新時代を、それでも   作:ずーZ

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7話 ※ウタがそこそこ近くて港町としてそこそこ栄えてそうなオレンジの町を目指したけど航海術が未熟で右往左往進んでたら上陸前のナミとハデに合流した話(バギー編は巻きでいく話)

 

 

 

 

 

 

 

 ルフィ達3人が、金棒のアルビダの船から取り上げた上質な小船に乗って、シェルズタウン出港から今日で4日……。

 

 ──何時になく、張り詰めた空気が船室に漂う……!! 

 

「ん? ……ふんふん」

 

 短く切り揃えられたオレンジの髪が鮮やかな少女……ナミが、ウタ達3人に遠巻きに窺われる中、テーブルに向かって座っている。

 手元のウタの航海日誌と、周りに散りばめられた、メモだらけの海図達とを交互に見ては時折小さく頷いていた。

 

「……っ」

 

 自然と手を前で組んだウタが、ゴクリと喉を鳴らした。

 今日は確かに穏やかな海である。そのはずなのに、ウタだけはなぜだかやたらと波の揺れを大きく感じている。

 普段柔和で愛らしい表情を浮かべる彼女は、額に薄ら冷や汗を浮かべ、顔を固く(こわ)張らせてナミの様子に注視していた。

 ウタの今の気分は言うなれば、そう──

 

『 採 点 待 ち !』

 

 ルフィとゾロも、ウタが発する緊張した空気……敢えて例えるなら『赤点怖い』空気……に過敏に反応していた。

 何故かと言えばそれは本能か、直感か、何某かへのよく分からん恐怖か! ……理由は枚挙に暇が無い。無いったら無い。

 とにもかくにも! この空気が苦手な様子で渋い顔。だが、

 

 真剣な雰囲気!! 

 

 ……に、ひとまず大人しく、静かに佇んでいた。いや、もっとも、後ろ手でお互いにちょっかいだけは掛け合っている。即ち! 空気を読んで大人しくなってもそこがこの男2人の限界であったのだ! 子供か? 

 

 そんなある意味では愛らしい野郎2人はさておき──ウタとナミの空気はやはり、真剣そのものである!! 

 

「……へぇ」

 

 ふと零される微かな感心。

 

「あん? あ、ははーん……なるほど」

 

 一瞬の疑念に小さく唸る。そして何かを楽しみ、何かを納得していく声。

 ナミのそんな些細な仕草、衣擦れ、吐息のような呟き。

 

 ウタの耳は全て聞き漏らさない……! 

 

 時に肩が震え。時に目が輝き。時に息をのみ。そして常に赤と白の後ろ髪は落ち着きなく上下する。……なお、立ちんぼにも後ろ手遊びにも飽きてきた男2人は、ウタの機敏に逐一踊る髪を見て暇を潰していたりする。

 

 ペラリ……ペラリ……、ウタには捲られるページの音すら、ずっと、イヤに大きく聞こえている。

 

 いったいどれだけの長い時間が経ったか、ウタには何時間にも感じられて一切計り知れなかった。(※要領のいい速読により約10分)

 

 そして、ついに──! 

 

 満足したとばかりにナミは、パッチリとした鳶色の瞳に感嘆の色をたっぷりのせた満面の笑みで、身を固くしているウタへと振り向く。

 

「うん! 貴女よく勉強していたのね。確かにこの知識は間違ってないわよ! 航海術には絶対の自負がある、この私が保証してあげる!」

 

「っ……~っ!!」

 

 戸惑いから、感動に。ウタの紫紺の目がたちまち潤む。

 これまでの努力は実らなかったものの、それ自体を真正面から褒められた。

 頑張りを、努力こそを認められる。その喜びに、潤んだ瞳から大粒の雫がツゥ……と落ちた。

 ふと思う、この感覚は何処か久しぶりのような──

 

「なーんだそっか! いや俺は分かってたぞ! でも良かったなあウタ!」

「よく言うぜ、ったく。だが間違ってねえってんなら、何だって今行こうとしてるそのオレンジの町だかがある島に中々つけねえんだ?」

 

 知識が確かならなぜ結果に結ばないのか。当然に湧いたゾロの疑問に、ああ、とナミはなんて事ないように続ける。

 

「簡単な話。それを活かすセンスが壊滅的なのよ」

 

 胸の内側から砕けるようなショックに、ウタは耐えられず膝を屈した。感動の涙は悲嘆のそれへと変質し、滝の如く溢れていったのだった……。

 

 ちなみに。

 

 その後ウタは長い時間をかけて復活するも「航路をわざわざ曲がりくねって通って本来より3倍近くかけるような感覚ね!」との追撃に再度崩れ落ちる事になるとは、まだ誰も知らない……!! 

 

 

 

 …………

 …………

 

 

 

 雲は薄く、風は優しく、波は穏やか。

 ルフィ、ゾロ、ウタの3人が乗る船は、揺りかごの中のような優しい海を進んでいる。

 船首辺りの船縁を背もたれにして寝転がるゾロがいて、その背もたれの上で船の揺れをものともせずルフィは堂々と立って海を眺めていた。

 端的に言うと、暇を持て余している。

 

「次の島はまだかなあゾロ」

「さっき聞いたら、あと1日待ってくれだとさ」

 

 ウタは赤と白の組み合った髪を忙しなく振り回しながら、船室と甲板とを行ったり来たりしている。ちなみに赤と白のスカーフはコビーの肩に置いてきており、赤のグラデーションのついたスカーフを着けていた。

 今は船室でシェルズタウン近海の海図をとことん引っ張り出して半泣きで頭を悩ませているのだが、航海術など門外漢の2人は、

「あれだけウタが頑張ってるならそのうちどこかに着くだろう」

 位にしか考えていなかった。

 能天気2人の信頼が重い、そんな日々がここ数日の話。

 

「そっか。それ、昨日聞いたなあ」

「一昨日にも聞いた」

「そっか」

「ああ」

 

 なあゾロ、と言ったルフィが何の気なしに言葉を続ける。

 

「遭難してんのかな、俺達」

 

 出港してから2日もすれば島が見えてくるとウタが胸を張って伝えた日程を超えて、現在4日目。

 ゾロの言う通り。ウタがあと1日かかると想定しているなら……次の島まで2日どころか5日目が見えてくる話だった。

 

「さあな。どっちにしろ航海術の分からねえ俺達は、アイツを信じるしかねえだろ」

「海での遭難って知らねえからさ。うん、ウタの事はぜってぇに信じてるぞ俺は!」

 

 うむうむ、なんて変に鷹揚に頷くルフィを胡乱げに見上げて、それを言うならとゾロは批難するように口を開いた。

 

「だいたい船長のお前がなんで持ってねぇんだよ航海術」

「ウタが色んな勉強頑張ってたからだな! 俺はその分強くなろうと修行を頑張った!」

 

 若干答えになってねえ。そして、コイツと旅立つなら致し方なくって感じだろうな……とはゾロもさすがに口にはできなかった。

 それだけでなく、その努力が実ってるとは言い難いのは、このいつ終わるとも分からない船旅に現れていて……。

 

「不憫な……」

「え? なんか言ったか?」

「いや? しかし考えてみりゃ、航海士を仲間にしろ、なんて航海術持ってんのに言うのも変な話だと思ったが」

 

 シェルズタウンで、能力を用いたウタの器用な説明を思い出し現状を見て今更ながら納得するゾロだった。

 

「ゾロと会う前もコビー頼りだったからな。最初基地に行く時にもウタのやつコビーに、海兵じゃなくて俺達の航海士になれーって誘ってよ。またそんな誘われてもって困ってたよアイツ、しし」

「そ、そうか」

 

 カラカラ笑うルフィの話に、そのウタの内心は相当切実だったろうなと笑えなかった。

 

「けっど暇だよなあ。肉はねえし」

「ああ、ツマミはあっても酒はねえし」

「あー肉が食いてえ。肉は肉でも干し肉ばっか魚ばっか。ほかは果物ばっかでよー、飽きちまう」

「俺は酒だ。次の島でウタのやつに買っといてくれって頼まねえと」

「なーんか面白いもん、見えねえかなぁ」

 

 ピクリと、ゾロが想起したのはつい昨日の事である。

 

「……だからって昨日みたいなのは勘弁しろよ? あん時だってウタが居なかったらルフィ、お前どこまで連れ去られてたか分かったもんじゃねえぞ」

 

 ゾロが言う昨日……今のように暇だ暇だと空を見上げていたルフィが、頭上を飛んでいく鳥を見掛けて捕まえようと手を出したら起きたひと騒動。

 マストを起点に悪魔の実の能力を駆使し天高々と飛び上がったルフィは確かに鳥まで届いたが、鳥は鳥でも体長が10m近くある怪鳥だった。

 

 ──うぎゃぁぁああ助けてくれぇぇーっっ!! 

 ──ウッソだろお前この間抜けーっ!? 

 ──……~っっ!? 

 

 捕まえるどころか逆に咥えられてどこぞへと持ち帰られる所を、騒ぎを聞き付けたウタが颯爽と音符に乗って飛び上がりどうにかルフィを救出した。

 これが事のあらましである。

 ……なおその後、能力使用過多でウタが途中で力尽き2人とも海に落ちた所をゾロが死力を振り絞って救出した。

 そうして船旅が1日長引いた原因である。

 

「そうだな。次こそは仕留めてやるあの鳥!」

「おう、次はそうしてくれ。鳥は俺もツマミに食いてえからな」

「任しとけ! 鳥~鳥はど~こだ~、にく~はど~こだ~」

 

 暇を持て余して好き勝手に言いたい放題の会話の中、ふとルフィは遠目に見えた物へと意識が向いた。

 

「んん~……あの海賊船に肉ねえかな」

「ならついでに酒もあるかを……待て海賊船?」

「おう」

 

 素早く起きたゾロは警戒も顕に「ほらあれ」とルフィが指差す方へと鋭い視線を向ける。

 遠目にだが確かに、小さいながらも、海賊旗を掲げる海賊船があった

 

「んだよ随分距離があるな……」

「そうだ! にしし、ゾロ! 俺ちょっと行ってくる!」

「は?」

 

 行く? どこに? ……その答えは、船縁に手をかけて腕を引き伸ばしているルフィの姿が物語っていた。

 

「届くのか?」

「たぶん! じゃ迎え頼むぞ、ゴムゴムの──」

 

 ロケットォォ──! 

 自らを弾いて海賊船の方へと跳んでいくルフィ。

 その姿が海賊船の上をとって、更に船へと腕を伸ばして乗り込んでいくまでを確認した後。

 

「バケモノじみてるっつーか、便利な身体だな」

 

 感心しながらゾロは船室にいるウタに声を掛けにいった。

 

 

 で。

 

 

「おうお前ら! コイツが新しい仲間の、航海士のナミーだ!」

「だから……っ! 何度も言ってるでしょ! 誰が海賊の航海士になんてなるかっての! それに私はナミだっつってんでしょうが、それはバギーだって! いい加減にしなさいよね!!」

 

「お、そうか。わりぃわりぃ。んじゃあ。

 2人とも! 新しく仲間になる航海士のナミだ!!」

 

「一部だけ抜粋すなっ! ちゃんと私の話を聞けっ! 全部聞けっっ!!」

 

 アルビダの船から調達した、ルフィ達が乗る船よりふた周りほど小さい海賊船へと追い付いて。そこに乗っていたルフィの言う新しい仲間(被害者)の登場に、やり取りの既視感からそれとなく先を察したゾロは、ウタと揃って静かに合掌した。ノリで。

 

 そうして。

 

 その後、何やかんややり取りを経て。あーだこーだあって有料(10万ベリー)でとの条件付きで、冒頭のウタの航海術採点に繋がる訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 









※長いサブタイトルやめなよ、って意見あったら編集しときます
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