ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第11話:戦鬼の頂点

 ※※※

 

 

 

 オオワザ”ミストゴースト”は、分身した後、高出力のビーム砲を四方八方から射出する。

 辺りからは煙が上がり、そこには──ニンフィアの姿はなく。

 

「フィッキュルィィィッッッ!!」

 

 気付けば──激怒したニンフィアが跳び上がって竜骸の首元に喰らいついていた。

 

「しゅああああああああ!?」

「え、ウソ、あれ喰らって平気なんですか彼女!?」

「うちのお姫様はしつこくってな!! 後、”ひかりのかべ”のおかげでダメージが軽減された!!」

「ですけど、オオワザですよ仮にも!? でも、ニンフィアの特防は高いからこんなものなのか……!?」

 

 そう戸惑いながらも、サーナイトは”でんじは”を放って二匹の竜骸の動きを止めてみせる。

 既にイクサも、二手三手先を読みながら次の行動に移っていた。エスパータイプお得意の瞬間移動で回避してみせたサーナイトはともかく、ニンフィアがこれを耐えきってみせたのは意外だったのである。

 

「イクサ、壁を何とか出来るか?」

「何とかしてみせますッ!!」

「その言葉が聞きたかった!!」

 

 サーナイトを戻し、イクサは次の手持ちを投げる。

 オーライズはもう使えない。チャンスは一度だけだ。

 

「パモ様、お願い!!」

「ぱもーぱもぱもっ!!」

 

 並び立つ相棒たち。

 ニンフィアと目配せしたパーモットは頷き、動きが鈍った竜骸たち目掛けて突貫するのだった。

 

「技をビルドして……パモ様、”かわらわり”!!」

「ニンフィア、まとめて片付けるぞッ!!」

 

 突っ込んだパーモットは展開された壁を手刀で叩き割ると、その勢いで空中に跳ね上がる。

 当然、二匹の狙いはパーモットに集められ、シャドーボールの弾幕が撃ち放たれんとする。だが、麻痺で鈍った体は重く、パーモットへの攻撃が届く前に──

 

 

 

「ニンフィア、”はかいこうせん”ッ!!」

 

【ニンフィアの はかいこうせん!!】

 

 

 

 ──凶悪リボンお姫様の巨砲が二匹を塵も残さず消し飛ばしてしまうのだった。

 夢も、幻も、全て虚ろへと消えていく。それが本来あるべき場所へと。

 

「しゅああああん……!!」

「……あいつらは、今も仲良く空を飛び回ってんだよ。今更、胸糞の悪いモンを──見せんじゃねえ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ルカリオ、”ラスターカノン”ッ!!」

 

 

 

 巨大な光の弾は──閃光に撃ち抜かれて爆ぜた。

 

「ッ……! 何者だね!?」

 

 言い終わる間に、追尾するようにして更に光の弾がマフォクシーの足元に撃ち込まれる。

 ジュペッタを庇うようにして躍り出たのは──メガシンカしたルカリオ。

 そして、その傍らには当然のようにノオトの姿があった。

 

「ノオト!? 何故こっちに来たのです!?」

「ヒャッキに援軍が到着したんスよ!! 姉貴のピンチとあらば、協力しねえ理由は無いっしょ!!」

「何を言ってるのです、民間人を早く助けに行くのです!! こいつは私が一人で──」

「姉貴。焦る気持ちは分かるけど、それで負けたら何にもならねえだろ!!」

「……!」

 

 ヒメノは──袴を握り締める。

 

「……ヒメノが弱いから、助けに来たのです?」

「バカ!! 言ってる場合かよ!? 相手は強いんだぞ!?」

「ノオトの助けが無くっても──勝てるのですよッ!!」

「意地張ってる場合かよ!! 此処で一人で戦ったって姉貴の霊能力は戻って来やしねえんだよ!!」

「ッノオトの癖に、生意気なのです!! こないだまで私におんぶにだっこだったくせに!! 最弱キャプテンだったくせに!!」

「あ、あの~?」

 

 気が付けば、ワスレナそっちのけで二人は喧嘩を始めていた。

 抑えの利かない罵詈雑言が互いを抉り合う。

 

「はぁ!? もう二度と助けに行かねえ!! やっぱ姉貴は最悪だ!! マジで嫌いだ!! 折角危険を冒して助けに来てやったのに!!」

「ノオトの方こそ、ヒメノから……全部奪っていった癖に、今更善人ぶるのをやめるのですよ!!」

「あんだとコラ!! 結局未練タラタラじゃねえか!! 良いか!? 姉貴は元々キリさんから引かれてたんだよ!! どっちにしたってキリさんが姉貴に靡くのは有り得ねェ!!」

「~~~!! ノオトのアホ!! バカ!! ろくでなしの女好きのスケベ野郎なのです!!」

「メンヘラでヤンデレ恋愛脳、パワハラモラハラ常習犯の姉貴の方が数倍ろくでなしだろが!! だからいつまで経っても彼氏が出来ねーんだよ!! 仮に出来ても長続きする未来が見えねーけど!!」

「言わせておけばチピチピチャパチャパと偉そうに!! 浮気性のノオトの方こそ長続きしないのですよ!!」

「仲間割れかい? 醜いねぇ~~~!! マフォクシー、そこのガキんちょどもを片付けてやりなぁ!!」

 

 双子を見てほくそ笑むワスレナ。

 マフォクシーが大量の火の玉を作り上げ、ルカリオ、そしてジュペッタ目掛けて飛ばす。

 しかし──

 

 

 

「──テメェはすっこんでろ!! すっとこどっこい!!」

「──家庭の問題に口出しするんじゃないのですっ!!」

「えっ」

 

 

 

 ──喧嘩をしたことで一周回って息があった二人。

 ジュペッタの口から大量の影の手が伸びて火の玉を撃ち落とし、その間を縫うようにしてルカリオが最大威力の”てっていこうせん”を放つ。

 不意を突かれたマフォクシーはそれを避ける事が出来ず──直撃を貰ってしまうのだった。

 

「け、けんけんきー……」

 

 倒れはしないが、ぎりぎりで踏みとどまるマフォクシー。

 流石にルカリオの”てきおうりょく”が乗った”てっていこうせん”は堪えたようだった。

 フェアリータイプを複合してしまったがばっかりに、鋼技が等倍で通るようになってしまったのである。

 仲の悪さが連携に繋がったのを見て、流石のワスレナも意外そうに眼を見開く。

 

「こ、怖いねェ~~~……!!」

「……一時休戦だ姉貴。話はコイツをブッ倒してから付ける!!」

「同感なのです。邪魔をされたら堪ったもんじゃないのですよ」

 

(……記憶魔術を使おうにも、流石にもうエネルギーが残ってないねェ~~~。これ、おじさんピンチ?)

 

 ルカリオ、そしてジュペッタはトドメを刺すべく技の構えを取る。

 幾らマフォクシーと言えど二対一では勝ち目は無い、と考えたワスレナが次の策を練ろうとしたその時だった。

 

 

 

「──()()()()()()()()……ほんっとに喧しい奴らだな」

 

 

 

 ジュペッタ、そしてルカリオの胸に──何かが突き刺さる。

 その瞬間まで、ヒメノも、ノオトもそれを知覚することはなかった。

 

「な、何なのです!?」

「一体何が起こりやがったぁ!? ルカリオ!! しっかり!!」

 

 メガシンカは解除され、二匹は斃れ伏せる。

 それを見てワスレナはほくそ笑む。

 

「時間稼ぎは出来たねェ~~~!! こっちも援軍到着、頼もしいねェ~~~!!」

「援軍!?」

「きゃあ!?」

 

 ヒメノは突如悲鳴を上げた。

 彼女の身体はいきなり空中に吊るし上げられ、何処かへ引き寄せられる。

 

「姉貴!?」

「……全く以て、うるさいな」

「来たねェ……クロウリー旅団、()()()()()

 

 それは最初からそこに居たかのように現れた。

 長い舌を伸ばした暗殺者の如きカエルのポケモンが、音も無く現れ、ヒメノを拘束して地面に叩き伏せる。

 そしてその傍に現れた青年は、黒いローブを身に纏っていた。

 フードを退けても、長い髪で目が隠れており、表情は伺い知れない。

 しかし──何処か気怠そうにノオトを見つめると、無感動に言ってのけた。

 

 

 

「……ここは戦場。遊び場じゃねーんだよ。なあ、お前もそう思うだろ? ゲッコウガ」

「ワルビュルルルルルル!!」

 

 

 

【ゲッコウガ(???のすがた) しのびポケモン タイプ:水/毒】

 

 

 

 黒を基調とした体に迸る赤いラインは、危険信号の顕れ。

 見る物に警戒心を与えさせる体色だ。

 水場に適応し、溶け込んだ体色の原種とはこの時点で違う進化を遂げたポケモンであることがノオトには一目で分かった。

 

「ルカリオが一瞬で──」

「……モンスターの心配してる場合かよ? 心が痛むなァ──俺はナメられてるのかひょっとして」

「コノヨザ──」

 

 次の瞬間にはノオトの胸にも水のナイフが刺さっていた。

 血が噴き出し──彼はそのまま蹲るようにして地面に倒れ込む。

 

「かっはっ……!?」

「ノオト!!」

「……うるせーうるせー……ゲッコウガ、そのガキも黙らせろ」

 

 舌で絡め取っていたヒメノを思いっきり振り回すと──地面に叩きつけるゲッコウガ。

 少女の身体は空き缶のように撥ね飛ばされ、そのまま転がり、静かになるのだった。

 

「……これで二匹」

「流石だねぇ~……リンネ。鮮やかな殺し捌きだ」

 

【”クロウリー旅団”兵団長 リンネ】

 

「いーや、まだ生きてる。オメーは甘いんだよ、ワスレナ。人間はそう簡単には死なない」

「……!」

「……俺達の前に立ち塞がるものは、何が相手だろうが──徹底的に潰さなきゃいけねえんだ。お前は、堕ちた奴等でも拾いに行け。あんな連中でも死んだらクロウリーが文句を言う」

「へいへい……わぁーったよぅ」

「どうせもう、魔力を残していねえんだろ。足手纏いだってんだよ」

 

 ゲッコウガは再び水のナイフを生成すると、転がったヒメノの方に詰め寄る。

 水は濁り、そして禍々しい紫色に染まっていく。

 

「……仕留めろやゲッコウガ──」

「あっ、ぎ……ノオ、ト……逃げ……」

 

 どくどく、と血だまりに沈むノオトに手を伸ばすヒメノ。

 しかし、冷酷にゲッコウガは迫り──ナイフを突き立てようとする。

 

 

 

「──パモ様ッ!! ”かみなりパンチ”!!」

 

 

 

 背後から迫る気配。

 それを察知したゲッコウガは飛び退き、お返しと言わんばかりに見えない水のナイフを投げる。だがパーモットはそれを音と空気の揺れだけで察知して身体をよじり、避け切ってみせるのだった。

 

「……へえ、少しはやるんだな」

「ノオトから離れろッ!!」

「!」

 

 足元の影からそれは音も無く姿を現す。アブソルだ。

 リンネはそれに気づいて飛び退き、間一髪で振るわれた尻尾の刃を避けてみせる。

 そして、息を切らせて駆け付けてきたメグルを前にして──意外そうに言った。

 

「お前が例の異世界から来たヤツか。ご苦労様なこったよ」

「──それ以上傷つけさせねえよ」

「のこのこと自分から戦場に来ておいて虫のいいヤツだぜ」

「お前らがアルカを攫うからだろうが!!」

「アルカ──ああ、そう言えばあの女、そんな名前だっけかな。まだ顔は見ていねーが」

 

 まあどうでもいいけど、と言ったリンネは──ゲッコウガに向けて手招きする。

 

「クロウリー様の計画に必要なんだよ、あの女は。それともなんだ? お前、そのアルカって奴のオトコか何かかよ?」

「だったら何の文句がある!!」

「へえ──分からんね。女なんて掃いて捨てる程いるだろうによ」

「テメェとは相容れねえみてーだな」

 

 ポキポキ、と拳を鳴らすメグル。

 怒りに燃えている一方──血だまりの中に居るノオトを見て気が気でなかった。

 そしてゲッコウガも、リンネの傍らでこちらの出方を伺っている。

 瀕死の敵を仕留めるよりも、メグル達を仕留める方に意識を向けているようだ。

 

「イクサ!! ノオトとヒメノちゃんを頼むっ!!」

「はっ、はいっ!!」

 

 イクサは倒れたヒメノを背負い、その場から離脱する。

 二人のケガは深刻。特に出血が多いノオトは命の危機だ。

 それでも、今此処でゲッコウガを野放しにするわけにはいかない。ノオトのような重篤な怪我人が増える可能性が高くなる。

 

「威勢がいい奴は嫌いじゃねーけど……お前、名前は?」

「メグルだ」

「兵団長リンネ。死ぬ前に、その頭に刻み付けろ」

 

 直後、アブソルとゲッコウガが同時に切り結ぶ。

 見えない水のナイフ、そして尾の刃が斬りつけ合う。

 ナイフは見えないものの持ち前の危険回避でその軌道を完全に読み切っているアブソルは、ゲッコウガと打ち合う事が出来るのだ。

 

「連続で叩き込んで疲弊させろ──”アサシンナイフ”」

 

【ゲッコウガの アサシンナイフ!!】

 

 毒に染まった水のナイフを大量に浮かび上がらせたゲッコウガは、それらを全て見えなくして、アブソルに向かって飛ばす。

 そして自身も両腕に水のナイフを携えて切り込みにかかるのだった。

 だが、アブソルも尻尾を揺らしてそれらを切り裂いてみせる。

 

「……出来るな。だけどよ──」

 

 しかし──アブソルの周囲には既に見えないナイフが取り囲んでいた。

 

「ふるるっ!?」

「……幾らこちらの攻撃を察知できると言えど、回避できなければ意味がないだろが、ああ?」

「”ゴーストダイブ”だ!!」

「”かげうち”で炙り出しやがれ」

 

 すぐさま影に潜るアブソル。だが、ナイフは地面を突き刺し──悲鳴を上げてアブソルは出てきてしまうのだった。

 

「ほうら、すぐに出てきたろーが。ゲッコウガ、”アクアブレイク”!!」

 

 地面を蹴るゲッコウガは怯んだアブソルに近付き、ナイフによる一撃を見舞おうとする。

 しかし──それをも尻尾で打ち払ったアブソルは、メグルの下にまで引き下がると──もっと力を寄越せ、と言わんばかりに上目遣いで見つめるのだった。

 

「……オーケー、アブソル!! メガシンカだ!!」

「ふるーる!!」

 

 メガストーンに手を翳すメグル。

 高濃度のエネルギーがアブソルに収縮していく。

 そして、びきびきと音を立てて、それはタマゴの殻のように弾け飛んだ。

 アブソルの姿は鬼火に包まれ、重厚な毛皮を携えた鎧武者の如き姿へと変じる。

 

「……ゲッコウガ、ギアを1つ上げてくぞ」

「アブソル、サイコカッターで切り刻め!!」

 

 頭部の角を振るえば、念動力の刃が地面を切り裂きながら飛んで行く。

 それをナイフで受け止めてみせたゲッコウガは──口を思いっきり膨らませると毒液をアブソル目掛けて吹きかける。

 

「耐久に重きを置いた形態……だからこそ”どくどく”は厳しいだろがァ!!」

「ふるっ!?」

 

 紫色の毒液は地面を伝ってアブソルに絡みつき、彼女を侵す。

 毒タイプが放った”どくどく”は必ず当たるのだ。

 

「怯むなアブソル!! 正面から切り刻め!!」

「受けて立つぜ。ゲッコウガ、”アサシンナイフ”」

 

 高速でぶつかり合い、互いの刃で切りつけ合う二匹。

 そして、互いの渾身の一撃がぶつかり合い──反動で互いの主人の下へと戻ってくるのだった。

 

「ふるるるる……ッ!!」

「やっぱ強ェ……メガシンカポケモンとやり合えるなんてな」

「俺のゲッコウガと此処まで張り合える奴は久々に見た。これ以上の消耗は厳しいか」

 

 見ると、ゲッコウガの身体も鬼火が燃えている。

 アブソルとの戦いで火傷したのだ。これにより、攻撃力が大幅に下がってしまっている。

 

「毒の体力減少が洒落にならねぇ──アブソル、一度戻るんだ」

 

 唸りながらも、大人しくアブソルはボールへ戻っていく。

 一方のリンネも、手に持っていたボール状の木の実を開く。ゲッコウガは頭を垂れると、その中へと小さくなって戻っていくのだった。

 

「……此処で終わらせるのは惜しいが、俺も時間が無ェからな」

「へえ俺達案外気が合うんじゃねえか」

 

 二人は──互いに次番を繰り出す。

 当然、強敵相手にぶつけるのは信頼のおけるポケモンだ。

 

 

 

「──ニンフィア!!」

 

 

 

 リンネの眉がぴくり、と動く。

 メグルのボールからは、凶悪なお姫様が飛び出す。

 それを見た彼は──これまでの冷徹な態度がウソのように一度固まるが──それでも己の使命を思い出し、ボールを握る。

 

(運命は……悪趣味だな。何処までも)

 

「……()()()()()、お前の出番だ」

「ギッシャラララァッ!!」

 

 

 

【ストライク(???のすがた) かまきりポケモン 虫/草】

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