古代ギリシャの哲学者、プラトン。
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「さて、もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっておりますよ本当に」
投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。その隣で、耀が小首を傾げて問う。
「その外門って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」
「一桁ともなれば、抗うとかそういう行為すら出来ない存在ばっかりなんだよね。」
突如、虹色がその場に居る全員を釘付けにした。
靡いた虹色の長髪、輝く虹色の瞳、白い肌の体を覆い隠すだけの白いコートを纏う存在が現れた。
白夜叉は、呆れたため息を吐いた。
「はぁ…“ソトース”。来るなら来るで連絡を寄越さんか」
「嫌よ。貴方のその反応が見たかったんだから」
「全く…ほれ、現れたならこやつらに自己紹介せい。おんしの美貌に釘付けになっとるだろ」
「二桁の門、その中心部で活動するコミュニティ『オムニス』の副リーダーを務める“ヨグ=ソトース”よ。久しぶりね、黒ウサギ」
5人の内、二人が釘付けのままで、二人が驚愕の感情を隠さず表に出し、一人が感動していた。
「ソトース様!? なぜ此処に!?」
「外なる神々の副王…一にして全、全にして一の存在。ヨグ=ソトースか。ヤハハ、マジモンの化け物じゃねぇか…!」
「制限をもたらす数学や論理、空想すら凌駕する超越的存在。アカシックレコードそのものと言われる大いなる概念―――何と素晴らしい…!」
諦は、大いに感動する。
研究者として、ありとあらゆる全てを研究しようとしてきた者として。
あらゆる世界のありとあらゆる全てそのものであるヨグ=ソトースとは実に素晴らしい存在である。
実に―――“丁度いい相手”。
「うんうん、良い反応。あ、話し遮っちゃったわね。続けてどうぞ」
「全く…まぁ良い。では、続けるぞ」
箱庭の図が、黒ウサギによって描かれる。
箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられている。
外壁から数えて七桁、六桁、と内側に行くほど数字は若くなり、同時に強大な力を持つ。箱庭の四桁ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境。
白夜叉はその四桁、そしてソトースは一桁に位置している。
その図を見た四人は口を揃え、
「……超巨大タマネギ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかと言えばバームクーヘンだ」
「切れ端が食いたくなるな」
うん、と頷き合う四人。身も蓋もない感想にガクリと肩を落とす黒ウサギ。
対照的に、白夜叉は面白い感想だと笑い、二度三度と頷いた。
「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は〝世界の果て〟と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持ったもの達が棲んでおるぞ―――その水樹の持ち主などな」
白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。
白夜叉が指すのはトリトニスの滝を棲みかにしていた蛇神の事だろう。
「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」
「いえいえ。この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」
自慢げに黒ウサギが言うと、白夜叉が驚きの声を上げる。
「なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」
「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見ればわかるはずですから」
「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人とではドングリの背比べだぞ」
神格とは生来の神様そのものではなく、種の最高ランクに体を変幻させるギフトを指す。
蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に。
人に神格を与えれば現人神や神童に。
鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化すように。
「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」
小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。
だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。
「へえ?じゃあオマエはあの蛇より強いのか?」
「ふふん、当然だ。私は東側の〝階層支配者〟だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだからの」
〝最強の主催者〟―――それは黒ウサギが今一番聞きたくないし、言って欲しくなかった言葉であった。
十六夜・飛鳥・耀の三人は一斉に瞳を輝かせた。
「そう………ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」
「無論、そうなるのう」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」
四人は剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。白夜叉はそれに気づいたように高らかな笑い声をあげた。
「抜け目のない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームを挑むと?」
「え?ちょ、ちょっと御三人様!? 諦さんも一緒に止めるのを手伝ってください!」
「断る。寧ろ俺も興味がある」
四人が話している中。
白夜叉は着物の裾から〝サウザンドアイズ〟の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、
「おんしらが望むのは〝挑戦〟か――――もしくは、〝決闘〟か?」
そう、言葉を放った
差別しなさい。あなたが会う人は、あなたの敵なのだから。