ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第9話:大混戦

「お、おい、どういうことだ……!?」

「殺人キノコなのですよ……!! 殺人キノコに、内側から食べられちゃったのですよ!!」

「ヒメノ殿、落ち着くでござるよ」

「これで落ち着いていられるわけないのですよ!? 人一人死んでるのですよ!?」

「1つ……我々はまんまとハメられたのでござるよ」

 

 キリが指差す先には、山を越えて大量の鳥ポケモン達が飛んでくる。

 電気を身体に帯びたグンカンドリ・タイカイデンが群れを成して、しかも人を乗せてやってくる。

 

「……あれは──ヒャッキの援軍、じゃねえよなぁどう見ても!?」

「2つ──あのマシェードを見るでござる」

 

 マシェードの傘のてっぺんには、石のようなものが埋め込まれていた。

 キャキャキャ、と甲高くキノコの怪物が笑うと、再び菌糸が石に纏わりついていき──その姿はムギのそれへと変貌していく。

 そして、もう一度此方を嘲笑うと、再び元のキノコの姿に戻るのだった。

 

「……キツネに化かされた……いや、キノコに化かされたってところでしょうか」

 

 

 

「怖いねぇ~~~!! サイゴクの英雄……とやらが勢ぞろい、みたいだねぇ~!!」

 

 

 

 声が飛んでくる。

 タイカイデン達の群れを先導する一匹が凄い勢いで降りてきた。

 マシェード達を教導する怪しげな魔術師・ワスレナだ。

 

「ッ……貴方はあの時の、マシェードの魔法使いなのです!?」

「貴重な人質、殺しはせんよ……!!」

「どっからどう見ても死んでるのです!!」

「記憶を映し出す石、そしてあのマシェード……」

 

 ぶつぶつ、とイクサが何かを呟くと──そのまま得心したように言った。

 

「成程、やっと分かりました。最初から本物のムギさんなんて居なかったんですよ」

「はぁ!? 何言ってんだ!?」

 

 その言葉に驚いたのはメグルだ。確かに今まで普通に接していたし、さっきまでは寝床で語り合ったくらいなのに、「本物など居なかった」というのは聊か乱暴すぎる結論のように思えたからである。

 

「レモンさんが言ってました。相手の記憶を読み取る魔法を使う魔術師が居る、と。貴方なんですね?」

「おっとぉ、あの時の女の仲間かねェ? 洞察力、怖いねェ~?」

「さっきの変身まではマシェードの能力。でも、その偽物がムギさんの記憶を持ってたのは、貴方の力ですよね」

 

 姿を似せただけではガワを被っただけの人形しか現れない。

 だからもう一工夫必要となる。それが──ワスレナが操る記憶魔術だ。

 

「……サイゴクに逃げ込んだ、キツネのガキ。捕まえたのは良いが、何処の裂け目を使ったのか吐かなかったからねェ……だから記憶を写し取った。この”わすれな石”に!!」

 

 結果。

 ”わすれな石”を取り込んだマシェードが手に入れたのは、ムギの持っていた記憶だ。

 それを核にして擬態を行えば、現れるのは──ムギの記憶を持ったニセモノである。

 後は、記憶を持ったニセモノを適当に追いかけて逃がせば、勝手に裂け目を通って彼らの拠点を教えてくれるというものであった。

 

(そして! オジサンは、”わすれな石”の場所をしっかり把握できる……帰ってきたニセモノの反応を追えば、奴らの拠点に辿り着く!! 回りくどいが、これが一番確実なんでねぇ……!!)

 

 こうしてついでに協力者も多数連れ込んで、偽物はヒャッキに戻って来た。

 メグル達と溶け込んでいる間にもずっと、自らの居場所を主人に伝え続けていたのである。

 そうなれば後は始末するだけであった。外の世界の脅威であるメグル達を、まとめて此処で処分する為にワスレナはやってきたのである。

 

「ということは──その後に本物を始末したのです!? 殺人キノコの胞子で!!」

「いや、だからあのガキんちょは始末してないんだよねェ……発想が蛮族のそれなんだよねェ!?」

「貴様にだけは言われたくないでござるな」

「なら、殺人キノコの胞子を集落に撒くつもりだな!?」

「いや、だからマシェードの胞子じゃあ人は殺せないんだよねェ!? 何!? 君達今まで何と戦ってきたの!? 怖いねェ!?

「こちとら今まで町一個ブチ壊すようなテロルしてくる連中とやり合ってきたんだよ!! ナメんな!!」

「質量爆弾もあったでござるな」

「おやしろ氷漬けもあったのですよ」

 

(あれ? もしかして、もしかしなくてもメグルさんが今まで戦ってきた相手ってヤバイ奴等だったのか……!?)

 

 今まで自分が相手にしてきた敵が可愛く見えてくるイクサであった。

 正直、テング団もオーラギアスもどっこいどっこいなのであるが。

 

「でも始末されるのはお前達の方!! サイゴクの英雄だか何だか知らないが、そいつら全部、このワスレナが潰してやろうかねェ!!」

 

 電気海鳥の大群が次々に地上へ迫る。

 メグル達だけではない。彼等の狙いは集落の住人達やポケモンだ。

 すぐさま見張り台の銅鑼が鳴り響き、警戒態勢が整う。

 だが、もう遅い。タイカイデン達の群れは、兵を伴って迫ろうとしていた──

 

「……残念だけど、そうはならないと思うよ」

 

 

 

【ハタタカガチの ひかりのゆみや!!】

 

 

 

 ──迫るタイカイデン達に稲光が落ち、次々に墜落していく。

 あれだけいた大群は、この初動の雷撃で全て叩き落とされていくのだった。

 迎え撃つは──蜷局を巻き、雷雲を身に纏った蛇の巨神。

 そのてっぺんに仁王立ちするのは、レモンだった。

 

「たっくさん、おいでなすったわね──ッ!!」

 

 迫りくる鳥ポケモン達は、ギガオーライズしたハタタカガチにとっては餌も同然だ。

 全て、飛んでくる”ひかりのゆみや”を躱すことも出来ないまま、煙を上げて落ちていく。

 平時のオオワザを通常技のように振り回せるのは、大出力に特化したフェーズ2の特権であった。

 

「……悪いわね。あんた達にはここで堕ちて貰う」

「な、なんだァ、ヘビの化物!!」

「こっちに電気は効かんはずなのに!? 何故──!?」

 

 タイカイデンに乗った魔術師たちは旋回して散り散りになっていく。

 本来通用するはずがない電気を前に、彼等は恐れ慄くのだった。

 

 

 

【”特性:ハイボルテージ”】

 

【相手の特性を無視して攻撃する。相手のタイプと特性を無視して、相手を麻痺状態にする事が出来る。】

 

 

 

 

「フェーズ2になったハタタカガチに、小細工は通用しない」

 

 蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく魔法使いたちの軍勢。

 だが、それらを逃がすことはしない。ハタタカガチの電球が光り輝き、無数の光の弓矢を空から放つ。

 

 

 

「落とされる覚悟があって此処に来たのよね? 神鳴の何たるかを教授してやろうかしら──オオワザ”らいごうのゆみや”」

 

 

 

【ハタタカガチの ”らいごうのゆみや”!!】

 

 

 

 

 神鳴の鉄槌がタイカイデンの軍勢を一瞬で黒焦げにして叩き落としていく。

 流石に魔法使いの軍勢と言うことだけあって、雷だけで死にはしない。しかし、タイカイデンは雷に耐える事は出来はしない。

 次々に黒い軍勢は落ちていく──

 

「つーわけで、後はテメェが孤軍奮闘するっきゃねえってわけだ」

「……怖いねェ~」

 

 堕ちていく部下たちなど気にも留めず、ワスレナは空に石を何個かばら撒いた。

 すぐさまキリが飛び掛かり、鉄糸を放つが──それは、マシェードが地面から生やしたキノコによって阻まれてしまう。

 そればかりか、胞子は鉄糸を伝って菌の糸と化し、キリの方へ向かっていく。

 危機を感じた彼女は鉄糸を切り離して飛び退いた。

 鉄糸は──錆びついていき、朽ち果てていく。

 

「おっと、カンが良いねえ()()()()……」

「ッ!!」

 

 仮面の下の額に汗が伝う。

 この男、想像以上のやり手だ、と直感した。

 鉄糸による攻撃が通用しない上に、ポケモン達を侍らせて接近を許さない。

 そればかりか、仮面の変声機で声まで変えているキリが女であることを見抜いた。

 何故彼が軍団を率いていたのか一瞬で理解させられる。

 

「……切れ者でござるな」

「キングは最初に取れない……ククク、先ずはたっぷり遊んでもらわないとねぇ~!!」

 

 石が二つ、空中で音を立てて割れる。

 そして──そこから黒い靄が噴き出し、そこから巨大なポケモン達が次々に現れるのだった。

 歯車が組み合わさった星見磐と、それを従える生徒会長。

 鏡の羽根を持つ大烏と、ヒャッキを壊す天狗たちの首魁。

 

「──死ぬまで戦わせろ」

「また私の邪魔をするのですね、転校生──ッ!!」

 

【アーマーガア(ヒャッキのすがた) わるがらすポケモン タイプ:悪/飛行】

 

【オオミカボシ オーデータポケモン タイプ:鋼/エスパー】

 

 かつて、メグル達が、そしてイクサ達が死力を尽くして戦った敵が、全て──記憶のままに再現される。

 それらが全て、ワスレナの下に立つのだった。

 

「タマズサにアーマーガア……!?」

「アトム会長……!! こんな所でまた会うなんて……!!」

「記憶を読み取って現れる紛い物共……と、切って捨てるには惜しい程に精巧でござるな」

「悪夢みたいな光景なのです……!!」

 

 流石のメグルとイクサも慄き、後ずさる。

 いずれも、結局の所自分達の力だけでは撃破することが出来ず、真っ向からは勝つことが叶わなかった相手だ。

 ポケモンだけではなく、随伴しているトレーナーも凄まじい強さを持つ。

 テング団の首魁・タマズサ。その暴力的な屈強さと、戦乱を求める享楽的な性格でヒャッキとサイゴクの両方に混乱を齎した男。

 スカッシュアカデミア生徒会長・アトム。怨敵であるレモンに復讐心を燃やしており、様々な策略でイクサ達を追い詰めた計略家。

 アーマーガアを倒せたのは、天敵であるデカヌチャンが乱入してきたからであるし、オオミカボシとアトムは脳髄を繋ぎ合わされた所為で半ば弱体化したも同然だった。

 そしてワスレナは、いとも容易く彼らを再現し、そして顕現させてみせたのである。

 

「……記憶魔術師のワスレナ……何故俺がクロウリー様から重宝されてるか、これで分かったかねェ~?」

「ッ……!! 全員、散開するでござるッ!! 1人だけでは手に余る相手、束になって来られては此方が負けるぞ!!」

「おいおいおい、何だか楽しそうな事やってるじゃねえか。久々にブッ壊してやろうかね?」

「転校生……貴方はやはり、私の邪魔をするのですねェ!!」

 

 タマズサとアトムが両方共同時にオージュエルを起動させる。

 オオミカボシは体内のオシアス磁気を解放させ、そしてアーマーガアの身体は肥大化していく。

 

 

 

「──テメェらは俺様を愉しませてくれるのかよ? ギガオーライズ”マガツカガミ”!!」

「──ギガオーライズしなさい、オオミカボシ!!」

 

 

 

 巨大な鏡を浮かび上がらせた鎧カラスは、すぐさま空に居る敵に目標を付けるとタマズサを乗せて飛んで行く。

 雑魚をあらかた片付けたハタタカガチだったが、新たな脅威を認めると、そのまま咆哮して突っ込むのだった。

 

「またヤバそうなのが増えてる!!」

「テメェが一番強そうだなァ!! ブッ壊させろやァ!! カッカッカ!!」

「ッ……ハタタカガチ、全力で応戦するわよ!!」

「ぎゅらるるるる!!」

 

 そして、一方のオオミカボシもまた、ギガオーライズを解放した状態でキリの方に迫る。 

 瞬間移動を繰り返し、”ラスターカノン”を放つ姿はまさに殺りく兵器。

 キリはバンギラスを繰り出して応戦するが、とてもではないが速度で追いつけない。

 避けた場所に向かって的確に狙撃が繰り返される。

 

「更にもっと追加だねぇ~~~!!」

 

 ”おっかな石”を空に放り投げるワスレナ。

 砕けた石からは靄が噴き出し、そこからは番う竜の骸が赤と青のパルスを纏い、顕現するのだった。

 その姿を見てメグルの身体は更に心底冷え切っていく。

 

「ウッソだろオイ……よりによってお前らかよ……!!」

 

 

 

「ひゅあああああああああああああん!!」

「しゅあああああああああああああん!!」

 

【ヒコマヤカシ げんむポケモン タイプ:ゴースト/ドラゴン】

【ヒメマボロシ げんむポケモン タイプ:ゴースト/ドラゴン】

 

 

 

 

「じゃあ、あれがサイゴクに伝わる竜骸……!? 本当にそのままラティアスとラティオスじゃないか……!!」

 

 イクサも話には聞いていたが、相対する前に彼らがオーラギアスに吸収されてしまったがために終ぞ会う事が無かった相手だ。

 

「前に俺達が鎮めたのに……掘り起こしてほしくねえモンから的確に掘り起こしてきやがって!!」

「これが記憶魔術の神髄、というものだねェ~~~!!」

「……退くのですよ、お二人共」

 

 メグルとイクサの間から、割り込むのは──ヒメノだ。

 散々コケにされた鬱憤が溜まっているのか、彼女の視線はワスレナに向いていた。

 

「あの男は私が倒すのです。二人は、竜骸を頼むのですよ」

「待て待てヒメノちゃん、まさかあいつとタイマンするのか!?」

 

(ノオトとデジー様は、集落に入ってくる敵を駆逐するよう、既にキリ様が指示を出している──)

 

 そのキリは、瞬間移動とレーザーの連射で被害を拡大させかねないオオミカボシを相手取っており、どの道ワスレナの応戦は出来ない。

 

「どっちにせよ、このままではキャプテンの面子丸つぶれなのですよ!!」

「あっ、飛び出すんじゃねえよ!!」

「メグルさん──竜骸が二匹共来ますッ!!」

 

 ヒメノとすれ違う形で、竜骸の番がメグルとイクサに迫る。

 とてもではないが彼女を応援しに行ける状態ではない。

 幻夢の竜は片手間で相手取れるほど弱くはない。

 

「おーい!! ラティアス!! 聞こえるか!! 俺だ!! 俺!! 覚えてねえのか!?」

 

 メグルは呼びかける。

 だが──彼女は一向に応える様子が無い。

 所詮は記憶から作り出された紛い物。ワスレナは、それを都合よく人形のように扱っているに過ぎない。

 だからヒメマボロシはメグルの声が響かない。

 

「ダメか、先ずはこいつらどうにかしねえと……!!」

「相手がふたりなら、こっちもコンビネーションです!! タイプは確か──」

()()()()()()だ!!」

「それなら──これで行きます!!」

 

 二人は同時にボールを投げる。

 竜骸たちにタイプ相性で有利を取れるポケモン達を選ぶ。

 

「ニンフィア!! お前の出番だ!!」

「サーナイト!! お願いするよ!!」

 

 ドラゴンが相手ならば、フェアリータイプをぶつけるのは定石中の定石。

 しかし、ヒメマボロシとヒコマヤカシの火力はドラパルトとは比較にならない程に高い。

 故に、イクサは考える。如何にして、この難敵を倒すかを。

 

(フェアリータイプの此方に対し、当然竜骸はそれ以外の技で攻撃してくるはずだ。サーナイトの弱点を突かれてしまう)

 

(それも当然織り込み済みなんだろ、イクサ)

 

(だから、奴の攻撃を引き付ける──)

 

 前に飛び出るサーナイト。 

 イクサとの心は通じ合っており、互いが何をするつもりなのかは分かり切っている。

 ヒコマヤカシとヒメマボロシは本能的に自らの障害になりえる妖精たちの気配を感じ取ると、大量のシャドーボールの弾幕を作り出すのだった。

 それらをサイコパワーで捉えるサーナイト。止める事は出来ないが、軌道を操作することで自分に全て引き寄せる事は出来る──

 

 

 

「──オーライズ、”タギングル”……そして、”ひかりのかべ”だ!!」

 

 

 

 そして、影の弾は全てサーナイトの掌へ吸い込まれていった。

 ノーマルタイプに、ゴーストタイプの技は効果が無い。

 そして、彼女の目が光り輝くと、今度はニンフィアと彼女の正面に光の障壁が展開される。

 それでも尚、容赦なく降り注ぐ弾幕だが、今度はその嵐の中を、とびっきり凶悪な顔をしたニンフィアが突っ込んでいく。

 弾幕の隙間を縫って突っ込んでいき、避けられないならば障壁でいなしていく。

 

 

 

「あんな幻、吹き飛ばせ!! ニンフィア、ハイパーボイスだッ!!」

「ふぃるふぃーっ!!」

 

 

 

 かつて、デイドリームで出会い、短い間ながらも交流を結んだポケモン。 

 その紛い物を見せられ、ニンフィアが激怒せぬわけがなかった。

 腹から絞り出した大音声。それは、二匹の紛い物を吹き飛ばす──

 

 

 

「しゅああああああああん!!」

 

 

 

 ──はずだった。

 ヒメマボロシの目が赤く輝き、障壁が展開される。

 元々、エスパータイプの彼等にとって補助技を使うのは造作もないことだった。

 ニンフィア渾身の叫びはあっさりと防がれる。

 そして突っ込むのは当然、ヒコマヤカシ。

 番の補助を受け、己の速度を限界まで高め、分身を4つも作り出すとニンフィアとサーナイト目掛けて肉薄するのだった。

 その腕には、煌々と輝く青い閃光が鋭く走っていた──

 

 

 

【ヒコマヤカシの ミストゴースト!!】

 

 

 

 ──分身した4体から同時に閃光が放たれる。

 爆発が巻き起こり、二匹の身体は吹き飛ばされるのだった。

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