ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第6話:合成獣の脅威

 ──タイプ:ゼノ。

 それは、幻のポケモン・ミュウを再現する為の万能細胞を生み出す過程で製作された、姿を変える人工ポケモン。

 しかしこの個体には体に直接パッチが埋め込まれているのが見える。

 そればかりか、目は禍々しく赤い光を放っており、かつてメグル達が遭遇した個体よりも一回り以上大きな体躯は、最早──怪物と言う言葉が相応しい。

 

 

 

「バギュオオオオオオオオオォォォォーンッ!!」

 

 

 

【タイプ:ゼノの わざマシン125(かえんほうしゃ)!!】

 

 

 

 庭園に炎が吐き出されたことで、辺りは一瞬で火の海と化す。

 だが、そんな暴挙を許すキリとノオトではない。

 

「火力ヤッバ!? コイツ、こんなに強かったの!?」

 

(グローリオ先輩が隠し持ってた個体とは比べ物にならないっ!!)

 

「──ルガルガンッ!! 出番でござるよッ!!」

「──お前の出番ッス、ジャラランガッ!!」

 

 岩狼、そして鎧の如き鱗を纏った竜が姿を現す。

 すぐさまジャラランガが腕を叩きつけて鱗をタイプ:ゼノの足元に突き刺す。

 そこに気を取られた隙にルガルガンは距離を詰めて、首元の岩を思いっきり伸ばして切りつけるのだった。

 

 

 

【ルガルガンの アクセルロック!!】

 

 

 

 目にも留まらぬ早業に、炎を噴きだすのが止まるタイプ:ゼノ。

 すぐさま空中に飛び上がって距離を取ろうとするが──ルガルガンは逆にタイプ:ゼノから距離を取っていく。

 

「ノオト殿!!」

「撃ち落とすッ!!」

 

 ジャラランガが鱗を擦り合わせると、それを合図に遠くに突き刺さった鱗が爆ぜた。

 

 

 

「──”スケイルノイズ”!!」

 

 

 

 不愉快な不協和音が爆音で垂れ流され、タイプ:ゼノは聴覚にショックを受け、墜落していく。

 だが、これで終わりではない。火竜の姿は、毒々しい色の煙へと変わっていき、地面を這いずり回って迫る。

 稲光放つ毒霧の影が、その場の敵対者たちの命を奪うべく迫る。

 

「げげげげげがーっっっ!!」

 

 電気を放ちながら霧はジャラランガ、そしてルガルガンを追い詰めていく。

 うっかり吸い込めばただでは済まない。しかし──

 

「それならボクに任せて! ニドキング、君の出番だかんねっ!」

 

 デジーの投げたボールから飛び出したニドキングは毒霧も恐れずにタイプ:ゼノに突っ込んでいく。

 相手が毒/電気タイプであることは既に予習済み──そればかりか、デジーはグローリオの所持していた個体からタイプ:ゼノの力を知り尽くしているのだ。

 ニドキングは、タイプ:ゼノの三形態全てに対して優位に立つ事が出来る。

 リザードンとゲンガーの姿ならば地面技が通り、ピクシーの姿でも格闘技を半減に出来る。

 目論み通り、ニドキングは迸る電撃さえも踏み抜き、そして足元から赫熱を湧きたたせるのだった。

 

「”だいちのちから”ッ!!」

 

 地面が崩れ、地を這う毒霧を飲み込んでいく。

 だが、危機を察知したタイプ:ゼノは、空中へ逃げると、今度は巨腕を持つ妖精の如き怪物と化す。

 そしてぐるぐる、と回転しながら勢いを付けてニドキング目掛けて拳を向けて迫る。

 

「ぴぽぽぽぽぽ!!」

「ピクシーみたいになった! じゃあ、一騎打ち!! ”きあいだま”ッ!!」

 

 空中から飛んでくるタイプ:ゼノは良い的だ。

 ニドキングは青白い闘魂の弾を放ち、それを迎撃してみせる。

 だが──それを受けても尚、タイプ:ゼノは止まらない。

 

「ジャラランガッ!! ”はどうだん”!!」

「ルガルガン、”じゃれつく”でござるッ!!」

 

 更に追撃と言わんばかりに、両サイドから攻撃が飛ぶ。

 それを受けて漸く、勢いが弱まり──合成獣は地上に落下するのだった。

 しかし──

 

 

 

 

「ばぎゅおおおおおおおおおおおおおおおおおんッッッ!!」

 

【ヌシ咆哮:ポケモン達は怯んで動けない!!】

 

 

 

 ──衝撃波がポケモン達を襲う。

 そして、腹の底から生存本能を刺激させられるほどの咆哮により、身震いが止まらない。

 忍者のポケモンとして厳しく訓練されたキリのルガルガンでさえも──身動きを止めてしまうのだった。

 

「ッ……ヌシと同等の破壊力の叫び……!!」

「俺っち達ゃ、あいつを追い詰めてたんじゃなくて……むしろ本気にさせちまったみてーッスね!!」

 

(恐らく此処までは此方の戦力を測るための行動でしかない……!!)

 

 キリは息を呑む。

 タイプ:ゼノは非常に高い知能を持つ人工ポケモンだ。

 此処まで三形態を見せた上でこちらの戦力を測っていたに過ぎない。

 此処まで弱点の攻撃を叩き込んでいるにも関わらず全く倒れる気配がないのも、相手が規格外のサイズを誇る個体故か。

 あるいは、向こう側でそのように遺伝子を調整されたのか。定かではないが──

 

「ッ!? 速──」

 

 一瞬でタイプ:ゼノはジャラランガに距離を詰める。

 そして殴りかかる瞬間に、あのピクシーの姿と化しており──鉄拳を叩き込むのだった。

 

 

 

【タイプ:ゼノの わざマシン127(じゃれつく)!!】

 

 

 

 効果バツグン、4倍弱点のフェアリー技。

 それをまともに受けて、ジャラランガは斃れてしまうのだった。

 

「ジャラランガ!!」

 

(とんでもない速度!! いや──移動を一瞬ゲンガーの姿で行い、攻撃の瞬間ピクシーの姿となった──)

 

 そして、ジャラランガを殴り飛ばした勢いで振り向いたタイプ:ゼノは、今度は火竜の姿へ戻り、辺り一面に炎を吐き出そうとする──

 

「──止めろルガルガン!! 被害が大きくなりすぎるでござるッ!!」

「がるるるがんッ!!」

 

 ──そこにルガルガンが詰め寄り”ストーンエッジ”で撃墜を図る。

 更にキリも袖から鉄の糸を放ち、拘束しにかかる。

 しかし、岩の刃と鉄糸が向かった途端、火竜の姿は消えており、今度は毒霧の影となっていた。

 岩の刃は摺り抜けて何処かへ飛んで行き、ワイヤーもまた通り抜けてしまう。

 

(不発!? 姿を変えられた所為で当たらなかった!!)

 

 飛び出したルガルガンは、もう止まらない。そのまま稲光の迸る毒霧に突っ込むことになってしまう。

 

 

 

【タイプ:ゼノの わざマシン126(10まんボルト)!!】

 

 

 

 思いっきり電撃が流し込まれ、ルガルガンの絶叫が響いた。

 更に、黒焦げになったルガルガンを見るや、今度は上空へと向かい──ニドキング目掛けてタイプ:ゼノは大の字の炎を放つ。

 

 

 

【タイプ:ゼノの わざマシン141(だいもんじ)

 

 

 

 滾らせた特大級の炎。

 サイズは庭園そのものを飲み込まんとする勢いだった。

 そのまま大の字に広がった炎を蹴り飛ばし、ニドキング目掛けて放つ──

 

「ニ、ニドキング──!?」

「いかんッ逃げるぞ──!!」

 

 キリがデジーを抱きかかえ、その場を脱さなければ巻き込まれている程だった。

 間もなく灼熱がその場を焼き払う。

 後には、丸焦げになって煙を噴き出すニドキングだけが残っていた。

 

「ッ……そんな、ニドキングまでやられるなんて……!!」

「人間では到底耐えられぬ火力……」

「なんてヤツッスか……! 話がちげーッスよ!」

 

 炎の中、咆哮するタイプ:ゼノ。

 ニドキングをボールに戻したデジーは、圧倒的火力、そして柔軟性を持つタイプ:ゼノを前に歯噛みする。

 このまま放置していれば、いずれ庭園の外に出て町に入ってしまう可能性がある。

 そうなる前に、あの合成獣は此処で倒さなければならない。

 故にデジーは思案する。今までの経験を用いて、あの怪物を止める方法を考える。

 

「作戦を考えるッスよ」

「既に応援は呼んでいるが……あの化物はヌシクラス、拙者たち以外で相手になるか」

「タイプを変えられる上に、身体の形質まで変わるから、有効な攻撃を全部透かされちゃうんだよね……」

 

(あのパッチは本来、タイプ:ゼノに持ち物として持たせるモノだ。だけど、身体の中に埋め込まれてるなら”トリック”や”すりかえ”で奪えない)

 

(となると、それ以外の方法でタイプ:ゼノの足を奪わなきゃいけないわけだけど……”でんじは”だと、あのゲンガーの姿に変化されちゃうだろうし)

 

(……いや、ある。ちょっと強引だけど!!)

 

「……ねえ、二人共。あいつを何とかする方法、無いわけじゃないんだけど」

「何スか!? 超スピードで動かれて、超パワーでぶんなぐられて、超火力で焼き払われる……対処のしようがあるんスか!?」

「ならば合わせる」

「マジッスか!? キリさん、でも──」

「奴を止められるのは我々だけでござるからな」

 

 キリが投げたのは──次なるボール。

 飛び出したのは、タイプ:ゼノの速度にも対応できるメテノだ。

 

「メテノ! 此処はお前の出番でござる!」

「しゃらんしゃらん!」

「とりあえず、タイプの不利を取られないなら──コノヨザル、頼むッス!!」

「──ゴルーグ、君にお願いっ!!」

 

 デジーが繰り出したのはゴルーグ。巨大な岩の兵士の如きポケモンであり、彼女が育てていたゴビットが進化した個体である。

 獄炎を放ち続ける合成獣を前に、三人は並び立ち、再度攻撃に入る。

 

「んで、俺っち達はどうすれば良いんスか!?」

「死ななきゃそれで良いよ!」

「え”ッ」

「耐久が高い相手には、これに限るよねッ!」

「ノオト殿。ふたりで抑え込むでござる。恐らく最適解でござるからな!!」

「ええ……!?」

 

 ノオトが困惑する中、コノヨザルとメテノはタイプ:ゼノに向かっていく。

 灼熱が二匹を焼き払うが──怒りに燃えるコノヨザル、そして外殻をパージしてコアの姿となったメテノは止められない。

 タイプ:ゼノが無意味と言わんばかりに、全身を毒ガスに変えて、二匹を飲み込んだその時だった。

 

 

 

「──ニドキングの仇、取るよ! ”のろい”!」

 

 

 

 ゴルーグの身体の前に巨大な五寸釘が現れ、打ち込まれる。

 そして、毒ガス状態のタイプ:ゼノの身体にもまた、五寸釘が現れ、打ち込まれるのだった。

 この技は自らの体力を犠牲にして、相手の体力を継続的に削り続ける技。

 どんなに耐久力が高くても関係ない。この技は相手の体力を割合で減らすので、防御力も意味を成さない。

 そればかりか、仲間をやられたゴルーグの怒りが、呪詛と化してタイプ:ゼノを苦しめていく。

 

「成程考えたッスね!! これなら俺っちたちは、耐えきれば良い!!」

「尤も、これ以上被害は増やさん!! メテノ、”メテオビーム”!!」

「コノヨザル、”ふんどのこぶし”!!」

 

 巨大な霊体の拳が、そして極光が同時にタイプ:ゼノを狙い撃つ。

 すぐさま火竜の姿になって空へと逃れるタイプ:ゼノだったが、”のろい”によるダメージを受けたことで更に苦しんで地面へと落ちる。

 

「ゲームでもお決まりっ! 超耐久相手には割合ダメージが効果的ってね!!」

「ぴぽぽぽぽ!!」

 

 とうとうなりふり構わなくなったのか、ピクシーの姿で腕をぐるぐると振り回し襲い掛かる。

 だが、この間にも”のろい”によるダメージは続いていた。

 更に、地面を踏みしめた途端、音を立てて足元が起爆する──

 

「ルガルガンの”ステルスロック”か!!」

「仕掛けておいたでござるよ。こうなることを見越して!!」

 

 すぐに毒霧の姿となるタイプ:ゼノ。

 だが、当然それが隙を生んだ。

 もうコノヨザルと、メテノは回避不能の位置にまで迫っていた。

 

 

 

「”ふんどのこぶし”ッ!!」

「”パワージェム”ッ!!」

 

 

 

 同時攻撃が突き刺さる。

 霧の身体さえも捕らえる霊体の拳。

 そして、邪悪を晴らす宝石の光。

 その二つがタイプ:ゼノに致命傷を与える。

 毒霧は固まっていき、元の火竜の姿へと戻り、倒れ込むのだった。

 すぐさまキリがボールを投げて、タイプ:ゼノをボールの中へと収める。

 

「なんとか捕まえられたッスね……」

「理性無き人工ポケモン……人に造られた業……これが量産され、人を傷つけている世界があると考えるだけでゾッとするでござるな」

「あ”」

「どうしたんスか!?」

「裂け目……なくなってる……」

 

 デジーが目をカッ開き、震えながら真上を指差す。

 戦いに夢中になっていて気付かなかったが、既にあの巨大な裂け目は跡形もなくなっていた。

 

「非常に不安定な代物のようでござるな」

「どーしよーっ!! 帰れなくなっちゃったんだけどー!?」

「おっと帰すわけねえっしょ、あんた妙な事を口走ってたし」

「まあまあ、落ち着くでござるよノオト殿。彼女が時空の裂け目の先、つまり別世界からやってきたのは確実。そこでは我らとは違う歴史が紡がれていてもおかしくはないでござる」

「よかったぁ、()()()()()()()話が分かって助かるっ!」

「オイコラ」

「でも、それどころじゃないんだよ……ボク、一緒に落ちた仲間を探してるんだ。この辺に居ないかな?」

「仲間?」

 

 デジーは頷く。

 

「……ボク達は、多分、違う世界のサイゴクから、このサイゴクに飛ばされたんだと思う」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──事の発端に遡る。

 イクサ達は砂漠の地方・オシアスから、列島のサイゴクに留学してきた学生である。

 彼らは、試練の課題をクリアする為に各地を回っていたのだが、突如現れた巨大な裂け目を前に──為す術なく吸い込まれてしまったのである。

 最初に落ちたのはイクサだった。

 そして、彼を追って、他の面々も次々に裂け目へと飛び込んだのである。

  

 

 

 ※※※

 

 

 

「なーるほどなぁ、それで他の仲間とはぐれちまったのか」

「はい……皆僕を追いかけて落ちていったところまでは見えたんですけど、途中で空間がねじれて……」

 

 前の時はこんな事なかったのになぁ、とイクサは呟く。

 通常、時空の裂け目は同じ穴に落ちれば同じ場所に繋がる。

 しかし今回、イクサは他の仲間とこうしてはぐれてしまっているのだ。

 出されたチョコ菓子をポリポリと食べるイクサは、他の仲間の顔を思い浮かべる。

 皆、何処で何をしているだろうか、と。

 

「せめて僕が居れば皆を守ってあげられるのに……」

「探そうぜ、協力する」

 

 メグルは、イクサの胸に拳を重ねてみせた。

 

「裂け目が一つの事件で繋がってるなら……俺達が協力しねえ理由は無いだろ」

「メグルさん……!」

「大抵こういう時は、他の場所でも似たような事が起こってるはずだ」

「いや、そんなに都合のいい話があるでしょうか……」

 

 

 

 ロトロトロト……。

 

 

 

 メグルのスマホロトムが鳴りだす。着信だ。

 すぐさま期待に満ちた表情で彼は電話を取った。

 

「来た来た! ノオト! ノオトだな!」

「ノオトさん……サイゴクのキャプテンか!」

「おいノオト! 緊急事態だ、アルカのヤツが──」

「こっちも緊急事態なんスよ! でっかい時空の裂け目が現れて、そこから女の子が──」

 

 「な?」と同意を求めるようにイクサへと視線を向けるメグル。

 

「……どーやら、割とトントン拍子に話が進みそうだ……」

「ぱもぱもぉ……」

 

 一通り話し終えた後──彼は、スマホロトムをズボンのホルダーに差し、イクサに改めて向かう。

 

「──サイゴクに行くぞ、イクサ」

「えっ!? でも、アルカさんは──」

「サイゴクでも時空の裂け目が出た上に、変な奴らがうろついてたみたいだ。アルカを攫った奴と同じ一味の可能性が高い」

 

 メグルの目は、先程とは打って変わって真剣なものになっている。

 何処か腹をくくったような、覚悟を決めたような面持ちだ。

 

「どっちみち、あいつらは既に時空を超えてヒャッキに逃げてるはずだ。此処で場所がどうこうって言っても意味が無いんだよ。それなら俺は、より可能性が高い方に賭ける」

「アルカさんがいる場所に辿り着ける可能性に、ですか」

「ああ。それともう1つ朗報がある」

「何ですか?」

「お前の仲間って……”レモン”と”デジー”って名前で良いよな!」

「……っ!」

 

 イクサは目を輝かせる。

 居る。確かに居る。

 とても遠い場所だが、彼女達は無事だった。

 

 

 

「はいっ! サイゴクに行きましょう、メグルさん!」

「そう来なくっちゃなッ!」

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