新時代を、それでも   作:ずーZ

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前話後書きの通りすっ飛ばしたごベンな……





14話 シロップ村①

 

 

 

 

 

 

 うさ耳ヘビのジェネシスと、ガイモンさんとの別れから数日後。

 次の島、小さな村がある島へと2艘の船で移動中だ。

 

偉大なる航路(グランドライン)に行くにあたってこの船に足りない物があるわ。なにかわかる?」

 

 私はナミの言葉にすぐ返さず、期待を込めて、隣の船で寛いでいる2人を見つめる。

 それは少し前に説明したもの、分かるよね2人とも! 

 

「肉! んがっ」

「酒か? ッィテ」

 

 瞬間的に足裏に出した音符で滑らかに2人の背面に回り込み、()()()の拳骨をルフィに、単純な拳骨をゾロに落とす。

 ゾロは面白くなさそうに殴られた頭を撫でて、ルフィはしっかり膨らんだ頭を抑えて呻いている。

 でもちっっっともスッキリしないね! なに?! 肉と酒? 

 

「『肉も酒も持ちながら、何言ってんの2人とも』」

 

 もうっ、なんでだよっ!! 

 

「良くやったわウタ。船とは別に、あんたら男共には()()が足りないって、私もよーく分かってきた」

「なんだってんだよじゃァ……ッテェ~」

「痛い? ルフィお前打撃は効かねェんだろ?」

「効かねェ。けどウタからのはたまに効くんだよ良くわかんねェけどさ……」

「ほお?」

「それも能力?」

 

 頷くと、へーと感心された。

 ルフィに使ったのはお仕置の奥の手。ものすごく疲れるけどゴムのルフィにも通じる技。

 昔エースが島を旅立ってから負ける事が無くなったせいか、調子に乗っていたルフィをどうしてもブちたい頃に生まれた。

 思いつきで、能力を一点に溜めるようにしたらできるようになった何か。私自身が非力だから大した威力はない、ただ、

 

 お仕置をした! 

 

 って気持ちには浸れる──そんなことはどうでもいいんだよ! 

 これだよねナミッ! これを見て思い出せ2人ともっ! 

 

「〖船と人員〗……っ」

「そうねその通り。荒波の中の航海に耐えられる船と、それを動かすための人員よ」

「「へー」」

 

 異口同音に返事をするゾロとルフィに膝からスッ……と力が抜けた。

 虚しさに崩れ落ちた私の頭を、無言でナミはそっと撫でる。優しさが染みる……ぅ。

 シェルズタウンでアレだけ頑張って教えたはずなのに。それなのに、ルフィはともかく、ゾロったらすっかり忘れてるなんて! 

 ……その後、話を聞かせるには相手が悪い、とナミに慰められる私だった。

 

 と。

 

 そんなやり取りをしながら、私達は次の島に到着した。

 崖の合間、急な坂道がすぐ目の前に続いている海岸に船を着けて。それから直ぐのこと。

 

「で?」

 

 

 坂上に広がる森の茂みに……話し声の聞こえる方に私が指先を向けるのと、ゾロがゆらりと視線を投げるタイミングが重なった。

 

「あいつらなんだ?」

「『なんか話しかけてみる?』」

 

「ば、バレてるーっ!?」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 複数人居たはずの茂みから1人で現れたのは、私たちとそう歳の変わらなそうな、ひょろっとした体格の少年。

 癖の強そうな黒髪をバンダナで纏めた、長い鼻が極めて特徴的な彼は、キャプテン・ウソップと名乗った。

 

「キャプテン・ウソップこと俺様を、人はホコリのウソップと呼ぶ! この島を8000万人の部下と支配している大海賊とはこの俺のことだー!!」

 

 とっっってもわかりやすいウソと共にそう名乗った。

 やー……ルフィを騙すのにも使えないよあんなウソ。

 

「は、は、はっせんー?! おいコラそれはいったい何人だそりゃあ!?」

 

 ──ルフィ。将来変な人に引っ掛からないか私、心配だな。私がちゃんと傍に居られる限りは見張っておかなくちゃいけないか……。

 

「いや8000万人は8000万人だよ何言ってんだお前ェ!?」

「だからそれはえーと?」「とにかく指なんかじゃいくらあっても足りないからそれ止めてルフィ。で、少しアイツと話すから静かにしててくれる?」

 

 なんてナミが言ったところで聞きゃしないルフィがありのまま接するものだから、そんなルフィに、彼は私達に略奪の意思が皆無と悟ると快くこの島にある村、シロップ村へ案内してくれた。

 

「船か、超大型帆船とまではいかねェだろうが、それなりの帆船を持ってるかもな。アイツなら」

「アイツって?」

「この村にある、どデカい屋敷のご主人様さ」

 

 腰を落ち着けて話をするならと、ルフィたっての希望で村の食堂に来ている。

 ガツガツガツガツひたすら食べているルフィは、幸せそうにたくさん食べまくってるからほっといて。

 食後のお茶を飲みながら、主にナミがこの村の住人であるウソップから、私たちの目下の探し物について情報がないか話を聞いていた。

 

 それにしてもルフィは気付いているのかいないのか、ああ今はご飯に夢中だからかちゃんと見てないのかな。

 ウソップの顔、見れば見るほど似てる。オヤジって感じのあの髭がなくて、鼻がやたらと長い所以外、よーく似てる。

 

 得意げな時の顔といい、真面目な表情といい。時々の目と口元が特に、息子の自慢話を繰り返していた顔にそっくりだ……ヤソップに。

 

 ヤソップがいつもあんな顔して話してた息子の名前も『ウソップ』だった。置いてきたって話してた島は、名前は知らないけど、東の海(イーストブルー)のどこかって話だった。

 気にはなる。

 もしも本当にヤソップの息子なら──いや()がどう考えた所で()()()()()()か。

 ふと湧いた感情を抑えつけて、意識の全てを目の前の話に傾けた。

 

「どデカい屋敷ね。どんな人が主人なの?」

「こんな辺鄙な村には不思議なくらいの富豪の家だよ。主人は17歳の女の子さ」

「17歳の、女の子が、屋敷の主人?」

 

 ナミが戸惑う。聞いているだけの私もそう。そんな年の子が屋敷の主? 

 

「訳アリか」

「……ああ」

 

 ボソッと呟いたゾロの声は鋭かった。

 頷いたウソップが、重そうに口を開く。

 

「去年の今頃はまだ、そいつの両親がその屋敷の主だった。こんな嘘つきの俺にも優しくてあったかい言葉をくれる、そんな良い人達だったんだ。けど──」

 

 突然の病。それも、両親ほぼ同時に。罹患してからそれはそれは早い進行で、村の誰もが信じられない気持ちでその死を悼んだという。

 残されたのは執事が何人もいるような、立派なお屋敷と莫大な財産。ただ1人でその遺産を継いだ彼女は当時まだ16歳。

 

「アイツ自身は病気になった訳じゃないんだが……」

 

 毎日のように、1日中、ベッド上での日々。それはいきなり両親に先立たれて、精神的に酷く弱ってしまっているせいなのだ、と。

 ウソップは思い詰めた声色で教えてくれた。

 

「ダメね。ここで船を貰うのは諦めましょ」

「ん」

「だな。買う物買って次の島に行って、そこでまた探そう! 急ぐ旅じゃねェしな」

 

 ナミの言葉に私も頷いていた。ルフィもゾロもそう。

 大切な人を亡くした、そんな辛い状況で迷惑かけていられないからね。

 なお、直後にウソップから船員に立候補された時は全員揃ってお断りした。「船長としてなら仲間になるぜ」だって? 

 ウソップには悪いけど、ウソップだから断った訳じゃない。

 船長がルフィじゃない船に、私達は乗りたくないだけだ。

 

 

 ◇

 

 

 ぷーにぷーにぷーに……

 

「……何見せられてるのかしら」

「気にすんな俺はもう気にならねェ」

 

「あむぐむぐむぐんんぐ」

 

 ルフィが満足するまで待ちぼうけ。ナミ達もルフィの食事風景に呆れてるみたい。まあ、私はひたすら食べるルフィの膨らんだほっぺたで暇を潰している訳だけど。

 タイミングと力加減を間違えると怒る。でも気を遣ってでも触りたくなるぐらい、このもにゅもにゅからしか得られない癒しがなくも無い……あとやっぱり暇つぶしにも丁度いい。

 ……ただ本音としては、この時間でウソップに、ヤソップを知ってるか聞いて見たかったな。

 

「あー、ちょっと悪ぃが、俺この時間には行かなきゃならねェ所があるからよ。お前ら会えるようなら、また後で話そうぜ」

 

 ハッとしたようにウソップはそう言って、足早に去ってしまったのだ。何やら予定があったみたいだし仕方ない。

 ヤソップの話はまた会えたらか。会えなかったらまあ……でも確認しないままもどうしても気になるし、島を出る前に会えなかったら皆に時間貰おうかな? いつかシャンクス達に会う時、話せるなら、土産話にもなるし。

 

「……で、まだ食うのかよお前」

「いやいやコレで最後にするよコレで、コレで、コレ、コレ……おっちゃんコレお代わり!」

「おい」

「食後のお茶はまだ長引きそうね」

 

 私はお茶ももう飲めない位だよ……ああまたルフィのほっぺたが膨らんでいく。

 これは仕方ない。暇で仕方ないからだ。だからもうしばらくぷにぷにしちゃおう。

 

 ──”ウソップ海賊団参上!! "

 

「あ、いたアイツら!」

「きゃきゃきキャプテンは?!」

「いない……あわわわわま、まさか」

 

 威勢よく店に入ってきた3人の子供達は、木剣を掲げて叫ぶと。こっちを見るなり騒がしく慌てている。なんだろ? 

 

「んぐ?」

「たしかウソップといたなアイツら」

「いつよ?」

「この島に着いた直後だ。なんでかあん時はウソップの傍にゃ居なかったが、けど今ウソップ海賊団っても言ったろ?」

「ああそれで……あんた腕っ節だけじゃなくて、意外と鋭い所あるのね」

 

 ナミの言葉に頷きながら、2人一緒になって目を丸くして見たら「あのなお前ら……いやいい」とゾロは不貞腐れた。

 いやだってオレンジの町での迷子っぷりは、庇う言葉探すの難しいし。

 

「お、おいぃおお前たち!!」「キャプテンど、どどうした?!」「ここ、こ怖くない、怖くなんか無いぞお前達なんて!」

 

 テーブルに近寄って来た3人の子供達が声を裏返しながら張り上げ、木剣を突きつけて勇ましくも問い質してきた。

 ゾロの言う通り。あの海岸にいたなら私達が海賊だって分かってる。それでも、ウソップを気にかけて子供ながらに勇気をだして助けに来たんだね。

 ふふ、人望あるねェウソップ! 

 ナミと目を合わせて、つい小さく笑ってしまった。……たぶんこれのせいでこの後ナミは怯えられたのかも。見ようによっては意味ありげだったし。

 

 その後。

 

 子供達の「キャプテンは何処だ」という問いかけにまるで答えるようなルフィの「うまかった、肉!」発言が飛び出し。何かを勘違いしたらしく顔を青ざめさせ震える子供達に、ニヤついたゾロが低い声で嘯いたのだ。

 

「お前らのキャプテンなら──くっちまった」

「さ、さっき笑ってたのは」「や、やっぱり」「そそそそういう!?」

 

 ──”ひぃぃいぎゃああぁあ鬼ババーっ!! "子供達3人の悲鳴が集中した……ナミに。

 

「っんで私を見てんのよっ!!」

 

 揶揄われた子供達は、通路側に座っていたナミを凝視してひっくり返るくらい悲鳴を上げるものだから……落ち着かせるのが大変だった。

 しばらくして落ち着いた頃、ウソップはとっくに退席したことを知った子供達は揃って時計を見た。

 

「あ、そっかもうそんな時間だ」

 

 帽子を目深く被った面長な男の子、にんじんくんがそうだそうだったと手槌を打つ。

 

「毎日毎日屋敷まで行ってさ。キャプテンも偉いよな!」

 

 海賊に憧れてるのかドクロのシャツを着た男の子、ピーマンくんが得意げな顔で続ける。

 

「さすがぼくたち自慢のキャプテンだよね」

 

 メガネをかけた丸みのある顔の男の子、たまねぎくんが深くうんうんと頷いた。

 

「毎日屋敷に? ねえ、アナタ達のキャプテンはいったい何のためにそんなことを?」

「えっとね」

 

 さっきまでウソップが話していた屋敷に、まさか話していた当人が毎日通っているとは思わなかった。

 ナミが問い掛けると、得意げな顔をしていたピーマンくんが、輝くような笑顔になって口を開いた。

 

 

 

 

 

 








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