女々しいウタと雄々しいウタが混在してて筆が迷った1週間だった……女々しすぎたのはチラ裏に流すんだ……
「まずい、表にはメリー号が!!」
「ナミもヨサクもジョニーも、あいつら船に乗ったままだぞ!!」
ナミ……!!
音符を脚に、ガレオン船が破壊された衝撃で揺れる船内を駆ける。
いち早く動き出したルフィに並ぶようにして、追い抜いて、外へ飛び出す。
急加速と急旋回で、メリー号を留めてあった場所に急ぐ。
早く、速くっ!
「──?」
……あ、れ?
「?」
ない。
今朝まで、私が降りた所にあったはずのそこに、何もない。
空っぽの船着き場……ナミは? メリー号はどこ?
「ウタ!!」
「おいおい船はどこだよっ!?」
「あいつらはっ……!?」
音符のブーツを解除してバラティエの欄干に掴まった所で、後ろからルフィ達が追いついてきた。
「あに゛きーっ!!」「あ、あねぎこ゛こ、ぼごへ゛、ずっっ!!」
足下付近からバシャバシャと水が跳ねる音と声に振り向いて、反射的に流線と音符を使ってヨサクとジョニーを引き上げる。
水を吐きながらうずくまる2人は苦しげな声で「すみ、ま゛せん゛っっ!!」と叫びながら謝りだした。
「ナミの姉貴に、宝と船を……っ!」
「……両方とも奪われて、逃げられましたぁあっっ!!」
──なに、それ。
皆が驚きに叫んだ。
そんな私達へと頻りに謝りながら、ヨサクとジョニーは端的に、2人揃って不意に海へ落とされた事と去り際のナミの様子を話していく。
詳細を聞く時間はないから分からないし、悔やんでるのは見てれば伝わって来るのだけれど……正直呆れた。
何をしてたら2人揃って船から突き落とされるような隙を晒すの? ホントに賞金稼ぎなの?
ゾロやウソップがあの女……!! と憤って、ルフィは海を見渡している中、私は立ち竦んでいた。
仲間になった覚えが無い、なんて言ったのか。
『いってらっしゃい』
メリー号の上で、私を見送ってくれた。
ひらひらと、ナミは私に手を振ってくれた。
いってらっしゃいって、言ってくれたじゃんか!
そう送り出してくれたのに、なのに、なのになんでだよ──寂しいじゃんかこんなの。
「──て。
ルフィのその言葉が、はっきりと聞こえた。
示された方角に目を凝らす。
『完成だな』
『海賊船ゴーイング・メリー号!!』
……つい先日、皆で見上げたその柄の帆が見える。
麦わら帽子を被ったドクロの絵が、あの船が見える。
メリー号がまだそこにいる。まだあそこにはナミがいる!
私なら、
「ウタ! 行けるか!? 届くか!?」
振り返ったルフィに、大きく頷く。
あったり前じゃん、届かせるよ絶対!
「そうかウタなら飛んでけるのか! よっしゃいけウタあいつをふん捕まえて船を取り戻してくれ!」
「まじすか!?」「と、とぶ……?」
「待て馬鹿野郎っっ!!」
ぐえ。
息を整えていざという時、ゾロが私のコックコートの襟を掴んだ。反射的に暴れたけどビクともしない。
知ってたつもりだけど力強ぃ……ってかなによなんで止めるのっ!?
「何すんだゾロ、ウタを放せ!」
「放せるかっ! お前も暴れんな! 冷静になれっ! 飛んでいって追い付いて、その後のこと考えてねェだろっ!?」
「その後ってそんなのナミとメリー号を連れ戻すだけだろうがっ!」
私越しにゾロへと食ってかかるルフィにそうだそうだと私も頷く。首、くるしい……。
「馬鹿! いいか、一味の船を丸ごとかっ払っておいて、拘束に特化した能力者で操舵の技術もあるウタに、裏切った海賊に追い付かれたアイツがウタを排除しない理由があんのか? ましてやこの遠距離を追い付こうってんだ、疲労で弱るのは明白だ。クタクタになった厄介な敵を見逃す道理がどこにある?」
──っにを淡々とバカバカしい事を話してんだコイツッ!!
「『なんでナミがそんな事するって思うのさ!? まるで敵みたいに言わないでよ!!』」
「みたいじゃない、アイツは敵だ。今言った通り、ここまでのことをしでかしたんだぞ」
「『敵じゃない! だってナミだよ!? これまで傍にいたナミをそんな風に言うな! なによシロップ村では一緒になって私の事からかったりしてたくせに! 海賊船になったばっかりのメリー号でだって騒ぎ合ったくせに!』」
「──それが、なんだ」
「『あんな風に一緒になって笑っておいて、楽しくなかったって言うの!? これまでのナミがウソだったと思ってんの!?』」
「……。ウソでもなきゃ、こんな事しねェだろっ」
顔はよく見えないけど……なんだ、ちょっと声だけは苦しそうじゃん。言葉に詰まってんじゃん。
そんな風になるくらい、本心でそう見てた訳でもないのにコイツは!!
「……、っ『そんなに言うなら、今まで一緒に過ごしたナミの姿が、あれは全部嘘だったとでもはっきり言ってみなよ!!』」
「──っっ!! だからってお前1人で行かせられるか! もしも俺が正しかったらどうすんだお前はっ!?」
まだ言う!?
「『だーかーら! そんな事ないって私がずっと話してるでしょいい加減に分かりなよこの頑固者!』」
「頑固はどっちだっ! 俺が正しかったらどうするのかって聞いてんだよ、見てくれ通り頭の中身もおめでたいってか紅白頭っ!?」
「!? 『こうはく!?』っ!?」
あ゛あ゛!? なんか思い出したくない呼び方を……!
よりによって私の自慢の髪色をこのっ、このォッ──ああ動きを抑えられてなかったならグーパンしてやったのにこのぉぉお……っ!
「『最低、最っ低! 女の見た目をバカにするとか脳みその代わりに苔で埋まってんじゃないのあんたのその藻だらけの頭ん中さあ!』……っっ!」
「あ゛あ゛? てんめェ、あの泥棒女にけじめ取らせる前に「おいお前ら、もういいだろ」……ルフィ」
いつの間にか私達の傍を離れていたルフィが、イヤに冷静な声で割り入ってきた。
「ゾロ、ウタの言う通りだ、ナミは敵じゃねェ。あいつは俺たちの仲間だ」
ルフィ! さっすが私の幼馴染! よく言った!
「ルフィ、そりゃ甘っちょろっ「でもよウタ」……こいつ」
え?
「ナミは敵じゃねェ、けど、今のアイツは必要だと思った事ならするやつなんだ。それこそゾロの言った通りの事だってよ。だってそうでもなきゃ、まずこんな事しねェんだ」
私も、ゾロも、押し黙った。
そこでようやく襟首を放されたけれど……さっきまであった、ナミを追わないと、という気持ちが揺れていて。今すぐ飛んで追いかけよう、とは考えられなかった。
“敵じゃない、けれども、襲ってくる"。
ルフィの言ったその言葉は、この状況を考えると否定出来ない。
考え過ぎると泣きそうなくらい、ナミと離れたくない気持ちは変わらない。
けれども。
今すぐ私1人で追って、もしもナミが私を襲う事があれば?
ナミがそんな事をするなんて考えたくもないし、そもそもナミに
だけど。なりふり構わないでいるのなら、そうなる可能性は確かに考えられて──じゃあ、どうするの……?
「ルフィ、ならナミのことは放っておくのか?」
追うのか、追わないのか。
私にも浮かんでいる疑問をゾロがぶつけた。
「いんや? ──ヨサク! ジョニー! あとウソップ、行けそうか!?」
ルフィが声をかけた先には、私達が口論してる間にだろう、ヨサクとジョニーが彼らの船に乗っていて。
親指を立てる彼らの横には、不貞腐れた顔のウソップもいた。
「バッチリですルフィの兄貴!」
「いつでもいけやすぜ!」
「おまけみたいに言いやがって……話し終わったなら早くしろ見失っちまうだろ!」
出航準備万端の様子と、ウソップの言葉で察した。
ああ──よかった!
「追うってことか。……俺としちゃ、放っときゃいいだろって思うのは本当だぜルフィ?」
……っとにこの男は、さっきから素直じゃない言い回しばっかして!
振り返ってゾロを睨めつけたら、睨み合いが始まった。
そうだよさっきの暴言忘れないからなこの……!
「俺はナミがなんでこんなことしたとか、敵だとかそうじゃねェとかどうでもいいんだ。だってあいつは、俺の仲間なんだ」
だから、と続けるルフィに、私はまた振り返った。
「ぜってェにナミは連れ戻す! そんで一緒にメリー号も取り戻す! 俺はあの船じゃなきゃ、ナミが航海士じゃなきゃ──イヤだ!!」
……なんか久しぶりに、呆気に取られちゃった。
「さっきも聞いたがとんでもないわがままだよなァ、うちのキャプテンはよ」
「……まったくだ。世話の焼ける船長だよ」
「あ、俺はここであいつとこの店のことでケリつけてから行くから、よろしく」
「──まあそうなるか。わかった、気をつけろよ」
まあ海賊王になるのは俺だ、って啖呵きりあった相手とはケリをつけたがるよね。
それにお店の件もちゃんと話つけないとだし。
ただ、となると。
「『じゃあ私もルフィと後から皆と合流ってことだね』」
なんで? というゾロとウソップの疑問顔。
実は他にも理由があるけど、今にそぐう最もな理由を1つ挙げるとカタがついた。
「『航海術』」
ヨサクとジョニーが数秒かけて理解して顔を引つらせて、ウソップとゾロは深く頷いた。
それだけじゃないけど、だいたいそういうことなんだ。
そうして。
話がまとまってきた時、大勢の野太い悲鳴が上がって私達の視線はそこへと、もう元の形も分からないくらい破壊された巨大ガレオン船へと吸い寄せられた。
そして、その騒ぎの渦中にいる小舟……そこに乗る1人の男の人が現れると。
「……まさ、か、あれが……!?」
私の隣でこんな時だって言うのにほとんど平静だったゾロの顔色が、みるみるうちに変わって蒼白になっていった。
………………
「おい、いいのかよ、船がほとんど見えなくなっちまうぜ?」
わたしもそーおもう。
思うけど、じれったいけど! ……こればっかりは、止められない。
ゾロの野望のためだもの。
固唾を呑んで見守っているヨサクとジョニー。
彼らの船の上で、私達はゾロが“鷹の目の男”、と呼ばれる男性に語りかける様子を見詰めている。
クリーク達もバラティエのコックさん達も息を潜める中、この場の全員の視線を集めて。
ガレオン船の残骸を足場に、彼らは対峙していた。
黒のテンガロンハットのようなものを被り、ノースリーブの黒いコートを羽織る男は、ゾロに決闘を申し込まれて背中のまるで十字架のような形の大刀を──え?
黒を基調とした大刀を抜くのかと思いきや、胸元の十字架みたいなネックレスから小さな短剣を取り出してる……いやあんなの果物ナイフみたいなもんじゃない!?
あんなものでゾロと戦うのあの男!?
「あ、あんなんで兄貴に!? ふっざけんなよ鷹の目ェエッッ!!」
「やっっろう舐めやがってよォ! 構うこたねェ、やっちまェ兄貴ィッ!」
ゾロを信奉する2人ががなりたてた。……気持ちはちょっとわかる。さっきの悪口がまだ尾を引きずってるから、ほんのちょっとだけだけども。
ゾロが負ける姿なんて……相手がシャンクス達とかでもない限りは……想像できない。
だけど。
──初手から、果物ナイフのような短剣で、ゾロの必殺技のような攻撃を易々と受け止め。
だけど。
──刀3本の乱舞を、傍目からは優雅に舞うようにして捌いていく。
だけど。
──初手と異なる必殺技は太刀筋を見切っていなし。逆に心臓スレスレを突き刺した。
だけど、圧倒的だった。
ゾロの腕力は物凄い。つい先日に『その体全部筋肉で出来てるの?』って聞いたくらい、相当なもの。
なのに。
あの腕で振るわれる剣があんなモノで尽く防がれて、それどころかたった一突きで勝負を決めかけた光景は、あまりに冗談じみていた。
ゾロは強い。私じゃ測りきれないくらい強いのに……!
あんな風にあっさりと──あれが鷹の目、世界一の剣士……っ!
「あ、あにき」「あ゛にぎ……!」
「耐えろ、耐えろお前ら……!」
ルフィは途中から、飛び出そうとするヨサクとジョニーを抑えていた。
でもルフィも、ゾロが胸を一突きされた時、この2人が居なかったら飛び出したと思う。──私だって、ルフィが飛び出したら続きそうだ……!
手を固く握って、歯を食いしばって。
どうにかゾロの邪魔をしないようにと、私自身を留めるのに精一杯だ!
「小僧、名乗れ」
気が気じゃなくて2人の話す内容は定かじゃないけど、何事かのやり取りの末。
ゾロの胸からわざわざ短剣を引き抜いた"鷹の目”が、数歩下がりながら問う。
「ロロノア・ゾロ!」
「そうか、久しく見ぬ
ついに"鷹の目”が背中に差した大刀を構える。
ここでそれを抜くのかと背筋が凍った。
あのナイフにでさえさっきまで圧倒されてたのに、あんな見るからに威圧的な武器を持ち出されたら──ああイヤだ考えたくない!!
「ウタ……っ」
ルフィ?
苦しげに、呻くように呼ばれて振り向く。
私を呼んだルフィは、猛々しい形相で2人を見詰めたまま。
「このあと、俺を止めるなよ……っ」
振り絞った声で、唸った。
何のことを言っているのか、察するのは簡単だった。
いっそ苦しげなルフィに頷き返しながら、私は必死に、
「三刀流奥義──三千世界っっ!!」
奥義、と叫んだゾロの大技は──一瞬で破られた。
“鷹の目"が通り過ぎ様に斬りつけたのだろう、ゾロの身体から鮮血が、根本から折られた黒鞘の2刀の破片と、共に舞う。
3刀の内、唯一残った白鞘の1刀を丁寧に、丁寧に、ゾロは納めて。
切り替えしてきた“鷹の目"に振り返ると、両手を広げて無防備を晒した。
「──」
「──」
何事か言葉を交わして。
遠目からも分かるぐらいに深々と、ゾロは斬り裂かれた。
その、瞬間まで。
なんで、とか。
どうして、とか。
ほんの、数秒。頭が痛くなるぐらいに、ぐちゃぐちゃになるくらいに、たくさんたくさんたくさんたくさん、私の頭の中で洪水のように言葉が駆け巡っていた。
でも、嘆くよりも私が今やるべきは……!
「ううぁあああおあああ────っっ!!」
叫んで、飛び出して、“鷹の目"へと殴りかかっていくルフィを──『俺を止めるな』──止めようとした流線の振り先をすかさずゾロへと変えて放つ。
──ちゃんと帰ってきてよバカッッ!
もう1人のバカを海へと落ちる寸前に絡めとって、音符を併用してなるべく慎重に、迅速に手繰り寄せた。
「さすがウタの姉貴!」
「姉御そんままここまで! ここに寝かせてくれ!」
「傷薬と包帯準備よしだ! すぐ手当だおいゾロ死ぬんじゃねェぞ生きてんだろうなァッッ!?」
船まで手繰り寄せた瞬間、私達の間に安堵が広がった。
このっ……生きてんじゃんかよ良かったよぉ……!!
とても浅いものだけど、気を失っているゾロは確かに息をしていた。
ただ傷口は見れば見るほどえげつなくて、深い。なんで生きてるのか不思議なくらいだ。
ジョニーの指示通りに寝かせて、4人で協力して治療にあたった。
「我が名、ジュラキュール・ミホーク!」
己を知り、世界を知り、強くなれ。
俺は先、幾年月でも、この最強の座にて貴様を待つ──!
「猛る己が心力
ゾロのことこんな目に合わせて何言ってんのアイツ!? いや決闘だからどっちかがこうなるっていうのは分かるけど、ぶった斬った相手に何言ってんだアイツ!
……隣のルフィに手を出さないでいるから、このイライラは伝えないけどさあ!
「お、おいウタなんでお前睨んでるんだよやめろよ? やめろよ突っ込むなよ?」
「ちょっとウソップの兄貴!」
「手を止めないでくだせェッ!」
「え、あ、おう」
っち……!
「ひ、舌打ち!?」
「「ウソップの兄貴!」」
「あ、はい……」
仕方ない今はゾロの手当が大優先だ……。
「──って、なんでゾロを斬ったお前にそんな事まで話さないといけねェんだ! 帰れもうお前! 俺はお前のこと嫌いなんだ!」
話の流れはよく聞いてなかったけどいいよいいよルフィー! もっと言ってやってー!
「アイツもなんでめちゃくちゃ喧嘩腰なんだよ……!」
「「ウソップの兄貴!?」」
「あ、はい、ごめんなさい集中します……ってなんでお前ら俺ばっかり怒んだよ!?」
「いやウタの姉貴は的確だし、なあ?」
「その上姉御、チラチラ余所見しながらも手先は俺らより迅速ですし」
「え?」
ルフィとかルフィとかルフィとかたまにエースとかで、ちょっとした手当自体には手慣れてるからね。
けどこんな大傷は手当の経験が無い。ただ縫合するだけでいいなんてとても……あ!
「……ッ、ゲハ、ァ……ア゛ぐっ」
「兄貴゛っ!!」「あにき゛ぃぃ……」
「良かったゾロ意識が戻りやがった! ははっ!」
身体を震わせたゾロが咳込みながら目を開けた。
血混じりの咳をしながらも、私達を見る目は力強い。……悔しげに潤んだのは気付かないフリしてあげるよ。
それにしても、良かった。
ルフィもだけどゾロもとんでもなくタフだ。この様子なら傷口を抑えるだけで助かりそう。
「ってなにを?!」「兄貴ちょっと!?」
「何する気だよおいゾロ!?」
唐突に、ゾロは刀を抜いた。
気絶しても頑なに放そうとしなかった白鞘の刀を、その切っ先を空に向け掲げていく。
「ルフィ…………きこえる、か。
ふあんに、させたかよ。
おれがせかいいちの、けんごうに、くらい、なら、ないと。
おまえが、こまるん、だよな……」
ゾロの姿は血だらけだ。
付けられたばかりの深く大きな斬傷も痛々しい。
掲げる刀は小刻みに常に揺れて、常に震えている。
言葉の一つ一つもらしくもなく、涙声で弱々しい。
まるで今際の
その姿から、目が離せない。
「俺はもう二度と
血を吐きながらの、宣誓。
それに、私自身はっきりこうとは言葉に出来ないけれど、
「にししっ、ない!!」
振り向かなくても、分かる。
絶対、今ルフィは、ニカッと笑ってる。……ゾロが助かった。
それへの安堵の念はすっかりなくなって、今は悔しくて仕方がない!
──シェルズタウンでルフィとゾロが一緒に戦った、あの光景を見た時から燻る心が微かにあった。
オレンジの町でもルフィと一緒にバギー一味に挑んでいったのは、ゾロだ。
シロップ村でも黒猫海賊団の一味をルフィと蹴散らしたのは、ゾロだ!
ルフィからその腕を買われているゾロに、ひたすらに悔しい気持ちが湧く瞬間がある。
今、それが最高潮に
「『ウソップ──』」
飛び出した拍子にルフィが落とした麦わら帽子を拾い上げ、立ち上がって4人の視線を集めた。
「『ナミをお願い』」と能力で伝える。
そして。
「『ゾロ、私いつまでも、
ゾロを見ながら、負け惜しみを呟くように描いた。
訝しげな視線が向けられる。喋る余裕があれば「急になんだ」と言いそうな顔。
それはそうだ。
いきなりこんな事を伝えられても分からないだろう。
なにせ、私自身なんて伝えればいいのか分からない。
だけどいつか、その視線を変えてやる!
いつか今の私みたいに、
「──帰る前に死んで行けっっ!!」
クリークの叫びといくつもの銃声に振り向くと。
鷹の目……ミホークは遠目にも分からないほど素早くあの大刀を振るっていた。
高々と水の柱が立ち昇って、その衝撃で海が大いに波打ち、船が激しく揺さぶられた。
「あ、あにきを抑えろヨサク!」
「やってらちくしょっ!」
「ぅぉなっんて衝撃だよ船が流される……!」
波に揺られて船が動く。
バラティエから遠く引き離される前に、私は音符を駆使して空中を弾んで戻ると。
「ウソップ! 行け、頼んだぞ!」
ルフィは吹き飛ばされたのか。ちょうど体勢を整えながら、コックさん達の所へ戻って来ていた。
「おいルフィ、ウタ! ナミ連れ戻してよォ、コック仲間に引き入れたら! そん時ゃ行こうぜっ、6人で!
「『うん!!』」「ああ、行こうっっ!!」
勢いよく遠のいていくウソップ達の乗る船を、これからへの思いを馳せて見送った。
やがて。
波の荒れがすっかりと引いた時。
海を一荒れさせたミホークは忽然と姿を消していて。
ウソップ達を乗せた船は遠目に小さくなっていて。
その場に残ったクリーク一味との睨み合いが始まる最中、ルフィはふと思いついたようにゼフさんに顔を向ける。
「なあおっさん、アイツら追い返したら俺達雑用辞めていいか?」
「好きにしろ。その方が店のためだ……まあ嬢ちゃんに関しちゃ別だったが、テメェが一緒じゃまだマイナスだ」
「ひっでェ言われようだな!? けどっ、約束だぞ!」
「『あ、じゃあじゃあついでに船ください!』」
「っとにテメェら揃って図々しくハッキリ物申すな?! あぁいいさ好きに持ってけ、そして何だって好きにしろやめんどくせェ!」
やった!
さて。1年間の雑用働きも免除されたし、追う“足”のアテができた事だし!
あとは、アイツらをぶっ飛ばすだけだ!
感想評価ありがとうございます。モチベになります助かってます。
REDの副音声皆も聴こう!足を鳴らす心理描写気づかなかったよ……