新時代を、それでも   作:ずーZ

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11話 オレンジの町④ 終わり

 

 

 

 

 

 

 簡素な槍を手に軽装の鎧を身につけた老人ブードルは、ここオレンジの町の町長とのことだった。

 港へと向かう道すがらブードルと話をするナミ。

 その隣りでウタは話に耳を傾けながら、後ろを歩く男2人が付いてきてるかチラチラ確認している。

 麻袋に詰めに詰めた肉や酒にはしゃぐ男2人がどこかへ離れそうになる度に、こっそり音符で窘めていたりした。

 

「まずそこの小童その1がこの町の離れにある避難所に訪れてな。……突然避難所に現れた余所者が、何故だか半裸で裸足でほぼ全身火傷してでも平然としておって、しかし刀3本も差しとって近寄り難いし、けど怪我は凄まじいから心配だしと……もう皆何が何だかでな。さながら何の用だ怪我は平気かーと何だかんだと町の皆して聞いてしまったわい」

 

 ……心配したらいいのか警戒したらいいのか、反応に困る出で立ちのゾロはしかし本人ばかり呑気なもので。

 

『こんくらい平気だ。それより服屋に行きてえ。服と靴が欲しいんだ』

『ふ、服屋? ……町から離れて?』

『ああ。あの雲を見てくれ、あの綿がギュッとなって服みてえに見える雲。あれを追ったらあるかと思っていたんだが、中々見当たらねえもんだな』

『? ……??』

 

 頓珍漢とはまさしく……応対した住民達はそう思ったとかないとか──。

 

「幸い医者が居たからな、火傷の手当は問題なかった。服や靴は我々の物でサイズの合うやつを見繕うのは中々苦労したが。まったく大した身体つきじゃわ小童のクセに」

「へへっ、まあな。それはそうと、改めてありがとよ。手当してくれたやつにも、この服や靴をくれたやつらにも礼言っといてくれ」

「ふんっ。あんなナリでほっつき歩く者をさすがにほっとけなかっただけじゃ、そう気にすることでは無い」

「……ねえゾロ。なんで服屋を探して人里を離れる事になる訳?」

「結果的にそうなっただけだ。離れたくて離れた訳じゃねえ。ほら、あの雲が服屋の綿みてえだったたからそれを、追って、……あん? どこいったあの雲」

 

 ああコイツこうやって自分の島のある方角も分からなくなったんだな……と納得するナミとウタ。

 真実は方角も「北は真っ直ぐ! 南は真後ろ! よし!」と素っ頓狂も素っ頓狂なのだが、この場の2人は知らない……。

 

「少なくとも、服屋探す人間は雲を頼りにしないわよ……」

「そうだぞゾロ。雲の先に服屋があるわけねえじゃんか。だから迷子になるんだぞ」

「ちっ……人の事言えた口かルフィてめえ」

「ん? そうか?」

「あー、それで、小童その1の手当が終わる頃にそっちの小童その2が現れてな」

 

 ……棒切れを片手に変な調子の鼻歌を唄って、手足の切り傷からタラタラと血を流しながら、意気揚々と歩くルフィが避難所に現れて。

 

『キミは? いや、その怪我どうした?!』

『ま、待て、君はどこの誰だ? ここには何を?』

『俺はルフィ、海賊だ! 港に行きたくってよ。ここどこだ?』

『海賊っ! ……海賊? ……なあコイツ、武器も持ってないよ、な?』

『……ああ、あのなんの意図があるのか分からん棒切れ以外、何も持って無いな。というか隠せるとこすら無いだろあの半袖短パンじゃ』

 

 いやそんな近所の子供みたいなナリで、なのに手足傷だらけで、それもやたら快活にニコニコとしながら海賊って、港に行きたくて町からなんでこんな島の奥側に……と。

 警戒すればいいのか心配すればいいのかもうよく分からん余所者2号に、避難所は再び反応に困ったのである。

 

『というか港にって、ここ反対側もいいとこだぞ? えーと、ルフィ君?』

『うん? あり? おっかしいなぁ、こっちの空の方が青かったのに、港はねえのか』

『? ……??』

 

 何処と無くさっきの男と既視感のある話ぶりに、やはり困惑するしかない住民達だった──。

 

「おう! アイツらぶっ飛ばした後どうすっかな、ってなってよ。とりあえず船まで行きたいから、雲の少ねぇ青空の多いとこ目指してた訳だ!」

 

 元気よく応えたルフィに、「港に行くのに空?」とナミとブードルは首を傾げる。

 

「……? ──……~っ!」

 

 察した……というより、()()()()()()()話に後ろ髪を跳ね上げたウタは、ついパーカーのフードを目深に被って真っ赤に染まった顔を隠した。

 

「えーと……港を目指すのに空を見て探してたってどういう事?」

「なんだよナミ知らねえのか? 海は青いだろ? だから空も青い。空の青いとこが多い所は、下には海があるからなんだってよ!」

「──へー」

「何言ってんだルフィ、やっぱり人の事言えねえじゃねえか。だいたい青いのは海じゃなくて空の方だ。空が青いから海も青い、曇り空なら海も灰色になるだろ?」

「ええ、そうなのか? だから港に着かなかったってことか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なあウム゛ぁ!? ……んむン??」

 

 快活に喋っていたルフィがくぐもった声をあげた。

 振り返り、振り向いたのは3人……ルフィの口に音符が突っ込まれている事を知っている下手人(ウタ)以外の3人である。

 

「な、なんじゃ小童その2どうしたなんじゃそれは」

「無害だから気にしないでいいのブードルさん」

「む? 小娘その1、なにか分かるのかアレが」

「悪魔の実って知ってる? こっちのウタが能力者なの。アレはその能力で、言った通り害はないから大丈夫」

「悪魔の実……本当にそんな物があるとは」

 

 宥められ、そのナミの落ち着きようにブードルは半信半疑の表情で落ち着いていった。

 この場で落ち着いていないのは、モモゴゴと不貞腐れてるルフィと、石のように固まったウタ……のフードの下で暴れている後ろ髪である。

 

「? ウタ、なんだってんだ?」

「…………ふーん」

 

 ウタの能力だと知っているゾロとナミは、モガモゴと呻くルフィと、バサバサバサバサ忙しなく揺れるフードで顔を隠しているウタとを交互に見比べ。

 ナミは()()()()

 

「──」

 

 ウタの傍にゆっくりと歩み寄ったナミは、──無言。

 

「──」

「……っ」

「──」

「……~っ!」

「──ねぇ」

 

 バサッ! とフードが一際大きく跳ねて固まった。

 

「これからしばらくの付き合いになるわよね、私達。船旅は長い事だし。ね? だから、後で、船で、2人の時に、()()()()()()()、お茶でもしながら教えてくれる?」

 

 バサッサッ! とフードが激しく揺れ、ウタの肩が震えた。

 フードの下からゆっくりと傍のナミを見上げたウタは、優越感のたっぷり籠った瞳で見下ろしてくるナミに。

 口元を震わせながら、小さく頷いたのだった。

 

「よし♪」

 

 その後。

 キビキビと男共を急かすナミがその場を有耶無耶にし、一行は港にたどり着いた。

 行きと違って足取りの重いウタはヤケに道のりを長く感じつつ、道中ルフィの事を何度も何度もフードの下で歯を剥いて睨んだ。

 そしてあまりに何度も睨まれて、ついにはルフィが少し涙目でたじろいだ所で、ようやくウタは睨む事を辞めるのだった。

 

 

 …………

 

 

 港にて。

 

 ブードルから貰った飲食料品を積み込み。

 ウタとナミの2人がテキパキと、ゾロがダラダラと。

 男性陣女性陣それぞれで使う、2艘の小船の準備を進めていく。

 海賊に襲われ、町を追われ。しかし違う海賊に町は取り戻され、その彼らが旅立とうとしている光景。思う所のあるブードルが物思いに耽りつつ、恩人達の旅立ちを見送ろうとしていた。

 

「なあなあウタ」

 

 そんな中、宝を詰めた袋片手に、ルフィがウタ達の小船へとやってきた。

 ウタはロープを纏める手を止め、小首を傾げてルフィを見上げる。

 

「コレ、プードルのじーさんにあげてきていいか?」

 

 瞬間! ウタの胸中に轟くような衝撃が奔り、ついロープを取り落とした。

 素早く立ち上がったウタは衝動のままにルフィの顔を両腕で胸に抱き、後頭部をワシワシワシワシ撫でに撫でる! 

 

「んん~? なんだ急に? おーい、なあウタ。これは「イイ」って事でいいのか?」

 

 ウタに唐突に抱きしめられ撫でられ、急になんだ? 程度の反応なのはルフィだからで、ウタとは幼馴染だからである!! 

 抱きしめる腕はそのままに、撫で回す手を緩めたウタがうんうんうんうん大きく何度も頷き、そっとルフィを解放する。

 帽子を被り直したルフィは何事も無かったように「んじゃ渡してくる!」と元気に船から飛び降りて行った。

 残されたウタが鼻をすすりながら袖口で目元を拭っていると、「……使いなさい」とナミが蜜柑柄のハンカチを手渡す。

 遠慮なく使ったウタが顔を上げると呆れた顔のナミがいて、隣の船からはゾロも何事かと窺うようにウタを見ていた。

 

「なんだって泣いてるんだよお前」

「泣くほど嫌だった、ようには全然見えなかったけどどうしたの? ウタもやっぱり宝が惜しかった?」

 

 私なら惜しむけど……と、取り分は取り分、山分けした分の事まで口を挟めないしとそれでも口をムズムズとさせるナミに。単純に気にしているゾロに。

 ウタはゆるゆると首を振り、感動の余韻に震えながら()()()手帳を取り出し、震える手でその歓喜を綴った……

 

「〖あのルフィがまさか相談してくるなんて初めてでもう嬉しくって!!!!!!!!! 〗」

 

 そして再び、今度はその場にへたり込んで、声もなしに咽び泣くウタ。きっと声を出せたなら大声で泣いていた事だろう。

 

「……」

「? ……っ」

「、……!」

「……!?」

 

 手帳の文面に何にも言えず、目と目、そして顔で。

 

 ──おいなんか言えよ。

 ──はあ? あんたこそ仲間でしょっ。

 ──お、女同士だろなんかあるだろ! 

 ──関係ないわよこんな話に何言えっての!? 

 

 3人が無言の空間で混沌とした空気にいる中、元凶のルフィはと言えば「おーいプードルのじーさん!」と輝かんばかりの笑顔でブードルに話しかけていた。

 麦わら帽子をパサパサと揺らして、一抱えの麻袋を持ったルフィがブードルへと走り寄ると、何事かと尋ねる彼にほいっと麻袋を渡す。

 

「ごめんじーさん。あの酒場壊しちまったの俺達だからさ。だからそれやるよ。んで、早く酒場直してくれ!」

「は? これはってなんじゃこれぇええ!? こ、こりゃ(きん)か?! これはなんのつもりだ?!」

「だから酒場直してくれって金だよ。この後、あそこに居た皆でお祝いすんだろ? 今日は無理でもよ、いつまでもそんな時に酒場がないと、お祝いするにも宴をするにも場所に困るじゃねェか。それは良くない!

みーんなで騒いで喜べる場所、早く直してくれよな!」

 

 ニカッ! と、ルフィは笑いかけた。

 

「みんなで騒いで、喜ぶ……」

 

 ……ブードルの胸に去来する、かつて海賊達に滅ぼされた跡地から復興して盛り立ててきた日々。

 何も無かった土地を拡げ人を呼び込む苦労があって、段々段々と人が集まって村が町がとこの土地こそが成長していく喜びがあった日々。

 盛り上げてきた住民達と、支え合ってきた今は亡き友人と。ジョッキ片手に声高らかに、その日の感動を吼えながら「乾杯だ!!」と打ち鳴らした日々。

 どんな大変な事も乗り越えた、どんな小さな喜びも分かちあった、そして皆で笑いあった日々。

 

 ──再び海賊に全て無にされるかと嘆いていたら、……まさか海賊に救われるなんてなあ。

 

「……、まったく、こんな粋なことする小童が海賊とは世も末じゃ! 素直に感謝もしづらいわい」

「別に礼はいいよ、肉のが嬉しい!」

「──そうか。ならやったやつを存分に食ってくれ……コレは確かに受け取った!」

「にししっ。ああ、肉ありがとう! それじゃあなプードルのじーさん!」

「ああ行け行け、行ってしまえ小童め……もはや訂正する気にもならんわい」

 

 船に跳び乗ったルフィが「よーしじゃあ出航だー!」と掛け声を上げ、2艘の小船がゆっくりとオレンジの町を離れていく。

 やがて水平線にまで遠ざかる船影を、不思議と港に足が貼り付いたような感覚で佇み見送るブードルは、静かに、強く、呟いていた。

 

「達者でな小童共。恩に着る……っ!!」

 

 

 ◆

 

 

 ──この町の主な名物は2つ。

 看板に店名よりもでかでかと描かれた、麦わら帽子のロゴが入れられている酒場。なんなら麦わら帽子モチーフの肉料理もメニューにある。

 そして町の角という角に、時には家々の屋根から出っ張って()()()()()()遮るように設置されている数多の案内板もそう。

 

 この港町の名はオレンジの町。

 肉料理と麦わら帽子が名物で、誰も迷子にならない町である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







どっちかというとカーディガン派!!(公式アンケートの話)
いやどっちも見てえよくそ……何が起きてるんだ公式ぃ。




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