ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第27話:金銀ポケモンの鳴き声は似てるのが多い

「──それでは、いきますよっ!」

 

 

 

【ポケモントレーナーの アルカが勝負を仕掛けてきた!!】

 

 

 

 

 ──勝負は3対3。

 アルカは早速自分の背中にしがみついていた甲羅の如きポケモン──カブトを繰り出して来る。

 同時にメグルは、オドシシを繰り出す。

 一致技のノーマルタイプ技は通りにくいが、岩タイプに対して等倍で通る技は持ち合わせている。

 主力であるエスパー技だ。

 

「オドシシ、ねんりきだ!!」

 

 浮かび上がったカブトは早速、木の幹に叩きつけられてしまう。

 だが、あまり響いていないのかカブトはごろん、とひっくり返って前脚を威嚇するように振り上げるのだった。

 

「……びくともしませんよ。カブト、”あまごい”だっ!」

 

 

 

 

【あめがふりはじめた!】

 

 

 

 

「んなっ……雨戦略だと!?」

 

 カブトの目が不気味に赤く光る。

 それと共に頭上に曇天が広がっていく。

 そしてすぐさま、ざぁざぁと音を立てて雨が降り注ぎ始めたのだった。

 ポケモンバトルに於いて、天候は重要な要素となる。

 日照りの時は炎の技の威力が上がり、砂嵐の時は岩タイプの守りは盤石なものとなり、霰が降る時は荒れ狂う吹雪が味方となる──等々。 

 

「──雨を受けたカブトはパワーアップします!! 今のダメージを取り返すよ──カブト、ギガドレインだっ!!」

 

(特性・すいすいか──!!)

 

 そして、雨状態のとき水タイプの技の威力は高まり、特性・すいすいを持つポケモンの敏捷性もまた跳ね上がる。

 カサカサカサと先程までとは比べ物にならない動きでカブトはオドシシの身体に登りあがり、その牙を身体に突き立てる。

 

「ッブルルルルゥ!?」

 

 そのエネルギーが一気にカブトに取り込まれ、オドシシの身体から気力が抜けていく。

 ギガドレインは、与えたダメージの半分を自分の体力として吸収する技だ。

 先程カブトが受けたダメージは、これで帳消しとなってしまう。

 振り払おうとするオドシシだが、その前にカブトはその身体から離れてすぐさま離脱。

 続け様に「”げんしのちから”!!」の掛け声と共に、周囲の岩を浮かび上がらせてオドシシ目掛けて投擲するのだった。

 

「避けろ──ッ!!」

「せいぜい逃げれば良いんじゃないですか? 特性・すいすいが発動したカブトに追いつけるポケモンなんて、早々居やしませんけど!」

「ッ……雨パの有用性をわかっているのか!?」

「雨……パ?」

「いや、何でもない」

 

 流石の脚力のオドシシは、降り注ぐ岩を避けながらカブトに迫っていく。

 しかし、それを追い詰めるようにしてカブトは正面切って強烈な水の柱を放つ。

 

 

 

 

「──カブト、”しおみず”だよっ!!」

 

 

 

 

 傷口に塩を塗り込む強烈な一撃。

 更に、雨水を取り込んで強化されたそれはオドシシを押し流す程の勢いだ。

 

(雨で威力が上がった必殺技──流石に倒れたかな──ッ!!)

 

「オドシシ──」

 

 次の瞬間には倒れたオドシシが転がっているだろう、とアルカは笑みを浮かべる。

 しかし。

 

 

 

 

「──”バリアーラッシュ”だ!!」

 

 

 

 

 ──水の柱が裂けた。

 正面から突っ切ったオドシシがカブトに強烈な頭突きを加える。

 驚愕したものの、アルカは何が起こったのか理解した。

 オドシシの周囲には障壁が張り巡らされており、それが水流から身体を守ったのだ。

 正面突撃故、オドシシも少なからずダメージを受けているが、それよりも攻撃中に不意の一撃を喰らったカブトは怯んでしまっている。

 そして、一度展開されたバリアはオドシシをずっと守り続けている。

 

「へっへ、驚いたかよ? バリアを纏えば、多少の無茶は効くってもんだからな!」

 

(レジェアルだとBD1段階上昇……! 現実に落とし込むなら、バリアを常時展開ってところか……! これは強いぞ……!)

 

 オドシシが習得した新たな技──それがバリアーラッシュだ。

 突貫と共に周囲に障壁を張り巡らせることで衝撃を軽減し、更に相手から受ける反撃をいなすことが出来る攻防一体の技である。

 

「……ですが、雨はまだ続いていますよ! もう一度、”しおみず”です!」

「もう1回、正面突破の”バリアーラッシュ”だ!!」

 

 追い詰められたカブトが、最大出力の水流を放つ。

 それを更に守りを固めたオドシシが突っ切り──カブトに強烈な頭突きを叩きつける。

 バキッ、と何かが割れる音が響いた。

 カブトの甲羅にヒビが入り、目から赤い光が失われたのを確認すると──アルカは肩を竦め、ボールを翳す。

 

「……あーあ。まさかカブトがやられるなんてね」

「ッよし! 倒した!」

「ブルルルルゥ!!」

 

 得意げに地面を蹴り上げるオドシシ。

 以前のハリーセン戦では苦しめられた”しおみず”を克服した形となる。

 面白そうに笑みを浮かべたアルカは、2つ目のボールに手を掛けた。

 

「調子に乗らないでください。まだ、2匹手持ちは残ってるのをお忘れなく!」

「ッ……」

 

(雨はまだ降り続いてる。次も雨要員か……!?)

 

「──撃ち砕いちゃってよ。ヘラクロス!!」

「プピファーッッッ!!」

 

(ヘラかよ……!)

 

 投げられたボールから甲高い声をあげて現れたのは──屈強な両手両足を持つカブト虫の如き容貌のポケモンであった。

 てっきり水タイプが出てくるものと思っていたメグルは肩透かしを食らったが、同時に脳裏に過ったのは──

 

ヘラクロスに限った話じゃないけど、やっぱハリーセンと鳴き声似てんだなあ……第二世代のポケモンってキー変えただけの使い回し多いから……)

 

 こっちではなく。

 

(H80 A125 B75 C40 D95 S85……!! 虫タイプの中では最強クラスの種族値を持つ上に技にも恵まれているヤベーやつ……!!)

 

 タイプは虫、格闘。

 虫タイプの通りにくいタイプに対して弱点が突きやすい格闘と、格闘タイプの通りにくいエスパーに対して弱点が突ける虫という攻撃面で強力な複合だ。

 しかも、格闘タイプ故か他のタイプの技も豊富に覚える点も見逃せない。

 その複合の都合上、飛行タイプには滅法弱いが、もし先手を取ることが出来たならば岩技で返り討ちにすることもできるのである。

 何より優秀なのは無駄の無い優秀な種族値である。

 

「カブトからいきなりレベル上げすぎじゃないか……!?」

「怖気づいちゃいました?」

「ッ……」

 

(オドシシは弱点を突けるが、突かれる関係でもある……!! だけど、火力が高いヘラクロスの前で下手に交代すると却って不利になる……!!)

 

 ヘラクロスの攻撃種族値は125。ストライク以上だ。

 そこから放たれる技を受けてしまえば、どの道不利になる事は避けられない。

 ポケモンバトルに於ける交代には大きなリスクが伴うのである。

 

「──こうなりゃ、バリアーを盾にして”バリアーラッシュ”だ!!」

「”かわらわり”だよ、ヘラクロス!! バリアーをブチ破っちゃえ!!」

 

 更にバリアーを展開して突貫するオドシシ。

 しかし。それ目掛けて繰り出された平手によるチョップは、容易くそのバリアを打ち砕き、オドシシの脳天へと叩きこまれたのだった。

 ぐらり、とオドシシの身体が揺れ、地面に倒れる。

 

 

 

 

【こうかは ばつぐんだ!!】

 

【オドシシは たおれた!】

 

 

 

 

「ッ……速い……!! そして一撃が重い……!!」

 

(かわらわりは”リフレクター”や”ひかりのかべ”も破壊出来る技、オドシシのバリアを破るのも容易いってか……!)

 

 そうなれば、ぶつける相手は1匹しか居ない。と言うよりも、それ以外有り得ないレベルだ。

 聊か不安は残るが、メグルは──ヘラクロスに対する強烈なカウンターは用意しているのだ。正直本当に不安ではあるが、カウンターではあるのだ。

 

「すまんオドシシ、戻ってくれ……流石に格闘タイプは無理だったわ……」

 

(マジで不安は残るけど……俺はどうにかしてくれるって思ってるぞ!)

 

 そもそも残るイーブイではヘラクロスにはどうやっても勝てない。

 

「──ストライク、頼んだ!!」

「ギッシャラララ!!」

 

 ボールから勢いよく飛び出したストライク。

 その素早さはヘラクロスを超えている。

 しかし、相手との力量差を考慮すれば、同等であろうとメグルは考える。

 更に相手が岩技を持っていることを持っていることは想像に容易い。故に、この勝負──先に相手の首を掻いた方が勝者と相成る。

 

「ストライク、つばさでうつ!! 速さならお前が上だ!!」

 

(てか、そうであってくれ!)

 

「虫・飛行タイプなら、岩技で一発です! ”いわなだれ”!」

「プピファーッッッ!!」

 

 地面を砕き、切り出された岩を空中に放り投げるヘラクロス。

 しかし、それを前にしても怯むことなくストライクは突貫していく。

 落ちていく岩を紙一重で避け、更にそれを足場にして高く飛び上がると、空中で回転しながらヘラクロス目掛けて刃を振り下ろした。

 

「へっへん!! ”いわなだれ”くらいのスピードなら乗りこなせるって実証済みなんだよ、うちのストライクは!!」

「でも、貴方のストライク、つばさで攻撃してなくないですか?」

「……あれ?」

 

 そう言えばそうである。

 尚、刃による一閃は、あっさりとヘラクロスの強靭な腕に受け止められてしまうのだった。

 しかし、それで更にムキになったのか、ストライクはヘラクロス目掛けて続け様に鎌で斬り付け続ける。

 そのラッシュを前にして、ヘラクロスも岩を投げ付ける暇がないのか防戦一方になってしまっている。

 だが技ですらない攻撃で倒せるほど、ヘラクロスはヤワなポケモンではない。

 

「おい!! ストライク!! 言う事!! 言う事を聞いてくれマジで!! ”つばさでうつ”!!」

「ヘラクロス!! 攻撃を引き付けて、”つばめがえし”!!」

 

 さっ、と重心を下げてストライクの攻撃を躱したヘラクロス。

 そしてその大きな角を刀に見立て、大きく振り下ろす。

 大ぶりな一撃目は、さしものストライクもあっさりと身体を翻して避けることが出来た。

 しかし”つばめがえし”は必中技。外れることは無い。何故ならば一撃目は只の囮でしかないからである。

 即座にヘラクロスは角を切り返し、ストライクの身体を斬り上げるのだった。

 

「ギッシャッ!?」

「おいストライク!!」

 

 ぐらり、とストライクの身体が揺れた。

 つばめがえしは飛行タイプの技。効果は抜群だ。

 それが攻撃力の高いヘラクロスから放たれたのである。

 ストライクの胸には斬られた痕がくっきりと残っている。

 想像以上の力で放たれたことがメグルにも分かった。

 

「やれやれ、互角の種族同士……少しは楽しめると思ったんですけど……終わりだね。”いわなだれ”!!」

 

 ストライクの頭上に岩が降り注ぐ。

 疲弊した身体では、さっきのように避けることなど出来ない。

 すぐさまそれに押し潰されてしまい、ストライクはそのまま生き埋めになってしまうのだった。

 

「まっずい……戻れストライク!!」

「おにーさん? ダメじゃないですか。ちゃあんとポケモンには言う事聞かせられるようにしてなきゃ」

「ッ……すまん」

「ああでも安心しました。ボールに入れてるからと言って、ポケモンは必ず言う事を聞くわけじゃないんですね」

「……? どういう事だよ」

「こっちの話ですよ。さあ、早く3匹目を出してください」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──結局。

 残る他の手持ちでヘラクロスに勝てるはずもなく。

 イーブイをぶつけたメグルであったが、あっさりとヘラクロスの”かわらわり”を前に沈んだのだった。

 勝敗は2対0。メグルはアルカの3匹目を拝むことなく、敗北を喫したのである。

 

「ねえおにーさん。何であのストライク、言う事を聞かないんですかね?」

「俺に聞かれても困る……ただ、オドシシに因縁を持ってることは分かるんだけどな」

「何かあったんです?」

「捕まえた時に催眠術を掛けたのがオドシシだったんだ」

 

 前回に引き続き、今回まで。

 正直ヘラクロスは、ストライクが”つばさでうつ”を当てれば勝てない相手ではなかった。

 いや、勝っていたはずの相手だ。

 それだけに、メグルの中では無念が募りつつあった。

 

「ふぅん……ボクには、あのストライクがずっと言いようのないようなむしゃくしゃを抱えているように見えました」

「むしゃくしゃ?」

「はい。それを晴らすためにバトルで発散しているようでした」

「……そうか」

 

 ヒメノに言われたことと併せて思い当たることが一つ、メグルにはあった。

 彼はストライクに対して少なからず恐怖を抱いている。

 それがストライクにも伝わっており、関係性を難しいものにしてしまっているのだろう。だからこそ1度、腹を割ってみるべきとアルカは諭す。

 

「それが分かっただけでも、今回のバトルは収穫だったな」

「前向きなんですね?」

「じっくり向き合ってみるさ。自分で捕まえたポケモンだからな」

「……なんかいい話風に終わらせようとしていますけど忘れてません? 賭けのこと」

 

 そう言えば、そもそもがそんな話であったことをメグルは思い出した。

 結局、賭けには負けたので情報は手に入らず仕舞い。そればかりかアルカの言う事を聞かなければならないのである。

 

「……忘れたり、しませんよね?」

「え、えーと、俺が出来る範囲でお願いしたいんだけど」

「大丈夫ですよ。命は獲りませんから。そうですねー……」

 

 彼女は意地悪そうな笑みを浮かべると、近付いてくる。

 

 

 

 

 

 

「──ボクとデート、してくれませんか?」

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