ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第37話:”爆弾”

 ※※※

 

 

 

「ゲームの内容は簡単……お前達が”爆弾”を解除すればそれで終わり。我々は手を引こう」

「ふざけてるわね。そんなのゲームでも何でもない。ノーヒントで爆弾を探せって言うの?」

「ヒント? ……甘ったれるな、と言いたいところだが……直に分かる」

「余裕なのね」

「最早、某達は寝ているだけで、おやしろが破壊出来る故。……せいぜい、その力を見せてみろ」

 

 すっ、と忍びのようにイヌハギはルカリオ共々姿を消してしまった。

 既に消防車のサイレンが遠くから聞こえてきている。

 その直後、ハズシのスマホロトムが飛び出す。二、三言、受け答えした後、深く溜息を吐く。

 そしてメグルの方に向き直り、肩をすくめた。

 

「──マズいわね。ひのたまじまと、本土を繋ぐ橋が落とされた。更に港の方も炎上してるみたいね」

「それって、住民の避難も出来ないってことですか!?」

「ライドポケモンの力を借りれば可能よ。でも、この一連の行動は”逃亡は許さない”と言っているに等しいわ。それに、船を簡単に破壊出来るような連中が、ライドポケモンを狙わないわけがない」

「爆弾を止めるしかない、って事ですか……」

「ボ、ボクも行きます! こんな事許せない……! おやしろやヌシポケモンばかりか、島の人たちまで巻き込むだなんて……!」

「ダメよ。うっすら骨が見えてるわ。貴女はしっかりポケモンセンターで手当てを受けなさい」

 

 それほどまでに出血が酷い。

 ハズシが応急手当をしようにも眉を顰め、手をこまねいているほどだ。

 間もなく──ポケモンセンターに常駐しているスタッフと、その補助をするであろうしあわせポケモン・ハピナスがやってきた。

 

「ああこの子よ。右脛の肉が抉れてる」

「いやしのはどうで応急処置をしましょう。後は外科の方で」

「本当にごめんなさい……」

「何で謝るの。困ったときはね、お互い様なのよ」

 

 ハズシが人差し指でアルカの額を押す。

 

「おにーさんも……気を付けて」

 

 ぎゅっ、とメグルは拳を握り締めた。

 期間は短いが、浅からぬ付き合いとなったアルカを傷つけられて、内心頭に来ていたのである。

 

(爆弾は絶対止めてみせる。それに……)

 

「これ以上、あいつの思い通りにさせて堪るかよ! 犬だけに吠え面かかせてやらないと気が済まねえ!」

「プッキュルルルル!!」

 

 甲高い声を上げて、勝手にボールから凶悪毛玉が飛び出す。

 「貸しだからな」と言わんばかりにアルカを見下ろすと、んべ、と舌を出したのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ハズシは早速、キャプテンとして指揮の手腕を存分に振るった。 

 住民たちは外に出る方が危険なため、家の中から出ないようにスマホロトムや放送で呼びかけさせたのである。

 また、暴れているテング団は、教習所のトレーナーたちに任せた。更におやしろの警備を固める為に、おやしろのトレーナーも動員した。

 爆弾を囮にして、おやしろそのものを短時間で攻め落とす作戦の可能性もあるからである。

 そこまでの一連の指揮を見て、メグルはやはり彼こそが”ようがんのおやしろ”のキャプテンに相応しいと感じたのだった。

 ハズシは、皆を導くリーダーの素質を持つのである。

 

「さて。次はワタシ達がやるべき事をやりましょう」

「爆弾の解除、ですよね。でも、ハズシさん、爆弾の解除って出来るんですか?」

「これでも機械には強いのよ。危険物取扱の心得もあるわ」

「流石……」

「キミは爆弾に辿り着くまでの露払い、頼めるかしら。もし解体となったらワタシが出向く」

「……分かりました。頼むから死なないで下さいよ」

「あら♡ 心配してくれるの? 優しいのね」

「そういうわけじゃ……」

「ただ、気にかかるのよ……そんなに大きな爆弾を隠しておける場所なんて、そうそう在りはしない」

 

 ハズシの視線の先には──大きなアケノ火山。

 巨大な溶岩洞を有する、ひのたまじまの中心に座す休火山だ。

 

「……まさかね」

「火山の噴火を、”爆弾”に例えた……?」

「有り得ないわ。噴火をコントロールするなんて大事も良い所よ。もしそうなら、本当に止めようがない。しかもアケノ火山は活動の兆しを見せていない……もしもあの火山に動きがあればウチのヌシ様が黙っていないものね」

「ヌシは火山の噴火を察知できるんですか!?」

「そうよ。すごいでしょ?」

 

 ──すいしょうのおやしろが波の荒い海峡を監視するためならば、ようがんのおやしろはアケノ火山を監視するために建てられたのだという。

 ようがんのおやしろのヌシは、火山の動きを感じ取る事が出来、その危機を人々に知らせてきた過去がある。

 

「今そのヌシって何処にいるんですか?」

「おやしろには居ないわ。すいしょうのおやしろの一件以来、祭事以外の時はワタシ達で匿う事にしてるのよ」

「そうなんですか……」

「他の面々にも爆弾を探させているけど……そうね。ワタシ達は住宅街の方に行ってみましょう」

「はいっ」

 

(……爆弾のヒント……島を丸ごと全部火の粉降らせるような爆弾……そんなもん、何処にあるんだ……?)

 

 考えても答えは出ない。

 当然、メグルが考える限りそのような力を持つポケモンも居ない。

 

(……俺の今まで培ってきたものやスキルだとか、ほんっと肝心な時に何にも役に立たねーんだな……)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「参ったわね……天狗がわらわらと……」

 

 

 

 住宅街の屋根の上に、待ち受けていたかのように山伏装束の男たちが立っていた。

 その傍らには、ことりポケモンのオニスズメや、はもんポケモンのリオル、更にいじわるポケモン・コノハナの姿も見える。

 いずれも、オニドリル、ルカリオ、ダーテングの進化前のポケモンだ。

 進むにも退くにも交戦は避けられない、といった様子だ。

 

【オニスズメ(???のすがた) ことりポケモン タイプ:地面/飛行】

 

【リオル(???のすがた) とうけつポケモン タイプ:氷】

 

【コノハナ(???のすがた) あくどうポケモン タイプ:???/???】

 

「イヌハギ様から何も聞いていないのか? これはゲーム、だと」

「プレイヤーの邪魔をしていけない道理は何処にもあるまい!」

「我々と遊んでいけ、キャプテン!!」

「……面倒な奴らだなマジで──!」

 

 ゴーグルを掛け、ボールを取り出そうとしたメグルをハズシが制する。

 

「派手にやり合うのは危険よ。住宅に被害が出る。先ずは数を減らしたいわよね」

「じゃあどうやって──」

「決まってるじゃない。()()()()()やるのよ♡」

 

 ハズシがボールを投げる。

 現れたのは黄色の装甲に身を包んだ戦士のようなポケモンだった。

 その熱気に押され、メグルは思わず後ずさる。

 

「な、こいつが……グレンアルマ……!?」

「あら知ってるのね。珍しい子だから知ってる人は少ないのよ」

 

【グレンアルマ ひのせんしポケモン タイプ:炎/エスパー】

 

「──さ、お願いね♡」

 

 グレンアルマは拳を地面に突きつける。

 その瞬間、周囲の空気が一気に淀み、そして歪んだ。

 足元は不思議な雰囲気に包まれる。

 

 

 

「……展開。”サイコフィールド”」

 

 

 

 目が痛くなるほどにサイケデリックな空間がその場に現れる。

 動こうとするリオルやオニスズメ達も、淀んだ空気を前に前後不覚に陥り、まともにグレンアルマに向かうことすらままならない。

 

「何だ!? どうなっているのだ!?」

「ええい、動け!! 動かんか、リオル!!」

 

 その瞬間をグレンアルマが、そしてハズシが逃すはずもない。

 

「グレンアルマちゃん。最大出力”ワイドフォース”よ♡」

 

 不思議な空間から無数の手が伸び、リオルを、オニスズメを捉えて包み込んでしまう。

 その力は、サイコフィールドによって倍増している上に、範囲はフィールドの及ぶ場所全て。

 屋根の上に立っていた敵は皆、グレンアルマの放ったサイコエネルギーの餌食となり、ばたばたと倒れていくのだった。

 その様を見てメグルは絶句する。

 とんでもない攻撃範囲と威力だ、と。

 無理もない。ワイドフォースの威力は80だが、サイコフィールド下では1.5倍され120となる。更にサイコフィールド下ではエスパータイプの技の威力は1.3倍になり、凡そ並みのポケモンが耐えられるものではなくなる。

 

(新作のポケモンだから種族値は分からねーけど……ワイドフォースって教え技だったよな!? それを素で覚えてるって事は、やっぱコイツ、相当強いポケモンだったんじゃねーか……!?)

 

 メグルにとっては姿だけ明らかになり、他は未知の存在だったグレンアルマ。

 少なくとも外見負けしない実力を持っている事は確かだったようである。

 現に敵はほぼ全滅──と思った矢先、まだ立っているポケモンが居る事に気付いた。

 コノハナだ。リージョンフォーム故確信が持てなかったが、こちらもエスパータイプが無効の悪タイプだったようである。

 

「取りこぼし──イーブイ頼む! ”にどげり”だ!」

「プッキュルルル!!」

 

 飛び出したイーブイが、足元の不安定さに慣れてきたコノハナ目掛けて飛び掛かる。

 ヤンキーのように食らいついたかと思うと、その顔面を後ろ足で蹴り上げる。

 更に後ろからもう1匹が現れたものの、それもまたメグルの「”にどげり”!!」の指示の下、アスファルトに叩き落とされたのだった。

 

【効果は抜群だ!!】

 

(見える……! 視界がはっきりとしてる……イーブイの動きが分かる! 度が入ってるってすげー……やっぱ旅ナメてたな俺……)

 

 目が悪いまま長い間過ごし過ぎると麻痺してきて眼鏡の必要性が分からなくなるものである。

 尤も眼鏡を掛けないことを正当化する理由には微塵にもならないのであるが。

 

「炭も残さない、アーマーキャノンで吹き飛ばしなさい!!」

 

 飛び掛かって来た残りのコノハナも、グレンアルマが装甲を変形させて放った渾身の一撃で吹き飛ばしてしまった。

 これで、住宅街で待ち構えていた下っ端たちのポケモンは全て片付けたことになる。

 

「ッ……退けい退けい!! 元よりこれしきで倒せるとは思っとらんわ!!」

 

 天狗達は懐から瓢箪を取り出した。

 すると、倒れたポケモン達は皆それに吸い込まれていくのが見えた。

 モンスターボールにポケモンを仕舞う文化は無いが、1つの瓢箪に複数のポケモンが吸い込まれていく辺り、弱ったポケモンを格納するという発想はあるのだろう、とメグルは考える。

 そう思っていた矢先「お疲れ」とハズシが何かを持って近付いて来た。菓子箱だった。

 

「キャラメル、ですか?」

「これから長丁場よ。夜だし頭も疲れてくる。糖分、取っておきなさい」

「……ありがとうございます」

 

 奥歯にキャラメルがくっつく。

 しかし、甘さが疲れた体に染みる。

 

「うふっ♡ 礼には及ばないわ。本当は……巻き込みたくなかったんだけどね。君のような若いトレーナーを。でも、今は……ねこのても借りたい」

 

 あちこちから叫び声が聞こえてくる。

 テング団と、島に居るトレーナーたちが戦っているのだろう。

 

「俺はまだ良いですよ。あいつら前よりも弱かったし……何ならハズシさんが殆ど片付けちゃったし」

「拍子抜けって顔ね。見たことあるの?」

「あ、はい。実は……すいしょうのおやしろで一度出くわしてるんです」

「何ですって?」

 

(もしかしてリュウグウの旦那が気にかけていたのって……そう言う事?)

 

 全てを納得したかのようにハズシは掌を打つ。

 そして同時に、リュウグウが大合議の場で全てを話せなかった理由も察しつつあった。

 彼が目を掛けているのだ。このメグルという少年が只のポケモントレーナーであるはずがなかったのである。

 

「その時、あいつらはもっと強かったから……てっきり、全員が全員あんなに強いのかと」

「それは……オーライズという技術を使っていたから?」

「あっ──やっぱ知ってるんですね」

「ええ。貴方、すいしょうのおやしろでもテング団の襲撃に巻き込まれているのね」

「あははは……」

「これはある意味、運命なのかもしれないわね」

「あの、ハズシさん。俺についてリュウグウさんから何処まで聞いているんですか?」

「有望なポケモントレーナー、としか聞いていなかったわよ。旦那も……大変ね」

 

 電柱にもたれるとハズシは溜息を吐いた。

 キャプテンとして、そして最大の年長者としての苦悩があの老人にもあるのだろう、とメグルは考える。

 

「メグルちゃん。ワタシね、短い付き合いかもしれないけど……これでもおやしろまいりをする子達の事は、ずぅっと気にかけてるの」

「はい、それは分かります。すっごく……」

「道理で物怖じしてないと思ったのよ」

 

 がしっ、とハズシはメグルの肩を掴む。

 

「テング団の事に首を突っ込むことを恐れてないように思えたのは……貴方自身、彼らと因縁があるんでしょう?」

「あるかどうかは実はまだ分からなくって」

「あら、そうだったの」

「……信じて貰えないかもだけど。俺の探しているものの手掛かりなんです。あいつらは……」

「信じるわよ。ワタシ、これでも異世界から来たポケモンとか見た事あるのよ♡」

「何それそっちの方が気になるんですけど!?」

「ええ。だからオネエさんに任せて頂戴♡ 互いに知ってる事を交換しましょう」

 

 ぱちり、とウインクするハズシ。

 茶目ッ気の中にも確かに心強さを感じさせた。

 

 

 

「……ま、どの道後で旦那にはキッチリ問いただしてやるわよ、ウフフフフ……」

「こっわぁ……」 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あー、もう、ちくしょーっ!! ボクだってーっ!!」

 

 

 怪我をした脚を彼女は見やる。

 しばらくは激痛でまともに歩くことすら出来ない。

 松葉杖だけが頼りである。

 故に、今この状況でメグル達を助けに行くことは叶わない。

 一通りの手当を終えた後、ポケモンセンターの待合室でアルカは項垂れていた。

 外では既にテング団の悪趣味なゲームが始まっている。

 彼らはサイゴク地方、ひいてはおやしろへの憎悪に染まった集団だ。

 確実にこの島の住民とおやしろを破壊すべく”爆弾”を使うのだろう。

 しかしアルカには、どうにもそれが引っ掛かっていた。彼らの技術では、島一つを吹き飛ばすような爆弾は作れないからである。

 

(従って”爆弾”は何らかの比喩である可能性が高い……!? でも絞り込めない……! せめてもう1つヒントがあれば……!)

 

 そうして考えているうちに、イヌハギの言っていたことを思い出す。

 

 ──妹は三羽烏、お前は落ちこぼれ。どうして此処まで差がついたのやら。

 

 そうしてまた、無性に腹が立ち、悔しくなって涙が浮かんでくるのだった。

 故郷の妹は、いつも自分よりも優秀だった。

 一族で最も重要視される装飾品の加工が最も上手いのは妹だった。

 反対に、ぶきっちょで最もそれが下手だったのは──アルカだった。

 一族では装飾品の加工技術を持つ者が重用される。

 親が居なかった妹は、それだけが命綱のようなものだった。

 技術すらボンクラだったアルカは──里に居場所が無かった。

 そして今も、彼女には居場所が無いも同然だった。

 

(テング団でもなければ……サイゴク地方の人でもない。なのに、都合の悪い事は黙って……あのオネエさんや……おにーさんに甘えて、此処に置かせて貰ってる……)

 

「……何でボクって……こんなに中途半端なんだよ……」

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