新時代を、それでも   作:ずーZ

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時系列とか本編に絡んだ話になるかは正直その(ゴニョコニョ)


オムニバス1本編13話までの合間と短編『喪失』の補完的話

 

 

 

 

 ◇13話 寝てるウタ、ゆめうつつ

 

 

 ……()()()()()()エレジアにガープさんが来なかったなら、と。

 あるいは、フーシャ村からエレジアに出発するあの日、ルフィが、あの下手くそなマークをくれなかったのなら、と。

 

 そんな恐ろしい「もしも」を考える日がたまにある──。

 

 知らない部屋で目が覚めて、家族が誰1人として居なくなっていた朝を覚えてる。

 ゴードンさんが部屋にやって来て、シャンクス達が何をしたのか話していた。

 

 けど、会話ができない。むしろ──私は一体それまでの間どうやって人と接していたのか、考えだしたら頭が真っ白になった日。

 

 私自身が何者なのか、今までの過去の全て何もかもが分からなくなった。

 混乱し、狂乱する私はゴードンさんの目の前で、叫ぶようにひたすら息を荒く吐き続けて、いきなり、喉を手で直に痛めつけようとしていた……とか。

 

 その時の事は全く身に覚えはないけれど、ほんとに、気が触れていたのだろう。

 それから気が付いたら暗い部屋の中、両手の指を使えないよう保護布で拘束され、寝かされていた。

 微かに痛む喉以外、怪我も、痛い所も何もなかった。暴れる私が眠るまで、ゴードンさんが抑えてくれたおかげだった。

 

 ただひたすらに、怖くて、悲しくて、寂しかった。

 

 私はなにか悪い事をしてきたのか。

 

 なんでこんな目にあっているのか、

 なんで音楽が好きなのか、

 なんでシャンクス達に置いていかれたのか、

 なんで話せない事をおかしいと感じるのか、

 なんで声が出せないのか、

 なんでこうなったのか、

 なんで1人なのか、

 

 ぐるぐるぐるぐる……使えない手先で頭を抱えて、震えて震えて、どのくらい震えていたか、泣き続けていたか分からない。

 ふと部屋の棚に置かれていた物に、目に付いた私のカバンに、自分の物に、私の持っていた物に。

 飛び付いて、手先が使えないもどかしさに暴れそうにながら、縋り付くようにしがみついて、口を使って無理やりに中身をぶちまけた。

 何か、自分がどんな生き方を、何をしてきたのかを、知れる物が欲しかった。ただ見つけたかった。

 沢山の使い古されたペンと、よくわからないけどその時は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ヨレヨレの()()()()()()()手帳ばっかりだった。

 

()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()()()! そんな激情を、ただ1枚の紙がアッサリ鎮めたんだ。

 

 ──”これやるよウタ。俺たちの新時代のマークだ!! "

 

「──……~っ!!」

 

 声は当然出なかったけど、締め付けた喉を通る空気の音だけが口から出ていた。

 

 クシャクシャになった紙に描かれた、本当にヘタクソな、()()()

 

 何にぶつけたらいいか分からない、とめどない怒りが一瞬で失せた。

 代わりに、探していた私を見付けられたような喜びの気持ちで、何もかもが満たされた心地になった。

 

 会いたいと、思い続けた。無心で、ひたすらに、祈るように。

 また、ルフィに会いたい、と願っていた。

 

 その結果、どういう理屈か、たまたま部屋に訪れたガープさんにその心を見透かされて、あれよあれよと数ヶ月程した頃にフーシャ村に連れて行ってもらった……。

 

 ──()()()()()()エレジアにガープさんが居なかったら。

 ルフィがくれた、あの下手くそなマークを思い出さなかったなら。

 

 あのままでいたなら、私はどうなっていたんだろう。

 

 

 

 

 ◇13話 寝てるウタ、ゆめうつつ

 

 ◇

 

 ◇12話ジェネシス

 

 

 

 

「あっちにも! なんだあれ!」

 

 ととっ?! 急に走んな私を背負ってるのにもうこのルフィ! 

 落とされかけ、どうにか腕に力を入れてしがみつく。……思うまま動くのは相変わらずなんだから。

 

「おいウタ、コレコレ! ナミも来いって、コイツ見てみろよ!」

 

 コイツ? 今度は何? 

 声を弾ませるルフィは地面を向いている。視線を下げればすぐ分かった。……何なのかは分からなかったけど。

 ヘビ……うさぎ? うさ耳をつけたヘビ? 「シャーシャー」鳴いてるからこれはヘビ……ヘビ? うさ耳はなに? 使う事あるの? 

 

「変わったうさぎだなコイツ」

「ヘビだと思うけど……なんなのかしらさっきのと言いコイツといい変な生き物ね」

 

 3人でじっと見ていると、ニョロニョロを止めたヘビがふと振り向く……なんか、私の事見てない? 

 

「あ」

 

 思わず見詰め合う、うさ耳ヘビと私。ふと、何かに気付いたとばかりにルフィが声をだした。

 

「ウタみてえだなこのうさぎ」

「はあ? アンタは何また急に変な事言って──っぶ」

 

 え? なんで? 

 唐突に笑いだしたナミを見るけど、勢いよく背中を向けたと思ったらお腹を抱えて震えてる。

 え? なにその反応どういうこと? 

 

「ししし、見ろよウタこのうさぎのこの耳」

 

 耳? このうさ耳蛇の? 

 私を器用に片手で支えて背負うルフィが、もう片手でひょいとうさ耳ヘビを掴みあげた。急に捕まえられたヘビはその手の中でけれど暴れることもなく、じっと私を見ている。

 思わず手を出したらルフィがヘビを手に乗せてくれた。すると、「ぅ」と呻いたナミが数歩遠ざかる音。

 反射的に振り向いていた……手に持ったヘビと一緒に。

 

「……っく、っぷ……~っ」

「ナミのやつめちゃくちゃ笑ってんな。ししし」

 

 何がそんなに面白かったのか分からない私は、つい手元のヘビと目を合わせて、みょんみょんと上下する耳にふと気を取られて──ようやく合点がいった。

 なるほどそういう事か! 

 テンションの上がった私の後ろ髪も、このヘビのうさ耳同様、ピンッ! と跳ね上がっている事だろう。

 なるほどね! 私の髪の毛と合わせて動かしてるのこの子! へー! 

 

 気付いたら一気に愛着が湧いた。私の真似してるんでしょ意図的に! なにそれ面白い可愛い!! 

 

「『飼いたい!!』」

 

 泣け無しの体力を振り絞って、能力で文字を描いた。

 届けこの想い!! 

 

「お、いいぞ」

「ダメよ! ダメ! ぜっっったいにダメ! ヘビと一緒の船なんて気が気じゃなくなるわ、ムリ!!」

 

 ──ナミがそこまでダメと言うなら……ダメだ。仕方ない。

 泣く泣くヘビと別れる私たちだった。……さよならジェネシス。

 

 

 

 

 ◇12話ジェネシス

 

 ◇

 

 ◇なんだかんだ勝負はしてる

 

 

 

 2艘の小船。大きさに2回りほどの差異はあれど、舳先は2つ。

 海へと突き出て波に揺れる、細く、足場とはとても言えない狭さ。

 そんな舳先がたまたま並んだその時、ルフィが何の気なしにトンッ、トンッ、と器用に跳んで行き来した。

 その光景をウタもまた、たまたま目にして。衝動に駆られて舳先に近付いてルフィの真似をした。

 

「……」

「……」

 

 細い2つの舳先に各々が立ち、見つめ合うと。ニィッと笑い合った。

 

「勝負するか!」

「『OK』!」

 

 突然舳先で見つめ合い、何事か意図不明な会話をしだす2人。

 

「なに? 何やってんのあの2人。勝負って何?」

 

「ま、お前も慣れるさそのうち」

 

 丁度船室から出てきたナミは困惑し、隣の船からのそんな困惑した様子に、ゾロは寝転んだまま苦笑いしつつそう言うだけだった。

 

「いつもの合図!」

「『作った!』」

 

 ナミが更に困惑していると、突如ルフィとウタの傍に現れた導火線の引っ付いた爆弾に目を剥いた。

 

「ってあれ爆弾っ!?」

 

「安心しろありゃ、コケ脅しだ」

 

「へ?」

 

 言ってる間に導火線は燃え尽き、爆弾はポンッ! と可愛らしい音と共に『Fight!!』の文字を上げて煙となった。

 直後、ルフィとウタが2つの舳先をほぼ同時に飛び跳ね、跳び移ってはまた跳び、移っては跳ぶ。

 繰り返し繰り返し、何度も何度も、跳び移り続ける17歳児と19歳児。

 

「勝負ってまさかそういうこと?」

 

「今回のはどっちが先に落ちるか、あるいは数でも競ってんのか。ははは……笑えるだろ?」

 

「頭痛いわよ能力者(カナヅチ)でしょアイツら。海に落ちたら事よ事……」

 

「いやァ? 俺もそう気兼ねしたが、大丈夫だ」

 

「そうなの?」

 

「見てりゃ分かる」

 

 ナミは疑わしげに、延々と跳び交う2人に視線を戻した。

 

「あ」

 

 ウタがついに舳先を踏み外す。バランスを崩した姿に声を漏らすナミ。

 落ちる……事はなく。音符を足元に出したウタはそれを足場にまた跳び続ける。

 

「それずっりぃぞウ──タん?」

 

 ナミがホッとした。その一方、ルフィが見咎めて跳びながら指差しをして、急に舳先()()から足を滑らせた。──正しくは、一瞬で作られた小さな足場(音符)にルフィが足を乗せたタイミングに、ウタがそれをズラした訳だが。

 

「のひゃっ」

 

 素っ頓狂な声を上げ、ルフィが海に落ちた。

 

「ああ!? ちょ、ちょっとゾロッ、ルフィが!」

 

「まあ落ち着け見てろ」

 

「なん」

 

 なんでそんな落ち着いてるの、と叫ぶ寸前、光る線を手先から海へと伸ばしたウタに気づいた。

 ……透明度の高い海であるからこそ、落ちてすぐなら能力で助け出せる。

 

「なるほどね」

 

「たとえウタが落ちても、ルフィなら腕伸ばして捕まえるくらいすんだろ。ほっとけほっとけ……気にするだけ疲れんぞ」

 

「そうね……」

 

 あっさりとルフィを釣り上げたウタを見て、ゾロの落ち着きように納得がいって、遊んでいる2人に呆れるナミ。

 

「ぺーっ、ぺっぺっ……ふー、くっそ俺は負けてねェ! ウタまーたズルしやがって!」

 

 海水を吐き出し憤るルフィに、何やら顔の横で手をにぎにぎとしつつ笑うウタだった。

 

 なおもうひと勝負!! とルフィは挑むも、まったく同じ手に引っかかり再度落ちる事となる。

 

 

 

 

 ◇なんだかんだ勝負はしてる

 

 ◇

 

 ◆オレンジの町を出たその日

 

 

 

 

 オレンジの町を出たその日の夜。

 小船2艘で夜の航海はできない、と錨を下ろし、互いの船をロープで繋いで。夜釣りだ! と楽しそうなルフィと船室でなく甲板でイビキをかくゾロを尻目に、ナミとウタは自分達の船の船室へ。

 既に真っ暗な船室の中を、ナミは片手にウタの手を、片手にランプを持ってスタスタと入って。

 テーブルにランプを置くとニッコリとした。

 

「さ、せっかくだから今日のうちに聞いておきましょうか。昼間のルフィが言いかけた事についてね」

 

 目を泳がせるウタはにこやか〜なナミに手を引かれるがまま椅子に座らされ、「はいこれ」と非常に見覚えのある手帳とこれまた見覚えのあるペンをテーブルにひょいと出されて、泳いでいた目を白黒させた。

 ウェストポーチを探ると、ない、何時もの配置に会話用の手帳とペンがない。

 

「言ったでしょう? 泥棒だって」

 

 得意気な顔でコーヒーを2つ注ぐナミを、ポカンとした顔でウタは見上げていた。

 勝手に探られた、そんな不快感など浮かばない。なにせ覚えが無い。どのタイミングで抜き取られたのか、夕飯を4人で摂っていたつい先程までは何度か使ったのだ。

 え? いつの間に? と、むしろ鮮やかにすぎる手際に感心するしか無かった。

 ウタの分、とコーヒーを置きながら対面に座るナミへ、ウタは思うままペンを動かす。

 

「〖すごい、いつの間に? 〗」

「ペンと手帳? そうね……それに答えてあげてもいいけど、まずは私の質問に答えてね?」

 

 にぃっ、と愉しそうに答えるナミに、ウタは軽く仰け反る。

 引き結んだ下唇を、ランプに照らされ熱くなった顔を隠すようにコーヒーカップを口元に運んで留め。香りも分からないくらいの逡巡を挟みつつ、もう片手に握ったペンを動かした。

 

「〖違うあれは子供の私にそう教えた海賊と山賊が悪い〗」

「もっと可愛い話か面白い話かと思ったらとんでもない話なんだけど……!」

 

 首を傾げるウタに、「海賊と山賊に教わる子供ってなによ……」と疲れた声でナミは呻いた。海賊に約7年、山賊に約10年育てられたウタの感覚は他と一線を画す。と、ナミが気付くまでそう時間はかからなかった。

 

 結局。会ったばかりで話題は尽きない。

 

「この手帳とペンを盗ったタイミングは実はね──」

「〖ルフィの子供の頃 ぜんっぜん今と変わってないかも──〗」

「……単純な、よくある話よ。私は家族を海賊に──」

「〖分からない 話せない 喋れないのは昔からのはず──〗」

 

 手帳とペンを取った手口、ルフィとの出会い。

 踏み込んで。

 ルフィには話した海賊嫌いの理由。ペンと手帳、能力でしか話せないのは何故か。

 

「……乗ってる間は航海術について色々教えたげるわ、せっかくだし」

「〖やった! じゃあさっきの盗みの技も! 〗」

「結構図々しいな! まあいいけど」

「『ありがと!!』」

()()疲れるんじゃないの? 今日も町を出る頃、結構しんどそうだったのに」

「〖咄嗟に伝えたいことがある時は衝動的につい〗」

 

 何だかんだと話は弾む。ただナミの指摘通り、コーヒーを飲んだとはいえ体力が限界近いウタは疲労に大きなアクビをしてしまう。

 クスクスと笑われハッとして口元を抑えたウタに、「そろそろお開きにしましょうか」としめやかに言うと、ナミはコップを片付け始めた。

 その合間にウタはペンを走らせて、コップを綺麗にしたナミにその文面を差し出す。

 

「〖ルフィが強引でごめんねって思う でもナミが居てくれるのは嬉しいし助かる〗」

「はいはい、そうでしょうね。よくあんな奴らと船旅してたわよアンタは」

「『なによりこうして話せて楽しかった! ありがとうナミ、ついてきてくれて』」

「たのしい……そうね。私も、──楽しかった。また明日ねウタ」

 

 ゆっくり優しく、2人の夜は更けていった。

 

 

 

 ◆オレンジの町を出たその日

 

 

 








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