………………
「ブチ!? シャム!? お前らがまさか……!」
「う、うそだあああああ!!」
「に、ニャーバン・
「なんなんだよこの化け物共ぁよぉ……っ!」
ウソップの額の手当を終えた頃。
クロネコ海賊団を2人が蹴散らしていく最中、敵船から突然現れた2人組。
海賊達が諸手を挙げて湧き上がったものの、ルフィとゾロ、2人と対峙して数分ともたなかった。
なんだか悲壮な空気が海賊達に漂っている。いやでも今の2人組は、思わせぶりな登場をしただけある。
なにせあの2人相手、数分もったなら大したもの。……
「俺とウタの奮闘はなんだったんだ」
圧倒的なあの2人にウソップが軽くショックを受けている。
私はそこまでじゃない、けど、いつまでも負けてらんないな……。
「前座、ってはっきり言って欲しいならそう言ってあげるけど?」
ルフィとゾロの戦いぶりに愕然としていたウソップがナミの一言に膝を抱えた。
私もいくらか効いた。恨みがましくナミを見たら、似たような目で見られて怯む。
私なんかやったかなナミに?
覚えがない……あれ? ナミの頭に肩に、ちらほら枝葉が付いてるような?
なんで?
「さってと。アイツらの船は今のでどうやら空になったみたいだし、私は行ってくるわ!」
「は? 行くって?」
ウソップの声に応えることは無く。
俊敏な足さばきであっという間に坂を下り、機敏な身体捌きとルフィとゾロの猛攻に合わせて数多の目を掻い潜り、クロネコ海賊団の船へとナミは忍び込んでいった。
やっぱり磨き抜かれた動きをしてると感心してしまう。ウソップも呆然とその姿を見送ってポケ〜っとしていた。
ナミの鮮やかな潜入の横。
ルフィが下で散り散りと走る海賊達を腕を伸ばしては投げ、一纏めにしようとしてるのか山と積んでいき。
ゾロは船長と呼ばれていた男を倒そうとしているのか、飛び道具を避けながら弾きながら、ほぼほぼ間合いに捉える頃合い。
追い詰めていた。2人が来てからあっという間の出来事。
隣のウソップは思う所があるのか、なにやら強い眼差しを向けている。
憧れるようなウソップの眼差しに、ルフィとゾロを見ているような動きを感じ、なんとなく察して1人頷いて。
ふと、森の方から複数人の足音が聞こえて立ち上がる。
「どうした?」
「『森から何人か来る』」
端的に伝えると、ウソップの顔が険しくなった。私も良い予感はしない。
こんな明け方スグに海岸に用のある人間、それも今日にだ。村の方からこのタイミングで来るとしたら心当たりは1人。複数人なら違う……でも予感があったのだ。
決行の時刻を指定したのなら、その時刻になっても事が起こらないならば、様子を見に来てもおかしくはない。
「ここはアイツらに任せてそっちの様子を見に行こう、村の誰かかもしれねェ──けど、念の為隠れながらな」
あくまで念の為だが、とそう続けた。
森の中、私の指差しとウソップの案内で最小限の言葉をやり取りしつつ、気付かれぬよう足音へと回り込みながら近づいた。
「っ──ヤ、ロウ……ッ」
「……っ」
辿り着いた時、ウソップが目を血走らせて呟いて、私はあの男がやはりそうなのかと悟って顔が強張った。
予感は悪い方で的中した。ただ、想定を超えて悪かった。
ウソップが睨む眼鏡を掛けた執事服の男こそがこの騒動の黒幕、クラハドール……いや、海賊キャプテン・クロ。
クロは両手指に10本の長刀を備えた異様な武器を着けていて、ただ前を歩く少女に突きつけるでもなく、散歩でもするように……即座に切れる距離を保って歩いていた。
「『クロの前にいるのが、もしかしてカヤさん?』」
「そうだ……早く助けねェと」
ウソップが固い表情で呟き、手を貸してくれ、と目を向けて訴えてくる。
「『待って』」
でも、私はまだそれに頷けない。
「なん」
「『
確認すべき
それを伝えて数秒目を細めたウソップが、まさか、という表情をして頬をギュッと抑えて青い顔になる。……私も何となく、そうなのかなーという気はしている。
今度は一直線にその足音の方に急いで向かえば、そこには予想通りの可愛らしい面々がいて私は天を仰いだ。
「何やってんだウソップ海賊団!」
極小声で呼びかけながら叱るウソップ。妙な所で器用だなー、と変な所に感心して、その説教風景を眺めていた。
「ヤダよ帰らないよ俺達!」「キャプテンだって怪我して戦ってるのに!」「……アイツがカヤさんを……バカにして泣かしていた時、僕達……アイツが怖くって、……何も、出来ませんでした゛っ」
小声で言い合っていた子供たちが、たまねぎくんの震えるその言葉にピタリと固まり、項垂れた。
バカにして
子供達がこんなにも悔しそうな顔で、ソレを思い出すだけで。状況が状況だから、子供なのに声を押し殺して静かに涙を流している……この姿だけで、何をしたのか微塵も想像なんかしたくもない──したくもないのに……っ!
「ウソップ海賊団」
そんな子供達に、何時になく重々しい声を掛けたウソップの顔には、昨夜見せた時以上に、闘志が溢れていた。
「別任を言い渡す、必ずそれを果たせ。お前らの無念は、この俺が絶対に──このキャプテン・ウソップが絶対に、晴らしてみせる」
「『もちろん。そこまで手伝わせてくれるよね?』」
空気を壊して悪いけど、と思いながら肩を叩いて、文字を描いて呼び掛ける。
能力で宙に描かれた文字に泣きべそをかいていた子供達がぽかんとなる様に……そしてたぶん私の意図に……苦笑いしながら振り向いたウソップが、それでも力強く「頼む」と言ってきて。
私は満足して大きく頷いた。
………………
クロが村から森に入ってすぐのこと。
息を切らして追いかけて来たカヤに銃を向けられ、クロは早々に執事の顔を捨てて嘲笑った。
カヤの傍に仕えて過ごしてきた、この3年の
信じてきた執事に信じてきた姿の全てを否定されて、胸が張り裂けんばかりの悲しみに涙を流し小さくなって震えるカヤ。
その姿はクロからすれば腹が捩れそうになる位に滑稽で!
声を上げて机でも叩きたくなるような衝動に駆られるがまま!
その場で思わず
その瞬間に激しく込み上げた欲求を堪えるのは、クロをして至難であった。
ジャンゴの催眠で遺書を書かせたら、この3年もの間に溜まった鬱憤をようやく晴らせる。……そのジャンゴ達が一向に現れないからこそ、苛立ちを募らせたクロは仕方なしに海岸まで様子を伺う途中だった。
ようやくだ。
森の裂け目、ようやく、海岸が見えてきた。
薄らと木々の合間から見えるクロネコの海賊旗に、未だ誰ともすれ違わない現状に事が済んだら皆殺しを腹に決めて。
……前をちんたらと歩くカヤに溜め息を隠すこと無く吐き出す。
ふと、もはや船が見えたなら
「──っ!?」
「え」
カヤを足から這い上がるようにして包み出す小さな光……小さな音符の群れに2人は立ち止まった。
それぞれが動揺した直後、小規模な爆発がクロの無防備な背中を襲い、激痛と熱に晒された。
だが。
鍛え抜かれた身体を持つクロに堪えられない一撃ではなく、意識が一瞬明滅するも踏み止まってカヤを──逃がさんとするも、遅かった。
そのほんの一瞬で、その場からカヤは少しだけ移動
「なに!?」
「わっ」
「カヤさん回収!」「ナイスナイス!」「撤収だー!」「あ、あなた達は!?」
「ガキ!? なん、っくぅ!」
音符群が消える。そして一瞬で移動させられたカヤを次に囲うは、どこか見覚えのある子供達。
何故ここにと考えるよりも先に、カヤを取り戻して子供達を殺しに動こうとする。
その出足を挫くように、飛来する何かの風切り音。
クロは背中の衝撃と痛みが脳裏に浮かび、得意の抜き足で子供達とカヤを回収する余裕も無く、舌打ちしながらバックステップした。
そしてやはりすぐ、クロが立っていた場所を襲う爆発。
狙撃手の姿は見えないが、あの子供達がいることから、ウソップであると推察して。
──ごっこ遊びの
クロは頭が湯立つような怒りに襲われた。
だが、まだカヤは視界に捉えている。スグにでも追って捕まえたらガキ人質に脅せばウソップ相手も方がつく──!
そんな目論見を遮るは、1人の少女だった。
クロの視界に、カヤを護るような立ち位置に。ツートンカラーの赤い髪と白の髪が印象的な、見知らぬ少女が躍り出る。
「──邪魔だ小娘!」
カヤを見失う!
少女は、目を見開くだけだった。
無念を書き記す……
前書きは諦めた展開。両脚からおびただしく出血するウタをギリギリで助けてかき抱いて、ルフィが極々微かに震え声で「ウタ」って名前を呼んで抱きしめて助けた、そんな幻覚を見た(書いてた)(その後が微妙にウソップが切ないから止めた)