新時代を、それでも   作:ずーZ

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本編
1話


 

 

 

 

 

 

 

 シャンクスと皆と「綺麗だねぇー」とたくさん歩いて、色々な建物を見て回った街並み。

「ルフィと同レベルだぞう?」なんてからかわれながら、からかったんだからー! と2つわたあめを買って貰った公園。

 同じ歳くらいの子もずっと年上の人も、誰もが皆、笑顔で音楽の勉強をしていた学校。

 

 

「わたし、が──った、から」

 

 

 何もかも。

 炎が上がっている。留まることなく焼けていく。全て無くなるまで燃えていく。

 壁も天井も地面も、どこが何かも分からないくらい崩れている。壊れていく。砕けていく。

 

 ぜんぶ、ぐしゃぐしゃになっていく。

 

「死にたくないっ! 死にたくないっ! 死にぁぁやいっあああ゛っ!」

 

 悲鳴が聞こえる。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 悲鳴が聞こえる。

 

「いやだぁぁああ゛、っり」

 

 悲鳴が聞こえる。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 悲鳴が聞こえる。

 

「たす」

 

 悲鳴が──消える。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 ああ。

 ああ。

 ああ。

 

「ごめんなさい」

 

 ああ──()()()()、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「……」

「おうおうこりゃ──ふーん? そうかそうか、ウタちゃんは、フーシャ村にいるルフィに会いたいのか」

「……!」

「おお、おお、そうかそうか。うんうん、素直じゃ、ええぞ、うむ。じゃ、ワシとルフィの所に行くか」

「?」

「なに? なんで分かるのかって? ふふふ──そりゃあワシが、ルフィに好かれて好かれて大いに好かれとる、ルフィのじいちゃんだからじゃ! ぶわっはっはっ!」

「……」

「なに? ……ルフィぃぃ、まーたワシのことを好きだからって悪口言っておったか! こりゃ会ったらワシ渾身の拳骨(孫愛)をくれてやらねばっ! うむ、教えてくれてありがとのうウタちゃんや、直ぐにとは行かんがなるべく早く、ぜーったい連れてってやるからな! ぶわっはっはっ!」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「んーっよいよ! 俺達の船出、冒険の始まり! いやー絶好の船出日和で何よりだなあ、ウタ!」

 

 波に揺れる、小さな漁船の上で。赤い半袖、短パンにサンダルとまさか海へ出るとは思えない軽装の少年……ルフィが、麦わら帽子を抑えつつ快活に笑って、隣に立つ幼馴染へと振り向いた。

 

「!」

 

 その隣、可愛らしい意匠が長い丈一杯に施されたパーカーを羽織った、風に踊る特徴的な赤と白の長髪を抑える少女……ウタもまたチラリと空を見上げて、ニコリと笑みを返す。それも本心からルフィと同じく喜んでいると表すかのように、特徴的な後ろ髪が跳ねていて。

 そんな昔からの分かりやすい彼女の様子に、ルフィはより楽しそうに笑顔になった。

 

 だが呑気にのんびりするのは終わりと。ウタがパタパタ動き出す。

 羅針盤を見て、帆を動かし、時たま舵を切る。目線は海図と羅針盤と海に空に行ったり来たり。

 幾つもの付箋が貼られたシワだらけの本を何度も開いては閉じてを繰り返す。

 ブチッと手元の肉を噛みちぎって咀嚼しながら、ルフィはニカッとまた笑う。

 

「いやーウタが航海術勉強してくれてて良かったよ! おかげで船出は安心だな!」

 

 ウタが積んできた食料のハムの塊を齧りながらの発言に、ジト目を送ってため息をついた。『航海術とは』と題された本片手のぎこちない作業風景を見て何を言っているのか、と。

 呆れているのだがルフィは分かっているのかいないのか「ん? どした? ウタも食うか?」などと勘違いして食いかけのハムを差し出してくる始末。

 

 ──まあ、いいけどね。ルフィはそのままで。

 

 ルフィの手で差し出されるままのハムを1口齧って、ウタはそっと手で押し返して作業に戻った。

 

「なんだそんなんでいいのか。ほんと、食わなくなったよなーウタ」

 

 んじゃあとはおーれの! と残りを丸ごと食べて。モグモグとしながら下手くそな鼻歌を歌い出すルフィ。

 その鼻歌のまたなんとも相変わらずの変な調子に、ウタは苦笑いしながら、──でも嫌いじゃないそのルフィの音色に、耳を済ませてしばし聞き入った。

 

 ……なお、近海の主と呼ばれる海獣が現れルフィが一撃の元撃退するまでの間。ウタのウタウタの能力でウタワールドより簡易召喚された、音符の戦士(×2)も動員しての出航であり。

 カナヅチ2人きりでの船旅、という精神的な負担が想定を超えていて。ウタが能力使用の反動で思いの外早く、深い眠りに就くのは時間の問題でもあった。

 

 これは、赤髪のシャンクスから預かった麦わら帽子を被るルフィと、かつての凄惨な光景から()()()()()ウタ、2人が海賊として海に出た旅立ちの日。

 10年の付き合いのある幼馴染の2人が揃って、かつて誓い合った新時代を作るために。ルフィの故郷、ウタにとっては第2の故郷、東の海(イーストブルー)のフーシャ村を出た日のことであった。

 

 

 

 










曇らせたかった(遺言)
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