インストール・オリジニウム   作:愉快犯A

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最初、掲示板風の何かが出てきます。2chについては、にわか知識しかないので読んでて違和感があるかもしれません。苦手な人注意です。



第一話 邂逅

 

特異体質である超人社会になった現在では、人が空を飛んでいたとか、口から火を吐く人間がいる、といった話は噂として世に出回ることではない。それがごくありふれた話になっているからだ。

しかし、そんな超人社会でも超人社会らしい噂が今日に至るまで数多く存在する。そのなかでも、今現在ホットな噂が存在する。超人社会の常識にしては奇妙で異質なそれは瞬く間に広まり、ニュースでも報道されるようになった。もしその噂に名前を付けるとするならば「人を助けるヴィラン」だろうか。

 

────────────────────────────────────────

 

31:匿名A

昨日、ヤバい奴に出くわした。

 

32:匿名B

>>31

ヤバい奴ってなに?ヴィラン?

 

33:匿名A

>>32

いや、どうなんだろう。見た目とかはヴィランぽいけど……。まぁ、動画あるからそれ見たほうが早い。

 

34:匿名A

(動画添付)

 

35:匿名C

ポチっとな

 

36:匿名A

>>35

あ、言い忘れてたけど、閲覧注意ね。

 

37:匿名C

>>36

早く言えよw

 

38:匿名D

ヒーローがヴィランから親子を守ってる動画か、これ?それにしてはやけに過激というかやりすぎというか……

 

39:匿名E

こいつヴィランの両腕吹き飛ばしたぞ!

 

40:匿名F

うわ、グロ……

 

41:匿名G

ヴィランに手をかざした瞬間、ヴィランの腕が逆回転してたような

 

42:匿名B

>>41

吹っ飛ばしたというより、ねじ切ったって感じだな

 

43:匿名D

容赦ねぇ……

 

44:匿名H

親子絶句してるぞ

 

45:匿名F

なにこいつ、ホントにヒーロー?

 

46:匿名E

>>45

いや多分だけどこいつヒーローじゃない。もしヒーローだったら最後逃げる必要なんてないし

 

47:匿名I

個性なんだ?

 

48:匿名C

>>47

多分操作系

 

49:匿名B

サイコキネシスか?

 

50:匿名D

ほんの一瞬で全く分かんねぇ

 

51:匿名E

今更だけど、こいつやけに小柄じゃない?それに変な被り物してる。鹿の頭の骨?

 

52:匿名F

角デカ。寝るとき大変そう

 

53:匿名G

>>52

それ思ったw

 

54:匿名A

ちょっと公式のヒーローページ行って調べてきた。

 

55:匿名D

ナイス!

 

56:匿名G

仕事早いな

 

57:匿名A

結論から言うとヒーローにこんなやついなかった。

 

58:匿名E

となるとやっぱりヴィランか

 

59:匿名F

もしかしたら、鳴羽田のヴィジランテみたいな連中かも

 

60:匿名I

>>59

もしそうだったらやりすぎだろ。過剰防衛で捕まるぞ。

 

61:匿名G

>>60

確かに。そういう連中をヒーローが見張ってないはずがないか

 

62:匿名H

こいつホントにナニモンだよ……

 

63:匿名J

こいつ、知ってるかも。

 

64:匿名F

おっ

 

65:匿名E

マジか

 

66:匿名J

俺、とある無名のヒーローなんだけどさ。こいつ、被り物変えてるけどこいつの角はよく覚えてる。

 

67:匿名D

ヒーローニキ!

 

68:匿名G

ヒーローニキ、キター!

 

69:匿名K

お、進展しそうだな

 

70:匿名J

こいつ塩野にいたヴィランだ。

 

71:匿名E

やっぱりこいつヴィランか

 

72:匿名L

塩野?

 

73:匿名K

塩野ってたしか災害があったところだよね。

 

74:匿名A

嵐で建物に被害出たって聞いた。

 

75:匿名B

あったあった。一か月くらい前の話だったっけ?

 

76:匿名C

まだ記憶に新しいわ

 

77:匿名J

当時俺は塩野市を巡回してたんだよ。そしたら市民の方からヴィラン同士が暴れてるって通報があってさ。通報のあったビル街の方に行ったら、何十回も爆発音がしてて、駆け付けた頃には、周囲に窓ガラスが散乱してた。幸い、市民には怪我人は居なかったけど、凄惨な光景だったよ。

 

78:匿名L

怪我人0ってマジ?

 

79:匿名H

>>77

誇張入ってない?

 

80:匿名J

>>79

これはマジ。

 

81:匿名B

というか、災害の前に事件があったんだな。

 

82:匿名G

あんまり目立ってなかったけどそういえばあったわ。ついでにこの災害の後、横領の罪でどっかの社長が捕まってた。

 

83:匿名J

俺はその後、市民の安全確保のために動いてたんだよ。しばらくして応援に沢山のヒーローが駆けつけてきて、ジーニストやホークスみたいな有名どころのヒーローも駆けつけてきてた。市民の誘導もすぐに終わりそうってときに、突然竜巻が発生した。

 

84:匿名A

ホークスもいたのか

 

85:匿名I

タイミング最悪だな

 

86:匿名B

>>83

で、その後どうなったんだ?

 

87:匿名J

その後は雷雨なかも出始めて。その光景を一言で表すならまさしく「天災」だった。その時の写真がこれ

 

88:匿名J

(写真添付)

 

89:匿名H

マジで天災じゃん

 

90:匿名E

ヒーローニキよく生きて帰ってこれたな

 

91:匿名D

黙示録やん

 

92:匿名F

加工とかじゃないんだよね?

 

93:匿名J

>>92

断じて加工じゃない。現実に起きたこと。

 

94:匿名G

俺だったらこんなの目の当たりにしたら、パニックになる。

 

95:匿名J

>>94

案の定なったよ。沢山の人がパニックになって俺は誘導に手一杯になってた。それで、なんとかビル街の外まで誘導が終わったときに初めて奴を見かけた。奴は嵐の中心にいたんだ。

 

96:匿名D

ヤバッ!

 

100:匿名A

中心ってまさか

 

101:匿名D

もしこの規模を一人で起こしたって考えたら化物すぎだろ

 

102:匿名J

>>101

そこまでは分かってない。だから一応ニュースとかでは災害ということになってる。ただ、この一連の出来事にかんでるのは間違いない。

 

103:匿名C

確かにこの規模のことをたった奴一人でやったって言っても誰も信じなさそう。(オールマイトを除いて)

 

104:匿名E

>>103

オールマイトなら確かにw

 

105:匿名F

>>104

天災の一つは起こせそうw

 

106:匿名J

だけど、こいつが相当危険なことは変わりないよ。ここ一ヵ月で破壊事件が多発してるのを知ってる?

 

107:匿名B

よくニュースになってるな。

 

108:匿名C

建物の一部が破壊されるってやつでしょ。

 

109:匿名E

襲撃された場所は研究所に、企業ビルに、犯罪組織の拠点、はたまたヒーロー事務所まで。

 

110:匿名G

>>109

ヒーロー事務所破壊するとかヤバすぎるだろ。

 

111:匿名F

>>109

場所に統一性がねぇw

 

112:匿名J

実はこれらの破壊事件の容疑に奴がかけられている。塩野のビルとこれらの現場で見つかった個性の痕跡が奴のと酷似してた

 

113:匿名B

ヴィランというかテロリストやんけ。

 

114:匿名E

>>112

事務所襲撃されたとき、ヒーローはなにしてたんだ?

 

115:匿名J

>>114

十数人ものヒーローが応戦したらしいけど軒並みやられたらしい。でも死人は居なかくて、怪我も軽症がほとんどだったらしい。

 

116:匿名F

強くね?

 

117:匿名H

>>116

いや、ヒーローが弱かったんじゃないか?

 

118:匿名J

>>117

襲ったヒーロー事務所にはデステゴロやマニュアルなんかの名の知れたヒーロー事務所も襲われてる。

 

119:匿名E

マニュアルの事務所が襲われたのってまさか保須事件の直後に起きたあれ?

 

120:匿名F

>>119

え?なにそれ?

 

121:匿名D

保須の直後にあってあんまり目立たなかったからなぁ。

 

122:匿名A

親子を助けたあれは一体何だったんだ?

 

123:匿名M

>>122

そう見えただけなんじゃない?目的はヴィランの方で親子は別にどうでもよかったんじゃないかな

 

124:匿名G

>>125

いやでも、動画見る限りは守ってるいようには見えたし……

 

126:匿名N

なんかほかにも、市民を守ったって話あるみたい

 

127:匿名B

マジ?

 

128:匿名D

尚更分っかんないなぁ

 

129:匿名O

一体なにが目的なんだろうな?

 

130:匿名I

そういえば、そのヴィランの呼び名ってあるの?

 

131:匿名E

>>130

確かに気になる。

 

132:匿名J

名前は確か、「ウェンディゴ」って呼ばれたはず。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

緑谷家前

 

「いってきます!」

 

そう言って僕は玄関を閉める。

 

雄英高校は一学期の全過程を終了し、夏休みに入っていた。僕、緑谷出久は林間合宿に備え、日々自主トレに励んでいた。今日も日課のランニングをするため多古場海浜公園に向かっていた。そう、オールマイトの下で特訓したあの場所へ。

 

時刻が18時半を回った頃。多古場海浜公園に向かっている途中、ある話が耳に入り、僕は足を止めた。その話はビルの外壁のモニターからで、映し出されたドキュメント番組がとあるヴィランについて話していた。

ヴィラン名「ウェンディゴ」

一ヵ月前から頻繁に名前が上がるこのヴィランは全国各地で21件の建物破壊事件を起こし、2度ヒーロー事務所を襲撃した。

攻撃対象に統一性がなく、無差別犯罪を起こす凶悪ヴィランと見る一方。ヴィランから市民を守っていたという声や火事から子供を助け出してたなどの声が不特定多数存在し、過激なヴィラン退治からダークヒーローとしての見方もされている。

極めて異質なヴィランの風貌は黒い外套に身を包み、無骨な被り物しているのが特徴。

神出鬼没さと鹿の頭の骨のような被り物をしていることから「ウェンディゴ」という名前が付けられた。

 

ウェンディゴの行動原理はいまだ不明で、痕跡を悉く消してるのもあって尻尾を掴めていない。

ステインの一件もあり、ウェンディゴにも何かしらの信念、目的のようなものがあるのではないか?といった声がネット上にあげられている。

 

(そういえば、飯田君の職場体験先のマニュアルのヒーロー事務所も被害にあったんだっけ……)

 

僕はそんな話を聞き入ってしまっていた。

飯田君の一件もあるけど、それとは別にヴィランが人を助けるというのが今までのヴィラン像とはあまりにかけ離れていた。そのせいで自分の中にあるヴィラン像が一瞬でも揺らいだような気がしていた。

 

(だめだダメだ、何考えているんだ僕は!)

 

僕はこれ以上考えまいと思考を振り払い、顔を正面に戻し、もう一度走り出した。

 

 

それから僕は全力で走り続け、結果としていつもより早く多古場海浜公園に到着することになった。

多古場海浜公園に着くと、時刻は19時を回っていた。あたりは既に暗くなっていて、海岸沿いを等間隔に設置された小さな街灯が微かに公園を照らしていた。海の方からはさざ波が聞こえ、いつもと変わらない夜の多古場海浜公園が広がっていた。

 

匂いを除いて

 

僕はすぐに異変に気付いた。いつもはしない匂いが微かにする。

それは何かが燃える匂いだった。

もしかしたらどこかで火事になっているんじゃないか、そう考えたば僕は匂いもとの特定を急ぐ。

匂いを追い、辿り着いたのはまだ漂着物が堆積している区画だった。

そしてよく見ると奥の方で煙が上がっている。

 

(やっぱり火事じゃないか!早く消防車を呼ばないと!)

 

僕は携帯端末を取り出して、消防車に連絡しようと番号を入力しようとした。

 

「痛い……助けて、だれか……」

しかし、その前に僕の耳が誰かのか細い小さな声を聴いてしまった。

嗚咽を必死にこらえるようなその声は確かに救いを求めていた。

僕は消防車への連絡よりも声がした煙の方へ向かっていた。

煙の方へ近づけば近づくほど、匂いは強くなり、それとは別の異臭も漂ってきた。

嗅ぎ慣れないその臭いに顔をしかめながらも、声の元にたどり着く。

 

そこにいたのは、一人の女の子だった。

枯草色の髪に二本の木の枝のような角をもつ女の子は全身包帯が巻かれていて、廃棄物を背に腹部を押さえて、痛みに耐える表情をしていた。抑えた腹部からはじんわりと赤い染みができていた。

「大丈夫!?」

そう声をかけると、こちらに気付いたのか一瞬驚いた表情をする。

しかし、すぐに表情を変え、なぜかこっちを威嚇するよう睨みつけていた。

しかしそれには覇気がなく、弱っているのは目に見えて明らかだった。

その光景を見た僕は一瞬戸惑ってしまい、足を止めてしまう。しかし周囲にあったあるものを見て気づいてしまった。周囲には煙の発生源の焚火と血の付いた奇妙な黒い石。そして、見覚えのある鹿の頭の骨の被り物がそこにはあった。

そう僕はこの瞬間、目の前の、自分よりも幼く見える女の子がウェンディゴであることに気づいてしまった。

目の前に凶悪なヴィランがいる。

この時、僕はここから離れて、警察かヒーローに通報するべきだったんだ。

──だけど、

 

「痛い……助けて、だれか……」

 

あの時聞いた声を頭によぎってしまった。

あの言葉は間違いなく本心から出た言葉だった。だから目の前にいるのはヴィランではなく、助けを求める一人の女の子に見えてしまった。

そして、そう思ったとき、既に僕の身体は動いていた。

歩みを進め、手を伸ばしこう言った。

 

「助けに、来たよ」

 

その日はとても星がきれいだったことを僕は覚えている。

これが僕と彼女が初めて出会ったときのお話。

 

改めて言うよ。この物語は僕が最高のヒーローになるまでの物語、ではない。

 

この物語は彼女が未来を変えるまでの物語だ。

 




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