はるかなるワンダーランドに向かって   作:アンセンブル

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第9話 みんなの夢を叶える風

 

 スクールアイドルフェスティバルが開幕した。ライブステージが至るところに設置されており、あちこちで歓声が鳴り響いている。

 

「さあ皆さん! 会場を盛り上げていきますよ〜!」

 

「はい!」

 

 午前のプログラムのひとつ。姉ちゃんは優木先輩と桜坂さんと一緒に簡単な劇を交えたステージを行う。僕との双子パフォーマンスは午後の予定だ。

 

「それじゃあコッペパン同好会の皆さん! よろしくお願いしますね」

 

 コッペパン同好会の人たちはやる気満々の様子だ。彼女たちには重要な役割がある。このステージの肝と言ってもいいかもしれない。

 

「どうしたの? かず?」

 

 ステージ裏に聳える巨大なオブジェクトを見上げた。2メートルは優に越えるそれは会場の中でも異様な雰囲気を放っている。

 

「なんだっけあれ? かすみこし?」

 

「どこでもかすみん!」

 

 姉ちゃんは怒って頬を膨らませる。そうだ、どこでもかすみんだ。コッペパン同好会と姉ちゃんで制作した、姉ちゃんを模した神輿のような移動型ステージ。それに乗って姉ちゃんは登場する。コッペパン同好会の人たちはその担ぎ手だ。

 

「じゃあかずは営業頑張って! 午後もよろしくね!」

 

「はーい」

 

 午前の僕はやるべきことをやろう。僕はコッペパン同好会制作のリヤカー、命名『かすみんカー』を引いて控えスペースを出た。

 

 

 

 

 

 

「もうすぐライブが始まりま〜す。是非見に来てくださーい」

 

 僕の仕事はライブの宣伝とコッペパンの販売。姉ちゃんたちのステージの近くでスクールアイドルフェスティバルのTシャツを着て呼びかけをしていた。

 

「中須君〜」

 

 販売が少し落ち着いてきたところで、近江さんがやってきた。僕と同じくスクールアイドルフェスティバルのTシャツを着ている。

 

「あ、近江さん。姉ちゃんのライブ見に来たの?」

 

「うん。中須君はコッペパンの販売? どんなの?」

 

「ふっふっふっ……。今日はとっておき! 『ときめきレインボーコッペパン』!!」

 

 リアカーからコッペパンのひとつを取り出して掲げる。

 

「うわあ……すごいインパクト……」

 

 コッペパンを見た近江さんは絶句している。この見た目なら無理もない。

 

 ときめきレインボーコッペパンの特徴はなんといってもその見た目。ニジガクのスクールアイドル同好会の人たちをイメージして9色で色付けたパンに生クリームとジェリービーンズを乗せた、僕とコッペパン同好会が共同制作した一品だ。

 

「味はちゃんと保障するよ。見た目からは想像つかないと思うけど」

 

「中須君が作ったものだからそこは安心してる。ひとついい?」

 

「もちろん」

 

「中須君はかすみんさんのライブ見ないの?」

 

「ここから見るよ。そこまで離れてないし、姉ちゃん神輿の上に乗るからちゃんと見えると思うよ」

 

「そっか」

 

 パンを受け取った近江さんはなぜかその場を離れないで僕が引くリヤカーに寄りかかった。

 

「私もここから見てもいい?」

 

「……もちろん」

 

 

 ……やっぱり、最近近江さんとの距離が近くに感じる。仲良くなったのはいいことだけどなんか照れくさい。これってもしかして……。

 

 

 ……近江さんも僕のこと男として意識していないんじゃ……。

 

 

 

 

 

 

「す、すごかったね……」

 

 姉ちゃんたちのライブが終わり、近江さんは感嘆を息を漏らしていた。

 

 ……怒涛のライブだった。

 

 優木先輩のパフォーマンス中にどこでもかすみんに乗った姉ちゃんが乱入。スモークを炊くなどして妨害しているところを謎の仮面をつけた桜坂さんが登場して吹き飛ばすというヒーローショーみたいなのが行われたあと、それぞれのソロライブが始まるという流れだった。

 

 とにかく演出が派手で大盛り上がりだった。優木先輩のライブは炎や爆発を多用して圧倒的だし、桜坂さんのライブは演劇の世界にいるかのように引き込まれた。そして姉ちゃんはかわいいを詰め込んだようなライブで、僕含め見に来てくれた人みんなが笑顔になっていた。

 

「すごいなあ……姉ちゃん」

 

 ここまで盛り上がるとは思っていなかった。これがスクールアイドル、これが姉ちゃんたちの夢……。

 

 午後は頑張らないとな。まあ僕はステージを歩くだけで難しいことはないけど。

 

 

 

 

 

 

「みんな〜! 今日は来てくれてありがとう!」

 

 かすみんカーをコッペパン同好会に引き継いだ午後1時。僕は東雲学院のステージを見ていた。

 

「今日は心を込めて精一杯歌います。みんなに私たちのハートを届けます! 最後まで楽しんでいってくださいね!」

 

 

「きゃー! 遥ちゃん! 遥ちゃーーーーーんっ!!」

 

 

 そして僕の隣には彼方先輩がいた。全身を近江さんグッズで武装した彼方先輩は普段からは考えられないほどの大声を出して応援していた。

 

「ラブリー・ハルカ! ラブリー・ハルカ! 遥ちゃん宇宙一可愛い~! ほら、かずま君も声出して! 彼方ちゃんたちが全力で応援するからスクールアイドルも輝けるんだよ!」

 

「そ、そうですね」

 

「ラブリー・ハルカ! ラブリー・ハルカ! はい!」

 

「ら、ラブリー・ハルカ! ラブリー・ハルカ!」

 

「きゃーーー! 遥ちゃんと目が合ったぁぁぁぁ!!」

 

「合ったかな……?」

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

「はあああ……燃え尽きた……。心地よい疲労感と満足感……たまらんぜ……」

 

 ライブが終わった彼方先輩はやりきった感を出しており、今にも寝てしまいそうだった。

 

 でも本当にいいライブだった。ソロの虹ヶ咲に対し、東雲はこれまでの練習で築き上げたグループの一体感が強み。ステージを横いっぱいに使ったパフォーマンス、8人全員のまとまったダンスと歌はソロにはない魅力がある。

 

 そのセンターは近江さんが務めていた。グループのセンターは当然一番注目を集める。プレッシャーも相当あるだろうに、近江さんは堂々としていて一番輝いていた。本当にすごいとしか言いようがない。

 

「遥ちゃん大きくなって……。彼方ちゃん泣いちゃいそう……」

 

「ハンカチ使います?」

 

「ありがとう……。彼方ちゃんちょっとすやぴしてくる……」

 

「いやいやいや! 彼方先輩もうすぐライブですよね!? 早く行かないと!」

 

「かずま君におんぶしてもらう」

 

「いいんですね? 僕本気でやりますよ? また恋しますよ!?」

 

 結局彼方先輩が眠る前にニジガクバスケ部の人たちがやってきて彼方先輩を運んだ。

 

 ……残念じゃないよ?

 

 

 

 

 

 

 そして次は彼方先輩のステージだ。再び近江さんと合流した僕はステージに向かった。

 

「なにこれ……?」

 

「ベッド?」

 

 彼方先輩のステージの前にはいくつものベッドが置かれていた。よく見るとステージの前だけじゃない。ステージ上にもあって、そこでは彼方先輩が眠っている。

 

「演出だよね? お姉ちゃん本当に寝てないよね?」

 

「さ、流石に大丈夫だと……思う」

 

 自信を持って断言出来ないのが悲しいところ。僕と近江さんは不安になりながらもベッドに腰を掛けた。観客席替わりなのだろうか?

 

 彼方先輩が起き上がり、イントロが流れる。ビーナスフォートで披露した、僕がスクールアイドルにハマるきっかけになった歌。僕の大好きな『Butterfly』だ。

 

 

 

 〜〜♪

 

 

 ……いいなあ。何回聴いてもいい。彼方先輩の語りかけるような歌声は最高だし、近江さんとのことを謳った歌だからより世界に引き込まれる。

 

 初めて聴いたときを思い出す。あのときは近江さんと彼方先輩がギクシャクしていて、女装していた僕も何故か巻き込まれたんだよな……。

 

 近江さんと仲直りするために歌ったのがこの曲だけど、今彼方先輩はどんな想いで『Butterfly』を歌っているんだろう。

 

 

 …………。

 

 

「それじゃあみんなおやすみ~……すやあ……」

 

 曲が終わると彼方先輩はベッドに横になって寝始めてしまった。

 

「お、お姉ちゃん……?」

 

「これでライブ終わりなのかな?」

 

 辺りを見渡すと他の人もどうすればいいのかわからないようだった。よかった、僕がおかしいというわけではないみたいだ。困っているところにアナウンスが流れた。

 

『これから夢の世界でライブを行います。みなさん、お座りのベッドに横になり、夢の世界へと旅立ってください』

 

 ……うん、意味が分からない。

 

「つまりは寝ればいいのかな……?」

 

「多分?」

 

「夢でライブってできるのかな?」

 

 冗談のつもりで近江さんに聞いたけど、近江さんは神妙な顔をして考え込んでいた。

 

「そういえば最近妙に夢にお姉ちゃんが出てくるような……」

 

 近江さんが見る夢なら毎回彼方先輩が出てきそうだけどね。でももしかしたらもしかするかもしれない。

 

「とりあえず寝てみる?」

 

「そ、そうだね……!」

 

 ふたり並んでベッドの向きと垂直に足を出して寝てみる。雲が太陽を隠していて寝るにはちょうどいい。でもちょっと雲が嫌な感じだな……あ、このベッドふかふかで気持ちいい……。

 

「すやぁ……」

「すやぴ……」

 

 僕たちはあっという間に夢の世界へと入っていった……。

 

 

『お、みんな来たかな〜?』

『アンコールの始まりだぜ〜』

『後ろの方までちゃんと見えてるよ〜』

 

 

 夢の中では本当に彼方先輩のライブが行われていた。メルヘンな世界観で宙に浮かんだり巨大化したりなんでもありのライブだった。多分このライブを一生忘れないと思う。

 

 

 

 

 

 

 スクールアイドルフェスティバルは順調に進んでいき、僕の出番までもう少しになった。

 

「かず、最後にもう一度確認するよ? まずはかずがステージに出て……」

 

 控えスペースで姉ちゃんとライブの最終確認をする。姉ちゃんのふりをするということで今の僕は姉ちゃんのライブ衣装に身を包んでいる。

 

 僕たちがやろうとしているのはいわゆる瞬間移動マジック。理屈は簡単で、僕が観客の前に出てステージ下手側にある箱の中に入る。そして曲のイントロが流れて歌い出しと同時に、あらかじめ上手側にある箱に入っていた姉ちゃんが飛び出すという流れだ。

 

 マジックと呼べるのかも分からない簡単なタネ。成功の秘訣はいかに堂々と姉ちゃんらしく振る舞えるかだ。

 

「ふっふっふっ……見に来てくれた人の驚く顔が目に浮かぶ……。これで先輩たちのファンだけでなく、東雲と藤黄のファンもごっそり……」

 

「かすみちゃーん! ちょっと聞きたいことあるんだけどいい〜?」

 

「はーい!」

 

 姉ちゃんは何やらぶつぶつ言ってたけど、高咲先輩に呼ばれて意識を取り戻した。

 

「えっと……こっちがかすみちゃんだよね?」

 

「はい! 流石侑先輩〜♡ かすみんのことよく見てますね〜♡」

 

「え、いや、ヘアピンで判断したんだけど……」

 

「…………」

 

「ああ違う違う! かすみちゃんかわいいからすぐ気づいちゃうよ〜」

 

「あ〜、侑先輩好き好き♡ でもこれじゃあファンの人たちにタネがバレちゃうんじゃないか心配です〜」

 

 姉ちゃんが高咲先輩に抱きつく。ヘアピンの流れはスルーのようだ。

 

「それで話ってなんですか?」

 

「あぁ、うん。箱の運搬についてなんだけど……」

 

 ぽつぽつ……。

 

 高咲先輩が話し始めようとしたところで顔に水滴が落ちてきた。高咲先輩もそれを感じたようで言葉を中断する。

 

「雨?」

 

 そう呟くと同時に、少なくない雨が僕らを打ち付けてきた。

 

 

 

 

 

 

「果林さんと藤黄学園の合同ステージ、中止……」

 

 高咲先輩がタイムスケジュール表に赤マーカーで線を引く。運営本部席は重苦しい空気に包まれていた。

 

 天気予報では晴れだった。ステージは雨対策をしておらず、タイムスケジュール表に次々と赤線が引かれていく。

 

「遥ちゃん、残念だったね……」

 

「うん、仕方ないよね……」

 

 その中に彼方先輩と東雲学院のステージも含まれていた。

 

 あんなに練習していたのに、夢だったのに。雨ひとつでダメになってしまった。

 

「ぐっ……」

 

 僕ももちろん悔しいが、隣にいる姉ちゃんはもっと悔しそうだった。

 

「最後の、最後のステージだけは……」

 

 そんな呟きが漏れ出している。最後……? 何か考えていたのかな?

 

 ステージが使えるのは19時まで。スマホで速報を見たけど、この雨が止むのも19時頃だった。

 

 

 

 

 

 

 ライブ衣装を脱いでTシャツに着替えた僕はステージの様子を見にきていた。

 

「ブルーシートを被せて! いつでも再開できるように!」

 

 中止になったステージではスタッフの人たちが何かをしていた。指示をしているのは確か……ニジガク生徒会の副会長だったかな?

 

「手伝います」

 

「あ、かすみさん」

 

「かずまです。弟の」

 

「し、失礼しました!」

 

 間違いを指摘された副会長さんは深々と頭を下げる。少し申し訳なくなった。

 

「何してるんですか?」

 

「機材が濡れないようブルーシートを被せているんです」

 

「手伝います」

 

「ありがとうございます。ですがここは十分なので、中須さんは本部の方に伝言を頼めますか?」

 

「伝言?」

 

「はい。スクールアイドルの方たちに、最後のライブの準備をしていて欲しいと」

 

「最後のライブ?」

 

 どういうことだろう? 雨は終了時刻まで止みそうもない。天気予報が外れたときのためかな?

 

「ええ、今学校側にライブの時間を延長できないか掛け合ってるんです」

 

「え?」

 

 思いがけない言葉に声が出た。ライブの延長……願ってもないことだ。

 

「そんなこと出来るんですか?」

 

「出来る出来ないではなく、やるんです。せつ菜ちゃんならそう言うと思うし……」

 

 副会長さんは運営本部の方に目をやる。落ち着いた雰囲気の人だけど、その目には熱い炎が宿っているように見えた。

 

「自分に出来ることならなんでもしようと思うんです」

 

「自分に出来ること……」

 

 考える。僕に出来ること……。パン作り? 機材の保護の手伝い? もっと何か……。

 

「ありがとうございます! 僕も少し考えてみます!」

 

「うん。じゃあお願いね」

 

「はい!」

 

 今僕が出来ること。何か思いつきそうだけど、今は副会長が学校側に掛け合っていることを姉ちゃんに伝えよう。

 

 

 

「もう、ライブ出来なさそうだね。帰ろうか」

 

「そうだね〜。残念だけどエマちゃんのライブ見れたからいいかな〜」

 

 運営本部に向かっている途中、藤黄の制服を着た女の子たちのそんな会話が聞こえてきた。

 

「ちょちょちょ待ってください!」

 

「何……え!? かすみん!?」

 

 当たり前のように姉ちゃんと間違えられる。なんか今日こういうこと多いな。言い直すのも面倒くさい。

 

「実は〜スクールアイドルフェスティバルの時間を延長出来ないか学校と交渉してるんです〜」

 

「え!? てことはまだライブがあるってこと?」

 

「そうなんです!」

 

「そうなんだ! じゃあもう少し時間待ってみるね」

 

「ありがとうございます! よかったらお友達にもこのこと伝えておいてください!」

 

「分かった。あ、かすみん、握手してもらってもいい?」

 

「もちろんいいですよ!」

 

 握手をして女の子たちと別れる。引き止められてよかった。これも姉ちゃんの人気のおかげ…………ん?

 

 ……これだ!

 

 

 

 

 

 

 時間延長のことを姉ちゃんに伝えたあと、僕は衣装を持って着替えスペースにいた。

 

 鏡で自分の姿を確認する。これが姉ちゃんにしか見えないのは高咲先輩たちで実証済み。なんならステージ衣装でなくとも姉ちゃんに間違われるんだから心配することないだろう。

 

「……よし!」

 

 頬を叩いて気合いを入れる。僕の行動がどれほど意味があるのかは分からない。だけどきっとこれが、今の僕に出来ること。

 

「かすみん、いっきまーす!」

 

 緊張を紛らわせるために声を張り上げて、僕は雨の降る会場に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

「みなさーん! 聞いてくださーい!!」

 

 お台場の実物大ユニコーンガンダムの近く、雨宿りをしている人が多くいるそのエリアで、僕はこれまでの女装で鍛え上げられた声真似で大声を出した。

 

「なになに?」

 

「あっ、かすみんだ」

 

 普段の僕だったらどうなるか分からないけど、今の僕はステージ衣装を着たスクールアイドルのかすみん。想定通り辺り全体の注目を集めることができた。

 

「スクールアイドルフェスティバルは19時から最後のステージを行いま〜す! 是非見に来てくださ〜い!!」

 

 少し前にライブ時間の延長が決まった。SNSでは告知されているけど全員に知られているとは限らない。確実に知らせるためにも声掛けをしたかった。

 

「19時からだって」

 

「どうする?」

 

「待ってみようよ。せっかく来たんだし」

 

「そうだね。果林さんのライブ見れないかな~」

 

 よし。このエリアの人たちには伝わった。次は……少し離れてるけど駅前まで行こう。帰ろうとしている人をひとりでも多く呼び止めるんだ。

 

 僕は雨の中走った。傘を持っていないけどそれでいい。買う時間がもったいないし、差さない方が注目を集める。いち早く、多くの人にライブのことを知らせたかった。

 

 

「19時から再開になりました!」

「是非見に来てください!!」

「お願いします!!!」

 

 

 お台場中を風のように走り回った。数十分ほどで雨は止んだが、髪はびしょぬれで顔に張り付いているし、服も水を吸って重くなっている。衣装を用意してくれた人に謝らないとな……。

 

 

 なんにしてももうすぐフェスティバルは再開されるはずだ。僕のしたことでどれだけ人が戻ってくれたのかは分からない。少しでも多くの人が集まっていることを祈ってステージへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 19時。最後のステージの前には今日一番の人が集まっていた。それを見て安心すると、どっと疲れが押し寄せる。今まで気がつかなかったけど雨でかなり体温が奪われていた。

 

 

 コッペパン同好会の人たちはずぶ濡れの僕を見てすごく驚いた様子を見せ、すぐにタオルを持ってきてくれた。

 

 

 歓声が聴こえる。顔を上げてステージを見るとニジガクのスクールアイドルの人たちが並んでステージに立っていた。

 

 

「最後のステージに集まって頂いた皆さん、そしてモニター越しに見てくれている皆さん。今日は私たちと一緒に楽しんでくれて、本当にありがとうございます!」

 

 

 姉ちゃんが一歩前に出て言葉を発する。

 

 

「ちょっとアクシデントもあったけど、みんなのおかげでこのステージに立つことができました!」

 

「今日はいろんなステージを回ってみんなと繋がることができて……。とっても大切な1日になりました」

 

「スクールアイドルフェスティバルはみんなの夢を叶える場所。私たち同好会はグループとしてではなく、ひとりひとりがやりたい夢を叶えるスクールアイドルとして歩き始めました」

 

「ひとりで夢を追うことは簡単ではなくて……それぞれがそれぞれの壁にぶつかったけど……」

 

「その度に誰かが誰かを支えて、今日ついに大きな夢を叶えることができました」

 

「私たちはひとりだけどひとりじゃない」

 

「今までみんなに支えてもらった分、次は私たちがみんなの夢を応援します!」

 

「これからもつまずきそうになることはあると思うけど、あなたが私を支えてくれたようにあなたには私がいる」

 

 

「この想いはひとつ。だから、全員で歌います!」

 

 

「「 あなたのための歌を! 」」

 

 

   〜〜〜♪

 

『夢がここからはじまるよ』

 

〜〜〜♪   

 

 

 イントロが流れる。ソロでの活動がメインの虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会全員で歌う歌。姉ちゃんが歌いたがっていた歌。

 

 

 衣装はバラバラ、振り付けもグループというよりそれぞれの個性を表しているかのようなもの。東雲や藤黄のものとだいぶ違うように見える。

 

 

 だけど全体としてひとつの曲になっている。きっとそれは、やりたいことが違っても伝えたい同じ想いがあるから。

 

 

 途中で東雲や藤黄のスクールアイドルもステージに上がっていった。近江さんと彼方先輩は並んでファンの人たちに向けてアピールをしている。

 

 

 あぁ、よかった……。

 

 

 雨によって東雲と彼方先輩の合同ステージはなくなってしまった。姉妹で一緒のステージに立つのが夢だったふたりは残念そうだった。だけどこうして一緒のステージに上がれた。思い描いていた形とは違うけど、夢の一部は達成できたんだ。近江さんと彼方先輩の笑顔が見れてよかった。

 

 

 姉ちゃんも楽しそうだ。夢を持ってスクールアイドル同好会に入ったけど廃部になって、それでもめげずに頑張って、そしてようやく叶えた大きな夢。たくさんアイドルがいるのに、自分が一番かわいいとでも言うかのように輝いていた。

 

 

 〜〜〜♪

 

 

 曲が終わる。それと同時に溢れんばかりの拍手が鳴り響いた。これで本当にお祭りの終わりだ。

 

 

 途中アクシデントはあったものの、最後は大盛り上がりでスクールアイドルフェスティバルは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 そしてスクールアイドルフェスティバルの翌日。

 

 

 僕は風邪をひいて寝込んでいた。

 

 

 




次話10月29日更新予定

 この話を書くためにアニメ1期13話を見返したんですけど本当良すぎますよね……。最後のステージのセリフパートをそのまんま使わせてもらいました。

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