新時代を、それでも   作:ずーZ

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ありがたくもお気に入り、ブクマしてくれてる方々へ。
2つ投稿です。キリがよかったので。




15話 シロップ村②

 

 

 

 

 

 

 

 ……ハッとした時には口をポカンと開けていて。私はさり気なく長いストールの端で口元を覆った。

 

「そんなお見舞いを1年も続けてるの?」

「そう! すっごいでしょキャプテン!」

 

 1年もの間、足繁く通ったウソップのホラ話に元気づけられて。屋敷の主人のカヤお嬢様は、今や元気になりつつあるという。

 胸を張って語るピーマンくんの言う通り、確かにすごいと思って圧倒されちゃった。

 

「俺はそんなキャプテンのお節介なとこがすき!」「俺も! あと仕切り屋なとことかな!」「ぼくはやっぱりホラ吹きな所が良い!」

 

「およそ人を褒める言葉じゃねェが、なるほど慕われてんだな」

 

 苦笑するゾロも感心したって表情だ。

 子供達が口々にウソップを好いている発言をするのも分かる。ルフィだって「あいつすっっげー良い奴だなあ」と楽しそうだし。

 

「ってことは、船貰いに行っても大丈夫そうだな。()()()!」

 

 ──あ。

 ……向かい合わせに座るゾロと目が合う。

 諦念の表情を浮かべたゾロが、長椅子に立て掛けていた刀3本を手に取り身支度を始める。

 私もそうしよう、忘れ物ないかな……。

 

「行こう? ねえルフィ、さっき屋敷に行くのは辞めようって話は終わったじゃない」

「大丈夫だって。もう元気になってんなら少し話すくらい平気だろ」

「アンタはお嬢様じゃないでしょってねえルフィ」

 

「よーしお前ら3人ついてこい! 屋敷は店の外に出てどっちだ?」

「え? え? どゆこと?」「付いてこいって言っといてなんで先に行くんだあの兄ちゃん」「麦わらの兄ちゃんちょっと待ってよ!」

 

 ルフィは子供達を連れてスタスタと店を出ていった。ま、行くぞって言った時点で目に見えてたね。会計してこよ。

 

「決めたら一直線過ぎないアイツ?」

「俺とお前を誘うと決めた時もあんな感じだったさ。ああなったルフィの相手するのは諦めろ、余程の事態じゃねェと話を聞かねェよ。言うだけ無駄だ無駄」

 

 会計しながら、聞こえてくるゾロの言葉に内心で大きく頷いた。

 

 

 

 ………………

 

 

 

「おいおいおいアイツら何処だ?」

「行動早すぎ……!」

 

 会計を済ませて外に出たら、驚く事にルフィと子供達の姿がどこにも無かった。いや考えてみたらルフィが私達を律儀に待つ訳が無かった油断した……。

 シロップ村の光景は開けたモノ。道にろくな舗装も囲いもなければ家と家は離れている。だっていうのに3人で見渡した所で影も形も捉えられない。

 うーん。ルフィと一緒にいたのはこの村の子供達だと考える、と。

 

「『子供ならではのとんでもない道で先に行っちゃったのかな』」

 

 屋敷までの道は当然知ってるだろうけど、子供ならではの抜け道とかも知ってるよね。

 ルフィ達、敷地の合間の畑とか牧場の仕切りを潜って堂々と抜けて行くでもしてるのかも。

 

「ルフィとガキ共の行動力がどっこいなら、そんなこったろうな」

「知らない場所で走り回る子供4人追いかけるようなもんじゃない……」

 

 ため息を揃ってついて、そんなの今更急いでも追いつけないしと、のんびり行く事に。

 途中途中、たまに見かける村の人に屋敷への道を尋ねていく。

 長閑な風景を眺めながら歩いて、ここを子供達と駆け抜けて行ったのだろうルフィを思う。

 フーシャ村で遊び回っていたあの頃を思い出すような、そんな懐かしい感覚に口元が笑っていた。

 

「何笑ってるのウタ?」

「……〖ルフィと村を駆け回って遊んでた頃を思い出してた〗」

「ん……へえ、俺はそれ知らねェな。どうせ屋敷まで暇だし、退屈しのぎにアイツがどんなだったか教えてくれよ」

「ルフィから聞いたりしてないの?」

「昔語りなんて、アイツがわざわざそんな話すると思うか?」

「『ゾロから振るとも考えられないね』」

「そういうこった。野郎2人、バカ話ばっかりさ」

「男共ってなんだかんだそういう所どいつも似たようなモノね」

「ほっとけ」

 

 確かに屋敷までどのくらいで着くか、いまいちピンと来ない。屋敷らしい建物もまだ見えない。

 そういうことなら、さて。

 どうせなら、退屈しのぎ、とただ話すよりもいっそ……よし。──むむむ……っ。

 

「ウタ?」

「あーなんかいつか見たようなツラしてるな。集中してるんだとよ」

「集中?」

 

 両手を前に、腕の中に抱えるように。さすがにモノがモノだからイメージを集中集中──んん~! 

 

「は?」

「おお」

 

 抱えるようにした手の中に光る音符が集まって、その光が一瞬強まってすぐに消える。

 すると音符はすっかり、子供時代のルフィへと姿を変えていた。

 重さはほとんどない、フワフワと浮く音符を抱えているような感覚。指先に伝わる体の感触は、何となくさっきひたすら触っていたルフィの頬袋を思わせる。

 2人に元気の有り余ってるようなお子さまルフィの顔が見えるように抱え直して、私も腕の中の小さなルフィの身体、その懐かしい顔を見下ろして覗き込んだ……うん可愛い──悪くない! 

 

「ほんと面白い能力だな、そりゃガキの頃のルフィか。ははっ、顔は幼いがほぼそのまんまたァな!」

「おっどろいたそんな事も出来るんだ。ふーん、これが子供の頃の……ヤンチャ坊主そのままって感じ丸出し──ねえウタもしかして黄金とかも作れるの!?」

「ナミ、何考えてるか分かるが無駄だ。ウタの能力で作ったんなら、ウタがダウンしたら消えるだけだろ」

「あ、そっか」

 

 うんうんとゾロの言葉に頷いた。

 そういうこと。実際このお子さまルフィを作って維持するのは結構しんどいのだ。ほんの少しだけ維持しただけでこれだし、思いの外の出来栄えで名残り惜しいけどそろそろ消さないとくたびれちゃう……。

 そう、そろそろ……だからそろそろ……。

 

「……どうした?」

 

 ……そろそろ……んーと。

 …………も、もうちょっとだけ。

 

「ウタ? 固まってどうしたの」

「……ナミ、あれ奪うぞ」

「え? なんでわざわ──ええ? そういうこと?」

「耳がいいクセにこっちの声聞こえてねェし、あの目見りゃわかったろそういうこった。俺あルフィじゃねェんだ、こんな事でこの村の中を、女背負って歩くなんざお断りだ」

「私もその横を歩くのはゴメンだわ……奪ってどうするの?」

「仕方ねェから寄越せ、斬る」

「斬るってまあ気分の悪そうな……そもそも斬れるのあれ?」

「光る線の方はぶち切られて消えるのを見た事がある。同じ能力で作ったモノなんだ、たぶん斬れるしそれで消えんだろ」

「そ、ならよろしく」

 

 そろそろ……そろ、そろ……いややっぱりもうちょっとだけ。

 

「ふんっ! ゾロッ!」

「おう。ったく妙なとこで世話の焼ける()()()だ」

 

 っは! ナミ!? 急になにルフィを引ったくっ?! ああゾロに投げてそんなぞんざいに──ん゛ゃ? 

 

「はーいウタ、アンタは見ない見なーい」

 

 や、やわっ──じゃない!! なんでいきなり私の顔を抱き締めるの!? コレじゃ何も見えないー! 

 

「シッ」

 

 なんか鯉口の音がしたんだけど刀鳴った音だよねえいったい何し──あ゛っ。

 何となく()()()感覚が伝わってきて、察した。

 ナミが離れて、一応2人の周囲を見てもお子さまルフィが見付からないから確信した。

 な、なんで!? そんな事わざわざしなくても──! 

 

「あのね。そのふくれっ面を見たら言いたいこと分かるわよ。ほっといても消しそうになかったから仕方ないでしょ。変に拘って凝って作って、それで消し難くなったアンタが悪い。わかった? わかったわね?」

「ウタ、いまみてェになりかねねェから、今後は作んなよ? 後味の悪いもん斬らせやがってまったく」

 

 う、ううううう……。

 ……言葉にできない、納得しがたい感情に色々色々色々色々! 思う所はあるけれど、確かにあのままだとたぶん倒れるまで消さなかったと思うとなんにも言葉を返せない。

 深々と、すんっっっごく嫌々ながら、迷惑かけてごめんなさい、というつもりで2人に向けて腰を折る。

 

「顔と髪……」

「テメェの感情を隠すのヘタクソか。……後ろの髪が震えてら」

「やれやれ。そんなんじゃルフィのことガキだなんて言えないわよウタ」

 

 ルフィをガキだなんて言えないってそれつまり……っ!? 

 

「うぉすっげー顔に……」

「あー……ウタちょっと顔隠したら?」

 

 なんか言われてるけど、ワカンナイ……。

 え? ルフィのことガキだなんて言えない? それって私が2人から見てルフィとよりによって同レベルってこ──ふんっ!! 

 

 ありえない、そんなことない、ぜっったいなーい!! 

 

 大股で歩く。後ろでなんか呆れてる雰囲気を感じるけど知らない! 

 なんだよゾロもナミも揃って「やれやれ」なんて顔してさー! 

 

 そのまま怒りに任せて歩くこと数分、屋敷が見えてきたので更にペースをあげる。

 

 だいたいこんな風に後追いする事態になったのだって、ルフィが子供達と一緒になって先に行っちゃったからじゃんか! こーんなこと平然とするルフィと同じ扱いなんてたまったもんじゃない! 

 追い付いたら絶対この鬱憤をぶつけてやると息巻いて屋敷の門の傍に着くと、ウソップが出てくる所で──その形相に驚いてしまった。

 

 燃えるように目を怒らせて、震えるくらい必死になって歯を食いしばっていた。

 

 門の傍で驚き佇む私が全く見えていないようで、足音を立てて何処かへと歩き去って行くウソップを見送る。

 

「屋敷でお嬢様と何かあったのかしら」

「随分とご立腹のようだったが、ケンカでもしたのか」

 

 そのうち、追いついて来たナミとゾロも、訝しげにウソップの後ろ姿を見詰めていた。

 

「お、なんだお前らやっと来たのか。ちょうどいいや、ウタ」

 

 ふと背後から探してた人物の呑気な声。

 ウソップの事は気になるけど、そんな声に3人して溜め息を揃えつつ振り返る。

 

「よっと」

 

 と、視界が一気に動いた。

 ガシッとグルンッと腰から持ち上げられて……え? あれ? なんかこの体勢ってつい最近身に覚えがある──。

 

「あ? おいルフィ何やってん」「だからその体勢はってそうじゃないルフィ急に」

 

「よっしゃ行くぞー!」

 

 ──"話を聞けーっ!? ”とナミとゾロの叫びがあっという間に遠のく。

 その頃にようやくルフィの肩に担がれてる体勢になってると気付いた時には、って。

 な、なんでよルフィーッ!? 

 

 

 ………………

 

 

 ぅ……う……、振動、つら……。

 

「お、いたいた見付けた。おーいウソップーッ!」

「あぁ? ってルフィお前なんでついて──ってその肩のなんっ、っていったい何してんだというかええそれウタのやつ大丈夫なのか!?」

「大丈夫? なにが?」

 

 ……こんっのぉおっ!! 

 

「んあ?」

 

 ルフィが立ち止まった瞬間に身体を捻って、帽子の上からだろうとなりふり構わず無理やり、頭を両腕で抱え込んでほっぺたを()()

 

はひふんはふははばばばばばばば(なにすんだウタあだだだだだだだ)──ッ!!」

 

 能力を指先に集めて、頬を思いっっっきり捻って抓った! 

 私が! 揺れに! 強くなかったら! 大惨事だよ! ルフィ! ホントルフィ! このルフィめ! ばかルフィ! ばかぁあーっ!! 

 

 

 

 

 

 









「(俺は何を見せられてるんだ?)」

長鼻の感想より。
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