ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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”すいしょうのヌシ シャワーズ”


第17話:夢幻泡影

 ※※※

 

 

 

「ヴルルルルルルーッ」

 

 

 

 シャワーズが唸ると共に、泡が浮かび上がる。

 それが地面にぶつかり、弾けると共に電気が走った。

 

「良い? ヌシポケモンは4つの技とは別に、”オオワザ”を持つの」

「オニドリルの時も言ってたなそれ。必殺技みたいなもんか」

「そうね。出すまでに時間がかかる代わりに、周囲も巻き込んで壊滅的な被害を出す技よ。放たれる前に倒すか、放つ予兆が見えた時点で阻止するしかないわ」

「ああ、気を付ける」

「あたしも、あのシャワーズと直接やり合うのは初めてだから……お父さんから聞いた知識しかないのよね」

 

【シャワーズ(サイゴクのすがた)<????> ひょうすいポケモン タイプ:電気/エスパー】

 

 何かの要因でタイプが”上書き”されていることをメグルは確信する。

 加えて、リュウグウの言っていた首輪は確かに目視で認めることが出来た。そこには奇妙な宝石が埋められている。

 

「やっぱ電気タイプになっているのね?」

「ああ。電気技は今のあいつには通用しない」

「シャワーズを倒す必要はないわ。効率から考えても、あの首輪の破壊を最優先よ」

「となると、作戦があるんだな? キャプテン代理さんよ」

「ええ。当然あたしが楯になるわ。君のポケモンは後ろから援護をお願い──!」

 

 ユイがボールを投げると、ランターンが飛び出す。

 

「特性”蓄電”で電気技無効か……! 成程考えたな!」

「ッ……何処まで通用するか分からないけど、シャワーズの放つであろう技は全部、ランターンで受け止められるんだから!」

「逆に言えば、ランターンがやられたら一気に苦しくなる、か」

「だから──そうならないよう頼むわよ。異世界のポケモントレーナー君!」

「プレッシャーが重いなあ!!」

 

 べちんっ、と音を立ててランターンが尾びれで地面を叩き、跳ね上がったかと思えばシャワーズに飛び掛かる。

 

「──薙ぎ払いなさい!!」

 

【ランターンの ハイドロポンプ!!】

 

「ッ!?」

 

 強烈な水流がシャワーズを襲う。

 更に、畳みかけるようにしてランターンを飛び越えてオドシシが角をシャワーズに見せつける。

 

「眠らせろ!! 催眠術だ!!」

 

【オドシシの さいみんじゅつ!!】

 

 目玉の如き角がシャワーズに突きつけられた。

 しかし、それを見る前に──シャワーズの身体が音を立てて溶解する。

 

「んなっ!?」

 

(そうか、シャワーズの身体の細胞の成分は殆ど水と同じ──液体になることで逃げやがった!!)

 

 流体となって地面を流れるシャワーズ。

 その身体は再び、獣の姿へと再構築されていく。

 ただでさえ当たりにくい催眠術は、今回は更にアテにならないとメグルは確信する。

 見ると──首輪に取り付けられていた石はと言えば、流体となったシャワーズの中に守るようにして取り込まれたままだ。スライムの中に入れられた玩具のように。

 

(もしかして、手放そうと思っても、自分では手放せない状態なのかアレ……)

 

「ああもう、これがあるから厄介なのよコイツ! 流体になる性質を生かして攻撃を避けるんだから……!」

「ぷるるるるるー」

 

 シャワーズの目が妖しく光る。

 周囲の空気が冷たくなり、唇が乾いていくことにメグルは気付く。

 急速にランターンの周囲の空気が冷えていき──冷気が収束した。

 

「これってまさか──フリーズドライ!?」

 

 急速に体組織が冷却されたことによって藻掻き苦しむランターン。

 水に適合した身体を持つポケモンにとって、体そのものを急速に冷凍するフリーズドライは、氷タイプでありながら効果抜群となる技だ。

 

「シャワーズってフリーズドライを──いや、覚えないよな!? リージョンフォームで氷タイプ持ってるからか……!?」

「マズいわね……! 有効打を持ってたなんて……リュウグウさん、1年の間に覚えさせたでしょ……!」

 

(シャワーズの特攻を加味しても、ランターンは後1発フリーズドライを耐えられればいい方か? 抜群だし、多分次は無い……!!)

 

 今ので確実にランターンの体力は半分以上削られただろう、とメグルは判断する。

 となれば壁役の後ろからメグルがサポートするのはかなり難しい。

 しかし、シャワーズは最早待つつもりなどない。するする、と周囲を凍らせて滑るようにして移動しながらランターン、そしてオドシシの周囲を舞い続ける。

 そうしている間に、おやしろには大きな泡が浮かび上がっていた。

 

「マズい!! オオワザ来る!! 泡を壊して!!」

「オドシシ、踏みつけだ! 踏みつけて泡を壊せ!!」

「ランターン!! 放電──はダメだから、10万ボルト!!」

 

 1つ。また1つ、と泡を叩き割っていく。

 しかし、とてもではないが全ての泡を破壊出来る様子は無い。

 

【野生のシャワーズの──】

 

 

 

「──ヴルルルルルーッ!!」

 

 

 

 浮かび上がった泡が次々にオドシシとランターンに纏わりつく。

 

 

 滑りを帯びた泡は体中を滑らせ、オドシシは体勢を崩してしまう。

 

「伏せて!!」

 

 泡に塗れて転び、動けない2体目掛けて──シャワーズが薙ぎ払うようにして激流のブレスを吐き出す。

 

(まずっ、死──)

 

 

 

【──むげんほうよう!!】

 

 

 

 

 それは、ランターンの放ったハイドロポンプとは比べ物にならない勢いだった。

 オドシシの身体もランターンの身体も軽々と吹き飛ばされ、木々にぶつかり、地面に倒れる。 

 むげんほうよう──それは、無数の泡で相手を惑わせ、拘束している間に本体が最大威力の水のブレスを放って葬り去る技だったのである。

 ばきばきばきぃ、と木が折れる音を聞いたメグルは起き上がり、オドシシが倒れていることを視界に認めた。瀕死状態だ。

 

「っ……おい、おいおいマジかよ……!!」

 

 ただの”水”と侮っていたところがある、とメグルは認識を改めざるを得なかった。

 水圧を上げれば岩さえも抉る、それが水だ。刃にも、大槌にも、大筒にも変化する。変幻自在。それが水だ。

 ぞっ、とする。今の一撃を人が喰らえば、ただでは済まない。タガが外れたヌシの攻撃だ。体が原型を留めていれば良い方だろう、と考える。

 

「相変わらずヤバい技だわ、むげんほうよう……ランターンの残りの体力が全部削られた……!!」

「……戻れオドシシ!」

 

(確かに()()()()の名に相応しい恐ろしい技だ……! 泡が追尾してくるから、先に割らなきゃどの道ブレスから逃げられないってわけか……でもあんな数の泡、どうやって割れば……!?)

 

(考えろ。考えろ考えろ! シャワーズを倒す必要はないんだ、あの首輪さえ壊せればいい! だからむしろ──此処からが本番だろーが!)

 

「行け、イーブイ!!」

 

 首輪一点狙いならば、むしろこちらの方が手っ取り早い、とメグルは判断する。

 身体の小さいイーブイならば、シャワーズの懐に潜りこんで戦うことが出来るはずだ、と。

 

「狙いはヤツの首輪だ! 気合入れてけよ!」

「プッキュルルル!!」

「ッ……頼むわ、レアコイル!!」

 

 その横にはレアコイルが並び立つ。

 

「”トライアタック”!! 狙撃するのよ!!」

 

 電気、氷、炎、3つの力を帯びたエネルギー弾を放つレアコイル。

 それは地面を跳ねながらシャワーズ目掛けて的確に飛んで行く。

 しかし、再び身体をどろどろに溶かし、その攻撃を躱すシャワーズ。

 流体、個体に自在に変身できる相手に遠距離技は通用しない──

 

「──普段より5割増しで動きにキレが増してる……だけど!」

「誘導できればこっちのもんだ! スピードスターッ!!」

 

 ──流体状態を解除した瞬間に、飛びあがったイーブイが必中の星型弾を放つ。

 それは吸い込まれるようにしてシャワーズの首輪に全て命中した。

 バチッ、バチッ、と紫電を放ちながらシャワーズは「ヴッ」と苦しそうな声をあげて地面に転がる。

 回避と攻撃の間の隙を狙った集中攻撃。それに対して不意を突かれたのだろう。

 しかし。

 攻撃を受けた首輪の宝石が妖しい光を放つと──その身体は再び電気に包まれていく。

 

「ヴッルルルルルルーッ!!」

 

 喉の奥から唸るような声と共に、その身体から電気が放出されていく。

 技の領域にまでは昇華こそされておらず、暴走の苦しみから捻り出されたものではあったものの、それは辺りを強烈に打ち鳴らし、そして焦がしていく。

 

「ダ、ダメだ、これじゃあ近付けない……!? ってイーブイ!?」

「ケッ」

 

 苛立ちを隠せない様子で毛玉を地面に吐くイーブイ。

 その雷を華麗なステップ回避で躱した後、ぴょん、と飛び上がると木の幹に跳ね返るようにして──シャワーズの頭目掛けて頭突きを見舞う。

 

「ヴッ……!?」

 

 怯んで仰け反るシャワーズ。

 気に食わないと言わんばかりに睨みつけるイーブイ。

 試練の後に気圧されていたのは何処へやら、その視線は喧嘩の相手へと向けるものへと変わっていた。

 あるいは──矜持も誇りも無く暴れるヌシポケモンに、向ける畏怖など無いと言わんばかりだ。

 

(体を張って、活路を見出してくれたのか……!?)

 

「……そうだな。ビビってらんねーよな。俺はポケモントレーナー……お前はそのポケモンだ。目の前の相手を、先ずは倒すことを考えれば良いよな!」

「プッキュルルルッ!」

「電光石火だ! お前の頭の硬さなら、ブチ抜ける!」

「プッキュイ!!」

「……援護よ、レアコイル!! トライアタックでシャワーズを撃って!!」

 

 じり、じり、と後ろ足で踏ん張りながらも慣れない電撃を放ち続けるシャワーズ。

 しかし、背中にトライアタックの弾幕が当たったことで体勢を崩してしまう。

 そこにイーブイが首元に潜りこみ、首輪の宝石目掛けて再び頭突きを見舞い、離脱する。

 目視出来る程に、既に宝石にはヒビが入りつつあった。

 

「ッ……よし、このままのペースで行けば──壊せる!!」

「ヴルルルルルルーッ」

 

 しかし。

 最早シャワーズもなりふり構ってはいられないのだろう。

 その周囲に再び泡が大量に浮かび上がった。

 ”むげんほうよう”──オオワザの構えだ。

 泡がこちらに向かってくるまでに時間は掛かるとはいえ、泡はこちらを絡めとる罠であり、そしてシャワーズまでの道を塞ぐ盾となる。

 

(だからこそ、いっぺんに全ての泡を叩き割る必要がある──高火力のポケモンで高威力の範囲技で泡を全て吹き飛ばす!)

 

「メグル君、イーブイを伏せさせて! レアコイルの放電で一気に泡を全部割る!」

「りょーかい!! イーブイ、引っ込んでてくれ!」

 

 フルチャージの放電を放つべく、ユニットを回転させて発電し続けるレアコイル。

 しかし、今度は一気に周囲の温度が下がる。

 

「ッ!?」

 

 ぎぎぎ、と発電のために回転していたユニットの動きが止まる。

 シャワーズがレアコイルの周囲に冷気を集中させたのだ。

 急激に冷やされたことで霜が浮かび上がり、表面が凍り付いてしまう。

 そして──そのまま発電を担っていたU字磁石の動きは完全に停止してしまうのだった。

 

(”むげんほうよう”はレアコイルの放電で倒したって聞いたけど……! リュウグウさん、まさか対策を──)

 

【野生のシャワーズの──】

 

(技ですらないけど……他のポケモンならいざ知らず、()()()()()()()()()()()()()くらいなら出来る……ってことォ!?)

 

「おい、どうしたんだ!? 放電は──!?」

「ダメ! 阻止された! レアコイル!! もう良い!! トライアタックでシャワーズに狙いを定めて!!」

 

 既に水ブレスのチャージの態勢に入ったシャワーズ目掛けて弾幕を放つレアコイル。

 しかし、そこまでに続く道は大量の泡が楯となり、受け止められてしまう。

 もしも今のシャワーズが水タイプだったならば、10万ボルトの一撃で怯ませることが出来ただろう。

 だが、現在の彼女は電気タイプ。10万ボルトは通らない。そして、トライアタック程度の威力ならば泡で受け止めてしまう。

 ヌシのオオワザを破るのは──決して簡単ではない。

 

 

 

──むげんほうよう!!

 

 

 

 大量の泡が付きまとうようにしてレアコイルを、そしてイーブイを取り囲む。

 

「マズい、電光石火で避けろ!」

 

(って、アニメではやってたけど出来るのかよ!?)

 

 流石にそこは俊敏なイーブイ。

 飛んでくる泡を掻い潜るようにして避けていく。

 しかし──死角から大量にのしかかるように飛んできた泡から逃れることは出来ない。

 

(ヌシってマジでバケモンじゃねえか……! あんなの、大量のドローン兵器を一括で操ってるようなもんだろ……!?)

 

 メグルも、そしてユイも、大量の泡に阻まれ、最早2匹をボールに戻すことさえ叶わない。泡は破裂する度に新しいものがくっついていき、遂には完全に身動きがとれなくなってしまう。崩れたおやしろは、大量の泡で溢れており、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

 だが、それは──シャワーズの放った水の柱に、一薙ぎで壊されるのだった。

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