新時代を、それでも   作:ずーZ

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短編だけなのもアレなのでストック投下。ほぼ原作のまま。


26話

 

 

 

 

 

 

 

 外の男共の喧騒を扉で遮って。

 船室にて。ナミと向かい合わせに座って2人きり。

 カヤさんからの頂き物の、とっってもいいハーブティーと美味しーい茶菓子で、マッタリと過ごしている。

 静かで落ち着く……のはいいのだが。

 茶菓子も出したのにルフィが来ないというのは、どうしても気になった。

 

「『ルフィ達まだあいつと居るのかな?』」

「ゾロもあっちもお互いを知ってる風な会話してたし、海の上で偶然再会できたのなら積もる話でもあるんでしょ」

 

 ルフィとウソップも興味本位で聞いてるんじゃない? という推測に、そういうものかとこくこく頷く。

 ゾロの知り合いだったなら、私が敵襲かと逸って飛び出さなきゃもっと穏便に済んでたかもしれない。

 襲われた以上、別に謝る気はないけど。

 

「『そういえばなんで襲われたんだろ。恨み満載って顔して叫んでた割にはこっちのこと何か知ってる訳でもなかったし』」

 

 誰かの名前も言わなければゾロが乗ってる事も知らなかったし。そもそもこの船だって乗り始めたばかりだ。

 襲われる理由に心当たりがない。 

 

「──海賊旗を掲げてたから、とかじゃないの」

 

 ナミは、興味なさげに言うとカップを呷った。

 そっか。海賊として旗揚げした以上、それだけの理由で襲われるようになったってことか。

 こういうことも増えるのかなーと私もカップに手を伸ばした。

 

「ウタァァアアーッッ!!」

 

 そんなのほほんとした空気を壊したのは、大砲の音にも勝るようなルフィの大声だった。

 

「え、なに?」

 

 轟いたルフィの声に、2人で何事かと固まる。

 次の瞬間。

 

「うぅあああーっ!!」

「ぎゃぁああーっ!?」

 

 扉を吹き飛ばしながらルフィが転がり込んできて、突然の事に私も、ナミは叫びながら驚いて椅子から転がり落ちた。

 なに!? なにごと!? 

 へたり込んだまま顔を上げたら、床に手を着いたルフィの目と目が合って。

 

「ウタァァァアアッッ!!」

 

 叫びながら飛びついてきたーっ!? 

 い、勢いが怖いっ! なに!? 

 ガシッと腰と肩に手を回されて横抱きに……屋敷で怒らなかったから無理やり運ぶならコレで良いのかって覚えたなさては……そのまま真剣な顔でまくし立てられる。

 

「ウタ! ()()()()()()()! 俺と来てくれっ!」

 

 そこまで力強く私が必要だなんて──何か()()()()()()()ってことね。

 

 ハイハイとばかりにこくこく頷く。

 ルフィに抱かれたまま船室を飛び出す直前に、しょうがないからちょっと行ってくるーと伝えるつもりで、何でか口を手で覆って目を見開いているナミにひらひらと手を振った。

 

「まだ生きてるか?!」

「ああまだ生きてる!」

「ひっぐ、くぅ、そんな腕っ節の強い女連れてきて、い、今更何しようってんだぃ、くそ……!」

「ジョニー……っ」

 

 ルフィに任せるまま連れられたそこはメインマストの傍。

 ゾロとウソップの他に、どうやらゾロの知り合いらしい私を襲ってきた男ジョニーと、もう1人見知らぬ男が横たわっている。

 

「……ぇが……ふっ、ぅ゛ぅ……」

 

 半袖短パンのラフな格好の上にロングコートを着込んで、丸刈り頭にバンダナを巻いているその男は、血を吐きながら青い顔で苦しそうだ。

 とりあえず、ルフィの腕から下ろしてもらって、と。

 

「ウタよぅ、戦友よぅ、お前が頼りなんだよぅ俺達っ」

「頼むウタ! こいつを救ってくれー!」

 

 ええ、と、さ? まずはね? 

 

「『状況説明してくんない?』」

 

 何もしようがない。

 

「っぐ、ずずっ……へへ、ゾロの兄貴ぃ、疲れちまったのかな俺ァ。宙に文字が見えらァ、へ、へへ──文字が宙に浮かんでるぅうう!?」

 

 そしてそこのサングラスは少し黙っといてくんないかな。

 

 鼻をすすりながらルフィとウソップが話し出す。

 さっきやってた大砲の練習で? 

 的にして破壊した小さな岩場があって? 

 そこには実はコイツらがいて? 

 ただでさえ突発的な病で苦しんでる男(ヨサク?)がさらに瀕死になっちゃって? 

 病気ならって色々勉強してた私の事を思い出したのがさっきのルフィで? 

 

 そして今に至ると……ああそれでジョニー? はあんなに怒ってたのか。

 直接私は何もしてないけど、この船からの砲撃が原因ならそれは私も間接的には悪かった。

 襲われた以上謝る気はないけどね! 

 

「どうしようっ!?」「どうすりゃいいっ!?」

 

 ルフィとウソップはオロオロと慌ただしく頭を抱えて、意外な事にゾロも焦った顔で呆然と立ち尽くしている。

 ふと気付けば、ナミが2階部分の手すりに手をついてコッチを伺っていた。私と……ルフィかな? をチラチラ見比べてこの状況を見て、何かに気付いたらしいハッとした顔、そしてそこから疲れきった表情になったなと思ったら天を仰いでいる──よく分かんない仕草だった。

 そんな百面相みたいなことしてるくらい暇ならこっち来て私と代わって……料金コイツらから踏んだくれば良いよもう。

 

 ひとまず状況は分かった。

 私に求めてるのはこのヨサクって人の……出血の仕方に心当たりを感じる……この症状を何とかできないかって話ね。

 

 ナミを手招き。ちょっと知識を貸してほしい。

 ウェストポーチから手帳とペンを取り出してサラサラと。

 

「〖勉強したからコレの知識はある、合ってるか確認お願いしたい〗」

「急に呼んだかと思えば遠慮なく頼ってくるんだから、まったく。まあそういう事ならOK」

 

 航海術のお勉強をする時みたいな顔つきになって、ナミは頷いてくれた。

 

「『ジョニーだっけ?』」

 

 〖症状と経過は?〗と書いて尋ねる。

 

「……え? あ、ああ? アンタのそれは」

 

 能力の文字が気になってるみたいだけど気にしてる場合じゃないでしょう? 

 

「『助けたいんでしょ? 今は気にしないで早く言って』」

「! わ、わかったっ。ヨサク、俺の相棒は──」

 

 つらつらとジョニーの話を手帳に素早く書き込んでいく。

 淡々と、端的にいつからか、どう出血していったのか。食べていた物なんかも聞いて。

 

「〖壊血病!〗」

「正解! じゃあ今できる治療法は?」

「『この船なら』〖キッチンのライム!〗」

「大正解っ! ほーれウターよしよしー──何ボサっとしてんのよ? ウソップ、ルフィ、アンタらが招いた事態なんだから動く動く! とっととキッチンのライム取ってきなさい」

「ああ!」「よし来た!」

 

 あああああ撫でられるーにやけちゃうー、えへ、えへ、えへへへへ。

 

「こっの……! 俺の相棒がピンチだってのに、なにをジャレあってんだよアンタらはよっ!!」

「おいバカ邪魔してやんなジョ」

 

 閃かせるように右手から流線を放ち、()()の爪先から口までぐるぐるぐるぐる簀巻きにして転がした。

 

「……~!? ……~!!」

「言わんこっちゃない……しばらくはそんままだ、諦めろジョニー」

「!?」

 

 

 

 ………………

 

 

 

「治ったァああーっ!」

「ヨサクぅぅぅ!!」

「数日かかるもんがそう簡単に治るかぁああーっ!!」

「すんげぇええーっ!」「奇跡だ、奇跡だぁあーっ!」

「……ありがとうな、ウタ。ヨサクを助けてくれて」

「……『あそこまで助けたつもりはないんだけど』」

 

 即席のライムジュースを飲んだ途端、有り得ない早さで目ざましい快復を見せたヨサクは、ジョニーと肩を組んで踊り出すほどはしゃぎにはしゃいで。

 

「申し遅れました兄貴方姉貴方、改めて俺の名はジョニー!」

「もうダメかと諦めておりやした所を、助けて頂き感謝の想いが絶えやせん! どうぞお見知り置きをご恩人方! あっしは相棒ジョニーの相方、名はヨサぐーぅうぷぇえっ!?」

「んなあ相棒ー!?」

 

 そしてヨサク改めヨサぐーぅうぷぇえっ、彼は自己紹介の最中にやっぱり治ってなくてまた血を吐いて倒れ、それどころじゃなくなった。

 

「今日のコレは教訓ね」

 

 ヨサク(ヨサぐーぅうぷぇえっ)の、あんな病気は海に出るなら付き物。

 ああならない為にも、栄養管理と食材管理をしてくれる新しい仲間、海のコックを探しに行こう。

 

「海のコックかァ。ウタも腹いっぱいになるまで食っちまうようなうんめェ飯、作ってくれるヤツが仲間になってくんねェかな~」

 

 海を見ながらしみじみボヤくなハッキリ聞こえてるよ皆に……! 

 私の体の事を相も変わらず考えて、そうやって気にされてるのも分かってるし、気にしてくれてて嬉しいけどさあ!! 

 

「ふーん? だ、そうだけど?」

「ふーん? だってよ?」

「……あんま心配かけてやんなよ」

 

 1人ゾロが真剣なせいでニヤついてる2人に不満を向けられない……!?

 ……いっぺんに量を食べようとすると喉が疲れて食べれないのがな。おかげで体付きも小さかったり細かったりで、切ないものだ。

 こんなだから、ルフィには昔から心配かけている。

 食事量まだ増やすか、それとも回数増やすべき? 

 

「……なあナミ乗っといてなんだがどういう意味だ?」

「アンタね……まあそのうち解るわよ」

「? そうか、ならいいや」

 

 と、ともあれ。

 

 そんな方針が決まったはいいけど……海を渡る人間にとってそんなに都合のいいコックさんなんているの? 

 ヨサクを寝かせてきたジョニーが、失礼しますと話に割って入った。

 

「皆さんは海上レストラン、バラティエという場所をご存知ですか?」

 

 渡りに船のような情報に、私達は飛び付いた。

 一路、海のコックが仕切る店。海上のレストラン、バラティエへ向かうことになった。

 

 着くまでだいたい2~3日かかるらしい、となれば。

 

 ものすごく楽しみなそこへ行くまでの間に、忘れないようにやることがある! 正確には話をつけておくこと!

 

 自分で景気よく壊した扉の修理に苦い顔をしてるルフィに、なぜか少し嫌な予感を覚え首を傾げながらも「『後で手伝ったげる』」、と伝えた後。

 船室の裏、船尾側の甲板に向かう。

 なんだか調合作業をしようとしてる、そこのウソップー! 

 

「『ウソップ! あのパチンコ、教えて!』」

「いきなりだなっ!? いやお前ナミから棒術指導してもらっておいて、今度は俺様からパチンコ~? おいおいおいおい、おいおいおいおいおいおい! ウタく~ん? 俺のコイツぁな、一丁一石で出来るような舐めた武器じゃあないんだ、ぜ?」

 

 夕飯まで棒捌き復習しよっと。

 ええっと、振り下ろしと踏み込みのタイミングってどう合わせるのがいいかな。

 こうかな? それとも……。

 

「こら待てえいっ! 勢いよくせがんできたのにアッサリと離れんなよ! そこはもっと食い下がれよ!」

 

 めんどくさー。

 顔に遠慮なく出したらウソップはたじろいだ。

 

「ぐ、わ、悪かったよ茶化して。けどよう、ナミから棒術教わるのは分かるが、俺からパチンコ習ったとしてお前の能力とだとどう合わせるんだよ。想像できねェぞ」

「『この流線で拘束して』」

 

 そこを、どかーんっと撃ち抜く! 

 

「身動き出来なくした相手にエグいこと考えてるな……。というかクロと戦う前に話してたが、あの光る線ってそんなに射程ないんだろ? 届く距離なら拘束したあとにトドメって言うなら、その棒とかでぶっ叩きゃあいいじゃねェか」

 

 それもそう……そしてあるいは上から落とせばいいと我ながら思う。いつか倒した猛獣使いみたいに。

 上……、空! 

 はっと閃くものがあって空を指さす。

 

「『空から撃つ!』」

「へーつまりパチンコと棒の両方を持ったまま空を飛ぶのか。そんなんで狙えんのか? 能力使いながらで体力はもつのか? 玉落としたりしないか? 棒だって落としかねないな?」

 

 むむむ、むむむむむ……っ。

 指摘が確かで反論できない……! 

 

「その我流の棒術を物にしてそれでいいじゃねェか。近接武器なら動けなくして叩くもよし、あるいはあの移動技と併せりゃそんだけで強力だろ?」

 

 クロと戦った時みたいに翻弄してシバキ倒せ……そう、それは、そう。そう、なんだけど。

 

「『でもやってみたいの! お願い!』」

「ええ? 見てくれの割に頑なな奴だな……。仕方ねェなあ、そこまで言われちゃ。分かったよ」

「『ありがとーっ!』」

 

 いぇーい! バン「ぐへっ」ザーイ! 

 え、あ。

 

「ぼう、もったまま、いきなり、てを、あげるな……」

 

 ごめん。

 完っ全に棒で殴った私が悪いので、顎を抑えて震えるウソップにペコペコと謝って許してもらった。

 

 なお。

 

 扉を修理していたルフィだけど、むしろさらに壊した。嫌な予感はこれだった。

 1人で直すのは難しいだろうなとは思ったけど、まさか壊すとは思わなかった。

 ……レストランに着くまでに、私と一緒に直そっかルフィ。

 

 

 

 







ツギハギ修理ならともかく、扉みたいな仕掛け仕組みのあるやつはむしろ壊しそうなルフィとウタ。よって見かねたウソップが結局腕を振るうことになったり。
ウタはアクセ作りとか裁縫とかなら昔からやってる。
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