ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第28話:ドキドキデート大作戦(ではない)

「──おっそい! 2分遅れですっ!」

「うるせーうるせー、ちゃんと来ただけ良しとしろや」

 

 

 

 その次の日。

 待ち合わせ場所は、ベニステーションの南口にある噴水モニュメント。

 半分に割れたモンスターボールが二つ並び、カップから水が溢れているというデザインだ。

 さて、「デート」と言ったはいいがこの石商人の少女が何の考えも無しにそれを提案するはずがない、とメグルは考えていた。

 ましてやポケモン廃人にいきなり春等訪れるはずがないからであるとも彼は考えていた(尚、メグルがこの年まで彼女が居ない事と、彼がポケモン廃人である事に直接的な因果関係は無い)。

 従って、このデートにかこつけてアルカが何を企んでいるのかが気になってメグルは昨晩結局眠れなかったのである。

 

「あれー? おにーさん隈が出来てますよ? そんなに楽しみだったんですか?」

「ああ、楽しみにしてたよ……オメーが何を企んでるのかを考えるとワクワクして仕方なくってな。で、何でデートなんだよ」

「若い男女はデートをするのが都会のトレンドらしいじゃないですか」

「ハァ? 何言ってんだオマエ……」

 

 何処かズレたアルカの言葉にメグルは頭を抱える。

 この少女、ひょっとして石や発掘品の事以外はからっきしなのではないか、と。後バトル。

 

「まさかオメー、デートがどういうものかよく分からずに付き合わせたのか? 正直そんな気はしてたけど」

「失礼な! 若い男女が食事、買物、観光や映画を楽しむことですよね? でも、それの何が楽しいのかボクには分からなくって……故に、見識を広げようとかねがね思っていたのですが、ボクには相手が居らず」

 

(奇遇だな俺も居ねーよ、自慢気に言うな)

 

「でも、ボクって、専門外の分野だったとしても一度気になっちゃうと確かめなきゃ気が済まないタチなんですよね」

「なあ、そういうのって好きな相手とするもんじゃねーのか?」

「いませんよ、そんなの。遺跡がボクの恋人ですから。だから丁度良い所に居るあなたに付き合ってもらうんじゃないですか」

「はぁ、さいですか……」

「そもそも折角こんなに大きい町を見て回るんです、荷物持ちの1人は居ないと大変じゃないですか。負けたんだからそれくらい然るべきですよね?」

「こんの……俺は荷物持ちかよ、つーか最初っからそれが目的だったな」

「正解! そもそも人の水浴び覗いておいて美味しい思いが出来るだなんて思わないことですよ」

「はー、ンなこったろうと思ったけど。んでお姫様。デートコースのアテはあるのかよ」

「そういうのは男の人が決めるものだと書いていましたけど?」

 

(このバカ……!! ノープラン……ノーライフ……!!)

 

 一体何処の雑誌を読んだのだろう、出版社に文句を言ってやる、とメグルは三度頭を抱えた。

 しかし、メグルとて無計画ではない。不本意なデートではなかったが、予めベニシティの事は調べておいたのが役に立つ。

 この際、逆に彼女を自分の行きたい場所や買い物に付き合わせてしまおうかと考えるのだった。

 

「──なあオマエのポケモンさ、レベルで覚えない技覚えてたよな」

「ああ、これですか。それはもう”技マシン”という文明の利器を使ったんですよ!」

 

 やっぱりな、とメグルは確信する。

 ”技マシン”とは、ポケモンに使うことで記録された技を覚えさせることが出来るディスクのことだ。

 ポケモンはレベルで新しい技を覚えるが、それだけは技の範囲が狭く戦いづらい。現にメグルもその問題に悩まされていた。

 ゲームで技マシンを手に入れるには、購入するか拾わなければならない。

 この世界でも同じなのだろうが、しかし技マシンとはなかなか貴重品なのか、セイランではまともなものが売っていなかったのである。主に威力の低い”いわくだき”だとか使いどころの難しい”どろかけ”などである。

 

「んで、それは何処で買ったんだよ」

「ああ、ベニに来た時にショッピングモールのディスクショップに寄ったんです。そこの技マシンコーナー、なかなか良いのが揃っていて……」

「よーしそこに行くかー」

「おにーさん?」

「お前田舎モンだから知らねーだろうけどデパートで買い物はデートの定番だぞ? 良いデートは技マシンを選ぶところから始まるんだってよ、知らんけど」

「いや、それおにーさんが技マシン買いたいだけ──」

「デートコース決めてねーのが悪いんだよ」

「絶対違う気がしますーッ!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「いやー大漁大漁! ちょっと高かったが、まあ必要経費だわな!」

「あ、あのー? 何でボクがおにーさんの買い物に付き合わされてるんですか? 普通逆じゃないんですか?」

「分かってねーな、それがデートってもんなんだよ、知らんけど」

「絶対違いますよね!?」

 

 ショッピングモールの4階の技マシンショップで一通りのものを買い集めたメグルはご満悦であった。

 凡そ、今の手持ちに足りていない技マシンは揃えられたと言っても良い。

 例えば”でんげきは”。オドシシが習得出来るので、電気タイプが居ないメグルのパーティには有難い1品だ。

 例えば”つばめがえし”。これは必ず命中する飛行タイプの技で、ストライクのメインウェポンに成り得る。……最もストライクが言う事を聞けばの話であるが。

 

(流石に”10万ボルト”や”シャドーボール”は高過ぎて手が出なかったけど、当面はこれで十分だろ。もっと金が溜まれば、オドシシに良い技を覚えさせてマルチアタッカーに出来るんだけど)

 

「……そうだ! 映画見に行きましょう、おにーさんっ! 映画!」

「オメー、俺の買い物に付き合わされるのが嫌で今捻り出しただろ」

「デートの定番と言えば映画と聞きました! 丁度この辺りには3つほど映画館があるんですよ!」

「3つもあるのかよ……つーかお前、ショッピングモールなんだからブティックとかあるじゃねーか、行かなくて良いのかよ」

「ボク、服には興味ないので。替えも持ってますし」

「とことんまで煌びやかなモンとは無縁なヤツだなー……」

「それに、こんなに人が行き交う場所だと落ち着かないんですよ。ボクはもっと、落ち着ける場所が良いです」

「それで映画って訳か」

 

 一先ずマップを一緒に確認する。

 ショッピングモール周辺には確かに3つも映画館が建てられていた。

 特にどれという拘りも無いので、一番大きい場所を選び、アルカを連れてそこに入る。

 が、映画を見るとして問題は鑑賞する映画であった。

 

「……えーと何々。”ハチクマン4”? ”Full Metal Cop2─アイルビー・バック─”? ……このシリーズまだやってたのかよ」

「知ってるんですか?」

「つーか見覚えのあるタイトルがちらほら……イッシュ地方発のポケウッド映画? ああ、そういうね……」

 

 メグルがかつて遊んだ「ポケットモンスター ブラック2ホワイト2」では、ポケウッドと呼ばれる場所で映画を撮影することが出来た。

 そこでは、ポケモンバトル風の選択肢を選んで行くことで展開が変わり、映画の結末が変わるというものだったのである。

 特に「ハチクマン」と「Full Metal Cop」はシリーズ化されているのか最新作が未だに上映されているらしい。

 

「邦画は……何か良いの無いのかよ?」

「あ、おにーさんっ! ボクこれが良いです!」

「え? ……何々”禁じられた恋─カジッチュから始まるふたりの関係─”……お前コレ、恋愛映画じゃねーか、恋愛分からなそうなオマエにこれが分かるのかよ?」

 

 しかもご丁寧に年齢制限付きである。

 

「失礼な! 恋愛くらいボクにも分かりますよ! 好き合ってる男女が婚姻契約を結ぶ前に付き合う事ですよね?」

「間違ってはねえが……」

「とにかく! デートには恋愛映画が良いと聞きました! これで恋愛も一緒にお勉強というわけですよ! まさに一石二鳥!」

「そういう発想が先ず良くないんじゃねえかなあ……」

「石も古代遺物も勉強からです!」

「いやでもぜってーお前には早い気が──」

「バトルに負けたんですよね? お忘れじゃないです?」

「……はいはい、お姫様の言う通り」

「それじゃー、このポップコーンって食べ物と飲み物の代金はおにーさん持ちで!」

「暴君だぁ……」

 

 と、映画が始まるまでは傍若無人に振る舞っていたアルカであった。が──2時間後。

 

 

 

 

「……あ、あ、あう……」

 

 

 

 映画館から出てきたアルカの青白い頬は、リンゴのように真っ赤に染まっていた。

 無理も無かった。映画の中身は所謂オトナの恋愛モノ。しかも内容は不倫を題材としたドロドロとしたものだったのである。

 ただでさえ恋愛への知識が薄い彼女には、あまりにも刺激が強すぎた。かく言うメグルも何度か目を逸らしたくらいだ。

 手で顔を覆いながらも指と指の間からずっと見ていたアルカは2時間の間それを見ていたわけで。

 

(……こいつ意外とカワイイな。あんなに私はファムファタルですみたいな顔してたのに、おぼこ娘じゃん)

 

「あ、あわわ……男の人と女の人がハ、ハダカで、抱き合ってて……ちゅーも、なんかすっごくえっちで……こんなの映画で流して良かったんですか!?」

「だから言っただろーが! オメーには絶対早いって!」

「し、しかも、け、結婚してるのに他の女の人に会いにいって……そ、それってダメなことですよね……?」

「お前の故郷基準でもNGだったんだ」

 

(まあでも意図せず折檻出来たから、これはこれで良いか。人の言う事聞かなかったらどうなるかってのがやっとわかっただろコイツも)

 

 ついでに情緒と情操もぶっ壊された気もするが、メグルは気にしない事にした。

 

「……あ、あの、おにーさん」

「何だよ?」

「おにーさんも……いえ、何でも無いです!! 何でも無いですから!!」

「とにかく、映画の事は忘れろ! 腹減ったから飯でも食おうぜ」

「……はい」

 

 あれだけ威勢が良かったのに、映画を見た後のアルカはすっかりしおらしくなってしまった。

 

(こういう時にオシャレな所に行くと、却って映画の事思い出させちまいそうだよな……)

 

「お前、なんか食いたいモノは?」

「……とくには無いですけど」

「んじゃあ、この汁なし担々麺でも食いに行こうぜ」

「っ……おにーさんも、ボクをご飯の後に……食べちゃうんですか? 映画みたいに……」

 

 目は見えないが、きっと潤んでいたと思う。

 メグルは蒸発しそうになる理性を「相手はコイツだぞ」で抑え、

 

「考えてねーわ!! 映画の事は忘れろっつったろ!!」

 

 と、アルカの手を引いて昼食の場に連れていくのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「かッッッら!! おにーさん、騙しましたね!?」

「騙してねーよ、辛いって書いてただろーが、おこちゃま」

「お、おこちゃまとは何ですか! これくらい食べられますからっ!!」

 

 ムキになって汁なし担々麺をかきこみ、再び「かッッッら!!」と火を噴く。

 そして水を飲み干し「まだ辛い……」と泣き言を言いだす始末。

 取り合えず先程までの変な空気を一新すべく中華麺の店に連れてきたのだが、ある種効果はあったらしい。

 

(良かった……これで、映画どころじゃねーだろコイツも)

 

「……何ですか。人が苦しんでるところを見て楽しいんですか。おにちく」

「いや別に。お前さー、バトルの時は結構余裕ぶってたから、それ以外はポンコツなんだなって」

「シンプルに悪口なんですけど!! ほんっと最悪ですね!!」

「うっせー、バトルで勝てないんだからこういう所で仕返しさせろ」

「おにーさん、友達いないでしょ」

「いねーよ、よく分かったな泣くぞ」

 

 ゲンガーの通信進化のために、わざわざ3DSを2台用意していた者だ。面構えが違う。

 

「それにしてもよく今まで困らなかったな……そのざっくりとした都会観で……」

「ボクの故郷とサイゴクじゃあ文化が違うんですよ文化が……それとボク、身寄りが無いんです。親切なおばあさんに運良く拾われて、それで色んなことを教えてもらったんですけど」

「そのおばあさんって、サイゴクの人なのか?」

「そうです。石や発掘品以外興味が無かったボクに、広い世界を教えてくれた人なんです。……もう亡くなっちゃいましたけど」

 

 彼女の出自を聞き、あの世間知らずっぷりにも少しだけ納得が行ったメグルであった。

 

(ん? でも、結局こいつの出身ってどこなんだ? あんまりサイゴクからは離れてないのか?)

 

「それで、好きな事を調べながらサイゴクの事を回ってみることにしたんです。丁度探したいものもありましたし」

「探したいもの?」

 

 その問に対して仕返しだ、と言わんばかりにアルカは悪戯っ子のような笑みを浮かべてみせたのだった。

 

「教えません。ヒミツです」

 

 その時の笑みが──何とも小悪魔的で、不意に心を掴まれてしまいそうになるのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──水面に立つ赤い鳥居を高速船で潜り抜けた先に赤い屋根の木造建築が存在感を放つ。

 ベニシティ・ミヤコ島の浅瀬に座すサイゴクポケモン委員会本部……つまりキャプテンが合議の場として集う場所である。

 

 

 

「──由々しき事態である。愚かにもサイゴクに仇名す者、サイゴクに仇名すポケモンが現れ、おやしろとヌシ様を狙っておる」

 

 

 

 カン、と杖の音が鳴った。

 キャプテンの立場は表面上同等。

 しかし、実際は最も最高齢であり筆頭の実力を持つリュウグウが議長としての役割を果たす。

 

(始まるのね……ついに)

 

 そして、キャプテン代理であるユイも呼び出され、出席していた。

 いずれも一度、おやしろめぐりで会った事のある面子とはいえ、今回は事情も事情であるが故に皆言い知れぬ殺気を放っているように見えた。

 

 

 

 

「この非常事態に際し──急遽諸君らキャプテンを招集した。これより、大合議を執り行うッ!!」

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