「上から目線にも程があるわね」
「ヤハハ、有り余る元気があって良いこった」
「問題児よりも問題児なのですよ!」
■ ■
灰色の雲に覆われた天と、その天からポタポタと降り始めた雨水を髪と服で受け止めながら、詰路諦はベンチに腰を降ろして、眼前に広がる景色を見て呟いた。
「壊すには、まだ早かったか。」
一切の明かりが灯されておらず、窓は所々割れていて、壁は傷付いていた。
人の気配など無かった。生き物の気配など無かった。特徴的なものは、何も無かった。
彼の眼の前には、ただ廃れた町の姿だけが在るだけで、それ以上の何かがある訳でもなかった。
否、そもそも。
その光景自体が、あまりにも“異常”なものである事は明白だった。彼以外には誰も居ないが、誰もがそう思うという事実は間違いなかった。
「まぁ、どちらにせよ検証は成功か。やはり壊す方が簡単で実に良い」
『一つの町を守るのと一つの町を壊すのはどちらが簡単か』という狂気に満ち溢れたその検証の最終段階へ進んだ、その結果。
彼が守り続けた町は守護者であった筈の彼の手によって、呆気なく破壊された。
蹂躙された訳ではなく。殺戮が犯された訳でもない。
ただ、壊されたというだけ。彼が自らの手で、守り続けてきた町をまるで蟻を踏み潰すかの如く簡単に破壊したという、それだけの事だった。
「…もう、この町も用済みだな。次は何処に行ったものか」
彼がベンチから立ち上がったその瞬間。
つい先程まで腰を降ろして座っていた筈のベンチがぱき、ぱき、とまるで木の枝が折られたかのような、そんなか弱い音を立てて崩れ去った。
比喩ではない。夢幻でもない。正真正銘の、紛れもない現実だ。
踵を返し、彼は振り返る事もなく自ら壊し、廃れさせた町にひらひらと手を振った。
まるで、後ろに居る友人が「またな」と言った際に、言葉ではなく行動で答えるかのように。
そんな、何気ない行動を起こして彼は去った。
彼が去ったと同時に、廃れた町は、“かつての平凡普通な活気溢れる町”に姿を変えてから、大きな穴が開けられた硝子の如く、脆くも崩れ去ってしまった。
「これで五回目、か。はぁ…やっぱり、こんな平々凡々な世界じゃ簡単過ぎる。もっと別の世界じゃないと。魔物とかが居るだけの世界じゃダメだ。そう―――修羅神仏に溢れた世界じゃないと」
彼の力は、あまりにも異質で常識から遠くかけ離れたものであった。
才能と呼ぶには、あまりにも異質。
能力と呼ぶには、あまりにも特異。
そんな力を持って産まれた彼が生きる世界は、現実世界のような平々凡々のものではない、無茶苦茶な世界でなければならない。
モンスターが存在しているようなファンタジーな世界では意味が無い。たかだか魔物程度でどうこうなる力ではないから。
空は、晴れなかった。雨は、止まなかった。
しかし、ひらひらと一通の手紙が彼の元に舞い降りた。
それはまさしく、彼の運命を変えるものであり、天使からの手紙だった。
ストックでやっていくぜ。