新時代を、それでも   作:ずーZ

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うそかや……うそかや?うそかや……
イチャイチャはしてないからせーふのはず







24話 シロップ村

 

 

 

 

 

「ヤ、ヤソップさんに、是非によろしくお伝え下さい……!」

 

 別れ際カヤさんは顔を真っ赤にするほど力強く言って、私達は浴室のある洗面所前で別れた。

 

 ……そういえば。

 

 ピッカピカの鏡に浴槽にシャワーに……とにかく設備一つ一つを手に取る度に一頻り感動して。

 身も心もさっぱりした私は鏡を前に前髪を整え、髪型をいつもの通りにまとめながらふと思う。

 

 カヤさんに礼を言って洗面所に入った直後、扉の向こうからカヤさんが小さい声で「良かった」って呟いていたけど、あれははなんのことだったのだろう、と。

 

 その後。

 

 身支度を整えて食堂に戻ると、待ってましたとばかりにルフィが厨房に向けて騒ぎ、屋敷の人達もゾロもナミも皆が苦笑いする中で食事が始まった。

 食事の席は大盛りあがり。ルフィがいたらまあどこで食事会を始めたってそうなる。いつもそうだった。

 

「まった俺の皿から……っ! ちぃっ! あのなっ、いい加減食い過ぎだろってんだルフィぃいテメェッ! 1人でどんだけ大皿空ける気だ!?」

「んむがむがんんあにゃぐうぬん゛っ!!」

「なんだって言ってんだかわかんないわね」

「『まだまだ足りねェあと6食分 だって』」

「6だとっ!?」

「いやウタが聞き取ってる事には……今更ね、うん」

 

「コックが2人倒れたー! 誰でも良い包丁を握れるなら誰でも良いから応援を!! あぁあもう2人倒れた早くだれか、ああシェフぅううううーっっ!?」

 

 厨房の悲痛な叫び声。

 ルフィの勢いはある種の災害かなにかのように、厨房で腕を振るうコックさん達を襲ってついにシェフの人まで倒したらしい。

()()()はある大皿の中身を、種類も量も問わず()()で完食されてその上でお代わりを遠慮なく叫ばれるのだ。

 作る側も指示する側も追い付かないのだろう。

 ゾロはそんなルフィのハイペースに圧されて中々満足できずに悔しそうにしながら悪戦苦闘している。元々少食の私とまあそれなりに食べれたしというナミは、もう静観の姿勢だった。

 

 もうしばらくルフィはあのままだろうしな……。

 

 いっそ私が能力で黒子達を駆使して手伝おうか、と給仕さん達を見ながら立ちかけた所。

 

「客人になんてとんでもございません! このもてなしの席につきましては万事っ、我々にお任せをっ! その辺り厳にっ! 何卒よろしくお願い致しますっ!」

 

 風のように突然横に現れたメリーさんがそう言い切ると、鬼気迫る表情で厨房に駆け出していった。

 

 ……ところで私って無意識で今、手伝ってくる、とか描いてたり、して……ないな。

 これがお屋敷で訓練された執事の洞察力……!? 

 やっぱり格が違う……! 

 

 畏まっているのか叱られているのか分からない激しさに圧された私は、すごすごと席に座り直して、ちみちみと紅茶を傾ける作業に戻った。

 ふぁぁああー……。

 一口一口、いい香り、胸に、頭に、染みる、広がる風味……。

 

「お代わりぃいいいーっっ!!」

「だっかっらっ、ルフィぃテメェよぉおおーっ!?」

 

「いいぃぃいいやぁぁああーっっ!?」

「悲鳴を上げる暇があれば手と足を動かしなさい! 全霊でもてなせぇええーっっ!!」

 

「執事メリーなんだってあんなに気合入ってんの? この人達実際何なの……?」

「なんかの恩人としか言わないよな……?」

 

 あ、そうだ。

 

「『聞きそびれてたんだけど、ウソップは?』」

「ああ、そういえばそうね。ウソップならちゃんと怪我人らしく、まだ頭にも背中にも両手にも包帯巻いてるわよ」

「『後遺症とかは』」

「ないない。すんごい豪運よね、背中と手を切られてたけど傷口はまあ浅かったし、片手は爆弾でやったのに火傷程度で済んだんだもの。昨日家に帰って、たぶん今頃は準備よ準備──あいつね」

 

 ……ナミが話した、腹に決めたというウソップの決断。

 それを聞いて、これからの船旅がより楽しくなると私は確信した。

 

「うっはァ。すんげぇ勢いだなアイツ。あの勢いに勝つのは難しいな、飯済ませて来て良かった」

 

 あれ? 噂をすれば。

 

「へぇ、噂すると当人が来るっていうのは意外とある話なのね」

「おいおい俺の噂をしたらだって? バカ言っちゃいけねェよ、そんな事が本当に起きたら、世界中何処にだって俺様が行かねェとならねェじゃ」「はいはいそういうの良いから。ウタに用があるんでしょ?」

「ツレネーやつだなナミは! まあいいや、その通り」

 

 私に? 

 首を傾げた所で目が合ったウソップが「よ!」と気さくに手を挙げてきたので手を挙げて返す。

 

「へへっ! 元気そうで良かった。腕は平気なのか?」

「『そっちもねウソップ』」

 

 ご覧の通りとばかりに肩を回したり、大きく上下したりして見せる。

 嬉しそうに、そして呆れ気味に、何度も頷かれた。

 

「いやー、なんというか。昨日来た時にはもう傷口が塞がってるとか、なんかスゲェ話を聞いちゃいたからそんなに心配しちゃいなかったが。実際、全然平気そうで安心したぜ。理屈は気になるがまあ、良かった良かった!」

「『ありがとう! 用ってそれ?』」

 

 昨日もお見舞いに来てくれて心配してたってことか。

 ウソップだって怪我人だろうに、私と違ってまだ両手も頭も包帯巻いてるし。

 ふと周りを気にしだしたウソップは、騒ぐルフィ達の世話にかかりきりの給仕さん達を見ながら「あれなら何の話してるかなんて聞こえやしないか」と呟いて、改めて視線を向けてきて小さく頭を下げた。

 ?? なに? 

 よく分かんなくて首を傾げたら苦笑いされた。

 

「悪ぃ。いや、用ってのは見舞いもそうなんだが、要するに──ありがとうな、って、礼さ。ルフィ達にはもう言った。あとはウタ、お前の目が覚めたなら、お前には特に感謝してるって言いたくてよ」

「『やりたくてやったことだから、お礼なんて要らないってもう』」

「へいへい、ルフィ達にも言われたよ。けど、お前へのこれは別だ──俺と一緒に戦ってくれて、ありがとうウタ」

 

 晴れやかな顔が向けられる。

 あの海岸で初めて見た時とは、どこか見違えた気がした。

 

「『私の方こそ一緒に戦ってくれて、最後には助けてくれてありがとうウソップ』」

「おう。……まぁそんなところで、だ。さて用件は済んだ。じゃな、ウタ、ナミ、時間が合えばまた後でな」

「ええ」

 

 そう言ってウソップはカヤさんへ、そしてルフィ達に声をかけに行った後。

 そそくさと、忙しそうな足取りで食堂から出ていったウソップだった。

 

 騒がしかった時間が過ぎた食後。

 

 皆食堂で食休みしてる中、お茶すら飲めないくらい満腹な私は厨房に居た。

 案の定。メリーさん含むコック&シェフの人達が屍累々と倒れてる厨房で、せめてこのくらいはと、能力を使う。

 

 黒子達と音符と流線で、ひょいひょいと皿を洗っては拭いてそれとなく纏めてと、1人人海戦術を披露した。

 

 お食事という歓待は受けた。ただこっちだって数日お世話になってる身だ。

 これくらいの雑用働きくらいは任せてほしい。それに長年やってて慣れてるし。

 

 山のような洗い物を終えて振り返ったら、死んだ目だった皆さんが輝くような眼差しで見つめていて、背中がくすぐったくなりながら厨房を後にした。

 

「あれほどの洗い物が見る見る間に片付いていくとは実に素晴らしい手腕にござました。恥ずかしながら大変助かりました、ありがとうございますウタ様」

 

 幾らか回復したらしいメリーさんと一緒に歩いて。褒められながら、食堂に戻ってきた。

 そんな事を改めて言われると、さっきの事を思い出してしまう。

 また落ち着かない。うぅ、そわそわする……。

 

「お! 戻ったかウタ、あとヒツジのおっさんも」

「ご苦労さまメリー。……さっき厨房に()()()()()()()()時より元気そうね?」

「ええ。ウタ様の幻想的な皿洗い風景に、年甲斐もなくはしゃいでしまいまして。まるで魔法使いの魔法を見ているようでございました」

 

 そんな大袈裟なとついつい苦笑い。

 カヤさんキョトンとしちゃってるじゃんメリーさんってば……お嬢様ってどんな顔してても絵になるな。

 

「なんだ、魔女はウタの方じゃないの」

「『えぇ……なんか魔女って呼ばれ方は可愛くなくてイヤ……』」

「自分は呼ばれるのイヤなクセに私の事をそう呼ぶな……!」

「いや? ナミについては俺も魔女だと思うぜ、()だが」

「なによ!」

「よぉーし魔女ナミ! 肉出せ肉! 魔法の肉!」

「魔女言うなそして出せるかァ! ……っていうかあんたまだ食べれるの?」

「そりゃァまだ腹8分目だかんな」

 

 緩んでいた食堂の空気が氷のように冷えて固まっていく、気がする。

 分からないでいるのは、唖然とする面々に首を傾げているルフィくらいだ。

 怒ってたナミは顔を引き攣らせて、ゾロは声もなくドン引きして、私が相変わらずのルフィにやれやれとばかりに溜息をつく一幕だった。

 

 ……そしていよいよ、島を出るという話の流れになって。

 

 屋敷の玄関口に、手荷物を持って集合した。

 

「さてと、いくか!」

「考えてみりゃ、やっと、だな」

「そうね。昨日聞かされた時とは違って、今なら素直に喜べそうで楽しみ」

 

 なんだか皆、妙に嬉しそう。

 ウキウキしているルフィはわりといつも通りだけど。

 なにせゾロもニヤニヤしてる。なんでか私の頬をつんつんとしてから、ナミもニヤニヤとして。

 みんな期待しているような顔をしているのだから。

 

 その答えはメリーさんからもたらされた。

 

「では皆様、お待ちかねでございますね。先日お嬢様からもお話されました通り、皆さまを()()()()へとご案内させて頂きます」

 

 新しい船? 

 なんの事? と顔に出ていたのだろう私に、皆して悪戯っぽく笑みを深めるだけで教えてくれなかった。

 だけど、もしかして、という期待に胸が踊ってきた私はもう不満なんて無かった。

 だって元々、この島にはそのために訪れたのだから。

 もしかして、もしかして──()()なの? 

 

 

 

 ………………

 

 

 

「お? おぉ! うほおぉおおーっ!」

 

 案内で向かっている場所は北の海岸。

 もうすぐ森の出口が遠目に見える頃合になって、ルフィが歓声を上げて走り出した。

 ああ……ルフィにはもう見えたんだね。

 

「ふふふっ! 元気ですねルフィ様は」

「良かった。あんなに喜んで頂けるなんて、私まで嬉しくなっちゃう!」

「昨日お話をした時は心ここにあらずといった様相でしたが、……ふふ、今や心置きなく喜べる、という事なのでしょうね」

「そうね、ルフィさんずっとつきっきりで……あんなに心配してたものね」

 

 ……メリーさんと、手のひらサイズの小さな袋を持って歩くカヤさんの2人がルフィの後ろ姿を見て、微笑ましそうにしている。

 まったくもうルフィってば──い、いつまで経ってもガキなんだからっ! 

 

「アイツはガキ丸出しだな。ま、浮かれるのもムリはねェけどよ」

「ええ……でも意外ね? ウタは行かないなんて」

 

 もうっ! 

 

「『意外、とかじゃない! わたしはいつまでも、あんなガキじゃない』」

「ふーん? ──へーぇ?」

「っ……『あんましそこは見ないで』……〜っ」

 

 私の頭の方を見ながらナミはニヤニヤとした。

 うう、見られてるって意識すると……頭の後ろが揺れてる感覚が何となくする。

 

 落ち着け落ち着け、ルフィみたいに、あんなにはしゃぐなんて──そう、レディとしてみっともない! 

 カヤさん、そうだそこのお嬢様の、お嬢様のあの品のある落ち着きを、将来のお手本がすぐ傍にいるこの今こそ! 

 

 レディとしての落ち着きある心を私も得る時なんだ! 

 

 レディ、そうレディ! コルボ山で一緒に過ごすうちに忘れてしまった嗜みを思い出すの。

 いつまでも楽しそうなことに頭から飛びつくようなルフィとは違うって、ここでまずは証明しないと!! 

 

「ウタァァアアッッ!!」

 

「あ? なんだルフィのやつ戻ってきたぞ」

 

 森を抜けようとしたその時、猛然と引き返してきたルフィが叫んだ。

 ほんっとに落ち着きって言葉とは無縁なんだから、幼馴染として恥ずかしく──「ウタッ!!」……もうなによ? 

 

「おもしれェぞかっこいいぞ! 船がヒツジで! ヒツジが船でよぉーっ!」

 

 ──。 

 ──。

 ……。

 …………っ? 

 ………………ッハ?! 

 

 私は海岸にいた。

 

 そして目の前には愛らしいヒツジの船首が印象的な、立派なキャラベル船が存在している。

 そして私はクロと戦っていた時に編み出したあの音符のブーツを履いている。ちょっと疲れてる。消した。

 そして私はたった1人で、周りにはまだ誰も居ない。

 

 あれ──あっっれーっ?! 

 

「うっほー! すっげェなウタ! めっちゃくちゃ速いし、空も跳べんのかよお前! すんげぇえー!」

 

 大きな声ではしゃぎながら、飛び降りてきたルフィが私の隣に歩み寄って来た。

 

「うっわぁもうあんなとこに。速かったわねェ、走り出したらというか跳び始めたら。ルフィも跳んだけどそれとは違って鮮やかだったというか」

「ウソップが言ってたのはアレか。確かにとんでもねェ機動力だったな」

 

「ルフィさんもウタさんも、驚かされてばっかり! 今日だけでもの凄い体験をした気がするわねメリー。特に跳び出したウタさん、まるで足に羽が生えたように宙を駆けていて、素敵だったなぁ……」

「空をも自在に駆ける、人が空を舞う姿を見れるとは、なんとも稀有な体験でございましたねお嬢様」

 

「早く来いよゾロー! ナミー! おーい! ……しししっ! あいつらやっときたな、ってどうしたウタ?」

 

 服が汚れるなんて厭む余裕もなく突っ伏していた。

 坂をゆっくりと降りてくる皆を呼んだルフィが、ふと振り向いてなんか話しかけて来てるけどそれどころじゃない。

 

 ──レディ……れでぃ……ぅぅううぁぁああぁぁああ……っっ! 

 

「『なにこのヒツジさんかっっわぃぃいいっっー!!』」

 

 ──ってなんだよそれっっ!? もう……っっ! 

 

 さっきルフィが叫んだ後、能力を駆使して全速力で今いるここに来て船を見てそんな風に興奮して考えながらってかたぶんデカデカと能力で描いてた気がするというかしたしそのまま身悶えしてたぁぅうぁぁああ……っ! 

 

 徐々に衝動的に何をしたか思い出して悶絶してる内、みんな近くにやってきた。

 

「皆様にお贈りするこの船は些か古い型ではございますが、それは即ち、長年に渡り海を渡る者たちに愛用されてきた信頼の厚い型、とも言えます。こちらキャラベル船、ゴーイング・メリー号でございます」

「ゴーイング・メリー……くぅううっ! ほんっとにこれもらって良いんだよな! な! あっっりがとうなお前らぁあっ!!」

「ええ、ええ! 是非にお使いください!」

 

「本当にキャラベルを貰えるなんてね。事前に話だけは聞いたけど、状態も最高でさすがお金持ちって感じだったし。──ふふふ、でー? 間近で先に見てたウタ()()()はどう思ったのかしらー?」

「──ははっ、門外漢の俺から見ても良い船だが、ウタ()()()から見たらどう映ったのかは俺も気になるなァ? んん?」

 

 突っ伏したままの私の頭の上から、左右から声がする。

 見なくたってどんな顔してるか分かるぅぅ……っ!! 

 

「『いい、ふね』」

「なにこのヒツジさん」

「かわいい、だったか」

「違うわよゾロ、かわいい、じゃなくて。かっっわいい、って感じよ」

「そうだったか。ま、楽しそうで何よりなこったな」

 

 ──ぷぁ゜。

 

『なにこのヒツジさんかっっわぃぃいいっっー!!』

 

 ──は、は、恥ず、恥ずか死ぬぅぅうう〜っっ!! 

 

 “…………ぁあ”

 

 ん? 

 悲鳴が聞こえた。

 それが段々と迫ってくるように感じて、何かと思って立ち上がっていた。

 

「どうした?」

「ウタ()()()?」

「『何かこっちに来る、というかもう』……〜っ!」

 

 まだニヤついてるナミに詰め寄って目を睨んだ。

 

「はいはいごめんごめん。それで来るって何──」

 

「あ゛あ゛ああ゛ああ゛ーっっ!!」

 

「『あ、来たあれあれってウソップじゃん』」

「なんだなんだゴロゴロ来てんぞ?」「……ありゃ直撃するな」「ウソップさん!?」

 

 森を抜けて坂をゴロゴロと転がってくるウソップ。

 もの凄い勢いで大荷物と一直線に転がってくる……どうやったらああなるんだろう。ヤソップにあんな属性はなかった、あるとすればシャンクスとかルゥとか……いやなに考えてたんだろ私。

 

「『ちょうどいいから任せて』」

「あん?」

「ウタ?」

 

 転がってくるウソップを体を張って止めようとするルフィとゾロの前に出る。

 あれを止めるならちょうどいいイメージがそこにあるし、大きなものを作る機会なんて早々ないからお試しお試し。

 

 この帆船の帆を、そのまま転がるウソップの進路上に……! 

 ぐんっと身体から“力”が一瞬大きく抜ける感覚の直後。

 無数の音符が転がるウソップの進路上に密集し、大きな帆が中空に貼られるようにして現れた。

 

「ぶふぉおっ」

 

 大回転していたウソップが私の作った帆に、ぼふーんっ! と柔らかく抱き留められる音を立て、帆の真ん中まで転がり上がったのか、布地が大きく丸々と張り詰める。

 

「た、たすか──ぐべっ」

 

 そこでしばらくして。やがて回転が止まったウソップがボテンッと帆から転がり落ちた。

 

「おお」「便利なもんよね」「おほおー! これフッカフカだー!」

 

 気付いたらルフィが飛び付いてはしゃいでるけどそれそろそろ感覚的に「ん? ──っとと。あり? ちぇ、消えちった」あ、やっぱり消えた。

 

「いやはやつくづく魔法のようだ……お嬢様」

「……うん、()()()

 

 カヤさんのその声が震えていると、すぐに気づいた。

 ……ゾロとナミは船に乗り込んでいる。

 私は、目を回してるウソップを起こしてるルフィに近寄る。

 振り返ったルフィの手を引いて、「ん? なんだウタどうした?」と言われながらも静かにと人差し指を立てて示しつつ、私達もそっとその場を後にして乗り込んだ。

 

 ……カヤさんは、厨房で熱心にオーブンを使って何かを作っていた。

 屋敷で、最初にルフィと厨房に突撃した時にその様子が見えた。

 私を洗面所に案内した後も厨房に戻ると言ってたし、食事の席では屋敷の主人として顔を出しつつも、度々席を外していた。戻ってくる度、甘い焼き菓子の香りを漂わせて。

 

 ここまでも、大事そうに両手で持ち歩いていた小さな袋。

 

「ウソッ──コレ、──まり上手くは──」

「──ぇ──ヤが──を──」

 

 カヤさんが差し出すその袋を、ポカンとした顔で見詰めるウソップ。……その傍らにある溢れんばかりの大荷物を、能力でこっそりとメリー号に転がして積んでおいた。

 

 手作りなんだから大切に受け取りなよ、と思いつつ、離れてるけどぼそぼそと聞こえてくる会話の内容はヘッドホンをキツく締めて今だけ聞こえないように。

 ナミは当然、メリーさんもそしてなんとゾロも見ないふりをしてる。ん?なんと、ってなんで思ったんだろ。

 

 ウソップが中々来ないからそわそわしてるルフィを捕まえて「んえウタなにふんむむむ?」はい私が目隠しして口を塞いどくから、静かにして海側で話が終わるの一緒に待ってようね。

 

「ぶはっ。いきなり目も口も塞ぎやがって、何すんだよウタ」

 

 不満ありありといった様子のルフィに、手振りで謝って。

 すぐにルフィがウソップを呼びに戻らないよう、その手を握って掴まえる。

 

「うん? んー、なんでだか今のウタはわかんねェな……」

 

 かと言って私の伝えたい事を聞き出そうとするでもなく、考えるように唸りながら手を握り返すルフィ。

 

 うんうん唸ってるルフィに何か聞かれる度に首を横に振っている……だって。

 

 なんでウソップから遠ざかったのかについては私自身よく分かってないし! 

 私に分からないんだもん、ルフィに分かるわけない! 

 

 んー……離れ離れになるから別れの挨拶をゆっくりさせてあげ……でも別にメリーさんまで離れて2人きりにする必要もない。

 私もちょっとくらい話したいことカヤさんにあったから、やっぱりあの場で一緒に居ても良い気がする。

 

 だけどもやっぱり、2人だけにするのが正解だと自然と思う……なんでかナミに聞こうかな。でも聞いたらまた子供扱いされる気がしてならない。

 

 ジレンマだ……。

 

 向き合っていたウソップとカヤさんの姿を思い返してひたすら、表面上は何食わぬ顔でなんで気を遣ってるのか考える。

 ふと、そういえば最近こうも握ってなかったルフィの手を、なんとなく強めに握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 










ほんとに。あとはメリー号まえでウソップと合流するだけまで書いてたんですよ今朝のうちにはマジで。夕方からちょこちょこと手を入れていって、少し寝かせて、風呂上がってまた手を入れてたらこんな時間ですよ。ははっ──妄想楽しー!!!!!!!!!
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