異端児が異世界から来る。   作:全智一皆

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「人は賢明になればなるほど、ますます腰を低くして他人から学ぼうとする。」
イギリスの哲学者、ロジャー・ベーコン。


狂人の科学

ギフトゲーム名:FAIRYTAIL in PERSEUS

 

・参加プレイヤー

逆廻十六夜

久遠飛鳥

春日部耀

詰路諦

 

・〝ノーネーム〞ゲームマスター

 

・ジン=ラッセル

 

 

 

・〝ペルセウス〞ゲームマスター

ルイオス=ペルセウス

 

 

 

・クリア条件

ホスト側のゲームマスターを打倒

 

・敗北条件

プレイヤー側ゲームマスターによる降伏・プレイヤー側のゲームマスターの失格

 

・プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

・舞台詳細・ルール

 

・ホスト側ゲームマスターは本拠、白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

 

・ホスト側の参加者は最奥に入ってはならない

 

・プレイヤー達はホスト側の(ゲームマス ターを除く)人間に姿を見られてはいけない

 

・失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行できる

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〞はギフトゲームに参加します。    〝ペルセウス〞印

 

 ペルセウスとのギフトゲームが開始した、その直後の事だ。

「大半の兵は俺が蹴散らす。十六夜達はジンと一緒にルイオスの方に行け。」

 そう言って、諦は颯爽と駆け出し、数秒も経たずに十六夜達の眼の前から姿を消してしまったのである。

「はやっ…」

「体内で加速器でも使ったのか? 音より速かったぞ、多分。」

 十六夜の答えは実質的に正解である。

 諦がやって見せた芸当は、簡単に言ってしまえば『物体を構成する粒子を作り変えて等速循環させた』というものだ。

 “架空粒子”―――タキオン。それは常に光速よりも速く移動する仮想的な粒子であり、現代において存在しないものと断言に等しく考えられていたもの。

 大抵の物理学者は光よりも速い粒子は既知の物理法則と一致しないために存在しないと考えている。

 仮にそのような粒子が存在し、光よりも速い信号を送ることができたとするならば、相対性理論によれば因果律に反することとなってしまい、親殺しのパラドックスのようなタイプの論理的パラドックスが生じることになってしまう。

 それ故に、この粒子は存在しないもの。存在する根拠が見つかっていないのだ。

 だが、諦は“この世界では、それは存在する”と理解した。理解する事が出来た。

 修羅神仏が存在するこの"箱庭"において、星霊という桁違いな存在が居る世界においてならば、そういった粒子が有っても可笑しい事ではないのではないか? と仮定した。

 その仮定こそが実在の証明となってしまった。

 光速など普通たる箱庭の世界において、“星辰粒子体”という粒子が存在している『この世界』において、タキオンという粒子は存在していようと何ら不思議ではない。

 そも、"ギフト"である『万全の能』がタキオン粒子を証明しているのだから、確かにタキオン粒子はあるのだと納得するしかないのである。

 では、ここでも問題である。

 光速、光の速度が『1秒間に地球を7周半回ることができる速さ』である事は皆さんご存知だろう。

 現代において、光速は299792458m/sとされていることも、知っている人が多い筈だ。

 光速で動けば台風なんかとは比べ物にもならぬ、核爆発が起きたのではないかと錯覚してしまうか、それ以上の風圧が発生して周囲を破壊し尽くす事も理解しているだろう。

 では、そんな光速よりも速く移動する粒子、タキオン粒子を体の中で循環させた諦がペルセウスの騎士達の方に直進したならば―――果たして、宮殿と兵士達はどうなるのだろうか?

 

 答えは、簡単である。

「――」

 な、なんだ?

 敵の姿は見えない。音も聞こえない。…自分の声は、出せない。

 それは何故なのか?

 …体が、無くなっているから。肉体が、消失してしまったからで、ある。

 そもそも、普通の人間というのは光速に肉体の質量が耐えられない。それ故に、人間が生身で光の速度に到達する事は本来ならば不可能である。

 どんな努力をしようと、人間が光速に到達する事は出来ない。肉体が耐えられないから。

 しかしそれは、こうとも言える――『光速に到達したものには抗えない』と。

 人間は光速に到達出来ない。つまりそれは、光速にはどうやっても勝てないという事であり、光速かそれ以上のものが来たならばその時点で敗北が確定しているという事である。

 光速以上の速度に耐えられる人間が突っ込んできたというそれは。

 超光速で隕石が落下する事と同義であり、それにただの騎士達が耐えられる訳も無かったのだ。

 まぁ、結局の所はそれだけの話し。

 ただの蹂躙で終わったという、それだけの事だ。

「再構成」

 そして、“何事も無かった。誰一人、消されてなど、いなかった。”

 事実はそう書き換えられた。否、正確に言うならば書き換えられたのは“ペルセウスの騎士達の肉体が消失した”という現実だけであり、彼が『死んだ』という事実は確かに残ったままである。

 ペルセウスの騎士達は愕然としていた。

 何が起きたのか、碌に把握する事も出来ていない。

 まぁ、それもその筈だ。なにせ、諦は普通の人間であれば、本来ならば、成し得ることの出来ない神の御業のような事を仕出かしたのだから。

「量子世界への一時的干渉による事象改竄。…なんて、言った所でお前達には理解出来ないのだろうがな。」

 それだけを言い残し、諦は普通に走り出した。

 

       ✻

 元魔王にして、ギリシャの悪魔であるアルゴールが召喚され、その威光を十六夜が圧し折った時の事。

 ぴんっ…と、コインが空へ投げられた。

「レールガンというものを、知っているか?」

 宮殿の上層にて、下でアルゴールと十六夜の戦いを見ているルイオスに対して、諦が言い放つ。

 レールガン―――それは、物体を電磁気力により加速して撃ち出す装置の事。

 並行に置かれた2本のレールとなる電極棒の上に、弾体となる金属片を乗せて電流を流し、電磁力により金属片を駆動し射出するというものである。

「おいおい、マジかよ…?」

 諦の言葉が聞こえたのか、十六夜はアルゴールの頭を踏んづけてから直ぐ様その場から離れた。

 乱暴かつ凶悪ながら、頭脳明晰で膨大な知識を持つ十六夜は諦が何を仕出かそうとしているのかをすぐに理解した。

 故に、その場から離れた。あのままでは自分も巻き添えを喰らってしまうと分かったから。

 幾ら強力な肉体を持つ十六夜であろうと、流石にレールガンに耐えられる自信は無いのだ。

 何より、使うのが諦である。普通のレールガンよりも強力なものである事は、想像に難くない。

「これもまた、ベクトル操作と同じく、俺が知る“有り得るかもしれない科学の超能力”の一つだ。」

 『学園都市』と呼ばれる科学が現代よりも発展した場所には、科学技術によって超能力者を生み出している。

 その学園都市に有る学校の一つ、常盤台中学校に在学する女子生徒には、5人しか居ない超能力者の内の一人が居る。

 その少女の能力は、『超電磁砲』。発電系の能力であり、その最高峰。

 彼女の得意技は、その能力の名前ともなっている超電磁砲。

 目標に向かう2本のレールをイメージし、それに沿って磁場を形成、フレミングの左手の法則に従って発生するローレンツ力に乗せて、金属の弾体を放つ。

 主にゲームセンターのコインを弾丸として用い、指で弾く形で撃ち出し音速の3倍以上で放つというものだ。

 諦がやろうとしているのは、それだ。

 

 バチバチッッッ!!!!―――と、小さな稲妻がその空間に迸る。

 くるりくるりと、投げられて空で回っていたコインが自由落下の法則に従って、綺麗に諦の手の方へと落下する。

 レールとなる稲妻は、アルゴールへ造られた。

 アルゴールは、動けない。体全体に強力な電流を放出されてしまったが故に、死人も同然の如く停止している。

 図体はデカく、当てやすい。つまる所―――文字通り、『良い的』である。

「失せろ。」

 

 雷鳴が、轟いた。

 




人は盲目から解き放たれれば、頭を高くして他人を扱う。
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