新時代を、それでも   作:ずーZ

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※連投




19話 シロップ村⑥

 

 

 来る海賊達との戦いに備えを終える間際。夜も更けて、近く、明け方の気配を感じる頃。

 何かやらかす気がするから終わるまで上で待機! なんて失礼な言葉でナミに命じられた私とルフィの2人はいじけながら坂の上で待っていて、3人のやり取りを眺めていた。

 

「──夜明けだ」

 

 ウソップが固い声で言った。

 暗い夜の海が、敵の足止め用にと油を敷き詰めた坂道が、日差しを反射してきらめいていく。

 いよいよ、クロネコ海賊団達が襲ってくる! 

 昇る太陽の光が大きくなればなるほど、緊張が高まっていく感覚。

 

 たださっきから気になる事が1つ……いや2つできた。

 

 微かに聞こえる、それも大勢の声。

 そして思う。海岸って私達の船がある方も海岸だったよね、と。

 どうしても気になって坂を下りて、3人が私の足音に振り向いた所で、能力で懸念を描く。

 

「『たくさんの声が聞こえるんだけどさ。それも私達の船がある方から』」

 

 すぐにハッとしたのはナミ、続けて、あ……と声を漏らしたのはウソップだった。

 

「そうよ私達の船がある方から来る可能性もあったんじゃ?」

「お前らが来たあそこの──北の海岸!? いやだってあいつら昨日はここで密会してたんだぞ?!」

「言ってる場合か! 道は?」

「こ、こっから北にまっすぐ、数分もありゃ……くっそぉお!」

 

 言ってる間にウソップが駆け出す。

 

「よし北だなっ!!」

 

「っは!? ル」

 

 ハッとして声を上げるナミに私もハッとして音符を出そうとするも、遅い。

 ああ、ウソップの姿を見下ろしていたルフィが触発されていなくなっている。

 ダメェエエエエ……!

 

「あぁあもう!」

 

 ナミと一緒に頭を抱えた。

 ルフィったら迷うクセに、足は迷わないんだから!

 

 猛烈な勢いで、坂の上にいたルフィが、きっとどこぞへと、最前を突っ走る。その後ろをついていくようにウソップも走っていった訳で……。

 どうにかウソップがルフィに追いついてくれないかな、と儚い願望を抱きつつ私も駆け上がっていって。

 

「わひゃっぁ」

「ナミ、ってうぉ?!」

 

 坂を上がりきる直前。後方から微かに聞こえた短い悲鳴に何事かと振り返って、顔が引き攣った。

 坂に敷いた油で滑って坂を落ちていくナミとゾロ……って。

 なぁにやってんの2人とも!? 

 

「はっ、ウタごめーん!」

「引き上げてくれ!」

 

 慌てて駆け下りる私に気づいた2人が声を張り上げる。

 言われなくても! 

 油から一歩離れた位置で止まって、音符と流線できちんと2人を引き上げた。

 

「助かった。ありがとう……ナミてめぇ、お前のドジに俺を巻き込むな!」

「ごめんってすぐ言ったじゃない、懐の狭い男ね」

「こ……ぬけぬけとナミてんめェ!」

 

 パンッと手を打ち鳴らして喧嘩を止めた。

 

「『急ごう!』」

 

 文字を残すようにして返事も聞かず駆け上がる。すぐ、追随してくる2人分の足音が聞こえた。

 坂を上がりきって、北を確認してから森へと入り獣道を走る。

 でこぼこと道が、蔦が、茂みが、面倒くさいうっとうしい!

 もっと鬱蒼としてるコルボ山で鍛えた技で、急ぐ!

 

「んん?!」

「ウタ!?」

 

 能力を行使。私は大きく跳んで、音符を利用して、さらにさらに跳んで跳んで跳んで進む! 

 背後から驚くような声が上がって、あっという間に遠ざかった。

 音符で中空に次から次へと足場を作って、点々と蹴り抜いて跳びはねていく。

 飛ぶ方が断然楽だが、それよりは格段に燃費がいいのだ。

 本当なら音符に3人で乗れればいいんだけど、2人だって少ししか飛べないから3人だと浮くこともできないかな……。

 

 

 

 ……

 

 

 

 森を抜けて、海岸際の崖上を駆けていく。

 徐々に昇っていく朝日の中、北へと進む。走る! 

 

 やがてようやく見えてきた、船を止めた海岸、その坂道の際。

 すでに到着していたらしい。

 パチンコを構えて、戦い始めているウソップの後ろ姿にぐんぐん迫る。

 

「どけくそガキー!!」

 

 そんな敵の声が聞こえるまでに近づいた時、ウソップが石槌で思い切り殴り飛ばされた。

 地面へと叩きつけられる寸前のウソップを音符でカバー。

 勢いを殺しつつも滑っていくウソップと入れ替わるようにして、石槌を携えた敵海賊へ突っ込む! 

 走り込む勢いそのまま両足から飛びかかって、蹴り飛ばすっ! 

 

「っぶは!?」

 

 綺麗に打ち込んだ、このまま、続けて動く! 

 胸元を蹴りつけた反動で、海賊を足場にして、さらに跳ぶ。

 眼下を見下ろす、着地までの1秒と少し──思考を回す。

 

 蹴り飛ばした敵はまだ宙に浮いている。

 敵はまだ坂道にすべて、大勢が留まっている。

 ウソップは私のすぐ後ろ。

 ナミとゾロはまだ来ないけどそうかからない、はず。

 ルフィは知らないそのうち絶対来る。

 

 敵は多数、今味方はウソップのみ──ひとまずゾロが来るまで消耗は抑えて押し返す!! 

 

「なんだあの女!?」

「んだよ新手もガキか」

 

 宙に浮かんだままの敵を、素早く流線で簀巻きに捉え、音符で足を包む。着地してすぐ、流線を出してる手を思い切り引く! 

 要領はコマ回し! 

 

「ぬんああああんああ────!?」

「な、なんだこれそれはなん゛っ!?」

「バカこっちにづぐえええー!」

「ぎゃあかあーっ」

「あ、悪魔の実じゃねェかありゃぁあアあっ!?」

 

 石槌を持った()()は目論見通り、坂道の壁から壁へと弾かれ弾かれ下って下って、登ろうとしていた並み居る敵をなぎ倒して吹き飛ばしていった。

 ただ誰も彼もは無理。

 だけど! 

 

「ぎゃああ」

「だ、っあ!」

 

「くそがああいつらのせいでぜんぜん登れてねェぞ!!」

「あ、あんの長鼻小僧、なんて腕だ、あっという間に何人も……!」

 

 空気を裂いて飛んでいくパチンコ玉の当たること当たること! 

 顔のどこかしらを抑えて、のたうちながら小気味よく転がっていく海賊たちに思わず笑ってしまった。

 そしてすっかり坂下まで海賊達を追いやったところで、改めてウソップと向かい合う。

 

「はっはっは! 必殺鉛星だい! どんなもんだっ、ばっかやろ共ーっ!!」

「『お見事ウソップ!』」

「へへ、ウタこそ、すげぇなおまえ」

「『ありがとう! そうすごいでしょ私も!』」

 

 立ち上がって近くに寄ってきたウソップは、頭を抑えてもう血だらけだ。

 むしろよく立って、さっきの射撃をしてのけたと驚く。

 それだけ、村を想う気持ちが強いんだろう。

 

「『ヘロヘロの所、悪いけどがんばってもらうよ。私には決定打がない。今みたいなのもたまたまだから』」

「誰がへろへろだ、こんなのなんてことない、まだまだ行けるぞ俺はァ!」

「『ならOK! とりあえずゾロが来るまで持ちこたえるよ!』」

 

 幸いこっちは坂の上、これでもかってくらい地の利を活かせば問題ない! 手は考えてるし! 

 

「ウタが頼りにするってんなら期待大だな! わかった! ……ってかゾロもだけどナミも真っ先に走ってったルフィも、あいつらなんでまだ来ないんだ?」

「『ナミとゾロはもう少しで来る。ルフィはどうせ迷子! 北とかわかんないからあいつ……』」

「船長かよそれでも?! やっぱり俺がお前らの船長に」「『ごめんなさい』」

「早えぇよだからっ」

 

 私達が話し合っていたのは1分も経ってない。──それで向こうには何かするには十分だったらしい。

 空気が震える。また来るって構えたけど、なんだか聞こえてくる雄たけびは何かが変だ。

 なにかしたの……? 

 

「よぉーしお前ら、()()()()()()()()()()()、なにもかもかなぐり捨てろ。あの女が能力者だろうと関係ねぇ、いいか! 突破しなきゃキャプテン・クロに殺されるのはこっちだぞ! 言葉通り、死ぬ気でいけェ野郎どもっ!!」

 

 奇妙な格好をした男の命令に応じる再びの雄叫びは、まるで獣の咆哮だった。

 明らかに変な勢いだけどもしかして……催眠術かけたの? ええ?! なにをしたのか見たかった! ……じゃないじゃない。

 勢いを削いだどころか迫力が何やら増した。もしかするとさっきほど簡単にはいかないかもしれない。

 でもこの地の利を活かして時間を稼ぐだけなら大丈夫! 

 

「死ぬ気で来るってよ、気合い入れねェとな!」

「『引き付けて前から後ろに崩す』」

「任せた! 援護は任せろ!」

 

 パチンコにさっきの鉛玉とは違う、丸い包みを番えて引き絞るウソップの頼もしい返事に、安心して集中する。

 駆け上がってくる集団、その足の動きに集中、集中……ここ! 

 数人の足元に小さな音符を展開して、ズらして、転がす! 

 

「うぁっ?!」

「おまこっちにくがっ」

 

「なんだ急にぃぃぃ」

「いきなりなんだががあっ」

 

 数人をスッ転がし、転んだ先の相手にさらに引っ掛けさらにその後続へと連鎖していく! 

 人間ドミノってね! 集団で来るからそうなんのよ、って、んん?! 

 

「なめんなぁあっ!」

「飛んでけぇええっ!」

 

 後続に転がっていった人達を受け止めて、投げ返したっ!? 

 

「ナイスゥウッ!!」

「飛んでってやらぁあーっ!」

 

 なんて馬鹿力! ……もしかすると飛んできてる人達もどっこいかも? 

 あんなに力がある相手じゃ()()()にしても破られる。

 

「おいウタ飛んでくるぞ!?」

「『問題ない』」

「へ?」

 

 けど。

 

「うん?」

「変な方向に引っ張られてる?」

 

 宙を舞ってるだけ、それならその力の方向を弄ってあげるだけで片付く。

 空も飛べないのに、私相手にただ上から来ようとしても無駄だよ! 

 

「あれ」

「なんで」

 

 あああぁぁあぁ……と高々と舞っていた人達が音符によってあっさりと坂の下まで落ちていった。いぇい。

 

「っくそが厄介な女だ!」

「かわいい顔で笑いやがる!」

「シャツの柄はダッセェのにな」

 

 はぅ。

 

「おお鮮やかってウタァア!? どうした!? なんか食らったのか!?」

 

 っは! しまった。

 こそっと聞こえた。服装のことを馬鹿にされてつい崩れ落ちていた。

 カメラ持ちハイキング姿のパンダマンシャツを、こんの……っ! 

 

「『かわいいじゃん!? そっちなんかおじさん集団のクセに気持ち悪いのよ猫耳なんて!!』」

 

「なんで言葉じゃなくて文字なのか気になるが、その点に関しちゃ俺も同感だ」

「ジャンゴ船長!?」

「船長敵の言葉に乗らないでくださいよ!!」

「俺今だけ外そうかな」

「だって俺は昔から──なんてやってる場合か!? ええい馬鹿かごちゃごちゃ言ってないでとっとと上がれえー!!」

 

 気を取り直した号令で海賊達がまた駆け上がってくる。

 

「ウタ、次の出鼻は俺がくじく!」

 

 パチンコに番えた包みを、ウソップは放った。

 

「んな」

「がああ!」

 

 大きな火花が炸裂! 

 悲鳴が上がり人が吹き飛んだ。

 

「必殺・火薬星! まだまだいくぞクロネコ海賊団──!!」

 

 2連3連と立て続けにウソップの放つ火薬の塊が炸裂していく。集団が吹き飛んでいく。

 敵もバラけるようにはしてるみたいだけど、坂道の空間は限られている。

 どうしても寄り合う瞬間、的確な狙い撃ちがそこを吹き飛ばし、吹き飛ばした敵の体そのもので後続の足を確実に留めている。

 

 それにしても。手のひらサイズの爆弾を連続で放つなんて怖い隠し玉だ。そして射撃のなんて正確さ。

 ヤソップ、ウソップすごいよ! 

 

「おせおせおせ──!!」

「痛かねえ! 痛かねえぞおおおお!!」

 

 ただ最初に吹き飛ばした相手が皆怯んでいたのなら、今迫ってきてる奴らは吹き飛んでもすぐ立ち上がってすぐ走り出す。

 上り切られるのも時間の問題だ。

 

「ぬぅおおおおお!!」

「いけいけいけええええ!」

 

 私の能力で足元をズらして後続へとひっくり返す。

 ウソップの爆弾の射撃で押し返す。

 

「っち、マキビシ地獄だ、そらあー!」

 

 また変わったものを用意してるなウソップ……

 痛々しい見た目のマキビシがあたりに散らばる。

 

「効くかっ!」

「ほら目の前まで来たぜぇええ!!」

 

「げぇえ」

 

 効かねえ痛ェッ、とウソップが悲鳴交じりに苦しそうな声を上げた。

 海賊達はまるで砂利でも踏み荒らすような足取りだ。本当に効いていないんだろう。

 接敵までもう数秒といったところ。

 ここまで来られたら私は、たぶんウソップも。この数、あの力と耐久のある集団に肉弾戦は無理! 

 

 ここが体力の切り所! ……ゾロがまーたナミの足を引っ張って迷子にでもなってる気がする。ルフィも全く来る気配ないし! 

 もう、この人数を真っ向から相手できる2人が来ないと、マズいんだからね!! 

 

「ダメだこのっ、っておいウタ!?」

 

「観念したか化物女!」

「能力者だろうと囲んじまえば」「死ねぇええ!!」

 

 上がり切る敵に両手を振るう。数は7、8……たくさん!! 

 とにかく全部絡めとる! 

 流線そのものに驚いて、五線譜の上で硬直してる間に、今のアイツらが力を込めたらあっさり破れると悟られる前に、なるべく……空へ!! 

 

「怯むなぁああ!!」

「がああああああ!!」

 

 後続、8、9……たくさん!! 

 数えてられるか! とにかく、まだまだ、立て続けにやってやる! 

 両手を振るう、絡める、貼り付けにしてまた空へ! 

 

「もらっガア」

「鉛星! させるかぁあ!」

 

 取りこぼしがいたか!? 

 ウソップが弾いてくれなかったら避けられなかった。鉛玉で怯んだやつも遅れて空へと貼り付けに、……したタイミングでいくつもの線が一気に破られた。

 やっぱり長くもたなかった。空に貼り付けにした連中が次々に破っては落ちていく。

 高空から叩きつけられて激しい土ぼこりが次々に上がる。その煙を突き破るようにして、平然と坂をまた駆け上がってくる。

 痛みを感じてないとしか思えない。まだまだ動けるのがまざまざと伝わってくる。

 

「ぅうううああああ──!」

「とっとと破れ、そんなん見せかけだぞ!!」

 

 空に貼り付けにした連中が皆落ちていった。

 貼り付けはもう通じないだろう。

 ああ……疲労も眠気もキツイ。息も上がる、足も震える、腕を上げるのもおっくうだ。

 でもまだ、相手は坂の中腹! ここで踏ん張ればまだ押し返せる! 

 

「火薬星! 火薬星! うらぁあああー!」

 

 ウソップと並んで、敵の足場をズらす。

 進行を少しでも抑える! 

 少しでも耐える! 

 

「悪ぃ──」

「──遅れた」

 

 ……ほんとだよ。

 心底申し訳ない声色の呟きを残して、頼りになる2人が迷いなく敵集団に駆け下りていく。

 その後ろ姿を見送って、ついへたり込んでしまった。

 

「ゴムゴムの──バズーカッ!!」

「3刀流──鬼斬りっ!!」

 

 ──いま、何十人吹き飛んだカナ?

 んー、役者が違うって感じ。

 やっちゃえルフィー!!ゾロー!!

 私は大きく、大きく、空へと思いっきり片腕を突き上げた。

 

 

 

 

 










※ウタが2人を置いて先行するため、森の中を縦横無尽に飛び跳ねていった直後



「びっくりした。……サルもかくやよあんな動き」
「ルフィもだがウタも大概、野生児みたいなところあるな」
「本人に言ったら拗ねるから言わないほうがいいわねきっと」
「違いない。とにかく行くか、北だな! 急ぐぞ!」
「ええ──ん? ちゃ、ちょっとゾロそっちは、ってもういないし! ええうっそでしょ?! 森の中であいつを探せって……ああもうゾロー!! 私の声のほうに戻ってこぉおおおい!! こらぁああああっ!! もうなんで迷子のおもりなんてしなきゃなんないのよぉおおおおっ!」



「おかしい。ナミがいねぇ。あいつまさか迷子か?」
「あ?あり?ゾロ?お前なんでこんなところにいんだ?」
「は?お前こそルフィ、真っ先に突っ走ってたはずだろ!?」
「いやそりがよー聞いてくれよ。北っつうから寒いほう寒いほうに行くんだけど村とか崖に突き当たるだけで、海岸になんかぜーんぜん着かねェんだ」
「そりゃあ北は寒いほうじゃねェからだよ。ったくいいかルフィ? 北ってのはまっすぐ──」







ついでに次回予告『ニャーバンブラザーズ、死す!?』
普通に起きてるルフィと初手から3刀流ゾロ相手だからね。仕方ないね。巻いていくね。
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