※戦闘でお茶を濁す。話自体は進んでません。
※ノリのオリ技注意。
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床はヒビだらけ壁は穴だらけ。椅子もテーブルも全てが欠損し散らばっている。不自然な形で天井の大半が無くなり、煤けた臭いが立ち込める。
ここを酒場だと誰が思おう。
両扉とも吹き飛び名残もない入口付近にルフィ、2階が無くなって実質飾りとなった階段下にバギー。
1体1。戦意を込めた睨み合いは、まずルフィが動いて終わりを迎え、戦いが始まった。
「デカっ鼻め! 麦わら帽子をバカにすんなっ!」
タッ、と軽い足音。
草履で床を踏み締めて右腕を振りかぶる!
「ゴムゴムの"
ルフィが腕を伸ばして殴りかかった。しかしバギーに身動ぎ1つで避けられ、空振り。
元々、呼びに来た部下から手足が伸びる能力者だと聞き及んでいたバギー。ルフィが右腕を振りかぶる仕草から、何をして来るか察するのは簡単だった。
空打ちしたルフィ。その拳は勢いそのまま外まで壁を突き破った。
「麦わら帽子にイラつくのは確かだがよ?」
すかさず、バギーがそのルフィの右手が戻らぬ内に鋭利な輝きを放つナイフを振りかざす!
「ぃいっ!?」
「俺が腹立ててんのはテメェにだ、間抜けっ!」
伸び切った右腕を切断せんとした、その直前、ルフィは右手で探り当てた外壁を力強く握り締める!
「ゴムゴムの”鎌"!」
「ッチ!」
握り締めた壁を起点に、ルフィが左の腕でバギーの胴を刈り取らんばかりに飛びかかる!
舌打ちし、バギーは咄嗟に能力で上半身と下半身とをパックリと
「は? え? は?」
「伸び縮みする、まるでゴムみてえだ。っかし若ェなあおい。腕1つ無くなったっていいってか? ムカつく野郎だがそのハデ根性は認めてやるよ」
酒場の裏通り、その奥に倉庫街外へと続く十字路へと転がり出たルフィ。
それを追って現れた、黒いマントの中でユラユラ浮かぶバギーの上半身と、苛立たしげに歩くバギーの下半身。
空振った疑問が一気に氷解したルフィはそれらを見比べ、目を白黒させた。
「うーわなんだお前気持ち悪っっ!!」
「ヒトの事言えた身体かテメェは!? やっぱ何一つ気に食わんっ──バラバラ砲っ!」
唾を飛ばしながらバギーが両手首を射出。
ギラつくナイフを握った両手が、空を裂きながらルフィへと襲いかかった!
「ゴムゴムのっ」
真っ直ぐに飛んできた顔・胴狙いの攻撃を引き付けた上で、麦わら帽子を抑えつつ横っ跳びして避け。そのままクルリと宙で身体を捻る。
「鞭っ!」
「ふん、バラバラ緊急脱出!」
「っ、また……!」
繰り出した脚で顔を狙うも、首と上半身を切り離してバギーも避けた。
バチンと脚を引き戻し着地したルフィは、バギーの両手、顔、首の無い上半身、下半身が並ぶ光景にうんざりと吐きそうな顔で呻いた。
「バラバラバラバラしやがって、なんなんだお前は……!?」
「バラバラの実を食ったバラバラ人間だ。テメェこそビョンビョンビョンビョンと鬱陶しい、何を食った?」
「ゴムゴムの実を食ったゴム人間だ!」
「ゴムか、なるほど? 刃物がよく通りそうだな」
「うん。通るぞ」
「素直かっ! それじゃあ試しにサックリと斬り裂いてやるよクソゴム野郎! バ~ラ~バ~」
「させねえっ」
仕掛けんとしたバギー、させじとルフィが駆ける。
「ぬ、って」
──まさか走ってくるかよってかコイツ速え……っ!?
アテが外れた。引っ掛け、フェイクのつもりだった。
攻撃の兆しを見せればゴムゴムの能力で止めに来ると、それを避けた上で今度こそ手なり足なり切り落とす算段であったのだ。
加えてバギーにとって最も計算外だったのは、尋常ではないルフィの瞬発力……!
ルフィが走り出した時には、その突進を留めようとバギーは己が両手を突っ込ませている。
だが速いのだ。2度3度と両手を繰り出す、外した所で切り返しなどすぐに出来る。駆けるルフィの動きを予測して斬りかかる。
だが速いのだ! 手足を薄く切り裂くだけで深手にならない! 追い切るにはバギーの感覚では間に合わない!
バギーの顔目掛け一直線にルフィが迫る!
「こな、くそっ……!」
顔面を打たれる事をキラって浮上しながら、浮かべない下半身を走らせ距離を取りながら、苦し紛れにナイフを投擲!
「あぶねっ」
そのうち1つの軌道が帽子に届くと察し、ルフィが避けた。
バギーはその隙に、容易に届かない位置まで逃げ延び、──ほくそ笑む。
──狙うならあの麦わら帽子って訳か。
理由は不明だが今の庇いよう、それにバカに(してないが)された時の反応。
狙ってみる価値はあると攻め手を考えるバギー……だがもっとも、そんな余裕があればの話だった。
「逃げやがるなら、こうだっ!」
「ふんっ、そんな所から狙われたとこで避けて見せらァ!」
ルフィが両手を組んで大きく振り被る。バギーはその目線が顔に向かって居ることにひとまず安堵した。
バギーの懸念はバタバタ走っている下半身。足は身体と違って飛ばせないのだ。
「ゴムゴムの──」
1つ決断する。バラバラフェスティバル──バギーの可能な限り全身をバラバラにする切り札を切る。
それで撹乱して攻撃し、あるいは帽子を奪い、隙を晒した所を仕留めてみせる!
「網ぃ!!」
「んなっ!?」
伸びてきたのは拳ではなく、ルフィの十指。
バギーの顔を中心に指が展開した所で、ルフィが両腕を捻じる!
途端、細く長く伸びた指の一つ一つが空中で絡まり合い、バギーの顔周辺を包み込むように収束していく!
網に収まるボールのように、バギーの顔は捕まった。
「ぃぎ、ぎゃあぁあ捕まったぁっ!? おのれクソごぶーっ」
「捕まえでぇ゛噛みやがったこのっ──ゴムゴムのーっ!」
「うぎ、いぃ、ぇあぇえおおおぇえええーっ!?」
ルフィの幾重にも絡まって収束した十指が、螺旋状に捻った両腕が高速でグルグルグルグルギュルギュルギュルギュル超回転する!
「にししっ、べーゴマッ♪」
「ん゛ん゜──っ゛っ゜!!」
地面へと引き摺り下ろされ、滑らせるように放られて。
粉塵を巻く勢いで高速回転するバギーの顔。まさしく駒回しの如くである。
回転が終わる頃にはバギーもすっかり目を回すに回し、だらしなく舌を出し、涙と鼻水と吐瀉物に塗れ、前後不覚に陥っていた。
「これで外さねえ! ゴムゴムの──」
「あ、あふはえバラあラパー、っんぉぇ」
まるで定まらない思考で
回避も反撃も体勢の整わない以上何も出来ず。そんな無防備なバギーへと、ルフィは遥か後方まで伸ばした両腕を引き戻し、ゴムの反動を蓄えに蓄えた大技を繰り出す!
「バズーカッッ!!」
大岩とて容易に砕く両手を用いた掌打が叩き込まれた!
唯一呼び寄せた手先と足先なぞまるで意味はなく、マトモにルフィのそんな大技を受けたバギーは激痛に薄れゆく意識の中、容赦のないルフィに戦慄しながら……天高く遠く、吹き飛んで行った。
「勝ったっ!! あー気持ち悪かったあ! ……このあとどうするんだ?」
ぶっ飛ばして来て! とだけ言われていたルフィは、とりあえず船に戻るため動き出すのだった。
「……船は港だから、海の方。どっちだ? えーと海は青くて空も青いから──雲の少ない、青空の多い方だからアッチだな!!」
元気よく歩き出して、ふと振り返る。
「……んー」
ルフィは、今にも崩れそうな酒場をしばらく見詰めるのだった。
バギー編は巻くとは何だったのか。