なおこの本編はオリキャラ注意()ちなみに出番はこの話で終わります。
「よーし行くかー!」
「♪」
「……背負い方、やけに手馴れてるのはなんで?」
「ああ、ウタは能力使うと眠くなったりぐったりしてばっかりでよ。修行してた頃はこうやって連れ帰ってたっけな。それで慣れてる」
「あんたが?」
チラッと疑わしげな目を向けられたので苦笑しながら頷くと「意外ね」とナミは感心しつつ驚いている。
ルフィは普段の様子が様子だから無理もない。ま、一緒にいるうち分かるよナミも。
「でもウタを背負うのも懐かし~な~」
ルフィが笑って肩を軽く揺らしつつ歩き出す。背中が揺れる揺れる。別に酔うほどじゃ全然ないけど、背中の相手を気遣う配慮がない。
こういう所も相変わらずだ。──そういえばルフィに背負われるのも久しぶり、2年ぶり? くらいになるのか。
何の悪魔の実の力か分からない、私の能力。使い続けると今みたいにすぐ疲れてダルさと眠気に襲われるけれど、
それでも私はエースとルフィとは違って1人で走り回れなかったから、2人に護られてばっかりで。ルフィは小さいクセに動けなくなった私をおんぶしてさ……背中は大きくなって、背丈は伸びたねルフィ。
でもいい加減、風呂は自発的に済ませなよ。船の上とは言えどせめて体拭くぐらいしろ。……今夜拭かなかったから明日にでも仕方ないしヤルかな。
「おお?」
「……は?」
「?」
2人が何かを見つけたみたいで固まった。なに?
のそっとルフィの背中から顔を上げた。そして見た。
なにあれ。
「コケ、コケコ」
にわとりの鳴き声を上げるきつね? いやきつねのように歩くにわとり? 目の感じからしてタヌキの線もあるような。
「シャー」
シャーシャー鳴くうさ耳の付いたヘビ。ルフィはうさぎだって言うけど流石にあれはヘビでしょシャーシャー鳴いてるじゃん。
「ウタみてェな頭してんな」
「──ぶ……っ!」
ルフィの言葉にナミが噴き出す……のを必至になって耐えてる。
言われてみれば、コッチをじっと見詰めて、何かに合わせて耳を動かすうさ耳ヘビ。何か、というか、きっと私の髪を見ながら動かしてるんだろう。
ルフィに捕まえてもらったヘビを受け取って、一緒にナミの方に顔を向けたら、ナミは両手で顔を隠してすっごい震え出して面白かった。
そんなヘビだったから妙に愛着が湧いてしまった。うさ耳ヘビからも懐かれていたのだが……ナミの許しが貰えたら連れ帰りたかったな。
しぶしぶ、ヘビとお互い、別れを惜しんだ。
ああ……さよなら
「おおライオンもいるんだな。あっちの方にいるのはトカゲだ熊トカゲ!」
「……ブタ? でしょ、鬣のあるブタ。あっちはどっちかっていうとほぼ熊よ、熊だって四足歩行するんだし。あんなにトカゲみたいな歩き方もしないしやたら長いフサフサのシッポもないけどね熊には。……なんなのこの島、変な動物だらけ」
「おんもしれェな~」
奇妙な生き物達の島を探検し続けていく。
ふと、茂みの奥から近付いてくる足音。短い間隔で駆け寄って、いくらか離れた所で止まった。
今度はなんだろ? 足音からしてさっきのライオンみたいなブタより歩幅は小さい、けどそれなりに重さがあるような。
”止まれ!! おいお前ら! ……お前らは……なんだ? 何をしに来た"
んん? 何この声。
「なんの声? ここ無人島のはず」
「俺達は海賊だ! この島にはただ探検に来た!」
「ルフィ!? あっさり海賊とか言う?!」
「え? でもホントのことだろ?」
「私は違うっての!」
何処からか探りたかったけど、2人の声でよく分かんないや。
”海賊が女背負って探検? ……信じられねェがなんでまたそんな事を"
「……言われてみると確かに信じ難い事実ね」
そうなの? ……やっぱりそういう事は普通の海賊はしないか。そっか。
「そうか?
ウタは疲れてて動けねェ、けど探検が好きなんだよコイツ。歩けねェから俺が背負ってるだけだ」
”歩けねェけど探検が好きだから背負ってやってる、だァ……っ? こんな森の中を、人1人背負って? わざわざ、んな大変な事を、ただソイツに喜んで欲しいからってほ、ほ、ほほほーん? そ、そうかァ……い、良い奴だなお前ェッ゛"
鼻すすって感動してる?
「いま涙声になってたような……?」
「というかさっきから、お前こそなんなんだ質問ばっかりよ! 用がねェなら行くぞ俺達!」
”──だ、ダメだ辞めろすすむな! 俺が誰かって教えてやらァ、俺ァこの森の番人よっ! それ以上進むってんなら、お前さん達にァ森の裁きを下さにゃならねェ! ……正直気が進まねェんだ、頼むから進むんじゃねェぞ! "
事情が分からないけどイヤならやめなよ、と伝えたい。能力が使えないし手帳に書く気力もないから思うだけだけど。
どうしても裁かなきゃいけない理由でもあるのだろうか。
ただ、そう言われた所でルフィが聞くわけない。私を背負ったままスタスタと歩くよ、なにせルフィだもんねー。
「ルフィ!? 裁きがどうのって聞こえてたでしょ!?」
「知らね。なんで俺がコイツの言う事聞かなきゃならねェんだ」
”……! く、くそ!! 森の裁きは絶対なんだ! いいか、いいな!? 馬鹿野郎めちくしょう忠告はしたからな恨むなよこの──ぉおあああっ!? なんだどうした今日に限って急にそんな強く絡みつアダダダダ噛むな噛むななダダダなんどァァァー!! "
「……なに?」
「どした?」
何が起きたのか、お互い顔を見合わせた。
悲鳴は未だ上がっているから場所の特定は容易で。騒がしい茂みを覗いてみると……そこにはまた珍妙な光景があった。
「だいだいいだあ────っ!!」
「あ、さっきのうさぎ」
「わ、ホントださっきのヘビ──いやそっち気にするとこじゃないでしょ!?」
「うわすっげえ、宝箱の中でタワシが暴れてるぞ!」
「人だろっ!!」
「た、たすけてくれぇええ゛でででぇえ────っ!!」
こ、こんな場面に遭遇するなんて。
……うさ耳のヘビに襲われて、大きなマリモみたいな頭の宝箱が足をバタつかせて悲鳴を上げている、なんて、これから先だってたぶんお目にかかれない光景だろう。──というか、キミは
………………
どうやら経緯を察するに、私に懐いていたせいか、咄嗟に助けてくれたらしい
ナミがどうしても無理だと嫌わなかったら、せめてもう少し傍に居たかったな。泣く泣く、またのお別れ……またね。
「おー痛ぇ。まさか余所者のお前らに、ここの動物があんなに懐いてるたァ」
「アイツはウタの友達だからな!」
「みてェだな。友達を撃とうとすりゃこんな目にあって当然か、むしろ俺がアイツに悪ぃことしちまう所だった。赦してくれねぇかなアイツ」
「大丈夫大丈夫! ちゃんと謝りゃアイツも許してくれるよタワシのおっさん!」
「そうかな? そうだといいなあ。へへ、っかしお前ほんっと良い奴だな! 俺はガイモンってんだ、よろしくな!」
「おう、俺はルフィ! よろしくなタワシのおっさん!」
「ガイモンだってのはっはっはっ!」
「仲良くなるの早過ぎない……?」
ルフィだしまあこういう流れもよくある……と私は思う。
場所を移して、海が望める崖際に。
ルフィが、足の生えた宝箱とかいう、面白い見た目の人から話を聞く所。まさか無人島に来てみたらこんな人と出会えるなんて、ちょっと何を話すのかが楽しみだ。
ちなみに腰を落ち着けるに当たって、ルフィから降りた私は今度は寄りかかって座って、その私の隣にナミが座った。
「改めて、脅かして悪かったなお前達。あの森の番人として、余所者にゃ厳しくしねェといけなくてよ」
「そんなナリで番人なんてよくやるな、タワシのおっさん」
「そうこんな姿でも、日々来る密猟者や海賊共をあくせくこの銃で追い払って来た! でも勘違いすんなよルフィ、好きでこんな姿でやってる訳じゃねェんだ」
「え、宝箱が好きだからとかじゃねェのか。あっはっは。おっさん、違ェってならただのバカみてェだぞそれじゃ」
「へへ、そうだな、バカみたいな、間抜けの話さ。聞いてくれ──」
ガイモンさんの昔語り。ただ、期待していた面白そうな、楽しい話では全然なかった。
・20年前海賊としてガイモンさんが仲間達とこの島に訪れた。
・帰り際に一人きりで探した高台にたまたま宝箱を見つけた。が、足を滑らせて滑落して気絶。
・落ちたついでに宝箱に身体がシンデレラフィットして抜け出せもしなくなり。
・トドメに、気を失ってる間に仲間達から置き去りにされた……と。
「ん?」
「え、なに」
……置き去りにされて20年か──ふーん。
「なあウタいきなりなんなんだ?」
「動きづらいんだけど?」
両隣に座る2人から、ルフィの腕を抱き寄せて、ナミの手を握った。
ルフィは窮屈そうで、ナミは戸惑っている。凄く申し訳ない。
ただその……うん。
『仲間に置いて行かれた』なんてそんな話を聞いてしまったから──ちょっとだけこうさせて欲しい。
「仲の良い兄妹だな?」
「ち・が・う!」
「ちげェよタワシのおっさん。ウタは幼馴染でナミは俺の仲間だ!」
「手を組んでるだけだっての! イヤよこんな世話の焼けるきょうだいなんて」
そ、そんなため息ついてまで嫌がられ──っ!?
震えながら手を離し、謝ろうと顔を上げると丁度目が合った。途端、ナミは慌てて私の手を握り直す。
「そ、そんな泣きそうな顔しないでよウタ。別にきょうだい、姉妹みたいってのに思う所があるだけなの私。イヤとかじゃないの。あーほら手を繋ぐくらい気にしないから」
イヤじゃない? そっか、良かった……。
「ふっ、仲がいいのは確かみてェだな」
「こうなったウタにはダダン達もエースも──しし、誰も敵わなかったな」
「もう……そんな顔されたら離せないわよまったく」
呆れたように言ってそっぽを向くナミは、でもちゃんと私の手を握ってくれている。握られた手を、改めて握り返した。
よく手入れしているのかビックリするくらい綺麗なナミの手。長年船に乗って海を渡っているとは思えない。
ここ10年近く山育ちでろくに手入れもしていなかった私の手を並べるには、少し恥ずかしくなるくらい。
この手に出逢えた事も、こうやってルフィの腕を抱いている事も──きっと、ただ運が良かったからだ。
もしも──。
もし
もしフーシャ村からエレジアに向けて出発するあの日、ルフィが、あの下手くそなマークをくれなかったのなら。
もし、あのマークの存在を忘れて、あの暗い部屋で、両手指を使えないよう保護されたまま、ただただ震えていたのなら。
もしかすると今も私は、自分の事が何も分からないまま、あの部屋でずっと独りで居たのかもしれない。
そんな恐ろしい「もしも」を考える日がたまにある──。
「おいウタ、起きてるか?」
「大丈夫?」
2人の窺う声に、ガバッと顔を上げた。……能力使用で疲弊した所で、2人の体温にぼーっとして、少し意識が飛んでいたみたいだ。
普段通りのルフィと眉根を寄せるナミに、心配ないと返事がわりに笑いかけて、2人の腕と手を離して立ち上がる。背負ってもらって一休みもして、少しは体力が戻っていた。
「お、元気になったみてェだな! んじゃおっさん、案内よろしく!」
「おうよ! ついてきな後輩共!」
えーと、どうなってるのかな?
先を歩くガイモンさんとルフィを追いながら、取り出した手帳に文字を書く。
まだ心配してくれてるのか、ゆっくり隣を歩いてくれているナミに足を止めずに聞いてみる。
「〖今どういう状況? ちょっと寝てて話がわかんない〗」
「あのおじさんが20年前に見つけたお宝を取りに行こうって、ルフィが」
お宝!?
微かに残ってた眠気が吹き飛んだ。お宝かー! どんなものだろう!?
「ほんとにもう元気そうね、良かった」
「〖ご心配おかけしました。ありがとねナミ〗」
「ホントよ。おのルフィが何かしでかさないか、実質私一人で抑えるなんてゴメンだわ。復活したのなら頼んだわよウタ」
肩をすくめるナミに、私は笑って頷きながら『任せて!』と胸をトントン叩いた。
やたら甘えたになるよね疲れた時(人にもよる)
感想評価ありがとうございます!!
こっから先はウタを絡めてもラストに「さよならジェネシス」するだけなのでカット。
ルフィとガイモンのやり取りと憤慨するナミを色々察しながら見守るウタがいた、程度に補完して下さいな