呂に入ることにした。風呂には俺一人だけで貸切状態になっていたが、すぐに客が入ってきてしまった。
フレイだった。
やらかしたかもしれない。
・・・
「………え?カインさん?」
(こっちって男湯だったかな!え、凄い傷跡…、いやそんなマジマジと見ちゃダメでしょ私!)
私が放心していると女性の声が聞こえてきた。マーガレットとフォルテの声だ。
"あ、男湯と女湯を間違えてたようだ。マーマのうっかりさんだな。
(ま、まずい!このままじゃカインさんが女湯に入ってきた男としてこの町に広まっちゃう!)
「カインさん!ちょっと私の後ろに隠れてて下さい!」
咄嗟にお風呂に入っていたカインさんには頭まで浸かって貰い、その前に座り身体で隠すように入る。
「フォルテったら今日は珍しく疲れてるね。旅人さんが多かったりしたの?」
「いえ、それはいつも通りだったのですが、少し朝に…。おや?フレイさん、いらしたんですね」
「う、うん!私もついさっき来たんダー!」
「?…なんだかバドさんやダグみたいになってるよ?」
「そ、そんなこと無いヨー。お風呂が気持ちよくてリラックスしてるのかナー」
「うーん。今日は何だか変なフレイさんだね」
「フレイさん、タオルを巻いてお風呂に入るのは非常識ですよ。どうせ女性しかいないのですから」
そういってタオルを取られてしまった。
「あ!いや、あの…、返して…くだ、さい…」
(カインさんの肌が、感触が、直に!これはなんだか!よくないっ!)
「そんな照れる事ないじゃーん!可愛いなぁ君は♪」
フォルテがカインさんと朝に稽古をしていたこと、遺跡で男の人を拾ったこと、ポコさんがウェイターを欲しがっていたり等話しているとそろそろ上がることになった。
「わ、私はもうちょっとだけ入ってるね!」
「そうですか…、のぼせないように程々にして下さいね」
「ありがとう、二人とも。またね!………もう、大丈夫ですよ」
ゆでダコのように真っ赤になったカインさんからタオルを渡された。
「…!、す、すいません!」
こちらを見ないようにとカインさんは目を瞑りながら一緒に風呂場を出ていく。
髪を乾かしてゆっくりしていると肩を叩かれて客室の方を指差される。
(え!?それってもうお誘いなのでは…!!)
「わ、分かりました!」
服と髪を整えて緊張しながらカインさんと部屋に向かう。扉の外で待っていると何かを手に外へ出てきた。
チラッと部屋の中が見えて、偶然にも棚の上に置かれた指輪が見えた。
(カインさん既婚者なのかなぁ…。……なんで残念がってるんだろう。まだ会ってそんなに…)
などと葛藤していると手に持ったものを渡してきた。それは髪留めで今着けている物と同じ様なデザインだった。
「え、いいんですか?彼女さんとか…お、奥さん、とかに買ったとかじゃ…」
キョトンとした顔でこっちを見て、数回瞬きをすると微笑みながら手に髪留めを渡してきた。
微笑んだ顔はなんというか、慈愛に満ち溢れた様で、胸が苦しくなった。
「あ!ご、ごめんなさい…。でも、貰ってもいいんですか?これ…」
"彼女も嫁も居ない"
"元々君に渡すもの"
「ありがとうございます。大切にします…!」
そっか。居ないんだ。
カインさんからのプレゼントだ、大切にしよう。
…いっそのこと飾っておこうかな。
(主人公殺そうとしてたなんて言えないなあ…)