ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第13話:暗雲

 ※※※

 

 

 

「んーっ、おいしかった、ありがとうございますっ!」

 

(実用性重視の毛皮のジャケット、黒いゴーグル、雪国から来たのかって感じだな。肌色も何か……青い? のか?)

 

 

 

 曰く、すぐに食べられて美味しいもの、とのことだったので、その辺りに売っていた「ハリーセンバーガー」なるものを何個か購入し、差し上げるとほっぺを抑えて彼女は復活した。

 お金も持っていないとのことだったので当初、「もしや自分と同じ境遇の人間なのでは?」と疑念を抱いたメグルであったが、よく見ると彼女の背中には甲羅のようなポケモンが引っ付いていた。

 一先ずは持ち直したのか、落ち着いた様子で毛皮ジャケットの少女は起き上がる。

 肩に乗っているイーブイはずっと、毛を猫のように逆立てながら唸っているのだった。さっき食われかけた所為である。

 

「いやぁ、流石に死ぬかと思っちゃいましたよー、目の前のモノが全部食べ物に見えちゃって……ゴメンね、イーブイ」

「ヴルるるるるるるる……!!」

 

(イーブイが聞いた事の無い声で威嚇してる……)

 

 それに対し、怖がる様子を見せない彼女も彼女で肝が太いのであった。

 

「ボクは()()()。旅の石商人ですっ!」

「石商人?」

「はいっ。各地の珍しい発掘品を売り買いするのが生業で。今は修行の為にサイゴク地方の各地を巡っていたんです! セイラン海岸ではたまにポケモンの化石が獲れると聞きまして!」

「へーえ、そうなのか」

 

 ──古代のポケモンは、化石となって発見される場合もある。

 それを復元する技術がこの世界では普及しており、プテラやオムナイトと言ったポケモンは化石から復活して生きたポケモンとなるのである。

 

「そもそもサイゴク地方では、化石が獲れるスポットが沢山ありましてっ! この近くだとコハクタウンがオススメですよ!」

「んじゃあ、今度行ってみようかな。丁度目的地の途中だろうし」

「ええ、ぜひとも! ……それで、お兄さんは──ポケモントレーナーですか?」

「ああ。メグルって言うんだ。にしてもよ、何でこんな所で倒れてたんだよ。路銀でも無くしたか?」

「いや、お恥ずかしながら……サイフを落としちゃって。お兄さんは命の恩人ですよっ!」

「商人の要の財布を落としたのか……」

「いやぁ、お恥ずかしながらぁ」

「ヴるるるるるる……」

 

(コイツじゃなくて、見知らぬ誰かのポケモンの命の恩人かもしれねえ……)

 

 未だに唸り続けるイーブイを見やると、冗談抜きでそう思えてくるメグルであった。

 好きで食われたいポケモン等存在しないのである。やはり。

 

「お礼なんて要らねえよ。行き倒れて死なれても目覚め悪いしな」

「でも、ボクの気が収まりません──かと言って、持ち合わせも無いですし」

 

 ガサゴソ、と彼女はカバンの中を漁る。

 そうして取り出したのは──木箱であった。

 それを開けると現れたのは見覚えのあるシルエットの土人形。

 びくり、とイーブイが驚いたように震えた。

 

 

 

「こちらルージュラ(推定)の土偶ですっ! コハクタウン近辺の採掘場で発掘されたものなんですけど──」

 

(い、要らねえええええ!!)

 

 

 

 そもそもこの世界に土偶なんてあったのか、と驚愕するメグル。

 確かにルージュラに似てはいるが、頭に二本の角のようなものも付いているし、そもそも本当にルージュラかどうかも疑わしい。

 シルエットが似ているからそう呼ばれているのかもしれない、とメグルは思い直す。

 

「うーん、流石に微妙ですかね?」

「嵩張るしな……ルージュラは別に良いかな……」

「ええー? 可愛いのにー。分かってないですねぇ、はぁ」

 

(貰ったとして何処に飾るんだよ……)

 

「そうだ! こっちはどうでしょう」

 

 そう言って彼女が取り出したのは──綺麗な丸い宝石だった。

 半透明で、太陽に翳すと鈍く光る。

 そして、中にはOの字に似た刻印が刻まれているのだった。

 

「何だコレ──宝石?」

「ええ。ボクの故郷のお守りのようなものです。伝統的な加工品で、ネックレス、腕輪、指輪など、装飾品に付けるんですよっ」

「綺麗じゃないか。んじゃあ、貰うだけ貰っておこうかな」

「毎度~! いやぁー、お礼が出来て良かったですよ! うんうんっ」

 

(にしてもこんな石、どっかで見たような──ん?)

 

 思わずメグルは時計を見る。

 既にあれから、10分以上経ってしまっている。

 さぁっ、と血の気が引く。ユイの試合が下手したらもう終わってしまっているかもしれない。

 

「わっりぃ!! 俺、連れのポケモンバトルを見に行かなきゃいけねーんだよ!!」

「え? ポケモンバトルですか? それ、ボクも見に行ってもいいですか!?」

「え?」

「サイゴク地方に来たばかりであまりこちらのポケモンの事を知らないもので……」

「ああ分かったよ、着いて来い!」

「ありがとーございますっ!」

 

 イーブイが露骨に嫌そうな顔をしていたが、何か起こる前にボールに引っ込めて事無きを得たのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「すげぇ人だかり……!!」

 

 

 バチン、バチン、と電撃が迸る音が聞こえてくる。

 それを取り囲むようにして、海岸には人々が集まって激闘を見守っていた。

 マルマインがミロカロスに突貫し、ミロカロスの身体がビクビクと麻痺で痙攣しているのが見える。

 すぐに、その場に居たおじさんにメグルは慌てて話しかける。

 

「おじさん、今戦況は──」

「あ? あんさんあの子かリュウグウさんの知り合いか? 今互いに残り手持ちは2匹だよ」

「よ、良かった……」

 

 

 

 

「──マルマイン。大爆発ッ!!」

 

 

 

 

 「え」とメグルが声をあげる間も無く、大爆音がその場に響き渡り、辺りが吹き飛んだ。

 観客たちは飛び散る砂から目を手で守るのが精一杯であった。

 しばらくして──硝煙の臭いが漂う中、そこには真っ黒こげになっても笑っているマルマイン、そして──首をもたれたミロカロスの姿があった。

 

「ま、マジかよ正気かあいつ……!」

「ポ、ポケモンを爆発させた……!」

「まあマルマインにとって爆発はご褒美みたいなところがあるからな、暇になったら爆発してるような連中らしいし」

「そんなポケモンも居るんですね……ただただ可哀想なだけかと」

 

(どっちみち瀕死だろうだがな、あのマルマイン)

 

 ユイがマルマインをボールに戻すのが見えた。

 リュウグウは──その光景に動じることも無く、砂地に杖を突く。

 

「捨て鉢の戦術かと思っちょったが──そうでもないようやのう。ミロカロスを確実に突破するための術、か」

「”スパーク”、”いやなおと”、”だいばくはつ”……突破が困難な相手にはこれに限るんだから」

「最も、それしきで倒れるミロカロスではないがのう」

「ッ……!!」

 

 ミロカロスはボロボロになりながらも辛うじて首を上げ、甲高く鳴いてみせる。

 改めて、メグルはその耐久力の高さを思い知るのであった。

 自己再生といった高速回復技も備えているなど、ゲームでもしぶとさに定評のあるミロカロスだが、やはりこの世界でもそれは変わらないらしい。

 

(実際、同レベル同個体値の条件下でも、マルマインの火力じゃあ”いやなおと”込みでもHB特化ミロカロスは97%しか削れない)

 

 これはそもそも、マルマインの元々の攻撃が低いため、大爆発の威力も然程高くならないことも関係している。

 しかしそれでも、ミロカロスは既に虫の息だ。

 

(……特化すればA種族値がたった50の火力でもHBミロカロスを大幅に削れるのが、技の威力の重要性ってもんを示してるよな)

 

 実際には個体値差やレベル差といった条件は変わってくるとはいえ、疲弊したミロカロスを見ても大幅に外れているわけではない。

 脳内でダメージ計算を行いながら、メグルはユイの最後の1匹が残りのポケモンを倒すことが出来るかどうかにこの勝負が掛かっていると確信する。

 とはいえ特防の高いミロカロス。素早さが低く、火力も低いランターンでは仕留められない可能性もある、と考えていたが──

 

 

 

「お願い──このまま二枚抜きして。シビルドンッ!!」

 

 

 

 砂浜にどすん、と音を立てて降り立つのは大きなヤツメウナギのようなポケモンであった。

 シビルドン。魚のような姿でありながら陸棲であり、空中に電気の力で浮くことが出来るポケモンだ。

 また、コイル系統のように磁力に依存して浮遊している訳ではなく、特性”浮遊”の力で浮いているポケモンのため、地面技は通用しない。

 電気タイプの弱点は地面タイプのみ。シビルドンに弱点の技は存在しないのである。

 

「──自己再生で回復せい」

「それを撃たれたら勝ち目が無くなる!! シビルドン、10万ボルト!!」

 

 空中に浮かび上がり、そのまま一直線に何重にも重なった電撃を放つシビルドン。

 麻痺状態になり、動きが鈍くなっているミロカロスでは自己再生が追い付かない。

 そのまま感電し──黒焦げになったミロカロスが砂浜に横たわるのだった。

 

「……やるのうッ! だが、此処からが本番。分かっておるな?」

 

 ごくり、とユイは息を呑む。

 リュウグウの最後の手持ち。

 ボールの外からも並々ならぬ覇気を感じさせる。

 老人とは思えぬ健肩で、リュウグウはそのボールを大きく投げ入れる──

 

 

 

「──征けい、ヨワシッ!!」

「ぴちぴちぴちっ……」

 

 

 

 ──数秒後。

 小魚のようなポケモンが、砂浜で力無く跳ねていた。

 その場に沈黙が横たわる。

 

【ヨワシ こざかなポケモン タイプ:水】

 

「あの弱っちそうなポケモン……シビルドンの電撃で一撃では……?」

 

 ぽつり、とアルカはこぼす。

 何処からどう見ても切札のようには見えない。

 ぴち、ぴちぴち、と跳ねているヨワシは──大きな目から涙を流している始末。

 とてもではないが、戦えるとは思えないのだった。

 しかし、アルカの反応とは裏腹に観客たちは戦慄しており。

 

「終わりだ!! 何もかも終わりだ!!」

「リュウグウのヤツ、本気じゃ!! まさかあの小娘相手にヨワシを出すとは……本気の本気じゃな!?」

「これ、おじいちゃん、勝ったんじゃないの?」

 

 と、皆明らかにリュウグウが勝つかのように騒ぎ立て始める。

 忖度などではない。本当に「リュウグウが勝つ」と彼らは思っているのだ。

 

「って、えええ!? 何で!? どう見てもあんなので勝てる訳ないでしょー!?」

「ヨワシを見るのは初めてか……俺も()()を見るのは初めてだけど。見てりゃ分かるよ」

 

(つーかサイゴクに居たんだなヨワシ……ジョウト地方の隣なのに、アローラ地方のポケモンが結構いるのは気候が温暖だからか?)

 

 メグルは──既にヨワシの正体を知っている。

 確かに貧弱な体に違わぬ貧弱な種族値の持ち主だ。

 H45A20B20C25D25S40──と、最弱のポケモンと呼んでも差し支えない。

 だが、サイゴクの民はこのポケモンを決して侮らない。

 

 

 

「一騎当千。無双の狩り人の正体を見よ」

 

 

 

 

 リュウグウが宣った瞬間だった。

 波が沸き立ち、そこから無数のヨワシたちが現れる。

 その光景に歓喜する観客たち。

 そして、呆気にとられて言葉を失うアルカ。

 やっぱりか、と身構えるメグルと当事者であるユイ。

 無数の魚影がヨワシの周囲に集まっていく。

 びちびち、と弱々しく跳ねているだけだったヨワシだが、海から飛び出して来た大量の仲間が集まり、群れを成し、そして──

 

 

 

 

「ぎょえーっ!!」

 

 

 

 ──ひとつの巨大な魚影と化したのだった。

 

【ヨワシ(むれたすがた) こざかなポケモン タイプ:水】

 

「ヨワシの特性”魚群”。さあ、この()()()()()()()にどう立ち向かう?」

 

 一騎当千の大群。その言葉に矛盾は無い。

 ある程度育ったヨワシは群れを成し、潜水艦の如き巨大な魚となることで身を守る習性を持ち、普段は大量のヨワシを捕食する立場の大型水棲ポケモンが、逆に追いかけ回される程である。

 海から呼び出す仲間は、呼び出した側が海中だろうが海の外だろうが何処に居ても駆け付け、凡そ8メートル以上もの長さの巨体を形成するほどに集合するのである。

 その魚群は呼び出した側の力が強ければ強い程多くなり、リュウグウの繰り出した個体の大きさは10メートルにも達した。先程のギャラドスの大きさの比ではない。

 その様はさながら、生ける潜水艦であった。

 

(H45 A140 B130 C140 D135 S30──ムダはあると言っても、100越えが4つあるバケモノには変わりねえ)

 

 また、決して魚群の姿はハリボテではない。

 能力値も相応に跳ね上がっている。

 最底辺とも言える種族値から、一気にステータスの怪物へとのし上がったヨワシ。

 最早その姿は海の魔物と言っても過言ではない。

 その圧倒的な暴力を以てシビルドンに襲い掛かる。

 だが、多くの群れを率いているからかその動きは鈍重だ。その前にシビルドンが仕掛けた。

 

「シビルドン、10万ボルト!! 群れが多いなら、まとめて感電させて倒しなさい!!」

「……凝固し受け止めよ」

「ッ……!!」

 

 ぎゅっ、とヨワシの群れが集まり、砂地にどずん、と落ちる。

 電気を地面に逃がし──最低限のダメージで抑えたのだ。

 タイプ一致の抜群技を喰らったにもかかわらず、ヨワシの勢いが衰える様子は無い。

 

「今度はこちらから行くか。拡散、そして再集合! 構えい!」

 

 リュウグウの号令と共にヨワシの群れが一気に散らばり、シビルドンの周囲を取り囲む。

 電撃を放って撃ち落とそうとするシビルドンだったが、素早い小魚たち相手にそれが当たる様子は無い。

 統制の取れた動きで空中を泳ぐヨワシたちは、一瞬でシビルドンの背後に回り、再び巨大な魚影へと姿を変える。

 

(ヨワシの群れさえも指揮するってのか!?)

 

 ゲームでは有り得ない群れの動きにメグルは驚愕する。

 あるいは──今まで描かれていなかっただけで、ヨワシを操るならばこれほどまでのトレーナーの技巧が無ければその力を十全に生かせないということを表しているかのようだった。

 ヨワシの群れは1匹を除いてすべてが野生のポケモンだ。

 それを指揮して動く本体、そしてその動きを指示するリュウグウ。

 両者ともにその実力の高さが伺い知れる。

 

「一番主砲、撃てーッ!!」

 

 

 

【ヨワシの ハイドロポンプ!!】

 

 

 

 一直線に巨大な水の流れが滝の如くシビルドンに押し寄せる。

 不意を突かれたのもあってか、その身体は跳ね飛ばされ、砂浜に叩きつけられたのだった。

 

「地面技が効けば”地震”の一撃でイチコロだったんじゃがのう」

「う、ウソでしょ……!? ミロカロスよりも硬い……!? あたし達の方がダメージを受けているの……!?」

「当然や。ヨワシを育てて早60年。何度も()()()()はしてきたが、その度に先代よりも強く鍛えてきちょる。年季が短くともウチの手持ちでは最も強いと言えるぞ」

 

 その発言には年季の籠った重みがある。

 小魚の姿から進化しないヨワシは寿命が短い。竜の如き姿となり、下手すれば人よりも長生きするというギャラドスやミロカロスと比べれば数年で命を落としてしまうという。

 だからこそ、その度にリュウグウは新しい世代のヨワシを育て直してきた。

 前の世代よりも強く。前の個体よりも強く。

 研究を重ねてきた。

 それが──彼の強さに結びついている。

 

「水は様々に姿を変える。流体、固体、気体──自由自在。ヨワシはまさにその最たるじゃ。どう戦う? ショウブの娘よ」

「ッ……シビルドン、怒りの前歯!! 体力を減らせば魚群は崩れる──」

「拡散せい」

 

 次の瞬間、今度はヨワシの群れは拡散する。 

 飛び掛かったシビルドンの攻撃はかすりもせず、砂浜に喰らいつくことになるのだった。

 

「すごい……! あんなに大きいのに、シビルドンの攻撃を全部受け流してる!」

 

(そう言えば、この相手の行動に合わせたカウンター行動……近海の主のハリーセンに似てる……! やっぱ育てる人が同じなら育て方も同じ、ってことか……!)

 

 リュウグウの強さの理由をメグルは垣間見た気がした。

 ポケモンの生態を最大限に生かし、どのような状況にも対応できるからだ。

 現に今もヨワシは拡散と集合を繰り返し、完全にシビルドンをおちょくっている。

 どちらが格上かは火を見るよりも明らかだ。

 

 

 

「──蹴散らせい。ハイドロポンプ」

 

 

 

 今度は直上。

 空中から滝の如き激流がシビルドンを襲う。

 最早一方的な試合運びとなっていた。

 タイプの有利など知ったことは無い、と言わんばかりにヨワシの魚群は高らかに咆哮してみせる。

 そして、タイプ相性さえも覆されるほどに実力差が存在していることを突きつけられたユイは肩の力が抜けてしまうのだった。

 

「こ、こんなに、強いなんて……!!」

「……ワシも老いぼれ。勝負勘は昔に比べれば衰えちょる」

 

 そう言っているリュウグウの目は──サングラス越しにギラリとユイを睨んでいる。

 

「だが──最初から()()()()()()()()()()()()()()()()()に負けはせんわい」

「ッ……!!」

「トドメじゃ。ハイドロポンプ」

 

 名残惜しさなど感じさせない宣告。

 もうまともに動けないシビルドンに、激流が浴びせられる──はずだった。

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

 

 

 ──激流は降りかからない。

 ヨワシは完全に動きを止めている。

 そして群れは完全に離散し──元の小魚の姿に戻ってしまった。

 それをリュウグウはボールに戻すと、すごすごとユイに歩み寄る。

 周囲の空気は──何故か冷えており、霜が降っていた。

 

「……いかんな。ポケモンを回復させておきなさい、ユイ」

「え? で、でも──」

「おやしろで何かがあった。ワシは先に行く。来れるなら来なさい」

「……」

 

 そう言うと、リュウグウはそのままおやしろの方へ歩いて行くのだった。

 何があったのか飲み込めていないユイは、ぺたり、とその場に座り込んでしまうのだった。

 

「……何々? 折角いい所だったのに……途中で終わっちゃいましたよ!?」

「悪い! 俺も行くわ! 宝石ありがとな!」

「あっ、ちょっと、メグルさんっ!?」

 

 不満そうなアルカを差し置き、メグルはユイの元へ駆け寄ったのだった。

 ざわつく群衆。

 異様に冷え込んだ空気。

 おやしろへ向かったリュウグウ。

 セイランシティには──暗雲がかかっていた。

 

「あーあ、折角面白そうなバトルだったのに」

 

 つまらなさそうにアルカはメグルの背中を見送る。

 

 

 

「……面倒なヤツらが来たな。ボク達はさっさとズラかろうか」

 

 

 

 ──アルカは何かに話しかけると、興が醒めたようにその場から立ち去るのだった。

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